「策殿どうなされた?」
「早く独立したいよね」
「いい加減奴らの下で働くのも飽きてきたしの」
「でもまだまだ私たちの力は脆弱。…何か切っ掛けがありばいいんだけど」
「切っ掛けか。…そういえば策殿、管輅とかいう奴の占いの話は知っているか?」
「ええ。流星に乗って天の御遣いが来て世を平定するとかいう話でしょう」
「さよう」
「そんな話あるわけないじゃない」
「確かにのう。それより今夜は冷えておる故早く帰りましょう」
「そうね。それじゃあ…」
そのとき彼女たちがいた周辺が瞬間明るくなり何か落ちたような音がした。
「…何この音?」
「策殿!儂の後ろに!」
「大丈夫よ。それより祭、気を付けて…。
盗賊か、妖か…何にせよ来るなら来なさい。殺してあげるから」
「策殿、あそこに何か…」
「すぐ行きましょう」
彼女たちは踵を返して何か落ちた方向に歩いて行った。
「さっきまでいなかったはずよね?」
「確かに…」
少し歩いた所に男の子が倒れていた。
「もしかして…この子が天の御遣いかしら?確かに服装とかここらへんじゃ見ないけど」
「状況からすれば管輅の占い道理なので間違いないが妖の可能性もまだありますぞ」
「でも本当に天の御遣いなら欲しいわね…」
そう言いながら少し考えた。
「保護しましょう」
「しかし策殿!」
「もし天の御遣いなら保護して我らが保護したと宣伝し、妖なら殺してそのことを報告すればいい事よ。どちらにしても悪い話にならないと思うわよ」
「わかった」
そういうとその男の子を抱え城へと帰って行っていった。
「お帰り、雪蓮」
「あら珍しい。お出迎え?」
「そうよ。帰りが遅かったからね。…何かあったの?」
「うん。拾い物をしたの。これよ」
「この子どうしたの?拾い物って?」
「管輅の占い知っているよね」
「知っているけどそんな話…」
「この子がねその話の子かもしれないの」
「は?雪蓮、大丈夫?あなたそんな話信用してなかったじゃない」
「そうなんだけどね。でも管輅の占い道理に現れちゃったからね」
「本当か?黄蓋殿」
「確かに、儂も一緒におりましたゆえ確認しておる。管輅の占い道理じゃったよ」
「なるほど…だから拾ってきたのね」
「ええ。本物なら孫家で保護するのが上策。妖なら私の手で殺す。…どちらにしても得でしょ?」
「ふむ。…分かった。扱いはどうする?」
「本物なら…孫呉に天の血を入れるわ」
「血を入れるって…。まあそれは本人に任せるわ。それより今日は遅い。あしたこいつの正体を暴くとしましょう。黄蓋殿、すまんがこいつを適当な部屋へ」
「応」
その日、この男の子を部屋に入れた後何があるかわからないので一晩中部屋周辺監視した。
「ん~。…ん?」
レイは気付くとベットの上にいた。
(確かロッカクの里に行くためにビッキー頼んで…まさか…)
そう思い周りを見渡した。
(やっぱり…知らない所に飛ばされてる…失敗したなビッキー)
いつものことなのでびっくりしなかったが、なぜ此処にいるか分かった所で部屋の扉が開いた。
「おっ?目が覚めたか、孺子」
「はい?」
「気分はどうだ?怪我はしとらんか?」
「大丈夫です。スイマセンがあなたは?」
とりあえずレイは情報が欲しかったのでいろいろ質問してみることにした
「儂か?儂の名は黄蓋。字は公覆と言う。以後見知りおけ」
「え!」
(あざな?あざなって聞いたことがないな)
「黄蓋じゃ。お主ちゃんと儂の言葉を理解しとるか?」
「言葉はわかりますけど…。こうがいさん。ここは?」
「ここは荊州南陽。我が主、孫策殿の館よ」
「けいしゅうなんよー?確か赤月帝国にそんな所あったっけ?」
「あか、なんじゃ?」
「赤月帝国。…けいしゅ?」
(なんかおかしい…もし違う国でも赤月帝国は知ってるはずなのになぜ…)
「荊州じゃ。…まさか荊州を知らんとでも言うんじゃなかろうな?」
「スイマセン。知らないです」
「なんとまぁ…。お主いったいどこの出身だ?」
「出身は…赤月帝国のグレックミンスターだけど」
「あかつきていこくのぐれ?なんじゃそれは?そんなとこ聞いたことないぞ」
「やはり…」
(やっぱりテレポート失敗か…でも…)
いつものテレポート失敗だと思ったが名前を思い出して違和感を感じた。
(でもおかしい…確かこの人の名前でこうがいさん。この場所がけいしゅうなんようのそんさくさんの館…まさか…)
「ごめんなさい少し教えてほしいのですけど黄色の黄と天蓋とかの蓋と書いて、黄蓋さんと言うのですか?」
「そうじゃ。よく分かったの」
「それでここはそんさくさんの館で孫氏とかの孫に策略の策とかいて孫策さんって言うんですか?」
「…そうじゃ」
(まさか…カイ師匠の読んでいた三国志と同じ名前の人がいる…でもあの物語は男だったはずなのに…でもビッキーとの出会いもこんな感じだった…ビッキーの失敗だったらあり得るか…)
レイは以前棍の師匠のカイに三国志という物語を読んでいた。
そして初めてビッキーと出会った光景を思い出した。彼女もテレポートの失敗で時を超えることがあったと言っていた。
なので今の状況はすんなりと納得してしまった。
「ところでお主、名は」
「レイ・マクドールと言います」
「姓はれい、名はまく、字はどーるとな」
「姓はマクドール、名はレイです。字というのはありません」
「字が無い?ふむ…」
「ではさらに質問じゃ。昨日の晩、あんなところで何をしていた?」
「あんなところ?」
「この街の外れじゃ」
「……ごめんなさい。俺一人だけでした?忍び服を着た女の人は近くにいませんでした?」
「いやおらなんだぞ。お主一人じゃ。…って儂の質問に答えろ」
(嘘…。カスミがいない?)
「きっと言っても分からないと思いますけど説明しますね」
なぜこのようなことになったか又向こうの世界で解放軍のリーダーをしていたことをを黄蓋に話した。
(詳細は序章で確認して下さい)
「ほう…。という事じゃとよ二人とも」
「二人?」
そういうと扉が開かれ髪の長い女性とメガネをかけた女性が入ってきた。
「そうね~。きっと嘘は言ってないと思うわね」
「確かに。嘘を言うにしても私たちに理解できそうな嘘をつくはずだしな」
「それに見ていると守ってあげたい気になるじゃない」
「確かにな」
「こら!孫策殿・公瑾!その気持ちはわからんではないが自重してくだされ」
「?」
女性二人の本音が少し漏れてしまったのですかさず黄蓋が注意をした。
しかし守られたいと思われているレイにとっては何のことかさっぱり分からなかった。
確かに解放軍にいた時は坊っちゃんと良く言われてよく守られていたのでその雰囲気を二人は感じてしまったのだ。
「すまない。気にしないでくれ…。それでお主行くあてはあるのか?」
「ないです…。それにあったとしてもカスミを探さないといけないし」
「ならさ~。私たちの所にいない?一緒にカスミさんも探してあげるから」
髪の長い女性の言葉にレイはびっくりした。
「え…?それはありがたいですけどみなさんにはなにか得があるのですか?」
「ま~、守ってあげたいと思ったからよ。でも条件はあるわよ」
「条件って」
「一つ目は天の御遣いとして利用させてほしいのと、二つ目は孫呉繁栄の為血を入れてほしいってことよ」
「天の御遣い?血を入れる?」
メガネの女性は髪の長い女性の説明ではわからないだろうと思いレイに説明し始めた。
「説明するとだな一つ目は呉の独立の為に知恵や武を貸してほしい。又、政治的にも名前とかを利用させてほしいという事。二つ目は簡単に言うと我ら将を孕ませるということだ」
「孕ませるって……!!それは無理です。一つ目は大丈夫ですけど二つ目だけは絶対に無理です」
二つ目の説明を聞いてレイはすぐ断った。
心底カスミに惚れていたので裏切るような行為はしたくなかったからだ。
「なんじゃ。儂らでは不服か?他にも若い女子もおるぞ」
「そういうことじゃないんです。俺には恋人のカスミがいますから…」
「う~ん。しかたがない。二つ目は保留ね」
「ふ~」
保留と聞いてレイは安堵した。
「ところでレイよ。お主が説明した内容からして武は相当なものだと思うのだが…。儂と一戦交えんか?」
「はい。御願いします」
「いい返事じゃ」
「黄蓋殿!」
「冥琳…。そう怒るな。お主も奴の武を見たくはないのか」
「見たいのですがもしもの事があったら…」
「大丈夫じゃよ。手加減するしの…」
「分かりました。でもその真意を確かめる為に私も立会います」
周瑜はレイの事が心配になったので立会うことにした。
「いつもの冥琳らしくないわね~…気持ちは分かるけど」
「うるさい!とにかく試合は昼になってからにしよう」
「おう」
孫策にからかわれて周瑜は恥ずかしくなりこれ以上からかわれないように試合の時間を黄蓋に言った。
「すまないがレイ。昼になったら中庭に来てくれ。あとこの部屋は好きに使ってよいからな」
「あらためてありがとうございます。これからお世話になりますレイ・マクドールです」
「自己紹介がまだだったわね。私は孫策。字は伯符よろしくね」
「私は周瑜よ。よろしく…。それと昼食は陸遜に持ってこさせるわ」
「ありがとうございます」
「それじゃあ」
「あとでね」
「楽しみにしてるぞ」
そういって孫策・周瑜・黄蓋は部屋を後にした。
残されたレイはこれからの事を少し考えた…。
が、この世界について何も分からない為すぐに考えることを止めた。
そのかわり、昼の一戦の為に天牙棍を手にし形の練習を始めた。
練習を始めて数刻後扉からノックがあった
「レイさ~ん。しつれ~しま~す。昼食を持ってきました~」
扉を開いたら昼食を持ってる女性が立っていた。
「はじめまして~。私は陸遜です~」
名前を聞いて思い出した。
周瑜が昼食を陸遜に持って行かすと言っていたことを。
陸孫は挨拶をした後レイを座らせようとした。
「はじめまして。俺はレイ・マクドールです」
「昼食が終わったら中庭まで案内しますね~」
「ありがとうございます」
「い~え~」
とりあえず自己紹介をした後席に座って昼食をとった。
昼食の間さっきの三人について陸孫にいろいろ聞いた。
孫策は呉の王様で自由奔放。
周瑜は軍師でいろいろ厳しい。
黄蓋は宿将と言われるほどの武の持ち主。
話をまとめると上に書いた役職と性格だというのが分かった。
昼食後、陸遜に案内され中庭に行った。
途中試合は見るのと聞いたら「仕事があるから無理です~」といっていたので案内が終わると陸遜はどこかに行ってしまった。
「遅いぞレイ!待ちくたびれたぞ!」
「ごめんなさい…。」
「まあよい。それより武器はその棒か?ずいぶん舐められたものじゃのう…。冥琳頼む」
「わかりました。……はじめ」
周瑜は試合の合図をかけると孫策のもとへ行った。
「きっと祭が手加減してもすぐ負けちゃうでしょうね…。ね!冥琳」
「そうね。とりあえずレイが怪我さえしなければいいわ」
黄蓋は多幻双弓を構えてはいたが矢は1本で接近戦でも走って逃げるような戦い方をしていたからだ。
その点レイは逃げられないように威圧して極力離されないようにした。
「本当に心配症ね…冥琳らしくないわ」
「うるさいって…ちょっと雪蓮おかしくない?」
心配症をからかわれた周瑜は顔を赤くしてレイと黄蓋の見ていた。
そして黄蓋の様子がはじめと違う事に気付いた。
「あらホント。祭の顔から余裕がなくなったわ」
初めはすぐに倒せるだろうと手を抜いていた黄蓋だったが矢を4本程度放った時からこのままでは負けてしまうと感じてしまったからだ。
(ちいちょこまかと逃げおって、それに隙がない…。これは本気にならなくてはのう)
すると、黄蓋は矢を2本に増やし、接近戦では弓を利用し攻撃をしのぎ始めた。
(黄蓋さん…やっぱり強い。紋章の力を借りるわけにはいけないし…仕方がない)
本来レイは遠距離相手との戦闘では紋章の力を使って戦っていたが紋章については秘密にしていたので攻撃スタイルをカウンター狙いに変更した。
(む…いきなり隙が出来始めた。疲れ始めたのか?好機だな…今だ)
そうとは気がづいていない黄蓋は隙が出来た時に矢を放った。
「ふん!!」
この瞬間黄蓋は自分の勝利を確信したが、実はレイの罠に引っ掛かっていた。
(かかった!)
「駄目…祭それは罠よ!」
「黄蓋殿」
戦っている二人から離れてみていた孫策と周瑜はレイの罠に気付いて思わず声を出してしまった。
「破!」
レイはわざと隙を作り、かわすふりをして徐々に黄蓋との距離を詰めた。
そして一撃が加えられる距離まできたら矢を放ってから次の矢が放たれる数秒を利用し攻撃したのだ。
「くっ……参った…」
「ありがとうございました」
一撃をくらった黄蓋は降参した。
「まさか呉の宿将の黄蓋がやられるとはね~」
「本当です。まだ手加減しているなら分かりますが本気でしたからね」
「いや~申し訳ない。負けてしまったわい!レイの武相当なものじゃぞ」
「黄蓋さん。今回はたまたま俺が勝っただけです。きっと実力は黄蓋さんの方が上ですよ」
「又もう一度手合わせ願いたいのう」
「その時はよろしくお願いします」
黄蓋とレイがしゃべっている間雪蓮は考えていた。
「…そうね~。やっぱりあの占いもそうだけどあの説明も本当ね~。決めたわ!」
「雪蓮。まさか」
「そ!真名を預けるわ」
「…全く。でもそうね。私も賛成だわ」
周瑜は言葉とは裏腹に表情は笑顔だった
「儂もじゃ」
黄蓋は先の戦いで相当な武があり素直な子だと分かったので即決した。
「?」
「レイ。改めて自己紹介するわ私は孫策。真名は雪蓮よ」
「私は周瑜。真名は冥琳」
「儂は黄蓋。真名は祭じゃ」
「?真名って?」
「真名は心から信頼できる人にだけ教える名前よ」
「…あ・ありがとうございます」
レイは真名の意味に戸惑ってしまったが三人が信頼してくれたことがうれしかった。
「これからもよろしくねレイ」
「こちらこそよろしく。雪蓮さん、冥琳さん、祭さん」
「ところでレイ~本当に血を入れること考えてくれない~」
「え・え~~!!」
「ふふふ」「ははは」
こうしてレイは雪蓮たちと行動を共にするのだった。
つづく
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序章についてですがスイマセン!恋姫関係一切入ってませんでした。幻想水滸伝のみでした!ほんとスイマセン!
第1章から恋姫も絡んできますので大丈夫です。
申し訳ありませんでした!
あらすじとしてはテレポート失敗によってある国の人に保護されます!