※この作品は魏endで一刀が"完全"に消滅した事を前提としているため、
記憶が戻るとかは無いので御容赦下さい。
後、オリジナル設定もあり、登場人物の行動や言動が原作と一致しない場合も
多々ございますので、その点も御容赦下さい。
華琳が倒れたという事は周りの者には伏せられた。
その事を知るのは桂花と稟、風、秋蘭、霞・・・そして報告に来た兵の6人のみだ。
だが2日たっても華琳が目を覚ます様子が無く、大至急、華佗を捜索させているが
国中で黄巾党が猛威を振るい、治療の為に三国を駆け回る華佗を探し出すのは容易ではなかった。
華琳が倒れた今、政務を行えるのは桂花と秋蘭のみ。
風は二人の補佐に周り、稟と霞は後ろ髪を引かれる思いながら、五胡の調査に乗り出す。
稟と霞の二人が北の街に到着するのに1週間かかったが、その街は平穏そのままだった。
「五胡の連中が現れたっちゅうわりには静かやねー」
霞が城壁の上で腰掛、街の外を見るがこの辺りには黄巾党も現れず、五胡が一瞬現れたというだけで
それ以外は何も無い。
「・・・おかしすぎます・・・五胡は現れれば殺戮の限りを尽くす筈です。それが・・・何も無い。
まるで十文字の旗印を見せる為だけに現れたようですね」
溜息を吐きながら眼鏡をくいっと上げる稟は、それが偽者であると判断していた。
だが、その理由が分からない。何故五胡がそれをやるのか。
我らを揺さぶる為・・・否、五胡はそんな小手先を使わない。
正面から大群でもって現れ、その大群で全てを駆逐するだけ・・・。
「報告いたします!」
そこへ一人の兵が駆け寄り、街の人々の証言で確かに十文字の旗印であったが、隊長の姿を確認したわけではない
事が判明したと伝える。
稟は民が動揺しないように、偽者であるという事を念を押して広げるようにと兵に伝えると、兵は短く返事をして
任務に戻った。
ギリッ・・・という音が聞こえ、稟は霞の方を見ると、そこには修羅の如く怒り狂った顔をした霞が
街の外を睨みつけていた。
聞こえた音は、霞の手に握られた飛龍偃月刀を、手が青くなる程握られた音だった。
「許さんで・・・許さんでぇ・・・一刀との想い出を汚すようなマネしくさるヤツらは・・・」
その言葉に、稟は一刀が消えた日の事を思い出す。
自分はへたり込んだまま動けなくなった。あちこちで泣き声が聞こえる。
ソロソロと風を見れば、風はその小さな体をますます小さくして俯き、宝譿を抱きしめながらしゃくりあげていた。
────その想いを・・・汚そうとする五胡・・・。
稟は一見冷静沈着のようだが、その眼鏡の奥の瞳は憎悪で燃え上がっていた。
華琳の事もあり、とても冷静ではいられなかった────
「・・・ん?何や・・・あれ・・・」
ふいに霞が立ち上がり、街の外を凝視する。
稟もそちらを見るが、まだ何も見えない。
「土煙・・・?黄色い旗・・・黄巾党や!!」
「まさか・・・!?」
今までこの地で黄巾党は見られなかった。
五胡が近くにいるここで騒ぎを起こせば、自分達も五胡に狙われる恐れがあるからだ。
だが駆け出した霞の後にもう一度街の外を見れば、確かに土煙が見える。
急ぎ、霞の後を追う。
だから・・・見逃した。
空に流星が流れた事を・・・。
一刀は混乱の局地にいた。
何故、犯人が凪の実家に厳重に保管されている筈の『閻王』を身に着けているのか。
何故、犯人は凪と同じ身長なのか。
何故、犯人は凪と同じ武術の構えをしているのか。
何故・・・凪と同じ気の気配をしているのか・・・。
ここに凪がいる筈が無い。しかも警備もつけずに凪が一人でいる筈など絶対無かった。
しかし・・・気の気配まで同じ人間などいる筈が無い。
何故、何故、何故、筈だ、筈だ、筈だ・・・。
「お前は・・・誰だ・・・?」
ようやく出せた声は震えていた。
それに気づき、舌打ちするが犯人は構えたまま動かない。
頬を汗が伝う。
刹那────
ボッ!という音が一刀を襲う。
即座に反応してそれをかわす。
また、ハイキック。
ある違和感が、一刀の動きを鈍いものにした。
何か、おかしい。
黒い木刀を構えなおし、犯人を良く見る。
隙など無い。
だが、妙な違和感が頭の片隅を占める。
犯人が一瞬体を低くすると、滑る様に突撃して来た。それを何とか木刀を使って迎撃しようとするが、
その速度は尋常じゃない。
拳の一撃が一刀の体を襲い、一刀の体が吹っ飛ばされる。しかし、拳は一刀に届いていなかった。
木刀の柄で拳を受け、自分から後ろに跳んだのでダメージ自体は無い。
鏡と剣を左手に持っている為、拳の追撃が無い事も一刀の助けになった。
「こおんにゃろぉ!!」
叫んで木刀を振り回すと、相手は少し距離を取る。
決定的だった。
「お前は・・・凪じゃない!」
犯人の体がビクリとした。
一刀と凪はよく一緒に修行していたため、相手のクセを知っている。
そして、戦いの中である合言葉のようなものが出来上がっていた。
叫んで刀を振り回した時────
「凪なら・・・蹴りで対抗するんだよ!」
一刀の猛烈なツキが犯人に逆襲する。
一切迷いの無いツキは犯人の速度を超えた。
長い間共に修行した愛する者同士にしか通じない技。
「────クッ!」
小さな声が漏れた。それは犯人が始めて見せた焦りだった。
犯人が閻王で防ぐと、ガアン!という鉄を叩く音がした。
間髪入れずに横凪に木刀を振るうと、犯人は器用に体を曲げてかわす。
そこで一刀は高速の蹴りをみまう。
凪の技を、一刀も自然と身につけていた。
その蹴りを後ろに跳んでかわした犯人だったが────
「まずはこれを返してもらったぜ」
一刀の足には、剣がぶら下がっていた。
剣につけられた保管用のヒモを足で引っ掛けて奪い返したのだった。
犯人は動揺する事無く静かに立ち上がると、右手を腰だめに構える。
訝しげに思ったが、一刀も剣を後ろに放り投げて再び木刀を構えた瞬間────
ダアアアンッ!という衝撃が一刀の体を襲った。
そのままゴロゴロと地面を転がる。
何が起こったのか・・・何をされたのか・・・。
理解できずに前を見ると、さっき後ろに投げ捨てた筈の剣が目の前にあった。
そんなバカな・・・!一瞬で吹き飛ばされた・・・!?
呼吸が出来ずに咳き込み、犯人は悠々とした足取りで剣を取りに来る。
動けない筈だった。
だが犯人が屈んで剣に手を伸ばした瞬間、その時を狙っていた一刀の手が一瞬早く剣の柄を掴み、
下から薙ぎ払う。
それも犯人はかわしたが、ボロボロのフードがハラリと落ち、一刀の目がこれでもかと見開かれる。
「な・・・何だ・・・と・・・」
その顔は・・・確かに凪だった・・・だが、その左の頬と右目には歴戦の傷のようなものがあった。
一刀の知る凪にはそんな傷は無い。
「な・・・ぎ・・・」
「眠ってください・・・隊長・・・」
凪のその声を最後に、一刀の意識は刈り取られた。
────最後に見たのは、泣きそうな凪の顔だった。
ぐふっ<吐血
怒涛の三回連続更新で力尽きました。
明日が休みだから出来る事ですね。
ではちょっと予告。
稟は今日の事を後悔し続ける。
何故、自分は冷静でいられなかったのか・・・。
その日、失われたものはあまりにも大きなものだった。
では、また。
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