No.194629

真・恋姫†無双 北郷史 6

たくろうさん

イビルジョーがうざいと思う今日この頃

2011-01-08 02:50:21 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:10091   閲覧ユーザー数:7278

「一刀殿、袁紹の所から反董卓連合についての知らせが届きました」

 

「そうか、ありがとう。稟」

 

政務室に大きな歴史の出来事の一つが知らせとして舞い込んできた。

知らせには董卓の暴政によるものでの反董卓連合の結成とされているが、実際のところ董卓は暴政など行っておらず袁紹が董卓の立場を良く思わないことから始まったものだ。

かつて董卓とは知らぬまま洛陽で出会った少女のことを一刀は思い出す。

 

「まあ、可哀想とか云々は置いといてもここは俺の道においては正念場だな」

 

「ええ、ここで一気に名を上げることはこれから訪れるであろう乱世においてはかなりの正念場になるかと」

 

稟も一刀の独り言に同意する。

 

「よし、早速反董卓連合へ参加と袁紹の所に知らせを送ってくれ、稟」

 

「了解です。その前にひとついいですか?」

 

「ん、何だい?」

 

稟は眉間に指を当てて溜息をつく。

 

「政務室で裁縫しながら真面目な話をしないでください」

 

一刀の手には縫針と布が握られていた。そして器用に話をしながら裁縫に没頭している。

 

「いやー、しばらくの間城を空けちゃうから今の内に新作を作ろうかと」

 

一刀の脳天気な言葉に稟は頭を痛める。

 

「ところで稟は内心少しワクワクしてるんじゃないか? だって反董卓連合に行けば曹操に会えるんだから」

 

「な!?」

 

図星を突かれたせいで稟は大きく動揺する。

 

「でも曹操のところには行かないでくれよ? 俺らの陣営は優秀な人材がただでさえ少ないんだから」

 

「それはご安心を。別に一刀殿のやり方に不満は持ってませんし、何より一度仕えると決めた相手を簡単に裏切るような真似はしません」

 

「ん、そう言って貰えると嬉しいよ。じゃあ出撃に向けて準備を始めようか。星には軍の士気を上げるよう言っておいてくれ」

 

一刀達は来たる日に向けての準備に取り掛かった。一刀も魏の者達と会うことによって心がかき乱されないよう気を引き締めることに尽力した。

一刀のもとに反董卓連合の収集の知らせが来てから数日が経ち、一刀達は反董卓連合の本拠地にやって来た。

 

荷の整理を終えると一刀と風、稟の二人の軍師は諸侯達の話し合いの場にやって来た。

既に名のある諸侯達はひと通り集まっており一刀達が最後の到着である。

 

「おーほっほっほ!!では自己紹介でもしましょうか。まあ、ワタクシは自己紹介するまでもありませんがあ・え・て、してあげますわ!!私が大陸一の名家の袁本初ですわ!!」

 

会議での最初の一言がこれである。

全員が呆れる反応をとった後、順々と各諸侯が自己紹介に入る。袁術、華琳、劉備、孫策、その他諸々と自己紹介が終わり次は一刀達の番となる。

 

「北郷一刀だ。そしてこちらは軍師の郭嘉と程昱だ」

 

全員が一刀を興味深げに見る。

天の御使いの肩書き、そして黄巾の乱においての奇抜な戦い方は大陸に知れ渡っておりこうなるのも仕方が無いことである。劉備だけは一刀の人となりを知っていたので呑気に一刀に向かって手を振っていた。

だが一刀の意識はそこには無かった。

 

(……華琳)

 

一刀の目には華琳以外映っていなかった。

華琳は気配に敏感なところがあり、一刀のほうを見てる為視線を合わせることはしなかったが、それでも意識は自然と華琳のほうに傾いてしまう。

 

自己紹介が終わると袁紹のどうでもいい代表を決めるくだりに入る。

 

(うーむ、やはり新作はゴスロリで攻めるか……。いや、絶対領域の限界に挑戦を……)

 

一刀も聞いてて意味が無い、というよりも結果は聞かずとも分かるので完全に自分の世界に没頭してしまっていた。そして少しでも華琳から意識を離すようにする為に。

袁紹の一言が出るのを待ちながら。

 

「明日の先陣は劉備さん、貴女のところに取っていただきますわ」

 

(きた……)

 

袁紹の言葉と共に一刀は思考を外に向けた。

全員が袁紹の言葉にポカンとしている。諸葛亮、鳳統の二人の軍師が説得を試みるがそうしている間に話は進んでいきどんどん劉備が先陣を取る話が固まっていく。

 

「あー、少しいいかな?」

 

正に劉備の先陣が決まるという時、一刀が横槍を入れた。

「何ですの、本郷さん?」

 

袁紹は話に横槍を入れられたせいで少々不機嫌に答える。

 

「劉備さんが先陣を取るには流石に戦力が足らなさ過ぎる気がするよ。」

 

「弱小勢力の劉備さんに先陣の栄誉を差し上げるのですのよ。むしろ光栄に思って頂きたいところですわ」

 

一刀の正論も虚しく袁紹の耳には届かない。だが一刀含めたここにいる全員は百も承知だ。

 

「その袁紹さんの心遣いはとても感銘を受けるよ。でもこのままじゃ袁家の名に傷が付いてしまう」

 

一刀は否定はせず肯定しながら話を進める。

 

「ど、どういうことですの?」

 

そして袁紹のこの言葉で「餌に喰いついた」と一瞬だけ笑みを浮かべた。

 

「この反董卓連合の大将は袁紹さん。このことはここで話を聞かなかった者でさえ分かってしまう当然なことだ。そして戦いの華である先陣で劉備さんが敗れた時「ああ、反董卓連合の大将は相手の力量も測れないのか」とバカにされてしまう。これはいけないことだ」

 

「そ、そうですわね。袁家の名に傷をつける訳にはいきませんわ。ではワタクシにどうしろと言うのですの?」

 

(釣れた)

 

一刀はそう思い交渉に入る。

交渉の結果、兵力からいって劉備の次に弱小である北郷の軍が第二陣を取ることになった。

そして袁紹からの糧食と兵力の工面も上手く口車に乗せてさせることに成功した。

すべて一刀の思惑通りである。そして稟が会議が終わった途端に鼻血を吹いたのは予想外であった。

 

「で、どういうことなのか説明してくれるのですよねー?」

 

諸侯同士の会議が終わり自分の陣営に着くと風が開口一番に一刀に質問をぶつける。

 

「うん、説明するのはいいけどまずは劉備さんの陣営に行って交渉しないと。その時にすべて分かるよ。今は歴史の中に沈むであろう人を拾い上げるとでも言っておこうかな?」

 

「お兄さんってたまに意地悪ですよねー」

 

一刀はその言葉に笑いで返した後、劉備の陣営に赴くことにした。

 

 

 

 

「おや、御使い様ではありませんか」

 

陣営の入り口には関羽がおり一刀達が近付くと笑顔で対応してくれる。

 

「やあ、久しぶり。劉備さんのところに案内して欲しいんだけど」

 

「それは桃香様も喜ばれます」

 

顔パスと言うべきか。関羽は来訪の相手が一刀達なのですぐに劉備達の元に案内した。

「さっきはありがとうございますー」

 

一刀の手は劉備に掴まれてブンブンと振り回されている。

 

「そろそろ話をさせて貰っていいかな?」

 

話が進まないのと、手が痛くなってきたので一刀は話を切り出した。

 

「劉備さんに折り入って頼みがあるんだけど……」

 

「何でも言ってください!!」

 

「いや、頼んだ側が言うのもなんだけどもう少し考えてから答えを出したほうが良くないか?」

 

曇りなき即答に一刀は苦笑いしてしまう。

 

「いえ、一度ならず今回も助けて貰ったんだから断る理由なんてないよ!!」

 

「まあ、そこまで信頼してくれるなら話がしやすくて助かるよ。で、頼みと言うのは汜水関を守る将軍、華雄の相手は俺達に任せてもらいたい。勿論タダでとは言わない。俺の兵の一部を貸すし汜水関の一番乗りはそちらで構わない」

 

「うーん……。どう思う、朱里ちゃん?」

 

劉備の側で控えていた諸葛亮に劉備が質問する。

 

「えーっと、はっきり言いますと私達弱小勢力にとっては華雄将軍との戦闘を避けられますし、兵を貸して貰えてさらに汜水関の一番乗りも譲って貰えるのですからこれほど破格な提案はないです。……ですがこれほどの提案をしてそちら側が得られる物がよくわかりません……」

 

諸葛亮は口元に手を当てて深く思考を巡らせる。だが答えは見つからない。

 

「ハハ、そんな考える程のことではないよ。俺が欲しいのは単に華雄将軍の身柄。俺の所は軍師には恵まれているものの力のある将軍は星しかいなくてね。だからここらで優秀な人材を手に入れておきたいのさ」

 

「しかし、華雄将軍は易々と降るとは思えませんが……」

 

「まあ、そこは華雄将軍の身柄を抑えてから考えるよ。で、承諾してくれるのかな?」

 

諸葛亮はしばらく考えた後

 

「この提案、受けましょう桃香様。この話に裏があるとは思えませんし」

 

「うん、朱里ちゃんがそう言うならそれでいいよ」

 

こうして交渉は良い結果となった。

ここは魏の陣営にある天幕の中。

華琳は今日の会議に居た顔ぶれを思い浮かべていた。

 

(袁家の二人は論外としてやはり江東の虎の娘の孫策。そして今は勢力が小さいけど劉備の所も優秀な人材を揃えていて油断ができないわね。)

 

華琳はこれからの乱世において対峙するであろう者を予測していた。

 

(……でも何よりあの北郷とかいう男。あいつはよくわからないわね。先程の会議でのやり取り。何がしたいのか分からないけど面白そうだから見物させて貰うとするわ)

 

思考に一段落つけると華琳は笑みを浮かべる。

 

「しかし太守としてではなく食や服においての名のほうが広まってるってのが変な奴だわ。だけど太守としての力は置いといても欲しい人材ではあるわね」

 

華琳も一刀と同じく人材に関して胸を膨らませるのであった。

 

~続く~

 

 

 

 

 


 
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