過去に舞い戻ってから5年の月日が経過した。
いきなり39歳から5歳になってしまい正直戸惑ったが自分に今何が出来るのかを把握する為、スターゲイザーを起動させた。
「スターゲイザー……セットアップ!!」
『了解、マスター』
スターゲイザーは懐中時計からサイブレードに変形、僕の服もバリアジャケットになる。
バリアジャケットはズボンとマント以外は変化が無い……
昔のバリアジャケットのズボンが長ズボンになった事とマントにフードがついた位の変化だ。
「ハアッ!!」
僕は精神力と魔力を混合させる。
そして……刃を形成する……
刃は僕の魔力光と同じ翡翠色が辺りを照らす。
「……刃を形成するのに0.1秒も遅くなっている……通常機動では問題無いけど突発的な戦闘での高速機動に支障がでるな……」
次にサイブレードを展開しながらの魔法行使をしてみた。
「ヤッパリ……ブレードの出力が下がってる……精神力と魔力量が5歳だから仕方ないと言えば仕方ないけど……とてもじゃないけど実戦では耐えられない……」
更に僕にとって致命的だったのが5歳に戻った事による身体能力の全体的な低下だった。
こればっかりは如何しようもない。
そう割り切り、始めに体力づくりから始めた。
正直、地味な筋トレの反復な為、正直辛い。
どんなに技術が優れていても体が其れを表現できないでは話にならない。
そして、僕は体に合ったサイブレードの振るい方を思考する。
「もう少し身長と体力と筋力があればな……」
僕の愚痴にスターゲイザーが語りかける。
『マスター……無い物強請りをした所で得られる物はありません……なら、今ある物で何とかするしか無いです……』
「解ってる……解ってるよ……だけど、ジェイダイトブレードが1発も撃てないのが致命的だよ……」
僕のボヤキにスターゲイザーの音声も暗くなる。
『マスターの奥義にして最強の技でマスターの代名詞ですからね……』
そう、なのはにスターライトブレイカーと言う代名詞があるように僕にも硬玉剣の名を冠した代名詞が存在する……
放てばなのはのスターライトブレイカーexにすら届くと自負している。
流石にスターライトブレイカーex-fbには届かないけど……
兎に角、体力、筋力づくりと剣技の劣化を防ぐ為の剣術の型の練習を繰り返した。
そんな事を繰り返して、5年が経過した訳だけど……
そう、あの事件が起ころうとしていた。
僕となのはとの初めての出会いにして、全ての始まり……
ジュエルシード事件が。
僕はレイジングハートを見つけ出してから遺跡の調査を開始した。
案の定、ジュエルシードを全て見つける事が出来た。
そして、歴史通り輸送艇はプレシア・テスタロッサに襲撃、ジェエルシードは地球の海鳴市にばら撒かれた。
「それじゃスターゲイザー、レイジングハート、行こうか?」
『ハイ、マスター』
『……ハイ、マスター……』
スターゲイザーは簡潔に答えたが、レイジングハートは不満な様子で答えた。
「レイジングハート?」
僕がレイジングハートに語りかけるとレイジングハートは愚痴りながら答えた。
『いえ……唯、スターゲイザーが羨ましいと思っただけです……私なんかジェエルシード格納庫に成り下がってますから……』
コレばっかりは如何しようも無い。
僕の戦闘スタイルはレイジングハートのスタイルとは全然違う。
レイジングハートは砲撃戦専門のデバイスと言っても過言ではない。
僕の戦闘スタイルはサイブレードによる接近戦と僕の得意な補助魔法による戦闘が主体な訳で……
かみ合わないのだ。如何しても。
自然とレイジングハートは倉庫代わりになるしか無い訳だけど……
『不貞腐れるな。レイジングハート、お前にも何時か良い主にめぐり合う』
スターゲイザーは慰めの言葉をレイジングハートに語りかけた。
『スターゲイザーは良いですよ……自分を全開に使ってくれる人がいるじゃないですか……』
そんなこんなで地球に降り立ち、ジェエルシードの回収を始めてから5個の回収が完了した。
そして、今晩のはずだ……フェイトとアルフと出会うのは……
僕がそう考えながら6個目のジェエルシードを回収しようとした時だった……
『マスター……』
スターゲイザーが呟く様に言う。
「……ああ、来たか……フェイト……アルフ……」
僕も解っていたとばかりに呟く。
『何ですか? 二人して? ……!? マスター別の別方向から魔力を感知!!』
レイジングハートも気が付いたみたいだ。
来たか……フェイト! アルフ!
その瞬間、金色の魔弾が5つ、僕に襲い掛かった。
僕はスターゲイザーを素早く抜き放ち、即座にブレードを展開、金色に輝き襲い来る魔弾を叩き落とす。
制御を失い、弾き返された魔弾は一つ目と三つ目は地面に激突して爆散、二つ目と四つ目は術者に向けて打ち返し、最後の五つ目は夜空の彼方へと消えていく。
制御から離れた魔弾は自然消滅した。
僕は自然とフェイト達が来た方角に視線をやる。
其処には、金色の髪を月夜に照らしながら輝かせる。黒いバリアジャケット姿の少女と、
赤みがかった髪をした人型の形態の使い魔がいた。
「2つのインテリジェントデバイスを持つ翡翠色の魔力光……そして、翡翠色の剣……彼方も魔導師?」
「そう言う君も魔導師かい? 行き成り砲撃魔法とは……」
フェイトの言葉に僕も返礼して聞き返す。
どうも違和感がある……
向こうは僕の事を知らない、でも僕は彼女達の事を良く知っている……
嗚呼……なのはと会うとこの違和感は酷い事になるのだろうな……
そして、僕はなのはを巻き込む事になる……
口では巻き込みたくない。普通の生活を送って欲しいと願いながらも心では、
なのはに会いたい、なのはを抱きしめた、なのはに溺れたい自分がいる訳で……
思考の海にドップリ浸かっているとまたもや魔弾が飛んでくる。
僕はサイブレードで全弾、弾き返しながら思考の海から引き戻される。
唖然としながら呟くフェイト。
「……そんな……私の攻撃を見向きもしないで全弾叩きおとした……」
アルフも気を引き締める様フェイトに諭す。
「フェイト!! コイツ、強い!! 隙がある様で全然無い!! 私がオフェンスに回る!!」
フェイトも頷きながらバルディッシュを構えなおす。
僕もサイブレードを構える。
「ッ!!」
アルフは一気に加速し僕に襲い掛かる。
僕は無言のまま、アルフの攻撃をかわし、サイブレードを下から上へと振り上げる。
翡翠色の刃はアルフの顎に当たり、アルフを仰け反らせる。
「ヅァ!!」
悶絶するアルフに僕は袈裟懸け、逆袈裟、鳩尾に突きを連続で叩き込みバインドで縛り上げる。
先ずは一人!
そう思い、フェイトを見るとデカイ魔法の発射体勢に入っていた。
(プラズマスマッシャー!? だけど、魔力量は少ないし、術式構成も甘い。コレなら回避が十分可能だ!!)
そう思い、回避しようとした時だった……
僕の感知センサーに新たな侵入者を捕らえた。
(!? 侵入者!? 僕の張った結界に!? 誰が!?)
其処に目を向けると女の子がいた。
そう、見間違える訳が無い!!
僕が“なのは”を!!
見間違える訳が無い!!
(!? 不味い!! 此の侭回避したらなのはに当たる!? シールドの術式を組む時間が今の僕の技量ではひねり出せない!! サイブレードの出力を上げて射線をそらすにも精神力と魔力が両方とも不足している!! バインドも間に合わない!! こうなったら!! 僕が移動して射線をなのはから逸らす!! 駄目だ!! もう発射体勢だ!! 間に合わない!!)
僕の思考は高速回転しながらある一つの論点に行き着く。
僕はフェイトに背を向け、全魔力を高速飛行に費やしなのはの元に急降下した。
迫り来る金色の砲撃。
僕となのはの距離は10メートル。
僕とプラズマスマッシャーとの距離は15メートル。
圧倒的に速いプラズマスマッシャー。
だけど、
そう! だけど!!
この身は“高町 なのは”の盾であり剣!!
諦めると言う事はその存在意義を否定する事!!
其れだけは……
死んでもあり得ない!!
自分の持てる魔力を捻り出すユーノ。
なのはとの距離5メートル。
倦怠感が体を襲う。
(そんなの無視だ!!)
4メートル、
倦怠感は疲労へと変換される。
(知るものか!!)
3メートル、
疲労は更に酷くなる。
(いい加減、五月蝿いぞ!!)
2メートル、
疲労は苦痛へと変換される。
(なのはを助けられないほうが苦痛だ!!)
1メートル、
僕は左足を突き出し、地面を蹴り上げる。
土の地面はひび割れ、クレーターを作る。
ユーノの左足は鈍い音を立て、皮膚から夥しい血があふれる。
(ヅァ!?)
叫びたい衝動を必死に押さえつけ体をなのはの方に向ける。
その時、身体強化に耐えられなかった左足の筋肉が切れる音をユーノは聞いた。
(だから五月蝿いぞ!! 僕の体!! コレくらいで悲鳴を上げるな!!)
心で叫びながらユーノは右足に残りの全魔力を集中し、地面を蹴る。
地面は爆ぜる様に土煙をあげ、ユーノの後ろを白く染める。
なのはとプラズマスマッシャーとの距離5メートル。
(間に合え!! いや!! 間に合わせる!! 意地でも、死んでも間に合わせる!!)
ユーノはなのはを抱きかかえ、その場を飛びのく。
右足の回避が遅れ、プラズマスマッシャーが右足に当たる。
強烈な痛みがユーノの右足を襲う。
(ウグッ!!)
叫びが口から漏れそうになるのを歯を食い縛り耐える。
そして、爆心地から離れる様に低空飛行し、なのはを優しく地面に降ろす。
そして、僕はフェイトの方を見ると既に撤退していた。
ジェエルシードは既に奪われ、アルフのバインドも解術され取り逃がし。
結果だけを見れば僕の敗北。
でも、なのはを守れた事は僕にとって、何物にも変え難い大勝利。
そう思いながらなのはの方に振り向く。
月に照らされるなのはの顔は驚きと困惑が入り混じった顔……
ああ……守れた……僕はそう思いながら意識を手放した。
なのはサイド
私は一度死んでいる……
ユーノくんとの結婚式の当日、ブーケトスをする時、私は死んだ。
今でも覚えてる……
血染めの私、
私を抱きかかえるユーノくん、
泣き縋るヴィヴィオ、
騒然とする周り、
私の最後の言葉はちゃんと言葉にならなかった……
『泣かないで……ユーノくん……』
そして、目が覚めると私は高町家のベッドの上で5歳で、パジャマ姿で、寝ていた……
私は弾かれる様に飛び起きた。
そして、鏡を見た時、私は愕然とした。
そして、泣いた……
人生で一番泣いた……
其れからは過去の記憶の焼き回しの日々が続いた。
確かに苦痛だったかもしれない……
でも、私の心には何時もユーノくんがいて、
私を支え続けた。
そして、今晩、私は自分の運命とであった……
9歳のユーノくんと……
突然倒れたユーノくんはフェレットさんになった。
そうココからわたしとユーノくんとの新たな運命の扉が開かれた。
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相変わらずのクオレティーの無さに泣けてくる……