真・恋姫無双アナザーストーリー
雪蓮√ 今傍に行きます 第18話
クリスマス・イブから明けた翌日。
「ん~っ!やっぱり雪は積もらなかったか」
窓越しから外の様子を見て見ると太陽も出ていて昨日の夜に雪が降った形跡が跡形も無く無くなっていた。
「ちょっと残念な気もするわね。積もればよかったのに」
残念だけど仕方ないわよね……それよりも、制服に着替えて学園に行かないとね。
冬休みに入ったけどそれでも学園に行く時は制服を着ないと入れないし。
まあ、入れないわけじゃないけど、手続が面倒だから制服で行った方が遥かに楽でいい。
制服に着替えて最後に机の上に置かれた小さな箱を手に取り蓋を開ける。
「ふふふ……」
何度目だろう?箱の中にある指輪を見て頬が緩むのは……
「何度見ても笑いが止まらないわね」
昨日の夜に一刀が私に贈ってくれた指輪。
「ふふふ♪」
指輪を手に取り左手の薬指にはめて眺める。
もう、幸せが私の中からあふれ出てくる感じ。まさに幸せの絶頂って、はこの事を言うのね。
「……随分と嬉しそうだねぇ、雪蓮?」
「っ?!か、母さん?!どうしてここに居るのよ!」
声に驚き振り向くと母さんが物凄い笑顔で私を見ていた。
「どうしてここに居るって、そりゃ、私たちの家だからね。居て当然じゃないか」
「そういう意味じゃなくて!どうして私の部屋に居るのよ!」
「部屋の扉が開いてたからに決まってるだろ?覗いてみたら一人、手を見てにやけてる娘が居たからね」
「う゛……」
しまった。着替えた後に空気の入れ替えをする為に部屋と扉を開けっ放しにしてたのを忘れてたわ。
「それで?その左手の薬指に輝いている指輪は何かしら?母さん、気になっちゃうな~」
「お、教えるわけ無いじゃない!」
「まあ、別にいいけどね。北郷君から贈ってもらった指輪だって事はなんとなくわかるし」
「ぐっ!……なんで知ってるのよ」
「そりゃ何年あんたの母親してると思ってるんだい。昨日帰って来た時に既に判ってたわよ。あんたは隠してるみたいだったけどね」
はぁ、何年経っても母さんには敵わないのかしらね……
「さあ、白状しなさい!でないと、ここを通さないわよ♪」
「誰が教えるものですか!そこを通してもらうわよ!」
「出来るものならやってみなさい。これでも昔は『通せんぼ天音ちゃん』と言われてたのよ!」
「それは昔でしょ!ああっ!もうこんな時間!家を出る時間が過ぎちゃってるじゃないのよぉ!」
「ほらほら、早く私を抜いてみなさい?じゃないと、北郷君とのデートに間に合わなくなるわよ」
「なっ!で、デートじゃないわよ!冬休みの課題を一緒にやりにいくだけよ!」
「でも二人っきりなんだろ?だったらデートと変わりないじゃないか」
「だから違うっていってるでしょ~~~~っ!」
それから10分近く、攻防が続きなんとか隙を突いて部屋から抜け出すことに成功した。
「もう、余計な体力使わせてくれちゃって、母さんも歳を考えて欲しいわね」
文句を言いながら一刀が待つ学園の校門前へと急ぐ。
「あっ!居た居た!お~い、か~ず、と……」
そこで目にしたのは一刀の他に、桃香に愛紗、琳までもが居たことだった。
「なんであなたたちまで居るのよ」
「あら、会って早々、随分な言われようね?私は早く課題を終わらせようと来ただけよ」
「実は私たちもそうなんです。ね、愛紗ちゃん」
「はい。そうしたら校門で一刀さまがいらしたので私も驚きました」
「なんだか腑に落ちないわね……本当は一刀が教えたんじゃないの?」
「教えてないよ。本当は皆で行こうかなって考えてたんだけど、時間も遅かったし連絡入れなかったんだよ」
「……時間があれば連絡してたってことよね。それって」
「えっと、そ、そうなるの、かな?」
「かな?じゃなくてそうなのよ!もう、一刀は何処までもお人よしなんだから!」
「い、いひゃいひょ、ひぇれん」
「ま、まあまあ、みんなで楽しく行った方がいいじゃないですか。私は一刀さんの考えに賛成ですよ!」
「私もです」
「騒がしいのは嫌いだけど。一刀と雪蓮を二人っきりにするよりはましね」
「な~んか、琳だけ棘のある言い方じゃない?」
「そう?気のせいでしょ。もし棘があるように聞こえたのなら。やましい事を考えていたからではなくて?」
「やましいてなによ」
「さぁ?私には雪蓮の考えなんてわからないから何とも言えないわね」
「言ってくれるじゃない……」
「ま、まあまあ!お二人とも校門の前で喧嘩はやめましょうよ!」
「そうだな、雪蓮も琳も。とりあえず人の目が痛いから学園内に入ろうぜ?」
「……一刀がそう言うなら……あとで覚えてなさい琳」
「ふん、こっちの台詞よ」
とりあえず一刀と桃香に仲裁されて学園内に入った。
「それにしても凄い偶然だよな」
「はいっ!私も一刀さんが校門の前に居た時はビックリしちゃいました」
「だよなぁ~」
学園内を歩きながら一刀と桃香は話を咲かせていた。
「でも、新しい展示ってなんでしょうね?」
「そうだなぁ。愛紗は知ってる?」
「いえ。私も聞き及んでいません。申し訳ありません」
「そんな謝る事じゃないよ。愛紗は律儀すぎるぞ」
「そうだよ。愛紗ちゃんもっと気楽に♪」
「は、はぁ……」
「「……」」
そして蚊帳の外な私と琳は不機嫌極まりない。
――むにっ
「「っ!」」
――むにむにっ
「「~~っ!」」
――むにむにっむぎゅぅっ
――ぷちっ
「ん?」
「どうしたんですか一刀さん?」
「いや、なんか紐が切れたような音が聞こえたような気がしたんだけど」
「私には聞こえなかったよ?愛紗ちゃんは?」
「いえ、私も特には」
「気のせいか「か・ず・と」な……えっと……な、なんでしょうか雪蓮さん?」
一刀はぎこちなく振り返り苦笑いを浮かべていた。
「随分と楽しそうにお話してたわね。桃香たちと」
「そ、そんな事ないぞ?なあ、桃香って居ないし!」
「え、えへへ……頑張って一刀さん」
桃香はいつの間にか一刀の腕から離れて私の後ろに居た。ホント、抜け目無いわね桃香は。
「あ、愛紗?!」
「そ、その、私ではどうする事も……申し訳ありません!」
「さて、どうしてくれようかしら?鼻の下を伸ばしていた北郷一刀?」
「うぐっ!の、伸ばしてなんか居ないぞ」
「へぇ~、ならその下半身の脹らみは何?」
「やばっ!……あっ」
「ふふふ、墓穴を掘ったわね。一刀」
「ひ、卑怯だぞ琳!」
「知ったこっちゃ無いわね」
「さぁて、覚悟はいいわね。か・ず・と♪」
「たっぷりと弄んであげるわ一刀」
「だ、誰かっ!」
「誰も助けてなんてくれないわよ。観念しなさい一刀」
「出来るかぁっ!と、桃香助けてくれ!」
「あわわっ!えっと、えっと……あっ!しぇ、雪蓮さん!その左手に輝いているのって何ですか!」
「ん?ああ、これ?」
桃香はなんとか一刀を助けようとして、私の指に輝いているものを見つけて気を反らしたっぽいけど、一刀には更なる地獄が待っているわよ。
「これはね?……」
そこで一刀を見てニヤリと笑うと一刀はさらに顔を青くした。
「ま、待て雪蓮っ!早まるな!」
「これはね。一刀がクリスマスプレゼントで私にくれた婚約指輪よ♪」
「「「…………はっ?」」」
桃香たち三人は目を丸くして動きを停止させて、一刀は天を見上げていていた。
「あ、あの雪蓮殿?今、なんと仰いましたか?」
「だから、一刀からのクリスマスプレゼント」
「いえ、そこも大いに気になるのですが、そのあとの言葉が」
「ああ、婚約指輪?ふふふ、いいでしょ♪」
「「「ぇぇぇえええっ!」」」
「ちょっと、うるさいわよ?いくら休みだからって部活してる人に迷惑になるでしょ」
「そ、そんなことはどうでもいいわ。婚約指輪ってどういうことよ!」
「そのままの意味だけど?」
「い、いつ貰ったんですか雪蓮さん!」
「パーティーの帰りに」
「で、ですが、雪蓮殿は私たちと同じマフラーを貰ったではありませんか!」
「それがね?私だけプレゼントの数が少ないと不公平だからってくれたのよ。一刀って優しいわよね」
「そうだとしても!一刀自らがあなたの左手薬指にはめるとは思えないわ。どうせ自分でつけたのでしょ」
「ふふふ、残念ながら一刀がはめてくれたのよ♪ねぇ、一刀」
「あ、ああ、だけど間違ってるぞ、薬指にはめさせたのは雪蓮がっ「はいは~い。一刀は少し黙っててね~♪」~むがっ~~~!」
一刀が余計な事を言いそうになったから口を押えて黙らせちゃった。
「……一刀?」
「一刀さん?」
「一刀さま……っ!」
あ、何か一人だけ一際でかい般若が見えるわ。
「ま、まずは落ち着いて話をしよう!な、琳!」
「その必要は無いわね……どう思う桃香」
「そうですね。私も同じ意見です。愛紗ちゃんは?」
「ええ。私もお二人と同意見です」
「ま、待ってくれ!三人とも誤解してる!そもそも俺はっ!」
「「「問答無用っ!」」」
「ぎゃ~~~~~~~っ!!」
一刀は三人にボコボロに蹴られていた。あの桃香ですら、涙目で蹴っているってことは相当ショックだったみたいね。
あっ、なんだか『一刀もげろ』って言葉が画面いっぱいに流れてくる様子が目に浮かんだわ。
「あらら~、少しからかいすぎたかしら?まあでも、殆ど事実だしいいか♪」
「よくな~~~~いっ!」
「あら、生きてたの?」
「生きとるわっ!とにかく!雪蓮にあげた指輪はもともとクリスマスリングなんだよ!それを雪蓮が誘導するように薬指にはめさせたんだ!」
「「「……」」」
「本当だから信じて?!」
一刀半分泣きが入ってきていた。
「まあまあ、もうそれくらいでいいじゃない。そろそろ一刀を許してやったら?」
「はぁ……元はと言えばあなたが原因でしょ雪蓮」
「そうだったかしら?」
「わ、私は信じてましたよ一刀さん!」
「あれだけ蹴ってたのによく言うわね、桃香」
「あぅ……だ、だって~、雪蓮さんだけずるいじゃないですか結婚指輪なんて……ホントは違いましたけど」
「でも、桃香はペンダント貰ってるじゃない。琳はイヤリング、愛紗は髪留めだっけ?別に多く貰ってるわけじゃないんだし」
「意味合いが違うのよ。別段、プレゼントする事に文句は無いわ。ただその品が指輪だった所に問題があるのよ」
「うんうん!」
桃香はそれが言いたかった。と、言わんばかりに何度も頷いてた。
「もしかして、ヤキモチ?」
「なっ!ち、違うわよ!どうしてそうなるのよ!」
「本当かしら?顔を赤くさせて言われても説得力が無いわよ」
「~~っ!ああもう。桃香、愛紗!この二人を置いてさっさと行くわよ」
「わわっ!ま、待ってくださいよ琳さ~ん!」
「桃香さま!走ると転びますよ!」
「大丈夫だよ!っ!わっとっと!」
愛紗に忠告された傍から転びかけるって、それに何も無いところで転びそうになるのはある意味で芸よね。
「桃香さま!」
「えへへ♪大丈夫大丈夫!愛紗ちゃんも早く!」
「は、はい!一刀さま、先に行っております」
「ああ、直ぐに行くよ」
愛紗は一度微笑むと桃香追いかけて走っていった。
「俺らも行こうか」
「ええ。でも、その前に……っ♪」
「ちょ?!」
「……ダメ?」
「うっ……」
ふふふ、一刀は上目使いのお願いに弱いのよね。
「はぁ、仕方ないな。資料館前までだぞ?そうしないと俺がまた琳たちに睨まれるんだからな」
「はいはい。わかってるわよ♪」
一刀は『本当にわかっているのやら』と言いたそうに苦笑いを浮かべていた。
「よし!それじゃ、しゅっぱ~つ!」
「へぇ~、結構増えてるな。夏に来た時もそれなりに多かったけどさ」
「そうね。それにしてもどこから買ってくるのかしら、結構高そうじゃない?」
「そうだよな。壊さないようにしないと……おっ!あっちの方は実物が触れる展示コーナーがあるぞ!行ってみようか雪蓮っ!」
一刀は子供の様にはしゃいで、展示コーナーへと走っていった。
「ふふふ、まるで子供じゃない一刀ったら」
「うぉ!すっげー!これ本物の太刀だってよ!三国時代ってこんな重いのを振り回してたのか、どれだけ力があるんだ?」
あれ?一刀が持ってる太刀何処かで見たことがあるような……どこだったかしら?
「……ああ。なるほど」
私は展示されている説明板を見てようやく思い出した。
『七星餓狼:魏国、曹操に遣える夏候惇が使用していた武器。――』
道理で見たことがあると思ったわ。でも、これってやっぱりあの世界から持ってきたのかしら?
そんな疑問がふと思い浮かんだ。なんせ彼らは自由に外史行き来できるのだから。
「わぁ~!すごいですねここ!触れるんだ!」
考え事をしていると桃香たちが展示コーナーへ入ってきた。
「むっ!これは夏候惇殿の七星餓狼では無いか。なぜこれがここに?」
あっ、そう言えば愛紗は別の外史から来たんだっけ。と言う事はその世界でも夏候惇はこの武器を使っていたって事になるのね。
「あら、この武器随分と手に馴染むわね。なぜかしら?」
そりゃ、もともとあんたの武器だからでしょ。って言ってもわかるわけないか。
琳は『絶』と説明に書かれていた鎌を手に取って振り回そうと……ってっ!
「ちょっ!琳、こんな狭いところで振り回そうとしないでくれる!」
「え?ああ、ごめんなさい。無意識に体が動いてしまったわ」
「無意識で振り回されるのはごめんこうむりたいわね」
「ねえねえ。愛紗ちゃん!これ綺麗な武器だね!」
「ええ。そうですね。武器の名前は……『靖王伝家』と言うみたいですね」
「へぇ~、せいおう、でんかって名前なんだ!これも持ってみても平気なのかな?」
「ここに展示されていると言う事は平気だと思われますが、重いと思いますよ?」
「わわっ!本当に重たいね……うんしょっと、わぁ!凄い凄い!愛紗ちゃん!私かっこよく見えるかな!」
「そ、そうですね……よいのではありませんか?」
「ぷぷっ……桃香、足をプルプルさせて持ってもかっこよくは見えないわよ」
「雪蓮殿?!」
「だ、だって、これ重たいんですよぉ~。なら、雪蓮さん持ってみてください!」
「どれどれ……確かに重たいけどこれくらいなら十分余裕でもてるわよ。私ならね」
軽く振り回す。
ブンッブンッ!
うん、これくらいなら全然余裕ね。
「ほへ~、雪蓮さんって力持ちなんですね」
「そうでもないわよ。多分このメンバーなら愛紗が一番じゃないかしら?」
「ええ?!わ、私ですか!わ、私より一刀さまの方が……」
「一刀は私に腕相撲で負けてるからその時点で論外よ」
「面目次第もない……」
「きっと、愛紗・私・琳・一刀・桃香の順じゃないかしらね。どう思う琳」
「え?ええ、そうじゃないかしら」
「……あんた、また振り回そうとしてたわね。いい加減それ置きなさいよ」
琳はまたしても鎌を振り回そうと構えていた。
「まったく……あれ?」
呆れて琳から目線を外すとあるものが目に入ってきた。
「どうされたのですか雪蓮殿?」
「あれって青龍偃月刀じゃないかしら?」
「なに?!……おおっ!まさしくあれは青龍偃月刀っ!しかし、これは貂蝉に預けていたはずだが……」
愛紗は嬉しそうに青龍偃月刀を手に取り、振り回そうと……ってあんたもかい!
「愛紗も、こんな所で振り回さないでよ!」
「っ!わ、判っていますとも!振り回す振りだけです。振り!」
「……はぁ、そう言う事にしておくわ」
溜め息を拭きながら改めて展示コーナー内を見回す。
どれも見覚えのあるものばかりね。
だけど、何処を見回しても南海覇王だけは展示されていなかった。
「まあ、いいんだけどね」
「ん?どうかしたのか雪蓮?」
「なんでもないわよ♪ほらほら、まだ奥があるみたいよ?行って見ましょ♪」
「おわっ!引っ張らなくても行くって!」
桃香たちが展示物に夢中になっている隙に二人っきりになるわよ♪
私は桃香たちに気が付かれないようにして奥の展示コーナーへと移った。
「ここはまた、違った雰囲気があるね」
「ええ、なんだかまるで神聖な場所のみたいね」
誰も近づけさせないその雰囲気は安っぽい言い方かもしれないけど本当に神聖で誰も侵してはいけない場所の様に思えた。
そして、一刀と展示品を見ながら進んでいくと異質な氣を放つ部屋があった。
私は確信した。きっとここに鏡があるんだ、と……まあ、勘なんだけどね。
「一刀、ここに入ってみましょ」
「え?ああ。いいよ」
展示品を見ていた一刀は振り返り頷いてくれた。
これで……これで全てが元通りになるのね……待っててね優未。
部屋に入ると部屋の中心にお目当てのものが飾られていた。
「ここはあれしかないみたいだね」
「……ええ、そう見たいね」
私は頷くとそのまま鏡の元へと歩いていき銅鏡を手にとって見る。
――シーン……
やっぱり、何も起きないか……
手に取ってみても以前と同じようにまったく反応しなかった。
「ねえ、一刀も触ってみたら?」
一刀に銅鏡を触るように誘う。
「そうだね。ちょっと触ってみようかな」
部屋の入り口に立っていた一刀が一歩、また一歩と近づいてきた。
あと十歩………五歩……三歩、二歩、一歩……
一刀が目の前に来た時だった。
「ここに居られたのですね一刀さ、ま……っ!」
笑顔で部屋に入ってきた愛紗の顔が険しいものに変わった。
「一刀さまっ!それに触れてはなりませぬっ!」
「え?」
愛紗の叫びに一瞬驚いた一刀だったが……
――ぴたっ
一足違いで一刀は銅鏡に触れていた。その瞬間、鏡から光があふれ出してきた。
「っ?!な、なに?!」
「一刀さまっ!」
「愛紗ちゃん、どうしっ!こ、これってなに?!」
「騒がしいわね、ここは静かに……っ!これは一体何?!」
愛紗の叫び声に、桃香と琳も何事かと集まってきたみたいね。
「一刀さま!また……また、私を置いていこうというのですか!」
「あ、愛紗ちゃん落ち着いて!どういうこと?」
「どうもこうもありません!あのままでは一刀さまが、一刀さまが居なくなってしまいます!」
「「っ?!」」
その瞬間二人に動揺が走ったのが見て取れた。
「そんな……そんなのダメっ!」
私は愛紗ちゃんの言った言葉が理解できなかった。
でも、このままだと一刀さんが居なくなっちゃうって事はなんとなくわかった。
そこで私は、ある出来事を思い出した。
『鍵を……鍵をしっかりと握っていてね。ご主人様から貰った大切な鍵を……』
鍵……それが何かはわからなかった。
でも、気がつくと無意識に一刀さんがくれたペンダントを握り締めていた。
「これが鍵なの、かな?一刀さんがくれた大事なペンダントが?」
私はペンダントから目を離し、目の前で光に包まれていく一刀さんを見てさらに力強くペンダントを握り締めた。
「一刀さん!」
私はいつの間にか駆け出していた。
「はぁ、はぁっ!わ、私を置いていかないでください!」
理由はわからなかったけど、一刀さんの所に行かないといけない、そんな気がしたから。
部屋自体はそんなに広くなかった。
だけど、光の中に入った途端、変な違和感を感じました。
それでも私は構わず走り続けた。
途中でこけそうになりながらも懸命に足を前に出し続けた。
「はぁ、はぁ……お願い、待ってて、一刀さん!」
もう、何処に一刀さんが居るのかわからないほど光は強さを増していました。
「はぁ、はぁ、んっ、はぁ、はぁ……一刀さん!」
どれだけ走ったのかな?そんなに広くない部屋だったのに一向に一刀さんの下へ辿り着けなかった。
それでも一刀さんが直ぐそこに居ると信じて走り続けた。
「私……私まだ、一刀さんに言いたい事や行きたい所が、いっぱいあるんですよ!」
そう、まだまだ、一刀さんに言いたい事や行きたい所が山ほどあるんだから。
だって、だってっ!
「私、好きだから!一刀さんといつまでも一緒に居たいから!」
叫び、走りながら手を伸ばす。
それでもまだ届かない。届いてはくれない。
視界が涙でぼやけ始めても懸命に前に進む。
「一刀さん、一刀さん!一刀さんっ!!」
「と……か、…………うか…………」
光の中から一刀さんの声が聞こえたような気がした。
「っ!一刀さん!待っててね。今行くから!」
私は最後の力を振り絞るように足を進め、手を伸ばした。
「っ!」
すると一瞬、指先に何かが当たった感じがあった。
「一刀さん!」
「と、うかっ」
「一刀さんっ!!」
私は力の限り地面を蹴りあげて一刀さんの元へと飛び込んだ。
一体何が起きたのか私には理解できなかった。
ただ、光に包まれていく一刀を見ているだけしか出来なかった、が、
『どうもこうもありません!あのままでは一刀さまが、一刀さまが消えてしまいます!』
愛紗の叫び声でいつか見た夢を思い出した。
私に似た少女の背中を見ながら笑顔で消えていく一刀の事を。
「っ!一刀!」
気がついたら私はいつの間にか走っていた。
光は徐々に輝きを増し、一刀の姿を飲み込んで行っていた。
「許さないわよ一刀っ!私を置いて行こうだなんて!」
眼前を睨みつけながら必死に走る。
「くっ!一体どれだけ進めばいいの!」
部屋自体は広くなかったはずだけど、一向に一刀の元へ着く事が出来ないでいた。
「私にあの夢の様な思いをさせようと言うの一刀!」
夢、……凛々しく一刀を天へと帰した覇王。
だけど私は知っている……
その後、少女は覇王としてではなく、一人の女の子として一刀が天へ帰ってしまったことを後悔して泣いてた事を。
「私はあの娘の様な後悔しないわ!」
そう、後悔しない……したくない!
「り……ん……っ!」
「っ!一刀!」
一瞬だけど、一刀の声が聞こえた気がした。
「どこなの一刀!」
必死に呼びかけるが聞こえていないのか一刀からの返事は返ってくる事は無かった。
どこ?何処に居るの一刀っ!
目を凝らして探そうにもこう真っ白では探しようが無い。
「一刀っ!返事をしなさい!」
お願いっ!答えて一刀!
「り……ん……こ…………だっ!」
「一刀!」
かすかに聞こえた一刀の声を頼りに進む。
「一刀……一刀ぉ……一刀ぉおおおっ!!」
私の頬に冷たい何かが伝っていた。
「今度こそ……今度こそ離さないんだから!」
声も上ずり自分が泣いているのだとわかった。
だけど、足を進める事を止めない、止めてしまえば一刀にもう会えないような気がしたからだ。
「一刀っ!手を……手を伸ばして!」
私も手を伸ばす、どこに居るのかもわからないが一刀は確かに近くに居ると感じたから。
「っ!一刀!」
一瞬、指先に何かが触れた感覚があった。
私はそこに一刀が居ると確信して、地面を思いっきり蹴り上げ両手を前に出した。
「一刀~~~っ!」
「いやですっ!一刀さま、行かないでください!」
光が部屋全体を徐々に真っ白な世界へと塗り替えられようとしていた。
「なぜです!一刀さま……なぜっ!」
疑問が浮かぶ、なぜここにあの銅鏡があるのか……
なぜそれを一刀さまが手にしているのか……
わからない……わからないが、はっきりわかっている事がある。それは……
一刀さまがまた私の前から居なくなろうとしていると言う事だ。
「もう一人にしないでください!一刀さま!」
私は手を伸ばし一刀さまの下へと駆け出す。
だが、光の中を進めど一向に一刀さまの下へと辿り着く気配は無かった。
「くっ!何のこれしき……一刀さまと離れる苦しみに比べればこんなもの!」
そうは言ったが一向に一刀さまとの距離は縮まらなかった。
「一刀さま……今、この関雲長が参りますぞ!しばしお待ちください!」
しかし、周りは光に包まれていてまっすぐ走っているのかも判らなくなってきてしまっていた。
「一刀さまっ!返事を、返事をしてください!一刀さま!」
愛しい人の名を叫ぶ。
お願いだ!私の声が一刀さまに届いてくれ!
「あ……しゃ……」
「っ!今の声は……一刀さま!一刀さまぁぁぁあああっ!」
願いが通じたのか、微かに一刀さまの声が聞こえた。
「はぁ、はぁ、はぁ……一刀さまっ!」
どれだけ走ったか判らない。
息は上がり、限界も近づいてきていたがそれでも一刀さまを探し続けた。
「お願いです。一刀さま……私を、私を置いてもう何処にも行かないでください!」
「……あい……ゃ……」
また一刀さまの声が聞こえた、今度は先程よりもはっきりと。
「一刀さまっ!」
「……あい、しゃ……」
声の聞こえる方へ走る、既に体は限界を超え、足もふらつき始めていたがそれでも懸命に走り続けた。
もう、一刀さまの居ない生活など考えられない、いや、考えたくも無い!
一刀さまは私に色々な物、初めてをくれたお方だ。
初めての恋、初めてのキス、初めての嫉妬……
良い物も悪い物も含めて全て一刀さまがくれたもの、これからも一刀さまから多くの初めてを頂きたいのです!
「一刀さまっ!私は……私はあなた様が好きです!大好きなのです!だから、だから何処にも行かないでください!」
乱世の中に居た時も、この学園生活の中でも、その事だけは変わらない。
「っ!そこか!」
微かにだが誰かの肌に当たった感触があった。
「くっ!私の一刀さまへの愛は、一刀さまへの愛は……」
力強く地面を蹴り上げ手を伸ばす。
「誰にも負けないのだぁぁぁあああっ!」
鏡から光があふれ出し部屋を真っ白に照らし始めた。
これで優未に会えるのね。
「……」
なぜかしら、嬉しいはずなのに嫌な予感がするのは……
「ねえ、かずっ……っ!」
な、なに?!この全身を襲う気だるさと痛みはっ!
「ちょっ、こ、こんなの聞いてない、わよ……一刀は……?」
痛みで顔をしかめながらも何とか一刀に目を向けた。
「っ!か、かず、と?!」
一刀も私と同じように痛みで顔をゆがめていたけどそれだけじゃなかった。
「一刀の、体が透けて、る?!」
ど、どういうこと?なんで一刀の体が透けて!……っ!
良く見たら私の体も透けてきていた。
「ぐっ!か、一刀……だい、じょうぶ?」
「あ、ああ……な、なんとか、ね……はぁ、はぁ、そ、それより…………これは一体、どうなってるんだ?」
「私によくわからないわ……一体どうなって……うっ!」
な、何この頭が割れるような痛さは……ホント、洒落にならないわよ、これ……
「か……さ……」
な、なに?桃香の声?
桃香だけじゃない。
「……か……と……っ!」
琳に……
「かず……まっ!」
愛紗の声までも聞こえてきた。
あはは、みんなに悪い事しちゃったみたいね……
とくに愛紗には一番辛い事を思い出させちゃったかもね。
私はこの似た光景を見たことがある、それは夏の日にここに来た時だった。
「あ、あはは……まさか、こんな事になるなんてね……」
ふと一刀の様子が気になり、一刀に目を向けると一刀は辛そうに何かを喋りながら鏡を持っていない右手を伸ばしていた。
一刀?一体なにを?
疑問に思って手を伸ばしている先を見てみると桃香たち三人が私たちのところへ走ってきていた。
だけどなんであんなに遅いの?特に、愛紗なんかはあの中で一番早いはず……
言い表すならまるであそこだけ時間の進みが遅くなってるみたいだった。
やばっ……そろそろ意識が保てなくなってきたわ……
朦朧とする意識の中、最後に見たのは桃香たち三人が一刀に向って手を伸ばして飛びついていくところだった。
「一刀さんっ!!」
「一刀っ!」
「一刀さまっ!」
桃香たちが一刀に抱きついたその瞬間だった。
「「「「「っ?!」」」」」
鏡はさらに輝きを増し、目が開けていられなくなった。
目を閉じたその瞬間、目の前は真っ暗になり、私は意識を落としてしまった。
「う……ここは……」
朦朧とする意識の中、瞼に光が当たり軽く呻き、目を覚ました。
「……へ?」
自分でもなんて間抜けな声を出しているんだろうと思うけど仕方がないわ。
「……どうなってるの?」
私はいつの間にかベットに寝ていた。別に寝ていた事にも驚いているんだけどそれよりも今、目の前の光景に驚いていた。
「ここは、私の寝室?しかも……建業の?!痛っ!」
勢い良く起き上がった時、左肩に痛みが走り思わず顔を歪めて左肩を見た。
「嘘……この包帯の痕って毒矢を受けた時の?どういう事?生きていたとでも?」
いえ、ありえないわ……どうみてもあの時は致死量の毒を受けたはず……じゃあ、なんで私は生きているの?
「落ち着きなさい雪蓮、まずは整理しましょう。すー、はー、すー、はー……ん?」
自分に言い聞かせるように胸に手を当てて深呼吸をしているとある違和感を感じた。なんだか胸が重いような?
「む、胸が、胸が大きくなってるぅぅぅうううっ?!」
いや、落ち着くのよ雪蓮。元々私の胸はこの大きさだったじゃない……それじゃ、あの出来事はやっぱり夢だったってこと?
「そんなはずわ……だって、あれは実際に……う~ん?」
なんだかさっきまで覚えていた事が、徐々にだけどあやふやになって行っている様に感じた。
う~ん、思い出せそうなんだけど中々思い出せないわ。
「ダメだわ、肝心なところが思い出せない……やっぱり夢だったのかしら」
このやつれた体を見る限り結構な時間寝ていたって事は確か見たいだし。
「よっと……」
「……ん」
「え?」
私はベットから抜け出そうとしたときだった。私の横で声が聞こえた。
「一刀?」
「すー、すー」
一刀はベットの横で腕を枕にして眠っていた。
「なんだかさっきまで一緒に居たのになんだか凄い懐かしいな……」
目を細めて一刀の髪を撫でる。
「ふふふ、可愛い寝顔ね……っ!これって……」
一刀を撫でている左手の指に光り輝く物を見つけて声を失ってしまった。
「嘘……なんで……なんでこれがここにあるの……」
自分でも信じられなかった。
あれだけ思い出そうとして思い出せなかったのに、この指に輝いている物だけははっきりと覚えていたから。
「一刀が私に贈ってくれた指輪がなんでここに?やっぱり、あれは夢じゃなかったって事?」
「う、ん……雪蓮?……っ!雪蓮!」
――ガバッ!
「ちょっ!か、一刀?!ぇえ?!」
一刀は目を覚ましたかと思うと私を見るなり抱きついてきた。
「よかった……無事でよかった……っ!」
「か、一刀、い、痛いわ」
「ああ、ご、ごめん!嬉しくてさ、つい」
別に痛くは無かったんだけど行き成り抱きつかれて恥ずかしくなってつい出た言葉にちょっと後悔した。
「えっと、体の方はどう?」
「え?ええ、少し体力が落ちてるみたいだけど大丈夫みたいだわ」
「そっか、よかった~」
「どれくらい眠っていたの?」
「毒矢で倒れてから九日間かな、今日入れたら十日になるけど。起きてくれたからね」
一刀は嬉しそうに目じりに涙を滲ませて微笑んでくれた。
良く見ると一刀の顔も少しやつれているように見えた。
「ありがとうね。ずっと見ててくれたんでしょ?」
「え?そ、そんな事ないよ!偶にだよ偶に……そ、そうだ!皆呼んで来るよ!きっと喜ぶぞ!」
「あ、ちょっと一刀!……行っちゃった。もう、別に隠さなくなっていいのに……でも、ありがとうね、一刀」
部屋の扉を見て微笑みながら一刀にお礼を言った。
「姉様!ご無事で、ご無事でよかったですっ!……ぐすっ」
「雪蓮お姉ちゃん!無事でよかったよぉぉおおっ!うぇぇぇえええんっ!!」
「もう二人とも別に泣かなくてもいいじゃないの大袈裟よ」
泣きついてくる蓮華とシャオの頭を優しく撫でながら微笑む。
「大袈裟じゃありません!すごく心配したんですよ!」
「そうだよ!」
「ごめんなさいね。もう大丈夫だから」
そして、二人の頭を抱き寄せる。
「冥琳もすまなかったわね」
「ふっ、あの時は私も生きた心地がしなかったぞ」
「あら、うれしい事言ってくれるわね」
「偶にはな……もう平気なのか?」
「多分以前の様には剣は振れないわね」
「そうか……だが、お前が無事で本当によかった暫くは安静にしていろよ?。その後は溜まっている政務をしてもらうからな」
「ぶーぶー!病人なんだから少しは労わりなさいよ」
「ふっ、それだけ元気があれば大丈夫だろ」
憎まれ口を言いながらも冥琳の目じりには薄っすらと光り輝くものがあった。
「まったくですぞ策殿。今回ばかりはわしも灸をすえねばなりませんな」
「祭までそんな事を言うの?」
「当たり前ですぞ。この老兵を置いて先に逝こうなどと、堅殿に顔向けができないではないですか」
「こうして無事だったんだからいいじゃない」
「まったく、あなたと言うお方は……お願いですから無理はなさらないでくだされ、策殿」
「ええ、わかったわ」
その後も、思春、穏、亞莎、明命と言葉を交わした。
「さて、雪蓮も疲れただろう、みんな自分の仕事に戻ってくれ」
冥琳は私を気遣って全員部屋から出るように伝えた。
「あっ、冥琳と一刀だけ残ってくれるかしら?」
部屋から出て行こうとする冥琳と一刀を呼び止めて手招きする。
「なんだ雪蓮。お酒が欲しいとかはなしだぞ」
「それもいいんだけど、今の呉の状態と私が助かった理由を聞こうと思ってね」
「なるほどな、だから私と北郷を残したのか」
「そう言う事♪」
「だが明日でもよかったのではないか?目覚めたばかりだろう」
「まあね。でも、そうも言ってられないんでしょ?顔に出てるわよ」
「ふっ、長年連れ添っているとこうもわかってしまうものなのか」
「私と冥琳の仲じゃない。それで?どうなの?」
「そうだな、まず我々に組している豪族たちだが……」
冥琳の話を聞いてそれなりに動揺が広がったようだがなんとか今は納まってるみたいね。でも、それも一時の事でしょうね。
「それと、蜀から使者が来るそうだ」
「蜀から?なんでまた」
「多分、我々の現状の把握だろうな。そして、事と次第によれば……」
「同盟破棄ってことかしら?」
「おそらくな。多分、使者として来るのは諸葛亮かそれに見合った者だろうな」
「でしょうね。それで、現状はこんなところかしら?」
「ああ、今のところ表立って賊も事を起こしていない。今のところはな」
「そう、ありがとう。それじゃ、次に一刀ね」
「え?ああ、もういいのか?」
「なにぼーっとしちゃってるの?ちゃんと今の話聞いてた?」
「ああ、聞いてたぞ。しょ、蜀の使者が来るんだよな」
「……」
「……」
「え、違った?」
「違わないが、北郷、本当に聞いていたのか?」
「う゛……ごめん、所々」
「はぁ、まあいい。あとで穏と亞莎で話し合うお前も参加しろ」
「……はい」
「ふふふ、がんばりなさい一刀♪さて、話を戻すけど、私はどうして助かったの?毒矢に刺さったはずじゃ」
「え?刺さってないよ。雪蓮に弓矢を向けられてるのに気がついて咄嗟に腕を引いたんだよ」
「え?」
あれ?確かに刺さったはずだけど……
一刀の話では避けたはいいが肩にかすったらしくそこから変色が始まったらしい。
直ぐに一刀が傷口を切り落としてくれたおかげで微量の毒で済んだ事が助かったと冥琳が付け足してくれた。
「それで雪蓮が大号令を掛けた後、意識を失って倒れたんだ。急いで城に戻って医者に見せたんだけど、今ある薬草だけじゃ解毒は無理だって言われたんだ。このままだと本
当に命が危ないって所へ、華陀って旅の医者が患者を見せてくれって乗り込んできたんだ」
「は?乗り込んで来たってどういうこと?」
「そのままの意味だ。兵を押しのけて、『ここに悪い氣を放つものが居る!その患者をみせろぉぉぉっ!』と言ってな」
「そ、そう。随分と豪快な人ね……ん?華陀?」
華陀……どこかで聞いたことがあるような……それより、もっと大事な事があったような……」
「どうかしたか雪蓮?」
「っ!そ、そうだ!冥琳。その華陀って人はまだこの城に居るの?」
「あ、ああ。雪蓮が目覚めるまで居てもらおうと止まってもらっているが」
「ちょっと連れてきてくれるかしら。お礼もいいたいし、ちょっと頼みたい事があるのよ」
「わかった。連れてこさせよう」
冥琳は扉の外に居る兵に華陀を連れてくるように伝えていた。
「頼みごととはなんだ?」
「ちょっとね。まだ確信が持てないから後で話すわ」
そう、確信が持てない。だけど、私はある事を思い出した。
「ふむ、どうやら。大丈夫なようだな。体内の氣も正常に戻りつつある。それで、私に聞きたいこととは何だ?」
「ええ。ちょっといいかしら……」
「ああ」
私は華陀の耳元に手を添えて華陀だけに聞こえるように話した。
「ふむ。わかった。早速見てみよう。周瑜殿、少々よろしいだろうか?」
「?ああ、別にかまわんが」
「少し周瑜殿の氣を見させてもらう……はぁぁああっ!」
「な、なんだか大袈裟ね」
「ああ、雪蓮を治すときも大声で叫んでたからな」
「……ホントに?」
「ああ、『元気になあれぇぇぇええええっ!!!』ってさ」
一刀は小声でその状況を再現してくれたけど、本当にそんなんで私を治したの?っと疑問に思うばかりだった。
「……っ!見えた!……これはっ!」
「む?何が見えたのだ?」
「孫策様。あなたが仰った通りでした。どうして判ったのですか?私でも気がつかなかったと言うのに」
「まあ、ちょっとね……」
やっぱり、か……この指輪といいやっぱり夢じゃないのかしら?
「結果から言おう。周瑜殿、あなたは病に犯されている」
「私が、病に?」
「ああ、最近、吐き気や咳が多くなったと感じないか?」
「っ!た、確かに偶にだが食事をしても戻してしまう時があるが」
「やはりな、だがこの小ささならば完治できるだろう」
「本当か?ならば自室で治療してもらおう。流石にここでは無理だろう」
「そうだな。それじゃ早速治療を始めるか」
「ええ、お願いね」
「ああっ!この五斗米道の名にかけて!」
「ごっどべいど?」
「ちっがーう!ごっどう゛ぇいどぉだ!」
「ごっ……まあいいわ。それじゃお願いね」
なんだかどつぼに嵌まりそうだったから適当に誤魔化したけど、あれちゃんと発音できる人って居るのかしら?
冥琳に連れられて華陀も部屋から出て行った。
暫くすると……
『元気になぁぁああれぇぇぇえええっ!!』
華陀の叫び声が聞こえてきた。
「……本当にああやって叫ぶのね」
「ああ」
一刀は苦笑いをして私の顔を見てくる。
「?どうしたの。何か私の顔についてる?」
「いや、十日ぶりに雪蓮の元気な姿を見たのにさ。なんだかそうじゃない気がしてさ」
「そうじゃないって?」
「うん。まあ多分なんだけどさ、寝てる間に雪蓮の元気な姿を見てた気がするんだよね」
「っ!へ、へぇ~それで?」
一瞬、胸がざわめいた。まさか、一刀も同じように夢を?
「それでさ、俺の世界……天の世界でさ雪蓮と一緒に学園に通う変な夢だったよ」
「っ?!ね、ねえ、一刀。これに見覚えない?」
私は自分の指につけている指輪を一刀に見せた。
「っ!こ、これって夢で雪蓮にあげた指輪?!ど、どうしてここに?」
やっぱり、一刀も同じ夢を?……あれ?でもそれじゃ、夢なのになんでここに指輪が?
「う~ん、なんだか大事な事を忘れてる気がするんだけど」
「俺もなんか忘れてるような気がするんだよな……なんだろ?」
二人して悩んだが答えなど出るはずも無く、暫くすると冥琳と華陀が戻ってきた。
「待たせたな。これで周瑜殿の病魔は綺麗に消え去ったぞ」
「そう、よかったわ。そうだ、お礼をしないとね」
「なに、私はみんなが元気に過ごしてくれればそれだけでいいんだよ。みんなの健康、それが俺の報酬さ!」
「そ、そう、でもよくそれで旅なんて続けられたわね」
「まあな、何とかなるもんだぞ。はっはっは!そうだ、暫く二人の様子を見たい、あの部屋を暫く使わせてもらっても構わないだろうか?」
「ええ、構わないわよ。いいでしょ冥琳」
「ああ、元々そのつもりだったしな。私としては宮廷医師になって貰いたいと思っているんだがな」
「ははは、考えさせてもらうよ。では」
華陀は笑いながら部屋を出て行った。
「それじゃ、俺も戻るね。雪蓮もしっかり休んでくれよ」
「ええ、ありがとうね一刀」
「私も自室に戻る。何かあったら直ぐに呼んでくれ」
冥琳と一刀が部屋から出て行った後、一人考えていた。
さっきまであった日はとっくに暮れて綺麗な月が輝いていた。
「あの出来事は夢だったの?いや、現にここに指輪がある。夢とは到底思えないわ」
指輪を見つめながらあることを思い出した。
「そう言えば、私?が一刀に贈った指輪。一刀も持ってるのかしら?」
そう思い、一刀の部屋に行こうとしたんだけど、まだ思うように体が動かせなかったから、明日、一刀が来た時に確認しよっと。
「はぁ~、それにしても。あれが夢だったのか、現実だったのか、どっちなのかしらね?」
覚えているところはいくつかあるんだけど、なんでかしら、政治や技術になると霞みが掛かったように思い出せなくなるのよね。
「それに……夢の中だと、桃香に愛紗、曹操も居た様な気がするんだけど……ああ、曹操だけは琳って名前で呼ばれてたわね」
それともう一人……とても大事な、そう、冥琳や一刀と同じくらい大切な人が居たはずなんだけど、名前は……
「ゆ、ゆ……ゆき?違うわね。由美でもないわね。確か最初に『ゆ』が着くのは確かなのよ」
その後も、考えてみたけど結局思い出せなかった。
「はぁ、全然ダメ。思い出せないわ……ふぁああ……あれだけ寝たのに眠くなるなんてね」
苦笑いを浮かべて目と瞑ると直ぐに睡魔が襲ってきて私は意識を落とした。
時間はさかのぼり、雪蓮が毒矢に撃たれて数日後の蜀……
「ええっ?!雪蓮さんが魏の人が撃った毒矢で倒れたんですか?!」
ここで驚きの声を上げている少女は蜀の太守、劉備である。
「はい、斥候の報告によれば、魏の兵が命令無視をした挙句に孫策さんを毒の弓矢で毒殺を謀ったそうです」
淡々と説明をしている少女は蜀の頭脳である諸葛亮だ。
「なんと卑劣なそれで、戦闘はどうなったのだ?」
「はい、動揺した隙を突き魏を追い返したそうです」
「それで?我々は今後どうするのだ?朱里」
腕を組んで諸葛亮の真名を呼んだのは趙雲。
「その事を、今話し合おうと思いまして、みなさんの意見をお聞きしたいのですが」
「そ、それも大事だけど、雪蓮さんは平気なの?!」
「そこまでは……斥候の話では大号令を掛けた後、倒れたと言う事しかわかりません」
「そんな……それで朱里ちゃんはどう考えてるの?」
「そうですね……」
朱里は唇に指を当てて考えた後、全員を見渡してから告げた。
「私の考えでは、呉との同盟を破棄することを勧めます」
「それはなんでだ朱里よ。同盟を破棄するということは敵対すると言う事なのか?」
黒髪が艶やかで切れ目の少女、関羽が朱里に問い返した。
「そうですね。今この現状で同盟を維持すると言う事は、危険が多すぎます」
「でもでも!まだ雪蓮さんが死んじゃったわけじゃないんだよね!」
「そうですが、毒矢を受けて生きている可能性は……」
朱里も言いずらそうに目を伏せていた。
「そ、それに魏が撤退したと言う事は次に狙われるのは私たちの可能性が大きいです」
とんがり帽子を目深に被り恥ずかしそうに話す龐統。
「しかしだな!今の状況で同盟破棄するなど危険すぎるのではないか!」
「落ち着け愛紗よ」
「星!お前の同盟破棄に賛成するのか!」
「だから落ち着くのだ愛紗よ。誰も、朱里だって好きで破棄しろといっているわけではないのだ」
「うぐっ!す、すまない。取り乱したりして」
「はわわ!い、いえ。いんです。愛紗さんのお気持ちもわかりますから」
深々と頭を下げる愛紗に慌てふためく朱里。
「それで桃香さま。如何なさいますのかな?」
星が桃香答えを求める。
「う~ん……」
「……」
「……よし!お見舞いに行こう!」
桃香は満面の笑みで告げた。
「「は?」」
みんな桃香の言葉にあっけに取られてしまっていた。
「あ、あの桃香さま?」
なんとか我を取り戻した愛紗が途惑いながら桃香に話しかけた。
「なに?」
「お見舞いとは誰のお見舞いのことですか?」
「もちろん、雪蓮さんの事だよ」
「お、お見舞いってどれだけ離れているとお思いですか!」
「大丈夫だよ。お馬さんで行けば直ぐに着いちゃうよ」
「そ、そういう問題ではなくてですね!」
「えっとね。まず、私と……」
「はわわーっ!と、桃香さま自らが行くんですか?!」
「え?そうだよ?だって早く無事だって事知りたいしその方が早いでしょ?」
「は、早いでしょではありませんぬぞ桃香様!危険すぎます!」
喰って掛かるように机を叩きつけて立ち上がったのは魏延だった。
「それじゃ、護衛をつければ問題ないよね焔耶ちゃん」
「そ、そういう問題では……いや、しかし、ここは桃香様の護衛を自ら……ああ、だが、だが!」
「うるさいぞ焔耶。少しは黙っておれ!」
――ゴツンッ!
「っ!痛いですよ。桔梗さま」
今、焔耶に拳骨を落とし焔耶が桔梗さまと読んでいたのは厳顔だった。
「えっとね~それじゃ、愛紗ちゃんを護衛につけて、あとは朱里ちゃんでいいかな?」
「あーっ!いつの間にか護衛が決まってしまったじゃないですか!」
「だからうるさいと言っておろうにっ!」
――ゴツンッ!
「っ!あ、頭を殴らないでくださいよ桔梗さま!」
「お主がうるさいからいけないのだ」
「うぅ~!」
「あははは、桔梗に怒られてやんの、焔耶ったらだっさーい♪」
「うるさいぞ蒲公英!お前に、私の痛みがわかるか!」
「別に脳筋の痛みなんて知らなくてもいいもーんだ」
「なにおーーっ!」
「だ・か・ら・うるさいと何度言えば判るのだこの馬鹿者共がっ!」
――ゴツンッ!
「痛っ!」
――ゴツンッ!
「いったーい!桔梗さんが殴った!」
「まったくお前らは、喧嘩をするなら外でやっておれ!」
「ぶー、焔耶のせいで起こられちゃったでしょ」
「お前が笑うからいけないんだろうが」
「なによ」
「なんだよ」
「お主ら、私の話を聞いておらんかったのか?」
――ボキボキッボキボキッ!
「「っ!い、いえ!すいませんでした!」」
「うむ、判ればよいのだ」
「あは、あははは……そ、それよりも、当主自らが城を空けるのは如何なものかと思います」
苦笑いを浮かべて焔耶と蒲公英を見ていた朱里は桃香に向き直り話を戻した。
「でもでも、謁見に行くんだからそれなりの身分じゃないとダメだよね?」
「そ、それはそうですが……」
「お願い朱里ちゃん!どうしても行きたいの!」
「はわわ……わ、わかりました」
「ホント?!ありがとう朱里ちゃん!」
「い、いえ。ですが、私は内政の仕事が山済みなので私の変わりに……紫苑さんお願いできないでしょうか?」
「あらあら、わたくしでいいの?」
お茶を優雅に飲んでいた紫苑、こと黄忠は頬に手を当てて微笑みながら朱里に問い返した。
「はい、この中で状況の判断等を見定める事が出来るのは紫苑さんだけだと思いまして」
「あらあら、そこまで言われたら引き受けないわけには行かないわね」
「すいません。紫苑さんもお仕事があるのに」
「いいのよ。桃香ちゃんを守るのも将のお仕事ですからね」
「ありがとうございます!それじゃ、私と愛紗ちゃん、それに紫苑さんとで呉に向います!」
「それでは、出発は明日、と言う事で各自準備をお願いします」
「桃香さま!」
「ん?愛紗ちゃんどうしたの?」
朝議が終わり廊下を歩いている桃香に愛紗が駆け寄ってきた。
「なぜ、私を護衛につけたのですか?」
「え、嫌だったの?」
「い、いえそう言う訳ではないのです!ただ、気になっただけで」
「そう言えばなんでだろう?なんだか愛紗ちゃんを連れて行かなきゃいけないような気がしたんだよね」
「は、はぁ……」
「それに、愛紗ちゃん強いし!悪い人達が現れても何とかしてくれるもんね♪」
「もちろん、この身に変えましても桃香さまをお守りいたします」
「それは嬉しいんだけど。ちゃんと愛紗ちゃんも生きてないと私は嫌だよ」
「桃香さま……」
「それじゃ、明日のために早く仕事終わらせちゃわないとね♪」
「そうですね。桃香さまには居ない間の分を少しでも多くやっていただかないといけませんからね」
「ええっ?!そ、そんな~」
「いいえ、蜀の発展の為にも最低でも五日分はやって頂かなければ。さあ、参りますよ」
「うえ~ん、愛紗ちゃんが苛めるよ~」
引き摺られるようにして愛紗に連れられていく桃香だった。
「紫苑さん!」
「あら?、何かしら朱里ちゃん」
パタパタと紫苑に近づく朱里。
「あ、あの、本当にすいません。本当は私が行ければいいのに頼んでしまって」
「いいのよ。気にしなくても、それとなにか私に言いたい事があるのかしら?」
「はわわっ?!な、なんでわかったんですか?!」
「ふふふ、女の勘って言えばいいのかしら?」
「は、はぁ……」
「朱里ちゃん?今、何を思ったのかしら?」
「はわ?!な、なんにもおもってないでしゅよ?!」
どうやら朱里は流石は年の功と思ったのだろう。
紫苑は笑顔ながら凄みをかもし出していた。
「ふふふ、良くわからないけど。一人お仕置きしないといけない人が居るみたいですね」
「あ、あの紫苑さん?」
「いいえ、なんでもありませんわ。それで何かしら?」
「は、はい。今日の桃香さまなんだか様子がおかしく無かったですか?」
「そうかしら?私はいつも通りに見えたわよ?」
「そうですか……私の気のせいだったのかもしれません。気にしないでください」
「ええ、別にいいのだけれど……同行中、それとなく様子を伺っていましょうか?」
「お願いできますか?」
「ええ、別に構わないわよ」
「おねがいしま「おかあさーーーーんっ!」あれ?璃々ちゃん?」
紫苑が振り返ると紫苑の娘、璃々がパタパタと走って紫苑に抱きついてきた。
「お母さん、お出かけするんでしょ?璃々も行きたい!」
「璃々、誰に聞いたの?」
「鈴々お姉ちゃんが言ってたよ!」
お互い顔を見合って苦笑いを浮かべる。
「璃々?お母さんはお仕事でお出かけするから璃々はお留守番なのよ?」
「えーっ!やだぁ!璃々もお母さんと一緒にいくーっ!」
「もう、璃々?我がままを言うんじゃありません」
「ふぇ、ふぇぇぇえええん!だって、だってお母さん、さいきんお仕事がおおくて遊んでくれないし、お出かけしちゃったらしばらくあえなくなっちゃうんだもん!だから、だから……ぐすっ、ぐすっ……ふぇぇぇえええんっ!」
「はぁ、仕方ないわね。ちゃんとお母さんの言う事聞くのよ?」
泣き出す璃々に紫苑は折れて連れて行くことにした。
「うん……ぐすっ、えへへ♪」
「もう、この娘ったら」
紫苑は璃々の涙をふき取った。
「いいんですか?」
「ええ、約束しちゃいましたからね」
「えへへ~♪」
「もう、嬉しそうにしちゃって」
こうして、桃香、愛紗、紫苑に璃々を連れて呉に行く事が決まったのだった。
葉月「こんばんわ~ご無沙汰してます葉月です」
雪蓮「ハロ~、魅惑の美少女!雪蓮さんですよ~」
葉月「誰が魅惑の美少女なんですか?」
雪蓮「私よ。わ・た・し♪」
葉月「……さて!今回のお話は如何だったでしょうか!今回で最終回のはずだったんですか、もう一話続きます!」
雪蓮「ちょっと無視するんじゃないわよ!こっちを見なさい葉月!」(ゴキッ!)
葉月「いて~~~~~~~~っ!な、何するんですか!首の骨が折れたらどうするんですか!」
雪蓮「その時は、その時?いいじゃないのよ首の一つや二つ」
葉月「首は一つしかありませんよ!まったく……」
雪蓮「それよりさ。なんでまだ続くの?」
葉月「いや~、思いのほか書くことが多くてなってしまいまして」
雪蓮「ふ~ん。それにしても三国の世界に戻ったのね」
葉月「はい、その方が色々とアフターストーリーの時、出来ますから」
雪蓮「まさか、それだけの為に戻したの?」
葉月「いやまさか。書いた当初から戻すことは決定してましたよ」
雪蓮「ならいいけど。それにしても、戻り方が無印に似てるわよね」
葉月「まあ、あの感じが一番、私の中でしっくり来たのでそうしてみました」
雪蓮「いいんじゃない?葉月がそう思ってるなら。それよりいつになったら優未は登場するの?」
葉月「次で出てきますよ。楽しみに待っていてください」
雪蓮「そうね。ああ、そうそう。今日はゲストが着ているのよ」
葉月「は?そんな事、私聞いてませんよ?」
雪蓮「言ってないもの。では、登場してもらいましょう。蜀のお母さん的存在!黄忠こと紫苑で~す!」
紫苑「どうもはじめまして。紫苑と申します」
葉月「なぜ、紫苑がここへ?」
紫苑「それは、葉月さんが良くご存知ではないかしら?」
葉月「え?」
雪蓮「分かってないみたいね」
葉月「全然、わかりません」
紫苑「ふふふ。誰が、年の功かしら。葉月さん?」
葉月「……え、いや。あれはですね?なんといいますか……」
紫苑「あらあら、どちらへ行かれるのですか葉月さん?」
葉月「えっと、その……さよならっ!」
紫苑「はっ!」
葉月「ひぇぇぇえええっ!」
紫苑「逃がしませんよ。葉月さん……じっくりとお話を致しましょう。そう、じっくりと……ふふふふふ」
葉月「た、助けてくれ~~~~~~」
雪蓮「言っちゃったわ。まあ、あんなこと言ったんだからああなっても当然よね。皆も、紫苑と祭の前では言っちゃダメよ?生きていけなくなるわよ?それじゃ、次で合いましょ。一応、作品は出来てるみたいだからあとは、見直しだけって葉月も言ってたしね。それじゃ、まったね~~~~♪」
葉月「いや~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!も、もう言わないからお家に帰して~~~~~~~っ!!!!」
紫苑「ふふふ、それだけ叫ぶ元気があるのですから。まだまだいけますわね」
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申し訳ありません。今回で最終回のはずだったんですが、もう一話続きます。
書いてたら止まらなくなってしまいまして;;
イブから明けた後からのお話になります。
指輪を貰って舞い上がる雪蓮。
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