「真・恋姫夢想 ~とある桂花のデレ日記~ 番外の記」
北郷一刀という男がいる。
私と同じ、聖フランチェスカの二年だ。
どんな奴かというと。
女たらし。
その一言に尽きる。
スポーツも勉強も、特に秀でているというわけじゃない。
超二枚目というほども、顔が良いってわけでもない。
なのに、何故かこれでもかというくらいにもてる。
バレンタインともなれば、下駄箱は勿論みっちりに。机の上には、高々とチョコの山が出来上がるほど。
・・・少なくとも、私が知っているだけでも、五十人は、彼を好きだと公言してはばからない。ちなみに、その中には教師も何人か含まれている。
でもって。
かく言う私もまた、そのうちの一人なわけで。
入学式のとき。
クラス分けの書かれた掲示板を見ていた私に、彼の肩が当たった。
正直言って、私は物心ついてからというもの、男という生き物が大嫌いでたまらなかった。無神経だしがさつだし、年中助平なことばっかり考えている、醜い生き物。
この世の男の全てに対し、私はそういう評価で、それまで生きてきた。今だって、その認識は特に変わっていない。・・・・・・彼に関して以外は。
一目惚れなんて、それも、男に対してなんて、この世に存在するわけがないと。私は本気でそう信じていた。
けど。
「あ、ごめん!大丈夫?痛かった?どっか怪我とかは・・・!?」
堕ちました。それも、一瞬で。
(一目惚れって、ほんとにあるんだ)
そう思いました。
でも、私の口から出たのは、そんな心とは全く正反対の言葉でした。
「ちょっと!あんたどこ見てんのよ!いえ!わざとね?!わざと私にぶつかっといて、これをきっかけにして私にあんなことやそんなことをしようとか考えてんでしょ!いやあ!けだもの!あっちに行って!てか今すぐ消えて!私の視界から居なくなってよ!この変態万年発情男!」
・・・・・・・いや、もう。
我ながら、よくこれだけの罵詈雑言が出てくるものだなと。でもって、初恋は終わったなと。も、最悪の出会いだった。
けど。
それだけの罵声を浴びせた私に、彼はそれから後も、普通に接してくれてきている。
ただの馬鹿か。それとも、相当のお人好しか。
いや。彼は優しいのだ。ただし、上に超がつくくらい。そして、誰にでも。
それから一年。
私は、彼の顔を見るたびに、散々に罵倒し続けた。なのに、それでも彼は、彼のままで居た。
私は、そんな彼に完全に惹かれていった。
けど、その想いを口にしようとすると、なぜか正反対の言葉しか出てこない。
好きは嫌いに。
傍に居たいは近寄るなに。
おしゃべりしたいは、口を聞くなに。
天邪鬼。
そんな私が出来るのは、この想いを日記に書き連ねていくだけ。
誰にも見せることの出来ない、その本心を。
私こと、由梨(ゆり)桂花の、北郷一刀への想いを。
今日も今日とて、彼の笑顔を思い出しつつ、さらさらとノートに走らせる。
夏月春日。
『将を射んと欲すれば、まず馬を射よ』
そんな言葉が世にはある。
彼と仲良くしたい、いや、もっと言えばお付き合いがしたい。さらにいえば、もっと進んだ仲になりたい。・・・やだもう!進んだ仲だなんて!一刀のエッチ!!
・・・と、一人芝居はこれくらいにしておいて。
まずはお友達からでもいいから、何とか親密になりたい。
けど。
それ以前に、今の関係をどうにかしないといけない。
そこで、私が白羽の矢を立てたのは、彼の双子の妹、北郷一姫だった。
ちなみに、聞くところによると、彼にはもう一人妹がいるらしいのだが、学校には入学式以来、姿を見せていないらしい。・・・病気だったりとかするのかな?だとしたら、未来の義姉としては一度くらい見舞いに行ってみたいものだ。
・・・未来の義姉、か。・・・うん、いい響きだわ♪
と、まあ、脱線はこれくらいにしておいて。
まずは、偶然を装って、一姫と知り合いになった。・・・素敵なお姉さまだった。一刀と双子なんだから、顔はもちろんそっくり。いつだか、痴漢だか下着ドロだかをとっちめた際についたとおり名が、烈風の朱雀。はあ、かっこいい・・・。
じゃなくって!
確かに一姫”お姉さま”も素敵だけど、本命は、一刀の方なんだから!
でもって、続いてはさりげな~く、お昼時に近くに行って話しかけ、よき信頼関係を築いた。これで第二段階も成功、と。
そして第三段階。彼のことを、それとなく聞いてみる。好きな食べ物とか趣味。あと、異性のタイプとか。これにて情報収集も出来た。よしよし、順調順調。
そして最終段階。
面と向かうと、またいつもの罵声が飛び出るので、今日は秘密兵器を用意してみた。その名も、
「交換日記~!!」
・・・一体いつの時代だっ!っていう、突っ込みは無しでお願いします。メルアドの交換なんて、恥ずかしくて出来ないもの///
というわけで、私からだと一刀に渡してほしいと、一姫お姉さまに頼みました。ところが、ちょっと予想外の事態となりました。
「・・・・・・・・・・・・・・や」
「え?」
「嫌って言ったの。そか。桂花も、なんだかんだ言って、お兄ちゃんに近づく悪い虫だったんだ?ふ、フフ、ふふhuhuフフふふふふhuフフ」
「あ、あの、か、一姫・・・ちゃん?」
なんか、どす黒いオーラを背負いつつ、一姫ちゃんは槍を構えました。もちろん、刃はつぶしていないやつです。
「オニイチャンニチカズク女ハ、ミンナ、敵ダーーーーーー!!」
「いーーーーーーやーーーーーーーーー!!」
・・・・・・・・・・・・作戦失敗。
実の妹まで本気で慕っているとは。・・・・・・・どんだけ女たらしなのよ?!っとに。
・・・この分でいくと、もう一人の方も・・・ま、まさか・・・ね?ハ、ハハ・・・。
コホン!・・・・・・・ま、とりあえず。
こんなことくらいじゃ、桂花、負けないんだから!
絶対に、私が、彼の心を射止めてやるんだからねーーーー!!
~えんど~
という感じで、短いですがデレ日記の番外編でした。
乱さんから許可をいただき、一姫を出してみようと思ったんですが、向こうの世界を舞台にすると、なんとな~くしっくりこなかったもので、現代を舞台にしてみましたw
あ、ちなみに、桂花の苗字は、作者の勝手な捏造ですw
作中に書いたもう一人の一刀の妹。
誰かわかりますよね?
そのうち彼女も出してみたいと思っているので、ご本人に確認をとってみたいと思います。
さて、次の投稿は、一応、北朝伝の予定です。
幕間になるか、それとも、新章に入るかは、今のところ未定です。
ではまた次回にて、お会いいたしましょう。
あでゅう~♪
Tweet |
|
|
93
|
10
|
追加するフォルダを選択
はいはい、桂花日記、その番外編でございます~。
今回は乱さんから許可をいただいて、
一姫を登場させてみました。
続きを表示