No.194833

真・恋姫†無双 北郷史 7

たくろうさん

華雄さんってどれくらい強いんだろうね?

2011-01-09 01:01:04 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:9972   閲覧ユーザー数:7295

 反董卓連合の前にそびえるのは強固な壁である汜水関。虎牢関には劣るもののそれでも易々とは落とせぬ関である。袁紹の言葉通り劉備の軍勢だけで攻めていたらまず落とせなかっただろう。

 先陣に立つのは「関」の牙門旗をはためかせる関羽の軍。北郷と袁紹の軍も混ぜられた関羽の軍は普段より強固なものとなっている。兵力でいえばこれでもまだ心許無いがそれでも幾分もマシなものとなっている。

 関羽が一歩前に出る。そして頭の中で作戦の手筈を復唱する。

 

(この作戦は私が華雄を挑発して門を開けさせ、華雄が飛び出して来るのと同時に私は退却する。しかし華雄の相手は一体だれがするのだろうか? 星は見当たらないし将軍の相手が務まる者は御使い様の配下に星以外いないと思うのだが……)

 

 関羽に貸し与えられた一刀の兵は練度こそ袁紹の軍と比べて遥かに素晴らしいものの一個人で将軍クラスに太刀打ちできるような者はいない。

 

「いや、私は当たられた命令を従事しよう。皆、これより作戦に入る。戦に向けて気を引き締めよ!」

 

「応!!」

「サーイエッサー!!」

 

 御使い様の軍は変わった掛け声をするのだな、と関羽は思いながら華雄を挑発すべく大きく息を吸う。

 

「我が名は関雲長!! どうした華雄!? 関に篭ってばかりで私と相対するのがそれほど恐ろしいか!?貴様の武の誇りとやらはその程度のものか!!」

 

 一声目では何も反応はない。そうと分かると関羽は畳み掛けるように罵詈雑言を汜水関にいる華雄に向けて浴びせる。だがなかなか華雄は姿を現さない。

 

「うーん、思ったより我慢強いみたいだね」

 

 関羽の隣から声が入る。

 

「ええ、そのようで……って御使い様!?」

 

 関羽は声の主が一刀と分かると飛び退きながら驚いた。一刀は関羽の反応をスルーして汜水関を見ている。

 

「何故こんな戦場のど真ん中にいるのですか!?早くさがってください!!」

 

「いや、俺がいなくなったら華雄の相手がいなくなっちゃうから」

 

「自ら華雄の相手をする気ですか!?」

 

「ウチは人手が足りないからね。星は後ろの軍を纏めているし、本陣は軍師に任せておけばいい。それで手持ち無沙汰なのは俺だけってわけ。まあそれ以上に俺が一番殺さずに捕らえるのに適任ってのが一番の理由さ」

 

「……部下がよく許しましたね」

 

この言葉に一刀は笑顔になり

 

「勿論無許可だよ。今頃本陣は泡食ってるんじゃないかな?」

 

「……貴方の部下は苦労してそうですね」

 

 関羽はただ呆れるだけであった。

 

~北郷陣営本陣~

 

「……お兄さん、またやってくれましたね」

 

「一刀殿が持ってきた天界の乗り物もありません」

 

 風と稟が目を離した隙に一刀が座ってる筈の場所には「ちょっと華雄と闘ってくる」という張り紙があった。

「はい、これ使って」

 

 一刀は関羽に先端が丸型の短い棒を関羽に手渡した。

 

「何ですか、これ?」

 

「それは「マイク」といってね。ちょっとした妖術の有効活用さ。試しにその丸い部分に向かって適当に喋ってごらん」

 

「は、はぁ…。では、【桃香様ー、私、頑張ります】」

 

 関羽がマイクに向かってそう声を発するとここにいる全員に聞こえる程大きな音量となって汜水関一帯に響き渡った。桃香様ー、私、頑張ります。と木霊していく様はとてもシュールなものであるが。

 

(うん、太平要術の書に記されていた人心掌握術の項にこれの作り方があったけど上手くいったみたいだな。まああの三人が扱ってる時点で使えることは分かってたけど。妖術を理解するのは本当に頭を悩まされたけど地和達のおかげで何とかなったな)

 

「す、凄いですね……」

 

関羽はマイクをまじまじと見る。

 

「じゃ、俺は突撃の用意をするから挑発は頼んだよ」

 

 そう言うと一刀は後ろに停めてある金属で出来ている物にまたがった。それはこの時代に生きる者には決して分からないが一刀が生まれた世界の者なら一目で分かる物だ。

 

「それは何ですか? 馬のようにも見えますが」

 

「これは「自転車」という天界の乗り物だよ。俺には馬はどうも乗り慣れなくてね。いやー、骨組みは割と楽に出来たんだけど車輪のタイヤ部分の素材で行き詰まっちゃってね。最近竜の皮が手に入って試してみたらこれがもうピッタリで!!……っと喋り過ぎたね。じゃ、頼んだよ」

 

 そう言うと一刀は自転車のハンドルを握り締める。

 

【どうした華雄!? 関に篭ってばかりで私と相対するのがそれほど恐ろしいか!?貴様の武の誇りとやらはその程度のものか!!】

 

 関羽の叫び声がマイクを通して耳が痛くなる程の爆音となり汜水関に響く。汜水関の壁は関羽の声で震えている。

 しばらくすると沈黙に徹していた汜水関の門が開いた。

 

「貴様ぁ!! 言わせておけば調子に乗って大声で叫びおって!! もう我慢ならん!! 我が武を愚弄する者は誰であろうと許さぬ。望みどおり我が武を見せてやろう!!」

 

 華雄が開いた門からいの一番に飛び込んでる。それと同時に一刀もペダルを踏み華雄に向かって自転車を進める。

 

「兵たちよ、私は一旦退がる。お前達は御使い様の援護に入れ!!」

 

兵達は一刀に続いて駆け出す。今、汜水関の戦いは本格的に始まった。

「おっと、危ない」

 

 一刀は咄嗟に身を屈める。飛んできた矢が一刀の頭があった場所を通過する。一刀は自転車の身軽さを上手く利用して華雄の軍勢の攻撃を上手く避けながら華雄の元に向かう。

 

「くっ、あれだけ私を愚弄しておいて門を開けた途端退くとは臆病者め!!」

 

 華雄は行き場を失った怒りを溜め込みながら関羽の退いた先を睨みつける。そんな華雄の元にキコキコと気の抜けた音と共に一刀が現れた。

 

「やあ、初めまして。華雄将軍」

 

 一刀は華雄のもとに辿り着くとにこやかに挨拶をする。

 

「何だ貴様は?」

 

華雄は苛立ち混じりに応える。

 

「俺は北郷一刀。これでも一つの街の太守させてもらっている」

 

「ふん、太守が戦場の真ん中にいるとは随分とお気楽な奴だな」

 

 一刀は自転車から降りると華雄の皮肉に少しだけ表情を真面目にする。

 

「これでもそれなりの覚悟をして戦場に立っているつもりだよ。覚悟も無い奴がこれからかの有名な華雄将軍に一騎打ちなんて申し込まないよ」

 

「何? 私と一騎打ちだと?」

 

「そう、一騎打ちだ。そして俺は華雄、君の力が欲しい」

 

 一刀の言葉に華雄は眉を潜める。

 

「ふん、笑わせるな。貴様のような軟弱な男に私の相手は務まると思っているのか?」

 

「それはやってみないと分からないよ。それにもう観客席は埋まっているよ」

 

 その言葉で華雄は自分の立たされている状況に気付く。いつの間にか兵によって華雄と一刀を中心に円形が形作られており一騎打ちをせざる得ない状況が作られていた。ここで一騎打ちを受けなければ武の誇りに傷が付いてしまう。

 

「……いいだろう。貴様との一騎打ち、受けてやろう」

 

華雄は持っていた大斧、「金剛爆斧」を構える。

 

(欲するものがあれば力を示す……か。華琳の意思は俺の中に脈々と流れているよ)

 

 一刀は己の中に流れる覇王に培われた精神を全身に浸るように感じながら戦場へ意識を集中させる。

「何故剣を構えない?」

 

 華雄は何時までも剣を抜かない一刀に痺れを切らして質問をする。

 

「一応体裁のために帯刀はしてるけど俺にとって剣はお荷物だからね。気にしないで来てくれ。もう闘い始まっているよ」

 

「ではどうやって私を倒すというのだ?」

 

「俺の武器はこれとこれ」

 

 そう言うと一刀は頭に指を当て次に舌をベッと出して舌を指差した。

 

「俺は人を倒すことは専門外なんでね。だから俺は自分の得意分野を駆使する」

 

「舐めているのか貴様は!!」

 

華雄は勢い良く金剛爆斧を振り下ろす。

 

「俺は何時でも本気だよ」

 

一刀はそれを軽々と避けた。避けられるとは露程も思っていなかった華雄は一刀の予想外の身のこなしに驚き、喜色を浮かべる。

 

「北郷一刀といったか。貴様、言うだけ言って大した身のこなしではないか」

 

「そりゃあ避けれもしなかったら一騎打ちなんか申し込まないよ」

 

「少しは楽しませてくれそうだな!!」

 

華雄は地面にめり込んでいた金剛爆斧を振り抜くと獲物を捕らえるべく再びその刃を振り下ろす。

 

「まあ楽しい鬼ごっこになることは保証するよ」

 

一刀は次の攻撃も体を少しだけズラして攻撃を避けた。

「はあ!!」

 

「どやぁ…」

 

「この!!」

 

「どやどやぁ……」

 

華雄は猛撃を仕掛けるものの一刀の体を捕らえることはない。華雄は苛立ちがどんどん募っていく。

 

「はぁ、はぁ……何故仕掛けて来ない!?」

 

「その質問は禁則事項です」

 

 一刀に挑発をしても逆に苛立ちが増えていくばかりである。

 こうしてる間にどんどん二人の状態に差が生まれてきた。一刀は息がまだまだ整っているが、華雄は何度も渾身の一撃を一刀に叩き込むべく金剛爆斧を全力で振っているせいでどんどん息が荒くなっていく。それに苛立ちが重なってさらに状態を悪くさせられている。

 

「くっ……」

 

 流石に疲労を感じて華雄は後方に飛び一刀と距離を取ろうとする。だが一刀はその動きに合わせて抜刀した。華雄は体勢をやや崩されたがそれでも武器で一刀の一撃を受け止めた。

 一刀は鍔迫り合いになる前に一歩退き華雄との距離を取る。。

 

「なっ!? 剣は使わないのではなかったのか!?」

 

「お荷物になるとは言ったが誰も使わないとは言ってないよ」

 

一刀は舌をベッと出して自分の先程のやり取りこそ武器であることを主張した。

 

「さて、そろそろ避ける精度も流石に落ちてくるから一つ予告しておこう。次、一度でも大振りで攻撃したら君は全身が痺れて動けなくなるよ」

 

「ふん、戯れ言を」

 

 華雄は一刀の言葉を鼻で笑う。そんな反応に一刀は笑顔で応える。

 

「そうかもしれないしそうじゃないかもしれない」

 

「くっ……」

 

 華雄は口でこそ一刀の言葉を否定したがそれでも疑心暗鬼に駆られて攻撃が小振りになる。

 

「華雄、非力な奴が強者に勝つにはどうすると思う?」

 

一刀は華雄の攻撃の勢いが萎んで余裕が出来たため華雄に語りかける。

 

「強い奴が勝ち、弱い奴が負けるだけだ!!」

 

 華雄は一刀の言葉を一蹴する。

 

「答えは弱い奴は知恵を振り絞り強者に勝つしかない。そして策が生まれ技術が生まれる」

 

「戯れ言を!!」

 

 華雄は一刀の言葉を否定し、純粋な武こそ至高であることを見せつけるかのように金剛爆斧を振りかぶった。

 その瞬間一刀は華雄の懐に潜り込み聖フランチェスカの制服から黒い塊を取り出す。

 

「これが弱者の知恵の結晶。またはスタンガンと言う」

 

「あああああああ!?」

 

 一刀が華雄の体にスタンガンを押し当てると電気が走りつんざくような音が周囲に広がる。

 電撃を受けてしばらくした後、華雄は痙攣しながらその場に倒れた。

 

「ふむ、身を守る為に貂蝉を騙くらかして手に入れたスタンガン。こういう形で役に立つとは。でも今のでバッテリー切れだな」

 

 カチカチとスタンガンのスイッチを押すがスタンガンは何も反応しない。

 一刀はスタンガンを制服の中にしまうと華雄を担ぐ。

 

「将軍華雄、この北郷一刀が討ち取った!! さあ、今だ!!汜水関に流れ込め!!」

 

言い終えると一刀は華雄を縄で縛り自転車の荷台に乗せると自分の陣営に戻り始めた。

 

(霞の姿を見たかったけど、結局それは叶わなかったな……)

 

 戦場に心残りはあるが一刀は仲間が逆鱗に触れられた龍の如く怒っていると考えると身震いするので大人しく戻ることにした。

 

その後、見事関羽達が汜水関の一番乗りを果たし反董卓連合は汜水関を陥落させた。

~北郷陣営~

 

「お兄さん、風達はとっても怒っているのですよー?」

 

「まったく、勝ったから良いですが一刀殿はもう少し自分の立場を理解してですね……」

 

「言ってくれれば主殿自ら一騎打ちに出ずとも私が出たというのに」

 

 

 一刀の予想通り一刀は帰還するとすぐにご立腹な風、稟、星に言い寄られることになった。

 

「いや、仲間にする相手なんだから自分で出向くくらいの度量を見せようと思って」

 

「「「そんな度量いりません」」」

 

「すいません……」

 

一刀は三人の圧力にシュンとなる。

 

「でも、これで主戦力を得ることが出来たな」

 

 一刀はすぐに開き直る。

 

「確かに仲間にすれば頼もしいですが大人しくお兄さんの言う事聞きますかねー?」

 

風の懸念に一刀は口端を上げて答える。

 

「大丈夫。まだ戦いは始まったばかりだ。何事も最後を見ない限り結果なんてわからないよ。さあ、次は虎牢関だ。気を引き締めていこう」

 

~続く~

 


 
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