No.200977

真・恋姫無双 魏が滅亡した日 Part6 季衣の冒険

見習いAさん

季衣の冒険

2011-02-11 19:49:47 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:4671   閲覧ユーザー数:4239

「明日から1人ぼっちか」

 

一刀達は出発に備え早めに床についた

眠れない季衣は1人、近くの川辺に腰を下ろすと、ぼーっと川の流れを見ていた

 

「せっかく兄ちゃんが帰ってきてくれたのに。全然遊べなかったな・・・・」

 

一刀が帰ってきてからも4人は忙しかった

季衣は収入源であるバイト、そして情報収集の両立と、最も忙しい立場にあった

それでも一刀との接点はあったのだが、季衣はあえて距離を取った

 

季衣は人一倍、春蘭と秋蘭を大事に思っている

二人の辛い姿を身近に見てきた季衣は、一刀と遊びたい本心を隠し

一刀を譲ってしまった

 

「・・・・寂しい」

 

体育座りになると両膝に顔を落とす

明日の朝には一刀も春蘭も秋蘭も出発してしまうと思うと

強烈な孤独感に襲われてしまった

 

季衣がそのままの体制で数分経った頃、ふと、後方に気配を感じる

がばっと顔を上げ即座に戦闘態勢を取る

 

「誰!」

 

「はは、驚かせてごめん」

 

「兄ちゃん?」    

照れくさそうに手をあげた兄ちゃんがこっちに歩いてくる

 

「兄ちゃん、もしかして起しちゃった?」

 

「いや、俺も同じ、なんだか寝付けなくてさ」

 

「・・・そっか」

 

兄ちゃんは僕の隣に腰を下ろした

 

「季衣、ごめん」

 

「え?」

 

「うーん、ほら、突然消えたこととかさ、まだしっかり謝ってなかったろ?だからさ」

 

「・・・・兄ちゃんが消えて、凄く寂しかった。でも、兄ちゃんは帰ってきてくれた。だからいいよ兄ちゃん」

 

「・・・・ありがと季衣、・・・・季衣も傷ついてたのに、こっちに来てから何もしてやれなくごめん」

 

「やだなぁ、何言ってるの兄ちゃん、僕はそんな子供じゃないよ」

 

「季衣?」

 

「背だってこんなに伸びたし、胸だって馬鹿張飛なんか目じゃないくらい成長してるもん

もう大人になったからへっちゃらだよ」

 

そう言うと僕は笑顔を作った

 

「背、ずいぶん伸びたな」

 

「でしょー?まだまだもっと伸びるからね。期待しててよ兄ちゃん」

 

「ああ、楽しみにしとく」

 

兄ちゃんはうれしそうに頷いてくれた

 

「季衣、少しの間寂しいかもしれないけど、すぐ戻るから。必ず皆を連れて戻ってくるから。必ず。約束する」

 

「僕は兄ちゃんも、春蘭様も、秋蘭様も、華琳様も、皆も、信じてるもん。だから寂しくなんてないよ」

 

みんなが戻ってきて、また楽しい毎日が戻ってくるその日まで。

がんばんないといけないからね   

翌日の早朝、兄ちゃん達は呉へ向けて出発した

拠点として使っていたこの小屋にいるのは僕一人

 

「1人か・・・・1人になるのって今まであんまりなかったなぁ」

 

村でも、魏でも、必ず誰かと一緒だった

今は完全に1人

 

「流琉・・・・どこ行っちゃったんだよぅ」

 

我慢していた気持ちが抑えられなくなった僕は、何も考えず泣いた

 

「あれ?」

 

気がつくと、外は夕焼けになっていた

 

「寝ちゃったのか・・・・う、うーん、少しすっきりしたかな」

 

ノビをすると、よし、と気合を一つ

こんなことでへこたれてらんないからね

 

「1人ってことは自由ってこと。本格的に都へ潜入してみよう」

 

そう決心すると、いつもまとめている髪を解く

僕が仕事をしながら情報を集められる秘密

それはこの髪なんだよね

 

いつも束ねてたから、髪を降ろすと僕が許緒だなんて誰も気づかない

このことに気づいたのは春蘭様だけど、本当に便利だよ

 

「っていけない、おばちゃんのとこいかなきゃ!!!」   

今日は仕事の日だってすっかり忘れてた

急いで僕はおばちゃんのところへ向かった

 

「遅れてごめんなさい!」

 

「まってたよー、早く接客についとくれー」  「はーい」

 

もうすぐ夕飯時、お客さんで賑わう時間帯が始まる

 

店がにぎわい初めて数刻、外の通りを一隊が通る

 

「お、繁盛してるようじゃないか。よし、夕飯はここにしよう。皆いいか?」

 

「「「は!」」」

 

白蓮は部下数名を引き連れ季衣の働く店に入店した

 

「「「「お帰りなさいませご主人様」」」」」

 

「・・・・は?」

 

突然フリフリの服を着た女性数名からご主人様扱いされ私は唖然としてしまう

 

(こ、この店は一体なんだ?食事する店じゃないのか?私はまた間違えたのか?)

 

なんとか状況を受け入れ席についたのだが不安が拭えない

なかなか状況が理解できなかったが、運ばれる食事を口に持っていくとなかなかの料理だったことにほっとした

 

「都と言うのはすごいものだ。こんなの蜀じゃ考えられんぞ」

 

「まったくだ、都最高」

 

部下の男達は店員の女性に鼻の下を伸ばしっぱなしだった

 

(私だって、かわいらしい服を着ればだな・・・・・・・・ん?)

 

どこかで見た記憶がある人を見つける

(どこかで見た気が・・・・季衣?にしては大人っぽい気がするなぁ)

 

「おばちゃーん、3番のご主人様にラーメン2つにチャーハン大盛り2つ追加でー」

 

(季衣だこれ!!!)

 

「ちょちょちょちょ、ちょっとそこの君、急いであの娘をここに呼んでくれないか?」

 

「あ、すいません。うち、指名制ではないんですよ」

 

「そうじゃなくて!!!」

 

なんとか説明に成功すると季衣と思われる女の子がこちらに来た

 

「なんの御用ですかご主人様?」

 

私は小さな声と同時に手紙を渡す

 

「・・・・季衣だろ?これを」

 

「え?あ、どうも」

 

「よし、お前らいつまでも鼻の下伸ばしてないで帰るぞ」

 

「「「は!」」」

 

白蓮たちは帰っていった

 

「あの人どうして私を真名で・・・・」   

手紙にあった時刻、場所に僕は向かった

それは町外れにある大きな木の下だった

その場に行くと、僕を真名で呼ぶその人が待っていた

 

「季衣!心配したんだぞ、よくぞ無事で」

 

「・・・・あの、ごめんなさい、どちら様でしょうか?」

 

「は?」

 

「・・・・その・・・どうして僕を真名で呼ぶんですか?」

 

「・・・・・・」

 

その人は木に倒れ掛かった

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「ああ、大丈夫だ・・・・慣れてる、慣れてるさ、そうさ、慣れてるよ!」

 

なんだかとても悪いことをした気分がする

 

「私は蜀の公孫瓚、真名は白蓮。最後の決戦の後に真名を交換しただろう・・・・」

 

「白蓮さん?白蓮さん・・・ぱいれんさん・・・・こうそんさん・・・・」

 

余計にわからなくなった

 

「あああああああもういいよ!そうだよ!私はいつまでたっても残念ですよ!」

 

「あ、ちょっと!」

 

白蓮さんはその場から立ち去ろうとしてしまった

 

「残念・・・・ざんねん・・・・普通・・・・影が薄い・・・・・白蓮!!思い出しました!!白馬将軍の白蓮さんですね!!!」

 

「どういう思い出し方だ!!」

 

蜀の白蓮さんがどうしてここにいるんだろ?


 
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