真・恋姫無双アナザーストーリー
雪蓮√ 今傍に行きます 第19話
時間は少し進み魏領、洛陽。
「命令無視をした者たちの処罰はどうした!」
王座の間で不機嫌そうに腕を組み見下ろしている少女の名は曹操。魏の王である。
「はっ!許貢の残党は全て打ち首、見せしめとして晒し首にしてあります」
頭を垂れ手を合わせて説明をしている猫耳フードの少女は魏の奇才、荀彧。
「呉への弔問の使者は!」
「はっ!先ほど戻り、呉は休戦を承諾致しました」
同じように頭を垂れて説明をするのは郭嘉だった。
「今後、私の顔に泥を塗るような愚か者を出さないように徹底しなさい!」
「「御意っ!」」
「報告します!」
扉を開けて兵士が入ってきた。
「なんだ!今は朝議中だぞ!」
王座に座っていた曹操は会議中に入ってきた兵士を睨みつけると兵士は腰を抜かしてしまった。
「も、申し訳ありません!ですが、蜀に動きがありまして!」
「なに?よし、話せ」
「はっ!どうやら蜀で孫策の容態を確認する為に数名が呉へ向ったようです」
「なるほどね。諸葛亮辺りが今後の呉との同盟をどうするかを見定める為に向わせたって所かしら?」
「い、いえ。どうやら、劉備が独断で決めたようです」
「なに?劉備が?」
「はぁ?何考えているのよ。これじゃ、攻めて下さいって言っているようなものじゃない!」
「わ、私にそう言われましても……」
「ああ、ホント役に立たないわね!だから男は……」
「桂花、貴女ならどう考える?」
「そうですね……多分、劉備の考えではただ単に心配だからお見舞いに行こう位にしか考えていないかと思われます」
「多分そうでしょうね。まったく、あのあまちゃんは……」
「華琳様!ここは一気に蜀を攻め落として華琳様の物にしましょう!」
勢いよく立ち上がったのは魏武の大剣、夏候惇だった。
「はぁ?!なに馬鹿なこと言ってるのよ。華琳様が主が居ない城を盗み落とすような事するわけ無いでしょ!もしそんなことしたら、華琳様の評価はがた落ちよ!そんな事も
わからないわけ春蘭は!」
「うぐっ!」
「そうだぞ姉者。もう少し状況を見極める目を養うべきだな」
「うぅ~、秋蘭まで」
春蘭の妹、夏候淵こと秋蘭にまで言われて春蘭は落ち込んでしまった。
「ふむ……」
華琳は一人、顎に指を当てて考え始めた。
「如何なさいましたか華琳様?」
「……よし、風、呉までの安全な道を索敵しろ」
「御意ー」
頭に人形を乗せた少女、程昱は眠たそうな目で命令を聞いていた。
「凪、一個小隊を明日までに準備、出撃できるようにしておけ」
「は、はい!」
次に華琳は警備隊、兼新兵育成の楽進に部隊を編成させるように伝えた。
「か、華琳様、一体何を?」
「私は明日、呉へ向かう!」
「「「え~~~~~~っ?!」」」
「な、なぜですか華琳様!このような時期に華琳様直々に行く事など無いではありませんか!」
「部下の失態はそれ即ち私の失態、私自らが謝罪をしに行くのは道理と言うもの」
「で、ですが!今、また呉に行けば彼らを刺激する恐れがあります!お止めください華琳様!」
桂花は何とかして華琳を呉に行かせるのを止めさせようとしていた。
だが、華琳が既に決めた事を曲げるような人物ではない事もわかっていた為、直ぐに諦め。
「では、せめて春蘭と秋蘭をお付けください!彼女たちならきっと華琳様をお守りしてくださいます!」
「ええ、迷惑を掛けてすまないわね桂花。今夜は私の閨に来なさい。居ない間の分、たっぷりと可愛がってあげるわ」
「ああ、華琳様ぁぁぁあああっ!」
桂花は恍惚な表情を浮かべて身悶えた。
「ふふふ……では、解散!」
玉座から立ち上がり堂々と玉座の間から出て行く華琳。
廊下を歩きながら一人思いにふける。
「……劉備……何を考えている……」
その場には誰も居なくその質問に答えるものは居なかった。
「ふっ、まあいい。呉に行けばわかる事……私の中にあるこのモヤモヤした気持ちもきっとそこに……」
中庭を見ていた華琳は踵を返して部屋に戻っていくのだった。
時は戻り建業。
私が目を覚ましてから三日が経った。
「どうだ、孫策殿。体の調子は」
庭でお茶を飲んでいると華陀が近づいてきた。
「ええ、大分動けるようにはなってきたわ。でも、戦いはまだ無理っぽいわね」
「まあそうだろうな。まだ完全には毒は消えていないからな、偶に指先とか痺れるだろ?」
「ええ、でも、それほど酷くはないわ」
まあ、この痺れのおかげで政務をサボれてるからいいんだけどね♪
「そうか。ああ、そうだ。ここに来る途中で一刀に会ったんだが」
「一刀に?」
「ああ、どうやらお前を探してたみたいだぞ?なんでも、緊急の話し合いがあるとか何とか」
「そう、ありがとうなら、玉座の間に行って見るわ」
「ああ、俺は、ちょっと市に行って来る。夕刻までには戻ってくる予定だ」
「わかったわ」
華陀を見送り玉座の間に向う。
全然関係ない話だけど、私が倒れた後、蓮華が家督をついだって事をこの間、冥琳から聞いた。
まあ、私がいつ起きるかわからないから正しい判断よね。
これで王としての責務も終わり!って思ったんだけど、事後処理がいっぱいあって、私はそれの承認印を押す羽目になちゃったのよね。
「はぁい、一刀♪私を呼んだかしら?」
玉座の間に着くと既に皆が集まっていた。
「療養中なのに呼び出してごめんな」
「別に構わないわよ。緊急なんでしょ?」
「ああ、実はな、蜀からの使者はどうやら劉備と関羽、それに黄忠らしい」
「はぁ?あの娘、なに考えてるの?今は城を空ける時期じゃないでしょうに」
「ああ、私も劉備が何を考えているのかわからず困っていたところだ」
桃香は何を考えてって考えなくてもわかるわね。あの娘の考えそうな事は……
「きっと私のお見舞いかなんかじゃないの?」
「まさか、そんな事あるわけが」
「あの娘ならやりそうな事よ。人の死を自分の肉親の様に悲しむ娘なんだから」
「確かにそうだが……はぁ」
冥琳はおでこに手を当てて頭が痛そうな素振りをして見せていた。
「それだけ?別に対した事じゃないと思うんだけど」
「ああ、もう一点ある。どちらかと言うとこちらが本題だ」
冥琳は切れ長な目をさらに細めて私を見ていた。どうやら本当に大問題みたいね。
「曹操が建業に向ってきているそうだ」
「なにっ!あいつら、姉様を暗殺しておいて何しに来るというのだ!」
蓮華は親の仇と思うような勢いで食って掛かっていた。
「ちょっと蓮華?私生きてるんだけど。勝手に殺さないでくれる?」
「ああ!す、すいません姉様……ですが、曹操に呉の大地を踏ませる事まかりなりません!」
「落ち着きなさい蓮華。それで冥琳、魏からは休戦の提案があったのよね?」
「ああ、蓮華様がその弔問の使者を切りかかろうとして何とか押えたからな」
「め、冥琳?!い、今更その事を言わなくてもいいじゃない」
「まだ、蓮華に家督を譲ったのは早かったかしらね?」
「姉様まで?!」
「はいはい。それで曹操は何をしに来るの?」
「魏からの早馬によれば、今回の暗殺に関しての謝罪だそうだ」
「ふ~ん、あの娘らしいわね。部下の失態は自分の失態とでも思ってるんでしょうね」
「そんな所だろう。それが覇王曹操の考えなのだろうな」
「ふん、部下の行動も制御出来ないで何が覇王だ」
「もう、蓮華ったら、もう少し柔軟に考えなさい?そうしないといつか重圧で潰れちゃうわよ」
「姉様は軽く考えすぎです!」
「あーはいはい、話が進まないから後でね」
「姉様!」
「まあまあ、蓮華」
一刀が蓮華を宥めて渋々大人しくしているところを見るとあの二人いいコンビになりそうね……コンビ?コンビってなにかしら?
私は首を傾げたが勿論答えは出てこなかった。
「ん?どうかしたか雪蓮」
「なんでもないわ。それで?桃香たちはいいとして曹操はどうするわけ」
「事を荒立てる必要も無かろう。謝罪に来ると言うのなら来て貰い早々に帰って頂こう」
「すんなりといくかしらね?」
「まあ、兵士、侍女たちにも言い含めておかねば並んだろうがな」
「そういう意味じゃなかったんだけど、何かありそうなのよね」
「なんだ、また勘か?」
「そっ♪」
「はぁ、私としては何もない事を願いたいのだがな」
冥琳は溜め息をついて眼鏡をかけなおした。
数日後……
「……」
「……」
「はぁ~」
「あわわ、ど、どうしよう!し、紫苑さん!」
「あらあら、困ったわねぇ」
建業の街の前で睨み合う二人と呆れる少女と慌てる少女が居た。
「なぜ貴様らが居るのだ曹操!」
「貴様ぁっ!華琳様に向かいなんて口の聞き方だ!叩き斬ってやる!」
「はぁ……久しぶりね劉備。反董卓連合以来かしら?」
「ふえ?!あ、そ、そうですね」
「愛紗ちゃん、少しは落ち着きなさい」
「紫苑!しかしだな」
「愛紗お姉ちゃんめっ!だよ」
「うぅ、璃々まで……」
「姉者もだ。ここで事を荒立てるのは得策ではないぞ」
「秋蘭~!」
保護者的役回りの紫苑と出来た妹である秋蘭が二人を止めに入った。
「さて劉備、なぜあなたがここに居るのかしら?」
「なぜって、雪、あ!孫策さんが毒矢にやられたからって聞いてお見舞いに」
「はぁ、やっぱりね。そんな事だろうと思ったわ」
「そ、それで曹操さんはなんでここに?」
「私?それはあなたに言う必要があるのかしら?」
「貴様ぁ!桃香さまに言わせておいて!」
「別に、質問はしたけど答えなくてもよかったのよ?それをご丁寧に説明したのは劉備なんだから。それに敵に情報を教えるなんてこと私がするとお思い?」
「ぐっ!」
「まあまあ、愛紗ちゃん落ち着いて?では、曹操殿、わたくし達は後でよろしいので先にお入りください」
「紫苑?!」
「いいのよ。愛紗ちゃん」
「ええ、そうさせてもらうわ。春蘭、秋蘭」
「「はっ!」」
五百人ほどの兵を建業の城壁周辺に天幕を張り待機させた後、華琳と春蘭、秋蘭は中に入っていった。
「さあ、私たちもここに天幕を張って孫策さんの所に行きましょう」
「では、私が兵達に指示を出して来ます。桃香さまと紫苑はここでお待ちください」
愛紗は兵達に次々に天幕や食事を作るように指示を出し戻ってきた。
「お待たせしました。桃香さま」
「うん、それじゃ雪蓮さんに会いに行こうね」
「……本当に大丈夫なのか紫苑よ」
「大丈夫よ。たった五百人で攻めに来るわけ無いものそれに曹操がここに居ると言う事は、魏は今は蜀を攻めるつもりも無いって事でしょ?」
「確かに……」
璃々と手を繋ぎ楽しそうに会話をする桃香を見る愛紗と紫苑。
「まあ、なるようにしからない、か」
「そうかもしれないわね」
二人は桃香と璃々の後を追い城へと向かった。
「良く来れたわね曹操。それに、桃香も久しぶりね」
私は曹操と桃香が来た事を伝えられて玉座に座って待っていた。
「元気そうで何よりです雪蓮さん!」
「……」
桃香は私が無事だった事にとても安心してるように笑顔で喜んでくれてたけど、曹操は顔には出てないけど相当驚いてるみたいね
「一応ね。でも、家督は妹の蓮華に譲っちゃったのよねぇ~。だから本当はここに私が座るのは相応しくないのよ」
「ね、姉様!今ここでそのような事を言わなくてもよいではありませんか!」
「いいのよ。本当のことなんだから。どうせ、曹操や桃香の所にも既に耳に入ってるんでしょ?」
「ええ、間諜の報告で知っていたわ。だけど、孫策が生きていたとはね。正直驚いたわ」
「あら、あまり驚いているようには見えないけど?」
「ふっ、感情を表に出すのは王として失格よ。どこかの誰かさんと違ってね」
「はうっ!」
「曹操、貴様!桃香さまを侮辱するつもりか!」
「事実を述べたまでよ。怒るって事は少なからず関羽もそう思っているのではなくて?」
「ぐっ!」
「あ、愛紗ちゃん、私は気にしてないから落ち着こう?雪蓮さんの前だし」
「わ、わかりました。失礼しました孫策殿」
「別に気にしてないわよ。気にしてるのは蓮華くらいな者だしね」
「姉様?!」
やっぱり、この三人が来たか……
私は、冥琳からの報告で薄々だがある事に確信を持ち始めていた。
今日、何かが起こる、って……
「謁見の最中失礼します。孫策様に謁見したいと申し出ているものが現れたのですが如何なさいましょう」
――来たよ。雪蓮……
私の中で誰かがそう告げたように感じられた。
「なに?そんな話は聞いていないが……」
「それが、おかしなことを言っていて『そこに、曹操と劉備が居るなら彼女たちにも用があるのでお目通りを』っと言われまして」
「なんだと?曹操と劉備が来ることは兵や侍女に言ったが極秘だったはず……それがなぜそれが旅の者に……」
冥琳が兵士の話を聞いて眉間にしわを寄せて居た。
「……他に何か言っては居なかったか?」
「他にですか?……ああ、『管輅が来た』と伝えれば判るって言っておりましたが」
っ?!
「その者達をここに連れて来い」
「雪蓮?」
「大丈夫よ。それと、私と一刀それに桃香、愛紗、曹操以外は私が良いと言うまで玉座の間に入ってきてはダメよ」
「なっ!何を考えているのだ雪蓮!危険すぎる!」
「そうです!姉様お止めください!」
「華琳様をお一人にして置いて行けるか!」
「うむ、今回ばかりは姉者の言うとおりだな」
「なぜ紫苑はダメなのですか孫策殿!」
「理由は直ぐに判るわ。それに、武器も持っていないのだから危険は無いわよ。それにこの中で私に勝てるのは関羽だけよ」
「あら、私は眼中にないのね」
「ふふふ、病気で弱っている私を殺しても貴女の得にならないでしょ?」
「ふっ、春蘭、秋蘭。お前達は扉の前で待機していろ」
「なっ!華琳様?!」
「もちろん、呉の将がおかしな行動をしたら直ぐに乗り込み、孫策の首を刎ねよ」
「なっ!そんなことさせるわけがないでしょ!」
「なら、大人しく扉の前で待っていることね」
「ぐっ!」
蓮華は悔しそうに曹操を睨みつけてるけど、まあ、口上で蓮華が曹操に勝てるとは私も思ってないけどね。
「面倒を掛けるわね。冥琳」
「いつもの事だ。だが、あとでちゃんと説明してもらうからな」
「ええ」
冥琳達が玉座の間から出て行くと同時に兵士に連れられて布を被った二人組みが玉座の間へと通された。
「お初にお目にかかります。孫策殿、曹操殿それに桃香殿」
「貴女はどなたですか?」
「これは失礼をいたしました。わたくしは管輅。しがない旅の占い師です」
管輅と名乗った女性はフードを取り微笑みながら礼を取っていた。
「愛紗ちゃん、管輅さんって」
「ええ、確か天の御遣いが降臨すると謳った人物ですね。まさかこのような女性だったとは」
「それで管輅よ。何うえ謁見を申し出たのだ?それに曹操や劉備も居る事を知っていたようだが?」
「わたくしは占い師でございます。占いでそうでたからでございます。孫策殿」
「まあい、それで?用件はなんだ?」
「はい、この者を孫策殿の将として迎え入れて欲しいのです」
そういうと管輅は後ろで布を被り座っていた人物を呼び寄せた。
「……顔も見せずに将にしろなどと、良く言えたものだな」
愛紗は睨みつけるように見ていたがなんだか途惑っているようにも見えた。
「?愛紗ちゃんどうかしたの?」
「いえ、なんだかあの者、何処かで会ったような気がして……」
「え、愛紗ちゃんも?私もなんだよね。それに雪蓮さんの横に居る天の御遣いの北郷さんだっけ?あの人見てるとなんだか胸の奥が熱くなるんだよね。どうしてかな?」
「桃香さまもですか?実は私もなのです」
「そうなの?不思議だねぇ~」
桃香と関羽は何かを感じ取ってるのかしきりに一刀に目を向けて頬を赤くしてるし、曹操は曹操で怪訝そうに一刀を見ていた。
あの三人もやっぱり……
私はある結論を出していた。
それは、夢で見たのはやっぱり実際に起きた出来事だ、と言う事に。
その証拠に私の左指には一刀から貰った指輪が輝いている。
それに一刀も同じ夢を見ていることが確信を持ったもう一つの要因だった。
きっと、桃香たちにも同じ事が起きている。私はそう思ったから管輅が現れた時に彼女達だけを残らせたのだ。
「信じていただけないのでしょうか?」
「そうね、それだけじゃ信じられないわね」
管輅もそう返して来るのが判っていたのか別段慌てる様子も無かった。一体何を考えているのかしらね。
「そうですね。では、後ほど誰かと武を競い合うと言うので如何でしょうか?」
「構わないわ。こちらで適当に見繕うわ」
「分かりました。では、次にわたくしの用事を済ませてしまいましょう」
「用事?まだあると言うの?」
曹操がまだこんな茶番につき合わせるのかと言わんばかりに嫌な顔をしていた。
「ふふふ、どちらかと言いますと仕官はついでなのです。わたくしの用事は、あなた方五人に用があるのですよ」
「私達ですか?」
「ええ、ではまずは劉備殿」
「わ、私ですか?」
管輅はスタスタ桃香の前に立ち水晶玉を取り出した。
「これを良く見てください。そうです。劉備殿、あなた様はつい最近夢を見ましたね」
「は、はい……見ました」
「その夢は楽しかったですか?」
「はい、とっても楽しかったと思います」
「そうですか。では、あなた様はその夢でどんな生活を送っていたか目を閉じて思い出してみてください。覚えている範囲でかまいません」
「はい……」
桃香は言われた通りに目を閉じた。その瞬間、管輅の持っている水晶が輝きだしだ。
「なるほど、わかりました。では、そのまま目を閉じ両手を差し出してください」
「は、はい。こうですか?」
「はい、そのままでお願いします……ふっ!」
「っ?!」
桃香の肩が一瞬、ビクッと震えたように見えたけどここからじゃ良く分からないわね。
「では、そのまま目を閉じて待っていくてください」
「は、はい」
「では、関羽殿。次はあなた様です」
「わ、私もか?!」
「はい、関羽殿にも同じように夢を見たはずです。ですから、劉備殿と同じようにしてください」
「う、うむ。わかった……」
関羽も桃香と同じように目を閉じるとまたも水晶が輝きだした。
「はい、関羽殿もそのままお待ちください」
「わかった」
「な、なによ。私は夢なんて見てないわよ」
「そうですね。ですが、曹操殿は何かお気づきになり始めているのではありませんか?」
「っ!」
「どういった切っ掛けかは分かりません。ですが、きっとこれは曹操殿にとっても大事な物でしょう。さあ、目を瞑ってくださいますか?」
「……わかったわ」
ん?所々聞き取れなかったけど、曹操の表情が変わったように見えたわね。
そうこうしているうちに管輅は一刀の前に立った。
「え、俺も?」
「はい、ですが。その前に……劉備殿、関羽殿、曹操殿、目を開けて手に乗せたものを見てくださいますか?」
「?……ええ!?こ、これって!」
「まさか、そんなっ!」
「……そんな馬鹿な」
三人とも自分の手に乗せられているものを見て驚いてたけど何かしら?
「それではそれぞれ身に着けていただけますか?」
桃香たちは手に持っていたものを身に着け始めた。
桃香は首にかけ、関羽は髪留めを外し持っていたものに変え、曹操は耳に何かを着けていたってまさか!
「管輅、あなた!」
「ふふふ、身に着けたようですね。では……解っ!」
「「「っ?!」」」
管輅が水晶を前にかざし叫んだ瞬間、桃香たち三人は雷にでも打たれたかのように一際、大きく肩を震わせた。
「ど、どうなったの?」
「これで、あの三人の記憶も次期に戻りましょう。戻るとは言いましたが、あちらの世界の技術や政治に関しては消してありますけどね」
「っ!やっぱり、管輅、あなたは」
「はい、お久しぶりと言えばいいですかね。雪蓮さん」
「ふふふ、私の知っている管輅じゃなかったら、首が飛んでいたところよ?」
「あらあら、そうでしたわね」
「あ、あの俺はどうしたら?」
「そうでしたわ。次にあなたの番です。北郷さん、この水晶に手を乗せて頂けますか?」
「こ、こう?」
「ええ、そのままでお願いします……座標固定、物質転送四割完了……」
管輅は目を閉じてブツブツ何かを呟いていると水晶が輝きを増してきた。
「……ふぅう、少々きつかったですね。さあ、北郷さん、これらを身に着けていただけますか?」
「え?あ、ああ……」
管輅が手渡したものは何処かで見たことがあるようなものばかりだった、そしてその中には……
「そ、それって!」
「え?どうかしたのか雪蓮」
「え?ああ、ううん。なんでもないわ」
「そうでした北郷さん。その指輪は左手の薬指に着けて下さいね」
「わかりました。これでいいですか?」
「はい。では、いきます……解っ!」
桃香たちと同じように管輅は叫ぶと一刀の体はビクッと震えた。
「さて、これで終わりましたよ。見た目は変わっていませんが記憶を引き継がせました」
「そんなことできるの?」
「本来は出来ませんが、思い入れの強いものがあればそれは可能になります。ですが、相当な思い入れがないとそれも出来ません」
「ってことは、相当な思い入れだったって事よね?」
「そうなりますね。あら、どうやらあちらも記憶に馴染んできたみたいですね」
目を向けると、さっきまでボーっとしていた三人は少し途惑っているように見えた。
「あれ?あれ?私、資料館に、でも、私は蜀の当主であれ?」
「うっ、一体何が起きたと言うのだ……そうだ!一刀さまは!って私は蜀の将だぞ、それになぜ私があの者を様呼ばわりしているのだ?!」
「いたた。何がどうなってるのよ。光りだしたと思ったら今度は見知らぬ場所だし……いや、私は魏の覇王よ。何を言っているの私は……」
「ふふふ、少し混乱しているみたいですが時期に収まるでしょう。北郷さんももう少し時間が掛かるでしょうから最後に仕上げにかかりますわ」
「最後の仕上げ?まだなにかあるの?」
「あら、もうお忘れですか?鏡を使い新たな外史を開いた事を」
「新たな、外史?……っ!」
「思い出したようですわね」
そうだ、思い出し。何でこんな大事な事忘れたのかしら。
「それは仕方の無い事です」
「……また私の心を読んだわね」
「ふふふ、では始めましょう。雪蓮さん、私についてきてください」
管輅は歩き出すとさっきから立っている人物の下へと近づいていった。
「やっぱり、それが……その人が優未なのね」
「はい、ですが。まだ心が戻っておりません」
「どういうこと?」
「先程わたくしが言いましたよね?思い入れが強いものには記憶が宿ると」
「ええ……っ!まさか!」
私は自分の腕に身に着けている銀の腕輪を手に取った。
「はい、それをお貸しいただけるでしょうか?」
「これは元々優未のよ。だったから返すのが通りでしょ?」
「そうですね。では、雪蓮さんが優未さんの腕につけてもらえますか?」
「ええ……」
布を被った優未に近づくがそれでも優未は微動だにしなかった。
「久しぶりね優未」
「……」
「元気にしてたの?」
「……」
「私は貴女が居なくてつまらなかったわよ?賑やかな優未が居なくなってね」
「……」
どんな言葉を投げかけても優未からの返事は返ってこなかった、ただ虚ろの瞳に私が映し出されるだけだった。
「……これ返すわね。元々貴女が、一刀から貰ったものだしね」
腕輪を優未の左腕に通す。
――ピクッ!
「っ!ゆ、優未?」
一瞬、優未の腕が動いたような気がした。
「……し…………ん……」
「っ!管輅、ちょっと!」
「どうかしましたか?……っ!これは」
管輅も驚いているって事は、管輅もこんな事になるとは思ってもみなかったって事よね。
「しぇ……れ、ん……」
優未は虚ろな瞳で私を見て両手を私の両頬に添えてきた。
「優未、私がわかるのね?」
「しぇ、れ……ん……しぇれ、ん……」
「そうよ。雪蓮よ。優未」
「驚きましたわ。まさか自力で記憶が戻っていくなんて」
「しぇれん……雪れん……」
「うん、うん!私はここに居るわよ!」
優未の頬に私も手を添える、すると虚ろな瞳から一筋の涙が流れ出た。
「雪蓮……雪蓮っ!」
「優未!」
「雪蓮!会いたかったよぉ!」
「私もよ。私も会いたかったわよ優未!」
「あれは……優未さん?なんで雪蓮さんと抱き合ってるんだろ?」
「さあ、わかりません。なんだか、優未殿のお姿を見るのは久しぶりなような気がしますが」
「そういえばそうだね。何処に行ってたんだろうね?ってここは呉だから呉にいたのかな?」
「あれは優未?なぜ抱き合っているのかしら?」
桃香たち三人もどうやら記憶と馴染んできたみたいで動じなくなってきていた。
「ぐすっ、もう会えないかと思ったよ雪蓮!」
「それはこっちの台詞よ。私の前で消えるんだから」
「えへへ、そう言えばそうだったね」
涙目になりながらも舌を出す優未に半分呆れる私。
「桃香たちも久しぶりだね。元気にしてた?」
「はい、元気にしてましたよ!優未さんはどちらにいらしてたんですか?」
「うんちょっとね」
「まあ、元気でなによりです。優未殿」
「うん、愛紗もありがとうね♪」
「はぁ、ホントあなたは相変わらずなのね優未」
「げっ、琳まで居るのよ」
「げっ!っとはなによ失礼な小娘ね。それと私は華琳よ。琳とは呼ばないでくれる」
「ふーんだ。どうせ敵対してるんだからどうでもいいじゃんよ。てか、なんで華琳がここに居るわけ?」
「うぐっ!そ、それは、私の部下の命令違反で……ブツブツ」
「え?何言ってるか聞こえないよ」
「ああ、うるさいわね!謝りに来たのよ!悪い?!」
ああ、この感じスッごく懐かしいわ。
そんな事を思っていると後ろから声が聞こえてきた。
「あ、あれ?ここは……ん?優未じゃないか元気にしてたか?」
「あっ……一刀君……一刀君だ!一刀く~~~~んっ!!会いたかったよぉ~~~~~~!」
優未は走り出し一刀に向かい飛びつことしてた。
「って!そうはさせないわよ優未!」
優未を止めるために走り出したけど、距離を縮めることが出来なくて……
「一刀君っ!」
「ぐはっ!」
優未の体当たり気味の抱き付きに一刀は優未と倒れこんだ。
「はぁ、はぁ、たった十日で体力が落ちたのかしら?この距離で息切れするなんてね」
「毒のせいではありませんか?」
「か、かしらね?……そう言えば以前のように力も入らないのよね」
肩で息をする私の横に管輅が歩いてきてそう伝えてきた。
「う~ん、一刀君一刀君一刀君一刀く~~~~ん!会いたかったよ~~~!」
「……」
「あらあら、大胆ですわね優未さん」
「笑い事じゃないわよ。私はまだいいけど、あの三人が黙ってるわけ無いじゃない」
「そうでしたわね。それにしても静かですわね」
「嵐の前の静けさとも言うわよ……ほら」
後ろに振り向くと桃香たち三人が下を向いて肩を震わせていた。
「管輅、少し離れたほうがいいかもしれないわよ」
「その方がよろしいようですね。ホントに飽きさせませんね。あなた方は」
「それを言うなら、優未と一刀だと思うわよ」
「「「一刀(さま)(さん)っ!」」」
「は、はいっ!」
「一刀?な・に・をしているのかしら?」
「え、えっと……り、琳、さん?なぜ怒っているのでしょうか?」
「っ!……ふ~ん、私が怒っているように見えるのね?一刀は」
「い、いえ!そ、そんなことは!」
「私が怒っているように見える?とう、……劉備」
「え?……そうですね。別に怒ってないと思いますよ。ねぇ、愛紗ちゃん」
「そうですね。怒っては居ないと思います。怒っては」
「あ、あの三人とも?お、落ち着いて話そうじゃないか!」
「ええ、そうね。落ち着いて話し合いましょ。一刀」
「うんうん、話し合いが一番だよね」
「ええ、話し合いでかたがつけばですがね」
「あ、愛紗さん?!な、なんか不吉な言い回しですよ?!ゆ、優未もなんとか……って居ないし!」
「え、えへへ。ごめんね一刀君。私、まだ死にたくないからさ♪」
「優未~~~~?!」
あ~あ、優未にまで見放されてるわ一刀。
「し、雪蓮!た、助けてくれ!」
「え~、私は関係ないし、それに見てるほうが楽しそうだし♪」
「そ、そんな~?!」
「一刀!」
「一刀さん!」
「一刀さま!」
「だ、誰か助けてくれ~~~~~!」
――ぎゅっ
「……え?」
一刀は間抜けな声を上げて自分の胸元を見た。
「……バカずと、もう何処にも行くんじゃないわよ」
「一刀さん、もう何処にも行かないですよね」
「一刀さま……もう離しませんよ絶対に……」
「……ああ、良くわからないけど俺はここに居るよ」
一刀は微笑んで三人の頭を順番に撫でてた。あ~あ、私も撫でて欲しいな。
「あらら、この展開は読めなかったわね。まさか抱きつくとは思わなかったわ」
「ふふふ、微笑ましい光景ですわね」
「そうなんだけどね~、一人だけ膨れてる娘があそこに居るわよ」
「あ~!ずるいずるい!私だって一刀君に抱きつきたいのに!」
優未は一刀たち四人の周りで騒いでいた。
「ふふふ、賑やかですね。ホント……」
「そうね、本当に賑や……」
「あら?どうかなさいましたか雪蓮さん」
「なんか忘れてるような気がするのよね」
「忘れている?ああ、あれの事ですか?」
管輅は入り口の扉を見たときだった。
――バンッ!
「華琳様!なにやら悲鳴のような声、が……」
「姉様!一刀!何があった、の……」
「あらあら、桃香さまったら」
先頭を切って扉を開け放ち入ってきたのは夏侯惇だった、それに続き、蓮華に蜀の黄忠だったかしら?が入ってきた。
「き、貴様ぁぁぁあああっ!華琳様に何をしておるのだ!その首、叩き切ってやるぞ!」
「一刀!これは一体どういうことなの!敵である曹操に抱きつくなんて!それに蜀の劉備やその家臣にまでも抱きつくなんて!わ、私じゃ不満があるっていうの?!」
「あらあら、英雄、色を好むとも言いますが敵対する曹操に、同盟国である劉備様にまでお手を出すなんて、おいたがすぎますわ。御遣い様」
「ちがっ!お、落ち着いてくれ皆!お、俺はまだ何も!」
「まだだと!貴様、華琳様からその汚い手をはなせぇぇぇえええっ!!!!」
「姉者っ!」
「止めるな秋蘭!私はあいつの首を落とさねばならんのだ!」
「ああ、私も止めるつもりは無いさ。加勢しよう」
「思春!」
「はっ!」
「一刀をここに連れて来て来なさい!じっくりと話し合わないといけないようだわ……ふふ、フフフフフ……」
「御意……覚悟しろ、一刀。今、貴様を黄泉の世界に案内してやろう」
「ちょっ!それ、死んでる!死んでるから!」
「ふん、蓮華様を悲しませる輩はみな敵だ!」
「そんな!だ、誰か落ち着いて話せる人は!……っ!そ、そうだ!め、冥琳なら!」
「すまんな、北郷。敵と手を組んでいるものに手助けは出来ないな」
そういいながら、冥琳も笑顔で見てるあたり鬼よね。
「だ、だから違うんだって!」
「ごちゃごちゃとうるさいぞ!華琳様!今お助けいたします!」
「り、琳!あの二人を止めてくれ!」
「琳って誰のことよ。私は琳って名前じゃないわよ」
「え?あ、ああ。そ、曹操?」
「合ってるけど違うわ」
「ええっと……曹孟徳?」
「あなた、わざと言っているのかしら?だったから大人しく首でも刎ねられちゃいなさい」
「ええ?!だ、だって真名は神聖な名で……」
「あなたの世界では名前が真名に当たるのではなくて?だったら、もう許したも同然よね?」
「うっ!」
「さあ、どうするの?呼ぶの?それともこのまま首を刎ねられたいの?」
「か、華琳。あの二人を止めてくれ!」
「ふふふ、貸しよ……春蘭、秋蘭!武器を収めよ!ここは我らの地ではないのだ勝手な行動は慎め!」
「か、華琳様?!し、しかし、こやつは!」
「春蘭、私の言うことが聞けないのかしら?」
「は、はい!」
「秋蘭もいいな」
「はっ!」
あらま~、さっきまで恋する乙女の顔してたのにあんなに直ぐに王の顔に戻るんだから流石よね。
「し、紫苑さんも、武器をしまってください!大丈夫ですから!」
「そ、そうですか?わかりましたわ」
う~ん、あんなお願い見たいな言い方で桃香はいいのかしら?まあ、それが桃香のいいところでもるんだけどね。さてと、あとは……
「思春、武器を収めろ!」
「っ!雪蓮様!」
「ね、姉様!なぜ止めるのですか!」
蓮華は思春を止めたことに矛先を私に変えてきた。
「そりゃ止めるわよ。蓮華、嫉妬は醜いわよ?」
「なっ?!ち、違います!」
「はいはい、取り合えず皆、どこから武器を出したのかしら?確か武器は預かったはずよね?」
「ふん!武人が、そう簡単に己の武器を手放すものか!」
「はぁ~、あの娘は……お仕置きが必要かしら」
「あらあら、私のは髪留めですわ」
「紫苑さん……」
「紫苑殿……」
「あらいやだわ。桃香さま、それに愛紗ちゃんまで」
「はぁ、言い逃れが出来ないわね……それで?私達をどおするのかしら?首でも刎ねる?」
「なっ!そんなことをしてみろ!魏武の大剣であるこの夏侯元譲が相手になるぞ!」
「姉者、少し黙っていてくれ」
「うぅ~、秋蘭~」
「そうね、なら……」
「だ、ダメだ、雪蓮!勘違いだったんだから首を刎ねたりしないでくれ!」
「もう、一刀は甘いわね。安心しなさい。首を刎ねるつもりなんて最初から無いわよ。でも、そうね。武器を抜いたことには代わりは無いんだから、暫く呉に留まってもらい
ましょうかね」
「それは、捕虜ってことかしら?」
「ホント律儀ね。捕虜がいいなら捕虜の扱いをしてあげるわよ?もちろん、桃香たちもそれがいいならね」
「ええ?!ほ、捕虜は嫌です!」
「でしょ?ちゃんと客人として迎えてあげるわよ」
「はぁ、拒否権は私達にはないわね」
「そう言うこと♪」
「好きになさい」
「華琳様申し訳ありません」
「起きてしまった事を後悔しても仕方が無いわ。次につなげなさい」
「はいっ!」
「姉様どういうことですか!蜀の者ならいざ知らず、仮にも、姉様の命を狙ったやつらなのですよ!」
「落ち着きなさい、蓮華。憎むだけではダメよ。ちゃんとその先も考えて行動なさい。あなたなら出来るはずよ」
「それとこれとは!」
「同じよ。一刀が大事なのはわかるけど、一刀はあなただけの物じゃないんだからね」
「なっ!べ、別に一刀は関係ありません!も、もう!」
蓮華ったら顔を赤くして言っても説得力が無いわよ。まったく、何処かの誰かさんと一緒で素直じゃないわね。
「あ、あの~……私は放置ですか?」
「ああ、忘れてたわ優未」
「ひどっ!雪蓮ったらひっ……っ!」
「貴様、なぜ貴様が我が主、孫策様の真名を軽々しく呼んでいるのだ!」
「なんでって、そりゃ友達だし?」
蓮華の隣に居た思春がいつの間にか優未に切りかかっていた。
優未も優未で軽々避けてるし。
「なに!そんなわけが!」
「もう、うるさいな。今、雪蓮と話してるんだから、えっと……だれ?」
「貴様に名乗る名などない!」
「おわっ!行き成り切りかかるなんて危ないなぁ」
「策殿」
「ん?なにー?」
「私も加勢してもよいのですかな?」
祭は私の横に立って優未を見つめていた。
「ん~、取り合えず。ダメよ」
「う~む、残念」
「ししゅ~ん、取り合えず斬り合いは止めなさい」
「っ!はっ!……チッ、命拾いしたな」
「ああ~!今、舌打ちした!チッて!」
「……気のせいだ」
「こらー!何事もなかったように戻っていくな~!この無愛想女~~~!」
(ギロッ!)
「はいはい、優未も挑発しないの。言い忘れたわね。彼女は今度新しく仲間になるかもしれない……」
「ごほん!名前は太史慈、字は子義で~す!これからよろしくおねがいしま~す!特に、一刀君とは!」
「「「「……えええええぇぇええええええっ?!」」」」
私と管輅以外の全員が大きな声を上げて驚いた。
その夜……
「ふふふ、ホント、優未が居ると退屈しないわね」
「ひっどいな~、雪蓮ったら笑ってみてるだけなんだもん」
今、優未と城壁の上で月を見ながらお酒を飲み交わしていた。
あの後、場を鎮め華琳たちを部屋に案内させた。
侍女や兵士達は曹操と聞いてみんな一様に嫌な顔をしてたわね。まあ、当たり前か、自分の主を殺そうとした人物ですものね。
驚いたのは、華琳がその場で私と真名を交換したことだった。あっちの世界で真名を呼んでるようなものだったからかもしれないけどね。
「うげぇ~、良くこんなの呑めるね」
「あら?お子ちゃまの優未にはきつかったかしら?」
「むっ!そんなことないもん!こんなのどうってこないよ」
ムキになっちゃって優未ったら。
「……管輅さまから聞いたよ。辛い思いさせちゃったみたいだね。ごめん」
「ううん、優未を忘れることの方がもっと辛かったと思うわ。きっと」
「ありがと、待っててくれて」
「当たり前じゃない。私達、親友でしょ?」
「っ!うん、そうだったね。えへへ……」
「なによ急に笑い出して」
「ん?ちょっとね」
「なによ。教えなさいよ」
「え~、どうしよっかな~」
「随分と賑やかですわね」
優未とじゃれあっていると管輅が現れた。
「いい月夜ですね」
「ええ、月見酒には持って来いよ。あなたもどう?」
「ふふふ、喜んでお付き合いいたしますわ」
「ええっ!管輅様、お酒飲めたんですか!?」
「ええ、これでもわたくし、お酒には強いのよ?」
「優未あんた知らなかったの?」
「知らないよ!だって、うちに来てた時はいつもお茶しか飲んでなかったし」
「なるほどね。そう言えば管輅はなんでここに来たの?」
「そうでした。お話したいことがありまして」
「話したいこと?」
「はい、曹操さんや劉備さんたちの記憶の事についてです」
「政治や技術に関しての記憶ってことかしら?」
「あら、良くわかりましたね。その通りです」
「そりゃね。私も目覚めた時、そこら辺の記憶がすっぽり抜けてる感じがあったからそうなのかなって思っただけよ」
「はい。天の知識は使い様によっては大きな力になります。が、使い方を誤ればそれは災いにしかなりません」
「そうね。でも、それだけじゃないでしょ?天の知識は天の御遣いである人物、一刀だけが覚えてればいい。違うかしら?」
「ええ。そうでなければ、天の御遣いになりませんからね」
「うぅ~、難しい話は私にはわからないけど、とにかく琳や、ああ、華琳だっけこっちだと。桃香たちにはその記憶が無くて一刀君だけにはあるってことだよね!」
「簡単に言ってしまえばそう言うことです。もちろん、優未さんの記憶からも天の知識は無くなっていますよ」
「私は別にそんなの無くていいや!雪蓮と一刀君の楽しい思い出だけがあればさ!」
「嬉しいこと言ってくれるわね。ああ、でも、親友だからって呉に迎え入れて貰いたいなら、ちゃんと力を示してくれないとダメよ?」
「えええええっ?!そんなぁ~!」
「こればっかりはダメよ。それにあれだけの事したんだから、それ位してもらわないと到底無理でしょうね」
「がくっ……はぁ、仕方ないか。一刀君と結ばれるためには!」
「そう言うこと。まあ、そう簡単に結ばれるとは思わないほうがいいと思うけどね」
「え~~!なんでよぉ!」
「そりゃ、私が居るもの♪」
「ぶー!絶対に私だけの一刀君にして見せるんだから!」
「あら、それは無理よ」
「なんでよぉ~」
「まず第一に。私は一刀に蓮華たちと仲良くなって孕ませろって言ったし」
「ええっ?!なにそれ!」
「今の時代は群雄割拠よ。人々にそれなりの力を示さなければいけない。その為に、天の御遣いの血を孫呉に仕える者たちの血に取り入れる必要があるのよ」
「?なんでそんなことが必要なの?」
「そうすれば、庶人の心の中に畏怖の感情が起こり、その後の活動がし易くなるからですね」
「う~ん、良くわからないけど。とにかく、一刀君との子供を作ればいいってことだよね?」
「簡単に言えばね。それともうひとつ、この指を見なさい」
「ん?この指輪がどうしたの?」
「これ誰がくれたと思う?」
「え?……もしかして一刀、君?」
「そ♪それでもって、左手の薬指にはめてるってことは?」
「……っ!ま、まさか!こ、婚約指輪?!」
「ふふふ♪」
「がーーーーんっ!こんなところで出遅れるなんて!私も一刀君から指輪貰わないと!」
「ちょ!優未?!……行っちゃった。ちょっとからかい過ぎたかしらね」
「ふふふ、本当は無理やり左手の薬指にはめさせたのでしたね」
「まあね♪んっんっ……ぷはっ。やっぱり美味しいわ。久々のお酒は」
「その様ですね。さて、私はそろそろお暇させて頂きますね」
「ええ。今までありがとうね」
「いえいえ。では……ああ、そうでした。一つ渡しておくのを忘れました」
「ん?なに?」
「これです」
管輅は私の手に小さな小瓶を手渡してきた。
「なにこれ?」
「それは解毒薬です。雪蓮さんの体の中に残っている微量の毒素を分解してくれますわ。それと落ちた体力や力も幾分か回復してくれます」
「凄いわね。これを飲めばいいの?」
「はい。ただし、寝る前に飲んでください。飲むと直ぐに眠気が襲ってきますから」
「ええ、わかったわ。何から何まですまないわね」
「いいえ。わたくしも楽しませてもらいましたから」
「あなたはこれからどうするの?」
「そうですね。暫くは建業に留まり。占いでもしていますわ」
「なら、今度占いに行こうかしら?」
「ふふふ、是非いらしてください。それでは、お休みなさいませ」
「ええ、お休み」
管輅はお辞儀をして城壁から降りていった。
「さて、私もそろそろ寝ようかしらね」
お猪口に残ったお酒を一気に飲み干し立ち上がる。
「明日は楽しませてもらうわよ優未……ふふふ♪」
自分の部屋に向かうまでの間、終始私は微笑んでいた。
多分それは、明日の優未の手合わせに対する期待もあったんだけど、今後の優未とのドタバタな生活を想像したからだと私は思ってる。
実際、あっちの世界でもそうだったのだから、勘じゃなくてもそう思う。
でも、その話を語るにはもう少し先の話かな?
時代が平和になってから、優未や桃香や愛紗、華琳と語り合うのも悪くないかもしれないわね。
その時まで私は精一杯生きて、一刀にたっぷりと愛してもらわないと♪それで子供を作って桃香たちに自慢しないとね♪
そんな未来を想像して、いや、実現させるために頑張らないとね。
見ててね母様。母様が目指したものとは少し違うかもしれないけど、それでも笑顔が絶えない時代にして見せるわ。だから、見守っていてね。
立ち止まり空に輝く月を見上げる。その光りは優しく私を照らし出し応援してくれているかのように思えた。
その後、数年もしないうちに天下三分の計により三国は手を取り合い助け合う道を選ぶんだけど、それはまた別のお話。
Fin...
葉月「終わりましたぁぁぁああああっ!!!」
雪蓮「やっと終わったわね。中途半端に、それに更新も遅れたし」
葉月「ぐはっ!そ、それは言わないお約束です!」
雪蓮「それをあえて言うのが私らしいでしょ♪」
葉月「ぐすん……そうですよ。私には文才能力はありませんよ~だ……仕事も忙しくなるし、書く時間も削られ……うぅ~」
雪蓮「あらら、いじけちゃった。ほらほらシャキッとしなさい!」
葉月「うぅ……大体、雪蓮は「どっけーーーっ!」ぐはっ!」
雪蓮「葉月~!何処行くの~~?」
葉月「し、知りませんよぉぉぉぉおおおおっ!!!」
優未「私参上!」
雪蓮「優未、ちょっと飛ばしすぎじゃない?」
優未「え?あ~、直ぐ戻って来るよ葉月なら!うん!」
雪蓮「まあ、そうね。戻ってくるまで適当にやっちゃいましょう」
優未「さんせー!それにしてもホント最後適当だよね。私が折角復活したんだからもっと出してよね!」
雪蓮「それが葉月の限界なんでしょ?可哀想だから本人の前でそんなこと言っちゃダメよ」
優未「え~!仕方ないなぁ」
葉月「……しっかりと聞いちゃいましたけどね」
雪蓮「あら、お早いお戻りね」
葉月「まったく。首が吹っ飛んだらどうするんですか!」
優未「そんな細かいこと気にしない気にしない♪」
葉月「気にしてください!」
雪蓮「はいはい、そこまでよ。それで次からはアフターストーリーになるのよね?」
葉月「はい、そうなりますね。まだ全然ネタが浮かんでませんが!」
優未「え~、それって本当に大丈夫なの?」
葉月「大丈夫です!……多分」
優未「……こんな作者で大丈夫なの雪蓮?」
雪蓮「私に聞かないでくれる?私も良く一年近くやってこれたと思ってるくらいなんだから」
優未「だよね~」
葉月「この二人が揃うとホント、棘のある発言しかしませんね」
雪蓮「そうさせたのは葉月でしょ?それでアフターストーリーはどういう順番で書くのよ」
葉月「ん~取り合えず雪蓮は最後で確定です」
雪蓮「また?!毎回毎回最後よね?」
葉月「たまに、最後じゃない時もありましたけど?」
雪蓮「たまにじゃない」
葉月「まあまあ、主役なんですからドーンと構えていればいいじゃないですか」
雪蓮「なんか納得できないわね。……なら、と~っても甘いお話にしてね♪」
葉月「え~」
雪蓮「す・る・わ・よ・ね?は・づ・き♪」
葉月「は、はい!頑張ってそうさせていただきます!」
優未「うわ~、流石、雪蓮だ。容赦ないねぇ」
雪蓮「もちろん。一刀との甘い時間を過ごすために覇気だろうが脅しだろうが何でもやるわよ♪」
優未「なんか雪蓮が三国の世界に戻ったらやりたい放題になってるきがするなぁ。でも、そこが雪蓮のいいところだよね!」
雪蓮「でしょ?」
優未「うん!」
雪蓮・優未「あははははははは♪」
葉月「うぅ、このままでは雪蓮と優未に荒らされてしまう!早く終わらせなければ!と言うことで、まだアフターストーリーもありますが、取り合えずこのお話はここまでで
す!今まで読んでくださってありがとうございました。次回作も考えていますのでアフターストーリー後にお話しようと思います。では、みなさんまたお会いしましょ~!」
雪蓮「まったね~」
優未「また会おうね!それにしても次回からのアフターストーリーは誰からだろうね。私だといいな!」
雪蓮「もう私は最後って言われちゃったからね。でも、甘い話になるのは確定なのよね♪」
葉月「その話は他でやってください!」
桃香「ねえ、愛紗ちゃん。私達も一刀さんとのお話しあるのかな?」
愛紗「あるのではないでしょうか。一応、アンケートでも全員と書いてあったので」
華琳「でも、何か増えてなかったかしら?私達以外にも」
桃香・愛紗「……」
璃々「ねぇ、お母さん。ここなに?」
紫苑「さあ、何かしらね?」
管輅「ここは後書きと言うのよ。璃々ちゃん」
璃々「あとがき?」
管輅「ええ、皆で一刀さんのお話をするところよ」
璃々「璃々、お兄ちゃんのおはなしする~~!」
桃香・愛紗・華琳「……」
桃香「あ、あの華琳さん」
華琳「何も言わないで桃香。私も同じことを考えていたところよ」
桃香「それじゃ……」
華琳「ええ、間違いなく」
桃香・華琳「一番の強敵!」
愛紗「……璃々も恐ろしいが、紫苑も恐ろしいと思うのは私だけだろうか?特に朝と夜が」
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最終回になりま~~す!。
今までこんなお話にお付き合い頂きありがとうございました。
あとはアフターストーリーだけになりますが、それも読んで頂けると幸いです。
では、どうぞお楽しみください。
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