翌日
「姉さまったらどこへ行ったのかしら・・・あ、思春、姉さまを見なかった?」
「雪蓮様ならお見かけしていません」
「そう、こんな時間まで登庁しないなんて・・・」
「その件について少々気になることがあります」
「何かしら?」
「北郷一刀の姿も見ていません」
「北郷も?それが姉さまとなんの関係があるのかしら」
「北郷の別名をご存知ありませんか?」
「別名?」
「魏の種馬 だそうです」
「・・・・まさか!!」
日はだいぶ昇ってしまった
それでも一刀はまだ眠ったまま
すぅ~、すぅ~
そんな静かな部屋を、突然の喧騒が包み込む
バターーン!!!
ドアが凄い勢いで開けられると
「北郷はいる?北郷!!」「おとなしくしろ北郷!!」
「・・・ん~・・・なんだ騒がしい」
「こ・・・これは・・・・ッッ!!」
「北郷・・・・貴様ぁーー!!!」
甘寧さんの刀が首元に来たことで眠気が一気に吹っ飛んだ
「北郷、一応弁明させてあげる、これは一体どういうことかしら?」
「ななななな、なんのことでしょう!!」
「貴様・・・・」
「うるさいわねぇ・・・何を騒いでるのよ蓮華、思春」
「姉さま!!」「雪蓮様!!」
「そんなに顔真っ赤にしちゃって、何よ?」
「何よじゃありません!これはどういうことですか!」
「どういうことって・・・・ねえ、一刀」
アイコンタクトを送る雪蓮
俺はやっと事態を把握した
「はわわ」
「はわわ?なにそれ一刀かわいい~~~」
俺に抱きつく雪蓮
いい匂いがするけど今はそれどころじゃない
「・・・・やっちまった・・・・おしまいだあああああああああああああああ」
「一刀?」「北郷?」「む?」
俺はやっと自分が何をしたのかに気づいた
「甘寧さん、頼む、俺の首をはねてくれ!」
「はぁ?」
「一瞬で頼む!やってくれ!」
俺は目を瞑り首を差し出す
戸惑う甘寧さん
雪蓮も驚いたようで
「待ちなさい一刀、どうしたってのよ?」
「春蘭と秋蘭に殺される・・・・殺されるだけならまだいい・・・・地獄だ・・・・」
雪蓮たち3人は顔を見合わせた
「なるほどね、それなら大丈夫、簡単よ」
「どういうこと雪蓮?」
「一刀を正式に呉へ向かえちゃえばいいのよ」
「「「えええーーー!!」」」
「ちょっと待ってください姉さま、そんないきなり」
「そうです、このようなどこの馬の骨とも知らない者を」
「ね、一刀、いいわよね?それとも、春蘭と秋蘭に言っちゃおっかなぁ~、一刀に襲われたって」
「それだけは勘弁してください」
「なら決定、一刀は今から正式に呉の人間よ」
話がどんどん進んで行く
「雪蓮、俺は魏を抜けるなんてできない。ごめん」
「うん、だから呉と魏、両方に所属してることにしちゃえばいいじゃない」
「へ?」
「だって、華琳たちだけが一刀を独占できるなんてずるいわよ。公平性の問題ね、うん」
「・・・・凄く嫌な予感がしているんだけど、もしかして最初からそれが狙いだった?」
「私はそんなに安い女じゃないわよ?もし一刀に魅力がなかったら、とっくに切ってるわ」
そう言うと雪蓮は俺の胸に顔を埋める
そんな雪蓮に、孫権さんたちは何も言えなかった
「一刀、私があなたを認めたの、あなたが呉にも必要なのよ」
こうして呉にも籍を置くこととなった
どっちにしろ無事じゃすまないな俺・・・・・
「一刀が呉の人間になれば、ここ建業で一刀に何をしようと何も言えないはずでしょう?だから安心しなさい一刀」
「何をしようとって何するつもりだよ・・・・」
「ふふふ、それじゃ先行くわね~」
逆に安心できないよ
それから身支度を整えた俺は城へと向かった
その後、雪蓮から正式に俺を呉へ迎え入れることが発表された
反応は大きくわけて二つ、歓迎するもの、わだかまりが取れない者
そして・・・
「北郷、ついて来い」
最初に接触をしてきたのは周瑜さんだった
周瑜さんの執務室へ通され、部屋の中央にある机に腰を下ろした
「どんな手を使ったかしらんが、まさか雪蓮を一晩で落とすとは・・・・さすが魏の種馬と言ったところか」
「面目ありません」
「責めているわけではない。むしろ見直したよ」
「見直した?」
「ああ、北郷が雪蓮に認めさせたのだ。これ以上に信用できる理由はないさ」
何か違和感があると思ったけど、周瑜さんに以前のような敵意がない
「昨日の無礼、どうか許して欲しい。すまなかった」
そう言うと、深々と頭を下げられてしまった
「顔を上げてください周瑜さん。俺、周瑜さんの気持ちが痛いほどわかります。だから」
「すまない」
「俺の方こそ周瑜さんのお気持ちを察せなくて、もっと違う気持ちの伝え方があったかもしれないのに、すいませんでした」
周瑜さんは不思議な物を見るようにこちらを見ている
「不思議な男だな北郷は、まさか謝罪に謝罪で返されるとは思わなかったよ」
あ、周瑜さんの笑顔、始めて見れた
「ふむ、北郷、私の真名を受け取ってくれまいか?」
「喜んで」
「わが真名は冥琳、これからよろしく頼むぞ北郷」
「よろしくお願いします。冥琳さん」
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