No.175317

PSU-L・O・V・E 【ディ・ラガン襲来(Assault of the Diragan)③】

萌神さん

EP09【Assault of the Diragan ③】
SEGAのネトゲ、ファンタシースター・ユニバースの二次創作小説です(゚∀゚)

【前回の粗筋】

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2010-09-29 00:36:01 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:821   閲覧ユーザー数:812

草原地帯の林を抜け、ナビゲーションを頼りにヘイゼル達が導かれた先は開けた空間になっていた。

ヘイゼルは注意深く周囲を見渡す。周囲を崖と林に囲まれた、野球場が二つ程入りそうな広さの更地である。だが、その地の地面に刻み込まれた巨大な爪跡が、漂う空気には微かに淀んだ獣の臭いが混じっている。

「ビリー、此処は……?」

「お誂(あつら)えな広さの空間……ルウに計算してもらった、ディ・ラガンの移動ルートと行動パターン……間違いないんだぜ」

「ディラガンの巣か?」

ヘイゼルの言葉にビリーが頷く。

「ディ・ラガンが棲家にするには持って来いの場所なんだぜ」

ルウが導き出したディ・ラガンの行動計算の結果と、現場の状況が事実を告げている。ならば、二人に取れる策は敵を待ち受ける事である。幸いディ・ラガンの先回りが出来た二人には、十分に迎撃準備を整える余裕があった。

二人は休憩がてら戦闘の準備を整える事にした。

巨大モンスターを相手に交戦する場合、事前の準備を怠っては成らない。それはガーディアンズにおける戦闘のセオリーでもある。

「ビリー……」

「何だぜ?」

ビリーはライフルの手入れをする手を休めた。

「お前には、何時も迷惑を掛けっぱなしだと思っている。すまない……」

突然、殊勝な事を言い始めるヘイゼルにビリーは眉を顰めた。

「おいおい、止せよ。死亡フラグみたいなんだぜ、それ?」

ビリーは茶化して見せるが、ヘイゼルの表情は変わらない。

「俺はこんな性格だからな、対人関係で色々とお前に迷惑を掛けている。それがすまないと思ってな」

「まあ……な……って、自覚はあったんだぜ?」

「俺だって空気が読めない訳じゃない……ただ、解っていても自分じゃどうする事もできないんだよ、この性格は」

「面倒くせえ性格なんだぜ…」

ビリーは肩を竦めて見せた。

「だから悪かったと言っている。"あいつ"やアリアの事も含めてな」

ヘイゼルが言う"あいつ"、ビリーはそれをユエルの事だと理解した。

「そういうのは、本人に言ってやるんだぜ」

「あいつを……俺の絶望に付き合わせる訳にはいかない……お前もだビリー、そろそろ俺を見限ってくれても構わないんだぞ」

「本気で言ってるなら殴るぜ、相棒……」

ビリーは何時に無く本気の表情を見せる。二人の間に気まずい空気が流れた。その時、突然近くの林から野鳥の群れが舞い上がった。梢を振るわせる音と、けたたましい鳴き声が周囲に響き渡る。

徒ならぬ空気にヘイゼルとビリーは注意を空に向けた。巨大な影が二人の頭上を凄い速度で通過する。

「現れたぞ、ディ・ラガンだ!」

ヘイゼルが空を指差し叫んだ。

太古から伝わる伝説の幻獣"ドラゴン"を連想させる真紅の巨体。二股に分かれた長い尻尾。巨大な羽が空気を裂く風切り音と衝撃波を起こしながら巣の上空を旋回している。

ヘイゼルはディ・ラガンの巨体を視界に捉えつつも眉根を寄せていた。

目撃された特徴は、通常の個体より大きな体躯を持つ、雌のディラガンである……支部の作戦室でルウから聞かされた内容、だが……。

「大きい……か?」

ヘイゼルは首を捻った。確かに悠然と空を飛ぶディ・ラガンは巨大だが、それが通常のディ・ラガンより大きいとは思えない。

「印象操作されてたか……他人の報告を真に受け過ぎたみたいなんだぜ」

「まあ良い、ビリー!」

「おうよっ!」

ビリーはジャケットのポケットから緊急用の発炎筒を取り出すと、先端に着火させ発炎筒を焚く。

「俺達は此処に居るんだぜ―――ッ!」

ストロンチウムを混合した火薬が上げる赤い炎を、頭上で振りながらビリーが大声で叫ぶ。

ディ・ラガンが自らの巣の異変に気付いた。その目が怒りに燃える。自らの牙城で騒ぐ不届きな闖入者。強壮なる獣王は侵入した外敵を許しはしない!

ほとんど飛行速度を落とさずにディ・ラガンが着陸態勢に入った。

「あの馬鹿ッ! 減速する気無しなんだぜ!?」

「衝突に備えろ、ビリーッ!」

巨体が二人の目前で地面に激突するように着地した。衝突音にも似た轟音が二人の声を掻き消し、巻き上がった砂埃を伴った衝撃波と地面の振動が二人の身体を激しく揺らす。ディ・ラガンの身体は慣性で地面を横滑りしながら更なる砂埃を舞い上げた。砂塵の中に映るシルエットが長大な首を振り上げ吼える。耳を劈く咆哮が空気を振るわす。首を横に薙ぐと砂煙を引き裂き、ディ・ラガンがその全貌を現した。巨体が一歩を踏み出す度に地響きを立てて地面が揺れる。

「クソッ! 無茶苦茶だ!……ビリー、作戦プランはあるのか!?」

「基本ノープランなんだぜ」

ビリーがにこやかにウィンクして応じる。いつも通りの調子にヘイゼルは溜息を付いた。

「じゃあアレで行くか?」

「ゾアル・ゴウグの時の作戦か? OK、それで始めようぜ相棒!」

二人はディ・ラガンの正面目掛けて駆け出した。ディ・ラガンは二人を迎え撃つ為に一瞬息を飲み込み巨大な顎を開く、咽喉の奥から業炎が火柱となって噴出した。業火が地表に届く直前、二人は炎を避けて別れ散開し、ディ・ラガンの側面に周りこんでいた。だが、ディ・ラガンの巨大で鈍重な動きでは二人を追いきれない。獣の思考がどちらを追うか迷っているうちにビリーは腹部側、ヘイゼルは若干遅れて左後ろ脚部に到達。目標の位置に移動を完了していた。ビリーの手にはGRM製、狙撃銃"ファントム"が、ヘイゼルの手にはテノラ・ワークス製の長槍"ムグングリ"が握られている。

「Let's Rock! なんだぜ!」

ビリーは左目を瞑ると右目で照星と照門を覗き、ディ・ラガンの背部にある羽を支える外骨格部分に狙いを定める。

この照星と照門は普通ライフルには付いていない。付属している電子スコープを使うのが通常の使用方法である。この照星と照門は彼が改造して取り付けた物なのだ。

ガーディアンズや同盟軍が通常戦闘で使用するライフルは、アサルトライフルに分類されるが、長距離でなければ狙撃銃としても十分な性能を備えている。通常任務にて長距離狙撃を主としない彼等が使うには持ってこいの銃火器なのだ。

人並み外れた狙撃能力を持つビリーは、このライフルを使用した攻撃を得意としている。

170m以内の狙撃なら、一分間に十六個の的を射抜く事ができる、キャストも裸足で逃げ出す腕前だ。

ビリーは立て続けに三発のフォトン弾を撃ち込むと、注意を自分に向けかけたディ・ラガンの気配を悟り移動する。移動しながらも更に一発。立ち位置を変えると直ぐに二発のフォトン弾を放つ。

ビリーが感じた手ごたえは確かな物だったが、堅固なディ・ラガンの甲殻には傷一つ付ける事は出来ていなかった。

「あーらら……効いちゃいないんだぜ……」

 

一方、ヘイゼルは三又の穂先を持つ槍を水平に構えると、裂帛の気合と共に突進しつつ鋭い一撃を突き込む。

バヂンッ! と穂先を形成するフォトンが弾け、柄が軋みと共にしなり撥ね返された。

「ぐっ!」

その衝撃にヘイゼルは思わず呻く。

何と言う堅牢で頑強なディ・ラガンの装甲。だが此処で諦めて戦いを止める訳には行かない。再び怒号を上げて踏み込んで行く。

「おおおおぉぉぉおおおぉぉ―――ッ!」

ムグングリのフォトンリアクターの出力が上がり、発生したフォトン粒子が螺旋状に穂先から吹き出す。

 

フォトンアーツ "ドゥース・ダッガス"

 

電光石火の如く鋭い三連突き、だがその強力な突きを、ディ・ラガンの甲殻は全て弾き返していた。

「クソ、何て堅さだ! こっちの穂先を一寸も通しゃしねえッ!」

ヘイゼルはディ・ラガンが備える防御力の高さに閉口していた。

ユエルは肩を落とし、来た道程を逆に歩いていた。彼女の隣には共に野営基地に戻るように言われ、付き添うジュノーが、ユエルを気遣う視線を向けていた。

遥か後方から野鳥の鳴き声が上がり騒がしくなる。その後、突如として轟いた獣の咆哮に驚き、ユエルとジュノーは振り返った。

「ユエルさん、今のは……」

主人の身を案じ、ジュノーが心配そうにユエルの顔を見上げる。

(戦闘が始まったッスね……)

獣が上げた鬨の声に、ユエルは二人がディ・ラガンとの戦闘に入った事を悟っていた。


 
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