さて、季衣を屋敷に連れて来たわけだけど
「なあ季衣、春蘭達が呉に向かったなら今1人なのか?」
季衣はビクッと反応する
「・・・・はい」
「ならさ、しばらくここで暮らさないか?」
「え?」
「1人だと何かと不便だろ?ここにいれば面倒見てやれるしさ」
「でも、僕は魏の将ですよ?白蓮さんに迷惑がかかるんじゃ」
「安心しろ、この白蓮に秘策ありだ」
「秘策?」
「ああ、この椅子に座ってくれ」
「??」
季衣は言われたとおり鏡台の前に着席してくれた
私は季衣の背後に回ると、季衣の髪を髪留めで一本にまとめる
「よし!完成だ」
「・・・・これが秘策ですか?白蓮さんと同じ髪型ですね」
「ああ、なかなか似合ってるぞ」
そう、全て作戦通り
「ここにいる間、季衣は私の妹になるんだ」
「へ?妹?」
「ほら、髪の色も似てるし」
「そういう問題じゃないような・・・・」
「従兄弟と言うことにしよう。うん、それから私のことはお姉ちゃんと呼ぶように」
「ちょ、ちょっと待って下さい!僕まだ留まるとは言って・・・」
「だめか・・・・?(ウルウル」
「だめと言う訳じゃ・・・・」
「なら決まりだ!今日から季衣は私の妹だ。ひゃっほー!」
思わず季衣に抱きつき頬をすりすりしていた
「や、やめてくださいよー」
「季衣~お姉ちゃんと言ってみてくれ」
「・・・・お姉ちゃん?」
「ぶっはー!」
そこからよく覚えていないんだ
気がついたら寝台の上だった
「あれ、ここは?」
「白蓮さん、気がつきましたか」
そこには我妹が
「よく覚えてないけど、付き添ってくれたのか?・・・すまん」
「本当に大変でしたよ・・・・一体どうしてあんなことに」
「うん・・・・実は」
「桃香さんや翠さんを見ていたら自分も姉妹が欲しくなったと」
「ああ、鈴々や蒲公英みたいな妹がいたら毎日楽しいだろうなってさ・・・・ほんとごめん」
なんでこんなことしたんだろ
恥ずかしいなんてもんじゃないじゃないか
「・・・・妹になってもいいですよ」
「え?」
「だって、白蓮さんってなんだかお姉さんぽいし、いい人みたいですから」
「ほ、本当か?」
「はい」
「な、なら、もう一度お姉ちゃんと言ってくれ!取り乱したりしないから!」
「お願いしますよ・・・・お姉ちゃん」
これは・・・・やばい
「ぐ・・・・ぐぉおぉぉぉ、ぐっ!あははは、これからしばらくよろしくな季衣」
あれから季衣を受け入れる準備で大忙しだった
季衣は淵と名乗ることも決まった
「それでさ、淵を新品の寝床に寝かせることになったんだけど、新品の寝床だと
敷物が硬くて寝にくいかもしれないだろ?だから先に私が寝床を使って慣らしてあげたんだ」
「はぁ」
「そしたら淵がなんて言ったと思う?・・・・ありがとうお姉ちゃんだってさ!生きててよかった!!」
「そうですか(重症だな)」
この嬉しさを私は何時間部下に伝えているのかわからなくなって来たけど
とにかく私は今幸せだ
「公孫賛様、これから宮殿に行くのですからくれぐれも」
「あ、ああ、わかってる」
私がなぜここ都に来ているのか、それは晋への友好の使者としてだ
一斉蜂起が起こり魏が転覆した時、蜀は2つの意見で割れていた
「桃香お姉ちゃん、今すぐ都に兵を進めて魏の敵討ちをするのだ」
「しかし鈴々、今軍を動かせば再び戦乱の時代に逆戻りだぞ」
「愛紗よ、魏は同盟国、黙って見過ごすわけにもいかんのではないか?」
「桔梗様、私も軍を進めるべきと思います」
「でもよ、やっと国がまとまってきたところでまた戦争はまずいんじゃないか?」
「お姉ちゃん・・・・変なものでも食べたの?」 「うっせえ」
「はわわ、桃香様、今軍を動かすのは民への負担が大きく、国が乱れる元になるとも考えられます」
「あわわ、でもここで軍を動かさなければ蜀の評判が落ちてしまうことも考えられます」
「困ったわねぇ、星ちゃんはどう?」
「紫苑よ、以前華琳殿がこう言ったのを覚えているかな?」
星の発言に注目が集まる
「非道な王と思ったのならいつでも討ちに来いと」
「し、しかし、華琳殿は反乱によって失脚したのだ。華琳殿に落ち度は」
「愛紗よ、桃香様は魏の危うさ、一つの柱に頼りきってしまった時、その柱が折れれば瓦解すると
それを指摘していたではないか。華琳殿はそれを是とせず、そして瓦解したのだ。
ならば我々が魏のために動く必要はない。桃香様、今は時勢を見極める時かと」
桃香に注目が集まる
「・・・・皆、私達は蜀の民のことを最優先に考えなくちゃいけない。今は守備を固めて相手の出方を見るよ」
こうして蜀は晋との全面戦争回避となった
それから数日後、晋からの貢物が蜀へと届いた
蜀の首脳は再び対応会議を開いた
「朱里ちゃん、雪蓮さんたちの動きは?」
「はい、呉も目立った動きをしていないようです。また、同じく貢物が贈られているとの情報もあります」
「晋さんも戦争は望んでいないと言うことかな」
「恐らく政情が安定していないのでしょう。しばらくは動きが取れないかと」
「詠ちゃんはどう思う?」
「そうね、相手が贈り物をしてきた以上こちらも何かしら答えなければならないわ。
まず特使を派遣して都に1人置きたいところね」
「特使か・・・・私が行くわけにいかないよね」
「当たり前です桃香様!危険すぎます」
「ごめん愛紗ちゃん、でも誰を派遣したら・・・」
蜀を離れ危険な敵地に移る
命の危険がある上に蜀での仕事もできない
「私が行くよ」
「白蓮ちゃん?」
「一応元太守だしな。奮武将軍なんて肩書きももらってるし特使として丁度いいと思うんだ」
「朱里ちゃん」
「はい、白蓮さんなら特使としてうってつけかと」
「わかった、白蓮ちゃんに特使として都へ向かうことをお願いします。気をつけて」
「私達の行動が蜀の命運を握ると言っても過言じゃない。期待に応えないと」
「は!」
白蓮たち一行は宮殿外壁に到着すると、城門を通った
白蓮の屋敷
季衣はウェイトレスの仕事を辞め、暇をもてあましていた
「なんとなく掃除を始めてみたけど・・・・余計に散らかったような気がする」
身分を隠しているので鍛錬をするわけにもいかない
今日は白蓮が宮殿へ向かう日なので情報収集も控えている
「それにしてもまさかなぁ」
(桂花ちゃんが蜀に行ってたなんて)
蜀 成都
「桂花さんの内政手腕、本当に勉強になりましゅ、噛んじゃった」
「もう、軍師ならもっと落ち着いて話なさい雛里。ああ、こんなとこに寝癖つけちゃって、こっち来なさいよ」
「あわわ」
「まったく、どうして蜀の女はこう身だしなみがだらしないのかしら!」
すっかり姉妹のようになってしまった桂花と雛里を眺める桃香と朱里
「桂花ちゃんと雛里ちゃんてばすっかり仲良しだね」
「私としてはちょっと寂しくもありますけど。でも桂花さんの手腕はさすがです。
都での内政術は私も勉強させてもらっていますから」
「詠ちゃんと桂花ちゃんか、訳ありで表に出せないのが悔しいねぇ・・・」
「そうですね、お二人の名前を公に使えたらどんなに仕事がはかどることか」
残念そうにする二人を他所に
雛里を座らせた桂花はクシを取り出すと雛里の髪をとかしている
「あわわ、ありがとうございましゅ」
「はい終わり、ちゃんと気をつけなさいよ」
「・・・・・がんばります」
最近では雛里の仕事のサポートだけでなく、蜀の内政全般をサポートするのが
桂花の定位置となっている
経験の少ない朱里や雛里にとって、桂花はよいお手本となっているようだ
桂花がなぜ蜀に来たのか
魏の再興、そのためにはむかつくけどあいつが必要なのよ
あいつが消えたのはここ成都、戻ってくるとしたら必ずここのはず
待ってなさい
蒲公英から学んだ改良型落とし穴で真っ先に地獄に落としてやるんだから
既に秋蘭のところへ一刀が戻ってきていることを知らない桂花だった
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白蓮の秘密