失ったものがあった
愛した人を
大切な・・・本当に、大切な人を
もう二度と、会うことはない
望んでも、会うことはできない
そう思っていた
そんな俺が迷い込んだのは、不思議な世界
手放したはずの『日常』が、もうすっかりと馴染んでしまった『非日常』が混ざり合う・・・不思議な世界
そこで、俺は・・・また、会えたんだ
君じゃない、君と
雪蓮
冥琳
俺が愛した、大切な人と・・・また、会うことができたんだ
これは、そんな不思議な世界で織り成す
夕焼け空、俺の願いが生んだ・・・奇跡の物語
《暮れゆく空に、手を伸ばして-呉伝-》
二章 同じ世界、違う世界
「で、何があったのだ?」
現在、俺はフランチェスカの寮の自室
その部屋の中心で、絶賛正座中だ
そんな俺を見下ろすように彼女は・・・冥琳が立っている
「えっと、何のこと?」
「何のこと、じゃない
人にいきなり抱きついた挙句、さらに泣き出すなど・・・何もなかったという方が、無理な話だ」
で、ですよね~
冥琳の言葉に心の中で納得し、俺は苦笑した
しかし、どうしたものか・・・ありのままを言っても、きっと通じないだろうし
さっき雪蓮が言ってた話の流れからすると、冥琳もきっと何も知らないんだろうなぁ
しっかし・・・
「な、なんだ北郷?
私の顔に、何かついてるのか?」
雪蓮もだが、冥琳も大分大人っぽいからな
こう・・・何ていうのかな?
フランチェスカの制服が、ちょっとね・・・いや、似合わないわけじゃないんだ
むしろ似合う、すっごい似合う
可愛いし、このままベッドインしたいくらいだ
・・・けどね
似合うけど、これってなんかこう・・・
「・・・コスプレ?」
「・・・死にたいようだな、北郷」
「あ、しまっ・・・違う!
違うんだ冥琳!これはちょっと、お口からついポロッと本音が・・・」
「尚、悪いわーーーーーーーーーー!!!!!」
「ですよねーーーーーーーーーーー!!!??」
ちょ、待って冥琳!
なんで!?なんで鞭なんて持ってるの!?
って、まて、駄目だ!
そんな勢い良く、ヒュンヒュンやったら・・・
アッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
ーーーー†ーーーー
「なんぞ・・・コレ?」
あれから・・・冥琳から思い出すだけで体が震えてしまうような『本人曰くスキンシップ』を受けた俺は、今現在フランチェスカの校門で立ち尽くしていた
そして絶句
「いやいやいや、ないないない」
「ちょっと、どうしたのよ一刀」
そんな俺の様子に、雪蓮がピタリと足を止め振り返る
同じように、冥琳も足を止めた
「いやどうしたのって、何コレ?
ここって、元お嬢様学校だよね?」
「それがどうかしたの?」
あまりに、素っ気無い態度
俺はもう一度、『ソレ』を見つめる
視線の先、あるのは一体の銅像
・・・うん、やっぱりこれはない
「いや、だからコレ・・・」
「なんだ、校長の銅像がどうかしたのか?」
「校長っ!?
この筋骨隆々でパンツ一丁でスキンヘッドにもみ上げおさげのM字開脚な銅像の人が!!!??」
冥琳の言葉に、俺は驚愕のあまり声をあげた
これが・・・校長、だと!?
この筋骨隆々でパンツ一丁でスキンヘッドにもみ上げおさげのM字開脚な銅像の人が・・・ここの校長!!?
「嘘だろっ!?」
「何言ってるのよ~、一刀すごく仲良いじゃない」
「仲良いの!?コレと仲良いの、俺!?」
「校長のことを『チョウセン』と名前で呼び、校長のほうは北郷のことを『御主人様』と呼び合うくらい仲が良いではないか」
「ぶっ!!?」
ちょ、まっ、えええぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!!??
こっちの俺、何してんのおおおお!!!!??
こんな化け物相手に、何て呼ばせてんの!?
心の中で叫び、俺は三度視線をその銅像へと向ける
こんな人(?)が・・・この学校の校長、だと!?
いいんか?
PTAとかは何も言わなかったのか?
むしろこんな人が実際にいたら、警察に通報されないか?
俺なら、迷わず110番だぞ?
「おい北郷、校長が恋しいのはもうわかったから・・・さっさと教室に向かうぞ」
「冥琳さん!?」
「ほら一刀っ、早く早く♪」
「待って、雪蓮!
誤解を、まずは誤解をとかせ・・・」
「はいはい、照れ隠し照れ隠し♪」
「ちっがーーーーーう!!!!!」
俺の叫びも虚しく、俺の腕を掴みぐいぐいと引っ張っていく雪蓮と冥琳
ちょっとは成長したと思っていたが、相変わらず俺は彼女達には叶わないんだなぁと思う反面
懐かしい感触に、少しだけ頬を緩ませている自分がいたんだ
ーーーー†ーーーー
「ふう・・・教室は変わらない、のかな」
呟き、俺は自分の席に座る
座席は俺がいた時と同じ場所のようで、俺の両隣が冥琳と雪蓮に変わっているくらいだ
因みに・・・
「おはようさん、かずピー」
「・・・お前は変わらないのか、はぁ~」
「ええ!?
なんでワイ、顔合わせるなり溜め息つかれとんの!?」
「気にすんなよ・・・はぁ~~~~~~」
「気になるっちゅうねん!」
・・・俺の前でギャーギャーと騒ぐ眼鏡の男
及川も変わらない
少しだけ安心したが、本人には言ってやらない
「そんなことよりもだ、及川」
「そんなこと!?
朝っぱらから人の脆いハートをブレイクしといて、そんなことやて!?」
「あの黒板にかかれてることは本当なのか?」
「それやから、かずピーは・・・って、黒板?」
俺の言葉に及川は話すのをやめ、黒板を見る
それから、ニッと笑みを浮かべた
「ああ、あれなぁ
多分、校長が書いたんやろ」
「・・・マジで?」
「あの校長は、ホンマおもろいなぁ・・・って、そんなん学校でも一番校長と仲のええかずピーならわかっとるかww
ていうか、わざわざ書かんでも皆知ってるっちゅうねん」
・・・聞こえない、俺には何も聞こえないぞ
それよりも、あの黒板に書かれてること
本当なのか
『夏休みまで、あと七日よん♪』
・・・あの格好で、この口調ですか
そうですか、あの姿でおねぇ口調ですか
すいません、ますます会いたくないです
「しかし、夏休みまであと七日・・・か」
来てそうそうに、夏休み宣言されてもな
実感が、まったく湧かない
そもそも、俺は・・・
「あら、どうしたの?
一刀ったら、黒板見てソワソワしちゃって・・・わかった!
今から、私達の水着姿が楽しみで仕方がないんでしょ?」
「なっ・・・ちがっ・・・」
「ふむ、そうか・・・ならば、明日は丁度土曜日で学校は休みだ
ここは北郷に、好みの水着でも選んでもらおうか」
「ちょ、冥琳さん!?」
「あら、それは良い考えね♪」
俺の意見などよそに、どんどんと盛り上がる二人
そのまま、明日の朝に待ち合わせて三人で買い物に行くということが決定した
なんだろう
雪蓮は変わらないが、冥琳が少し・・・積極的になったような気がする
気のせい・・・か?
ーーーー†ーーーー
「ふぅ・・・」
寮のベランダ・・・俺はそこから空を眺めながら、軽く息を吐き出した
学校での授業は、俺がいたころと大差のない・・・別段、気になるようなところはなかった
運が良かったのか、校長には会うこともなかったし
けど、今日の目的を果たす事はできなかった
「結局、何もわからなかった・・・」
何もわからなかった
今の所、俺が何故ここにきたのかなどということは・・・何もわからなかったのだ
唯一わかったことといえば、ここが俺が元いた世界にソックリだということだ
それ以外は、何一つわからなかった
「参った・・・蓮華たち、心配してるだろうなぁ」
呟き、苦笑する
そうだ・・・俺は、戻らなくちゃいけない
俺達の国の為に
そして、大切な約束の為に
だけど・・・
「そしたら・・・雪蓮と冥琳は、どうなるんだ?」
彼女達は、何も知らない
あの世界でのことを、何も・・・知らないんだ
だけど、彼女達は間違いなく【あの彼女達】だと
なんとなく、そう思ったんだ
だからこそ、俺は・・・
「どうしたら、いいんだよ」
呟き、見上げた空
日がゆっくりと沈み、紅く染まっていく空
俺の呟きを吸い込み、かき消していくその色に・・・俺は想う
愛する彼女達のことを・・・
★あとがき★
ど~も、作者の月千一夜ですw
風邪ひきましたww(ちょww
ま、それは置いといて
二章、更新しました♪
なんか更新ペースが、魏伝の最初の頃並みに戻ってるw
きっと、溜め込んだ分が爆発してるんでしょうがwwww
おかげで、風邪が悪化wwボク自重ww
今回は、ちょっと息抜きなお話
世界観を少しだけ見せつつ、コメディを濃く・・・という回です
ゆっくりと・・・だけど確実にながれる時間のように
夕焼け空のような、暖かくも寂しげな物語
どうかよろしくお願いします
【クレソラ・裏話~1~】
イメージソング
masterpiece 川田まみ
うん、歌詞が微妙に合ってる
特に出だしのあたり
曲全体の疾走感については、物語のまだまだ先になりそうですが
中盤あたりから、さらに曲と合うようになるかと
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二章、投稿します
今回は、ゆる~っと読めるようなお話です