愛紗ちゃんがおかしい。
絽望さんと別れた直後はぶつぶつと独り言を言っていたけど、しばらくするともの凄く笑顔になっていた。
「鈴々ちゃん、愛紗ちゃんがおかしくなっちゃった・・・・・・」
「こんな愛紗は初めて見たのだ」
鈴々ちゃんもさすがに戸惑っているみたいだ。
ここは私が声を掛けるしかない!
私は勇気を振り絞る。
「あ、あの、愛紗ちゃん・・・?」
「どうされましたか?」
愛紗ちゃんはさっきと同じような笑顔で振り返る。
なんだろう、背筋がゾクッときた。
寒さのせいだと信じたい。
「さっきから、笑顔だからどうしたのかなって・・・・・・」
「久しぶりの狩りなので気分が良いんです」
笑顔を貼り付けたまま愛紗ちゃんは答える。
「そ、そっか」
これ以上は無理。
ハンターとして―――人として―――いや、生き物としての本能が危険だと警告をする。
「り、鈴々ちゃ~ん。私には無理だよ~」
軽く涙目になる。
「あはははは、鈴々にも無理なのだ」
エリア7に着くとブランゴと遭遇した。
愛紗ちゃんはすぐに飛龍刀【朱】を構える。
私たちは大人しくブランゴを狩る愛紗ちゃんを見ていた。
誰だって死ぬのは嫌なんです。
私はブランゴの剥ぎ取りを終え桃香様と鈴々のいるところに向かう。
「このエリアにはいなかったようですしエリア8に移動しましょう」
いつもなら桃香様の疲労などを考えて休憩を入れるが今回は余裕がない。
狩りの難易度に関してはなんら問題はない。
余裕がないのは私の心だ。
早くドドブランゴを狩りたくて仕方がない。
「う、うん。分かった」
桃香様も私の気持ちを察してくれたのかすぐに移動を開始する。
さすがは桃香様だ。
家臣の気持ちを酌んでくれるとは。
私は桃香様のお陰で少しだけ心に余裕が生まれる。
余裕が生まれたことにより周りがよく見えるようになった。
そこで初めて狩り場に漂う臭いに気がつく。
「これは・・・ペイントボール!?」
“ペイントボール”は独特の臭いを放つ“ペイントの実”を使用しモンスターの位置を知ることが出来る道具である。
使用法は簡単で対象のモンスターにぶつけるだけである。
ペイントボールの臭いがすると言うことは、絽望殿がドドブランゴに遭遇したということでもある。
くそっ!
急がなければっ!!
絽望殿の噂を聞く限りでは一人でもドドブランゴに後れをとるような御仁ではない。
だが、危険なのには変わりがない。
私は桃香様と鈴々を置き去りにしてペイントボールの臭いがするエリア8へと向かった。
「このエリアにはいなかったようですしエリア8に移動しましょう」
剥ぎ取りを終えた愛紗ちゃんが凄い剣幕で迫ってきた。
「う、うん。分かった」
たぶん、『はい』以外の返事は死を意味するだろう。
私の直感が告げる。
なんだが、この狩りで本能の危険を察知する能力が上がった気がする。
まだ、ドドブランゴに遭遇してすらいないのに・・・。
「これは・・・ペイントボール!?」
愛紗ちゃんが突然、声を上げた。
ペイントボール?
私はそこで初めてペイントボールの臭いがすることに気がついた。
鈴々ちゃんも愛紗ちゃんの声で初めて気がついたようだ。
ということは―――
と、私が考えようとし始めた時には愛紗ちゃんはエリア8の方へと急いで向かっていた。
「あ、愛紗ちゃん!?」
驚いて声を上げるが愛紗ちゃんには聞こえていないようだ。
エリア7には私と鈴々ちゃんが残されていた。
「愛紗ちゃんを追わなくちゃ!行こう、鈴々ちゃん!」
「分かったのだ」
私は鈴々ちゃんと一緒に愛紗ちゃんを追ってエリア8へと向かった。
うーーーん?
どういうことだ?
俺がドドブランゴに遭遇してペイントボールを当ててから随分と時間が経過している。
なのに、劉備達が来る様子がない。
え、一人でやれってこと?
これ、何てプレイですか?
とか思っていたらドドブランゴが咆吼を上げる。
すると、地面からブランゴ達が飛び出してきた。
「これはちょっとヤバイかも」
さすがにドドブランゴとブランゴ達を同時に相手にするなら道具類を使わなければならない。
だが、今回の狩りは劉備達が同行している。
だから、道具類を使うのは劉備達と合流して本格的に狩るときにしたかったんだが・・・・・・。
「ま、背に腹は代えられないか」
俺はポーチから“閃光玉”を手のみで探す。
閃光玉は“光蟲”と言って絶命時に強烈な閃光を放つ虫を使いモンスターの目を眩ませる道具だ。
一瞬だけハンターも周りが見えなくなるので使うタイミングはしっかりと考えなければならない。
モンスターによってはその場で止まっているがドドブランゴは閃光玉を使うと激しく動き回るモンスターだ。
それでも正確な攻撃はしてこないのでその間に罠を仕掛けたり、回復が行えるのだ。
「あった」
俺はポーチの中から閃光玉を取り出した。
後はタイミングを考えて投げるだけだ。
ドドブランゴとブランゴ達の攻撃を躱しながらタイミングを図る。
「今だ!」
俺は閃光玉を投げた。
私はやっとの思いでエリア8に到着する。
エリア8は山の頂上辺りにあり登るのが大変なのだ。
「はぁはぁ」
急いできたために呼吸が乱れている。
それでも構わずに絽望殿を探す。
エリア8の中央であるひらけている所に向かおうとすると視界に何かが飛び込んできた。
その何かは吹き飛ばされたように地面に倒れてもがいていた。
力強そうな腕。
筋肉質な足。
全身は白い毛に覆われている。
比較的、人間に近い体つきをしているそれは――
「ドドブランゴ!?」
私は驚いて声を上げてしまった。
ドドブランゴ自体に驚いた訳ではない。
ドドブランゴが地面に倒れてもがいているという事実に驚いたのだ。
「よ、よかった。俺は見捨てられた訳ではないんだね」
声がする方を向くと全身リオソウルUの防具を纏った者がいた。
この狩り場でその防具は間違いなく絽望殿だった。
「我らがそのような真似をするわけがないでしょう!!」
絽望殿に信用されていないということに思わず声を大きくしてしまう。
「だって、ペイントボール当ててからしばらくしても来ないし・・・・・・」
「そ、それは」
それを言われたらこちらは強く反論できない。
すると、急に絽望殿に押し倒された。
「な、何をっ――」
次の瞬間、私と絽望殿の上をドドブランゴが通過した。
絽望殿に倒されていなかったら間違いなくドドブランゴの一撃を食らっていただろう。
ハンターがいくら防具を纏っていたとしてもモンスターの一撃を食らえば傷を負う。
小型モンスターならほとんど問題はない。
だが、ドドブランゴのような大型モンスターになるとそうはいかない。
確実に大怪我は免れない。
当たり所が悪ければ最悪、死ぬことだってあり得るのだ。
そのことに背筋が寒くなる。
と、同時に守ってくれた絽望殿をかなりたくましく思っていた。
「大丈夫?」
俺は関羽の手を引っ張って立ち上がらせる。
閃光玉で混乱してると思って油断した。
咄嗟に関羽を庇ったが倒れたときに怪我をしてないとは限らない。
「え、ええ。問題ありません」
少しだけつまりながらも関羽は答える。
「本当か?」
つまるってことは我慢してる可能性がある。
関羽が着ているレイアSシリーズは顔がでるデザインになっている。
だから、顔を近づけ眼を見て質問する。
「だ、大丈夫ですからっ」
関羽は顔を赤くして俺から距離をとる。
顔が赤いってことはどっか痛いのを我慢してるな。
俺は関羽を退かせようとするがそこでドドブランゴの混乱が解ける。
「ちっ」
俺は舌打ちをしてドドブランゴに向き直る。
視界の端で関羽もドドブランゴの混乱が解けたことに気づいて警戒するのが分かる。
どうやら本当に怪我は大丈夫らしい。
「愛紗ちゃ~~ん!」
エリア内にちょっとだけ気の抜けたような声が響く。
「お姉ちゃん!狩り場では大声を出すなって愛紗に言われてるのだ!」
いや、あんたも充分でけぇよ!
声の主は間違いなく劉備と張飛だ。
「はぁ」
関羽のため息が聞こえた。
心中、お察しします。
『懺悔室』
もう一つの作品を久々に投稿したのでテンションがあがり書いてしまいました。
計画性は皆無です。
ストーリーを一応は考えたんですけど正直、きついです。
なので、こんなモンスター狩ってくれというリクエストをお待ちしております。
あ、作者はモンハン2nd、2ndG、3rd体験版しかプレイしておりません。
リクエストがないようでしたらストーリーの方を少しずつ進めさせてもらいます。
それではここまで見て下さった皆様に多大なる感謝を!!
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思いつきと勢いのみの作品です。
計画性は零なので気をつけて下さい。
矛盾点など御座いましたら指摘願います。
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