朝廷より黄巾党討伐の命が諸侯に言い渡された。
雪蓮の主である袁術にもその命が届き、雪蓮に討伐を命じた。
雪蓮は討伐の条件に旧臣を呼びたいと申し込んだ。
袁術もそれを了解し、雪蓮・冥琳・祭・レイは軍を引き連れ合肥へ向かった。
「レイ~」
「どうしました?雪蓮」
「これから会う子で気に入った子がいたら血を入れてもいいからね~」
「そんな事しません!初めのうちに断ったじゃないですか」
「そうだけど・・・。もしもの為にね」
「そんなことないですよ!」
「はいはい分かったわよ」
「ほんとに・・・冥琳さんからも何か行ってくださいよ」
「すまんなレイ。でも私も雪蓮の考えに賛成だからな。もし恋人が見つからなかったら本気で考えぬか?」
「は~」
「そうじゃぞレイよ。おぬしの武確かにすごいしのう・・・」
「それはありがたいのですが・・・」
「ちょっとみんな何かあそこ黄巾党じゃない?」
「そうじゃのう」
東に約1里ない所に少数(約300人)だが黄巾党の小隊があった。
「ちょと肩慣らししてくるわ・・・」
「ちょっと雪蓮待ちなさい」
「あんな奴らに遅れは取らないわよ」
そういうと雪蓮は単騎で小隊めがけていった。
「あの馬鹿・・・」
「冥琳さん。俺も行きます。一人では無茶でしょうから」
「しかし」
「大丈夫ですよ。雪蓮さんには怪我をさせませんから」
「分かった。すまないがよろしく頼む」
レイは冥琳に了解を貰い雪蓮の後を追った。
「雪蓮さん待ってよ」
「あ~。レイも来たんだ」
「冥琳さんに許可を貰ってね。とりあえず雪蓮さんの抑え役としてね。ということで戦う時はあまり前に出ないでくださいね」
「大丈夫だって。レイも心配性よ」
「俺も軍を率いて戦っていたから分かりますけど万が一、軍を率いる総大将が怪我でもしたら軍全体の士気が落ちるだけでなく敵軍にも舐められてしまうんです。雪蓮さんだったら大丈夫だと思うけど今回は抑えてくださいね」
「それをいうならレイも同じでしょう」
「天の国ならそうなりますが今は天の御遣いですので大丈夫ですよ」
「もう・・・降参よ。今回はレイの言う事を聞くわ」
「ありがとう。それじゃあ行きましょうか孫呉の王・・・」
「了解。天の御遣い様」
そういうとレイは馬からおり、天牙棍を持ち小隊めがけて突進した。
黄巾党はレイの周りを囲み逃げられないようにした。
しかしレイは冷静に構え名乗りを上げた。
「我が名はレイ・マクドール孫呉の王、孫策様の命を受け貴様らを潰しに来た。天は我にあり。恐れに者はかかって来い」
名乗りを上げるとすぐに天牙棍を振るい黄巾党を薙ぎ払った。
最初小隊は単騎で来た馬鹿な奴と油断していたが次々と仲間たちがやられていくにつれ焦りと苛立ちはじめた。
「一人相手に何てこずってるんだ。一斉に攻撃しろ」
「しかしもう仲間いねーし」
「ぐずぐず言うな。やるぞ」
黄巾党は取り囲んで一斉に攻撃を仕掛けたがレイの一撃で一蹴されてしまった。
そうしてる内に最後の一人になってしまった。
「このガキ~!」
「最後の一人か・・・」
さすが祭を負かすだけの武を持っているレイだった。
最後の一人も一撃で倒し雪蓮の元へ帰っていった。
だがこの戦いを見ていた者が一人だけいた。
(かっこいい・・・)
その戦いを見て直ぐにどこかに行ってしまった。
「ただいま帰りました」
「お疲れ~。さすが早いわねレイ」
「運が良かっただけですよ。それより何か拭く物ありませんか?」
「う~ん・・・ないわね~。冥琳の所にはあると思うけど」
「分かった。それじゃあ冥琳の所に帰ろっか」
「そうね。冥琳怒ってないかしら」
「大丈夫でしょう・・・きっと」
そう言うとレイは馬に跨り冥琳たちの所に帰った
「ただいま~」
「こら!雪蓮一人で…ってあれ?」
「どうしたの~?」
「いや返り血が全然ついてないから」
「そりゃそうよ。私今回戦ってないもん」
「ただいま戻りました。冥琳さん何か拭く物ありませんか?」
「すまなかったなレイ・・・てまさか!!」
「そ!そのまさかよ。レイ一人でやっちゃったんだから」
「レイすまんがちょっと教えてくれ」
「はい」
「黄巾党の数ってどのぐらいいた?」
「ざっと300人程度でしたけど」
「それをこんな短時間で・・・レイ!」
「はい」
「雪蓮の暴走を止めてくれたのは感謝するが…だからといってお前が無茶してどうする!!」
「はい・・・」
「男の子なんだしそのぐらい元気の方がいいよね」
「そうじゃな」
「二人とも茶化さないで下さい!」
「「ハイ・・・」」
「もしお前が怪我でもしたらどうする!!」
「雪蓮さんが怪我するよりましかなって」
「お前が怪我をしたらもっと大変なことになるんだぞ!」
「はい」
「これからは無茶はするなよ」
「ごめんなさい」
「分かってくれたらそれでいい・・・拭く物だったな少し待っておれ」
一通り説教が終わったあと冥琳は拭く物を取りに行った。
「レイが怒られちゃったね」
「仕方がないよ・・・」
「まあよいではないか。怪我もなく無事じゃったんじゃから」
「はあ・・・」
「レイ拭く物取って来たからちょっと来い」
「分かりました。冥琳さん」
「動くなよレイ」
そういうと冥琳はレイについた返り血を拭った。
「恥ずかしいです。冥琳さん」
「直ぐ終わるからちょっと我慢しろ」
そういいながら少し嬉しそうな顔をした冥琳は返り血を拭った。
「よし。きれいになったぞ」
「ありがとう。冥琳さん」
「それじゃあレイもきれいになったし急いで待ち合わせ場所に行くぞ」
その頃合肥では
「蓮華様!報告します雪蓮様が一人で黄巾党の小隊と戦おうとした模様です」
「何ですってそれは本当なの!数はどれくらいなの。思春!」
「は!およそ300人ほどでした。しかしある男の子が制止し一人で黄巾党と戦っていました」
「その男の子というのは誰なの」
「おそらく孫策様が保護した天の御使いかと・・・」
「そう・・・。それで戦いの結果は」
「その男の子が無傷で勝ちました。・・・とってもかっこよかった・・・」
(もうじき会えるだろうしな…フフフ)
「そう。勝ったの。それより思春、最後の方が聞こえなかったのだけど」
「いえ、なにも・・・」
「分かったわ。ありがとう思春」
(お姉様はまったく~)
そういう会話をしているうちに伝令が孫権の所にやってきた。
「孫権様!孫策様一行が到着しました」
「分かったわ!」
そういうや否や孫策のところへ走って行った。
ホントある意味似たもの姉妹だ…。
「ふ~・・・やっと着いたわね~」
「そうじゃの~」
雪蓮は肩慣らしが出来なかったのでずっと暇だった。
祭も同様だったのでようやく暴れられることが楽しみだったがある人を思い浮かべて雪蓮に聞こえないように冥琳に耳打ちした。
「何事もなければよいのじゃがな・・・」
「まったくです・・・。・・・ってきましたよ」
「?」
冥琳も同じ人を思いつぶやいた。
レイは何のことが分からなかったので今から起こることが分からなかった。
「お姉様!!」
「れ・・・蓮華・・・」
(やっば~)
「思春から話を聞きました!」
「王たるものが単騎で賊退治に行くとはどういうことですか!」
「いや~」
「もし怪我でもしたらどうするのですか!」
「でも」
(レイとおんなじこと言ってる~。だから戦えなかったのよ!)
「それに天の御遣いを保護したとか言うじゃないですか!」
「まあね~」
「その御遣いとか言うのはどんな奴なんですか!」
「そこにいるわよ~。レイ~ちょっと来て~!」
雪蓮に呼ばれたレイは冥琳たちとの談笑を一時中断し雪蓮の方に向かった。
その時冥琳と祭が一言づつつぶやいた。
「かわいそうに・・・だけど頑張れ」
「骨は儂が拾ってやるからの・・・」
雪蓮はレイを呼んだ後、他の忠臣も呼んだ。
その間ずっと蓮華に睨まれていた。
「蓮華、思春、明命そろったわね」
「はい・・・」
(なんでこんな奴が!)
「は!」
(戦場の時と違ってなんか守ってあげたい・・・そして・・・)
「はい!」
(誰なのでしょう?)
「みんなも知っていると思うけど彼が天の御遣いよ~。ほ~ら」
「はじめまして・・・。レイ・マクドールです。これからよろしくお願いします」
「・・・」
(思っていたの案外違うわね。何か礼儀正しいし・・・)
「・・・」
(レイって言うのか・・・)
「御願いします!」
(彼が御遣い様でしたか~)
「レイってすごいのよ~。今さっき蓮華が怒っていた件だけど彼も同じことをいって一人で倒しに言ったのよ~。それに祭との一騎打ちでも勝っちゃったしね」
「それらは全て運がよかっただけですって」
「ふ~ん・・・」
(同じ事を言ったって・・・それなりに上に立つものの心得みたいのを持っているみたいね・・・それに確かに思春の報告で一人で黄巾党の小隊を倒したとは聞いていたけどそれ以上とは・・・)
「・・・」
(祭殿以上の武か・・・やっぱりかっこいい・・・)
「ほえ~」
(とても強いのです!)
「だ~か~ら~。孫呉に血を入れて欲しいと思ってるんだけど~」
「「え~」」
(やっぱりこの人信用できない!!)
(天の御遣い様の妻になれということですか?)
「・・・ふ」
(ホント!やった~!絶対幸せにしてやるぞ!!)
雪蓮の説明を聞いていた三人は心の中でいろいろ思っていた。
孫権はレイのことを信用出来そうな人間だと見ていたが血を入れるという話を聞いた途端それが目的と思い怒り狂った。
周泰は呆気に取られながらも命令ならばと思った。
そして黄巾党の戦いを見て一目惚れしていた甘寧は話を聞いてすぐにでも結婚して幸せな家庭を築いてる妄想をしていた。
しかしレイの一言で全て変わってしまった。
「雪蓮さん!その話はお断りしましたよね!俺には恋人のカスミがいます!」
(・・・ふぅ)
(・・・!!)
「そういうことなのよ。とりあえず私は入れたいと思ってるから許可してるだけど~」
「だから駄目ですって」
「ま・・・そういうことだからみんなレイのことよろしくね~・・・っとみんな自己紹介してね~」
(そんな目的じゃなかったのね・・・。こんな所で恋人って・・・そんなに好きなのね。姉様のことも真名でいってたし人として信用できそうね)
(許せん!一目惚れさせといて恋人がいるだと!)
孫権は恋人のことを一途に思っていることを心を打たれた。
しかし甘寧は恋人がいると聞き逆ギレに近い怒りをあらわにした。
「私は孫権、真名は蓮華よ。さっきはごめんなさい。睨み続けて・・・」
「いえ、確かに正体の分からない者に対してはそうしてしまいますしね」
「そういっていただければ助かるわ・・・」
「私は周泰です~。真名は明命です~」
「よろしくお願いします。明命さん」
「・・・」
「あ・あの」
「甘寧だ・・・鈴の音に気をつけろ・・・」
「・・・」
「ごめんなさいレイ。こら!・・・待ちなさい!思春」
蓮華は先ほどの無礼を謝罪し明命は何の疑いもなく真名をレイに預けた。
しかし甘寧は先ほどの恋人発言からレイに対して異常なほどの殺気を放った。
いくら幾多の戦いをしてきたレイでも一言も喋れなかった。
蓮華たちが自分の隊に戻ったのと同時に冥琳と祭がやってきた。
「意外じゃったな・・・」
「そうですね・・・」
「そ~ね~」
「それってどういう」
雪蓮,冥琳,祭の三人は意外そうな顔をしながら言った。
レイはどういうことかまったく分からなかったので三人に聞いてみることにした。
「まあ明命はすんなり真名を預けると思ってたんだけどね」
「うむ。そして蓮華様と思春は真名を預けないと思っていた。そして蓮華様はレイに対して敵意をむき出しにするかと思ったんだよ」
「そうじゃ。しかし、権殿は策殿の説明だけで納得して真名まで預けたんじゃ」
「そうなんですね。蓮華さんが真名を教えてくれたから意外だったんですね」
「いや、それだけではないのだよ。レイ」
「そうじゃ。なんせ甘寧が真名を教えんかったからのう」
「それにね、レイに対しての敵意が尋常じゃなかったのよね~」
「え…?」
「レイはいつもの思春を知らないから仕方がないけどね~」
「そうね。…レイよ…頑張れ!」
「そうじゃの…。まあ気長に頑張るんじゃ」
「??…わかりました……?」
とりあえずどういう意味かわからなかったが気長に頑張ろうと思い自分の馬の所に戻ったレイだった。
レイが去った後の三人は…。
「うむ。どうしたものかのう?」
「ま~ね~。まさか思春がそうだったとはね~」
「まあ…。後は今後の展開を見てから手を考えましょう」
という雑談をしながら隊に戻って行った。
蓮華たちの軍と合流した雪蓮たちは揚州で黄巾党本隊が根城にしている平原へ向かった。
その間甘寧はずっとレイを睨み続けていた。
蓮華に何度注意されても甘寧は止めようとしなかった。
冥琳は黄巾党本隊が根城にしている城近くで軍を待機させるよう指示をした。
そして周りを見渡しレイに質問した。
「レイよ…。この局面お主ならどうする」
「…冥琳さん教えてほしいんですけど相手はどれぐらいいます?」
「ざっと十五万って所だ」
「それで俺たちが率いてる数って確か一万ってところでしたよね」
「そうだ」
「普通に考えたら不可能です」
(紋章があればまだ手はあるけどね…)
「ほう…。それはなぜだ?」
「1つ目はもし逆の立場にったったら籠城して敵の士気を下げさせるか、戦いを挑んで数で物を言わすからです。
2つ目は情報が正確か分からないからです」
「どの情報が正確か分からないのだ」
「相手は十五万って言いましたけどその情報が怪しいのです。事実確かに今は相手が籠城していると思うので正確な数が分からないと思うのですが周りに明らかに違う軍隊がいるからです。」
「ほう…やはりさすがだな。確かにそうだ。だが周りが味方ならどうする?」
「それなら協力して相手と対峙します」
「さすがだ」
「それがどうしました?」
「いや何今からこの城を落とす為にどうするか軍議をしようと思ってなレイを参加させるか試したんだ」
「なるほど…それで俺はどうすれだいいですか?」
「もちろん参加してもらうさ」
そういうと冥琳はレイの頭をなでた
「わかりました」
「そうか、ちょっと待っててくれ」
冥琳は軍議を開く為皆を集めに行った。
それを離れて見ていた甘寧はやはり睨んでいた。
皆を呼んで軍議が開催された。
「今から黄巾党本隊殲滅の軍議を始める」
「…」
「とりあえず今の状況を説明すると、わが軍以外に諸侯も討伐に来てる」
「やっぱりね~」
「へ~」
「参戦している諸侯は曹操,袁紹,公孫賛,劉備とかいう将が率いる義勇軍だ」
「さすが本隊討伐…諸侯も多いですね」
「我が軍だけでは兵数に圧倒的な差があるので諸侯を利用しようと思う」
「そうじゃのう」
「でもそう上手くいきますか?」
「まあな…。諸侯も自分の軍だけでは勝てないと分かっているからな」
「なるほど…」
「そこでだある程度兵数が減ってからの行動を考えたいのだが…。隠…すまんが地図を…」
「はい~これですよ~」
「何ともま~攻めにくい城じゃのう」
「そうね~」
「やはり正面からじゃまずいですよね」
「レイよ何かいい案はないか?」
「…(ギロ)」
「…は~。見た限り正門は大軍を投入できるけど左右は門が小さい。後ろに回り込むのは不可能なんですよね」
「そうだ」
「そうしたら混乱を誘うしかないですよね」
「そうじゃ…じゃがどうやって混乱を起こす?」
「黄巾党って飢えとかしのぎたい為になった人が多いんですよね」
「情報ではそうだか」
「ならあんまりしたくないですが、城内の食糧に火をつけるというのはどうでしょうか?」
「…なるほど。それなら食糧がなくなるのと火事が発生したという2つで混乱するな」
「その後左右の門から精鋭を投入して倒す。もし相手が正門から逃げようとしてもいいように正門に軍隊を配置しておくというのがいいと思うのですけど」
「……そうだな。基本的にその案でいこう」
「じゃあ後は誰が何所を指揮するかだけど~」
「それなら考えてあるわよ」
「さっすが~」
「火をつけるのは明命たち隠密部隊、火矢を使って火事を大きくする部隊を私と蓮華様、左翼は黄蓋殿、右翼が思春とレイ、本陣は雪蓮で考えたわ」
「な!!!」
「い~ね。それでいこう~」
「ちょっと」
「作戦の決行は夜、決行する日は明日決めます。作戦の詳細は作戦決行の前日にいいます。解散」
という具合に軍議は進んだ。
甘寧は天蓋の中で一人レイの事を考えていた。
(せっかく守ってあげたいと思っていたのに…)
(どうして血を入れることをあそこまで拒むのだ…)
(なぜ一目惚れなどしたんだ…)
(どうして作戦の時一緒に行動しなければいけないんだ…)
(なぜ…)
そういう事を永遠と考えてしまいこのままでは作戦時に心を乱してしまうと考え外の空気を吸おうと考えた。
天蓋を出た甘寧はレイがいるのに気づいた。
(どうしてお前がいるのだ!)
(…このまま逃げるわけにはいかないか…よし!)
話してなにかわかるかもしれないと考えた甘寧はレイに近づいて行った。
作戦決行の夜レイは不意に星が見たくなり天蓋を出た。
「ふぅ…」
「(チリーン)何をしている…」
振り向くと甘寧が後ろに立っていた
「甘寧さん…星を見ていたんですよ」
「星?」
そういうとレイは空を見上げた。
「戦いの前にね…。どうしても見てしまうんですよ。星の加護をもらう為にね」
「ふむ」
「やっぱりおかしいですよね」
「いや…」
(どうしたんだ…戦場にいる時と何か雰囲気が違う)
「どうして星の加護が欲しいんだ」
(もしかして恋人と離れ離れになったからとかじゃないだろうな)
「俺は向こうの世界では星の下で集まってくれた仲間がいたんです」
「星の下?」
「そ…。俺の星を中心に107人の仲間が集まって助けてくれましたから」
「うむ…」
(そんなにこいつの為に力になろうとする者がいたんだな…)
「その仲間が助けてくれたからいろいろ出来たんです。だけどこっちの世界では一人で全てしなくてはいけない。だからせめてこの世界の星だけでも加護してほしいと思ったのです」
「そうか…」
(やっぱり無理をしていたんだな…)
「ならば私が貴殿を守ろう」
(とりあえず私が近くで見ていてやろう…)
「え…」
甘寧の今までの態度を思い出したレイはびっくりした。
「驚くな…。あくまで今回だけだ。天の御遣いが怪我でもされたら嫌だからな」
(本当はこれからも隠れて見守っていくつもりだがな…)
「ありがとう。でも…。でも大丈夫ですから…。逆に甘寧さんを守ります」
「な…」
(そ・そんなこと言って…お前には恋人がいるだろう)
「馬・馬鹿を言うな!お前には…」
「いや。女の子を守るのは男の役目だから…」
「ふん!勝手にしろ!期待せずにいる…。…後でな」
(逆に危なくなったら助けてやるよ…)
「ああ…」
そういうと甘寧は自分の天蓋に戻った。
作戦決行の深夜皆持ち場にいた。
冥琳と蓮華は火矢を、祭は左翼を、雪蓮は本陣を指揮、明命は隠密活動。
レイと甘寧は右翼にいた。
「「…」」
二人は火矢が放たれたのを確認した後行動する為待機していたが、会話はなかった。
明命が食糧庫及び倉に火をつけたのを成功したという知らせが伝令より入った。
「いよいよか…(チリーン)」
「す~は~」
その後火矢が放たれたの。
それを確認したレイは天牙棍を甘寧は鈴音を構え声をあげだ。
「「右翼 突撃!!!」」
右翼及び左翼の役割は混乱した黄巾党の殲滅だった。
レイと甘寧は号令を上げた後すぐ城門を開け混乱した黄巾党を倒しに行った。
いくら諸侯がある程度人数削ってくれたといっても今の孫家の軍よりかは多い。
黄巾党を倒すのはいいが倒した後は足場が死体で埋まってしまう。
左翼は弓兵中心で構成されている為あまり影響されないが右翼は違った。
右翼は槍や刀など近距離戦闘が得意な兵を中心に構成されていたからだ。
なので右翼は熾烈を極めた。
黄巾党の一人が死体の中に潜り込んで甘寧を切りつけようとした。
「…覚悟~!!」
「なに…」
(しまった逃げられない…危ない)
甘寧は単騎で乗り込み戦っていた為、足場は死体だらけでその中に生きている奴に気がつかなかった。
相手の声で位置は分かったが思うように足が動かせず防御が出来なかった。
(ここまでなのか………?)
死を覚悟した甘寧だったがいくら待っても切られないので意を決し周りを見るとレイが相手と対峙していた。
(嘘…)
甘寧は驚いた。
レイも単騎で戦っていたので本当に守り来てくれると思っていなかったのだ。
「甘寧さん…。言いましたよね。俺が守るって…」
「ああ…」
(有言実行って本当にかっこいい~)
「だから今からは二人で戦いましょう」
「分かった…」
その後レイと甘寧は二人で戦った。
戦いは孫策軍が勝った。
雪蓮は今日はもう遅いので南陽に帰るのは明日にしようと言い休息を言い渡した。
天蓋からでたレイはまた星を眺めていた。
「何をしている…」
「星を見ているんですよ…甘寧さん」
甘寧は神妙な表情でレイの前に立っていた。
「どうしたんですか?」
「…いろいろすまなかった」
(やっぱり駄目だな…私は…)
「気にしないでいいですよ」
「そう言ってくれるのは嬉しいが…今回は私が悪かったのだ…だからすまなかった」
(あってもいない人間に嫉妬して…)
「でも本当に気にしていないので」
「そういうな…。これは私の問題だからな…」
(そう…恋人がいようと関係ない…)
「わかりました」
「そうか…。それともう一ついいか?」
(私は…お前が…)
「ええ」
「私の真名は…思春だ…預けたぞ…」
(好きだ…)
「思春さん…。これからもよろしく」
「こちらこそ」
(ずっと守っていくぞ…そして…レイに恋人がいようとも…奪ってみせるぞ…)
そういうと二人はがっちりと握手をした。
南陽に帰る間、思春はずっと上機嫌だった…。
しかしこの思いが元で大変になることをまだ二人は知らなかった…。
つづく
(おまけ)
南陽に帰る途中のひとコマ
「姉様…。なんか思春の雰囲気がおかしいんですが」
「そ~ね~。もしかして好きな人が出来たんじゃないの~」
「まさか…。思春に限ってそんなことは…」
「よ~く見てみなさい蓮華。思春は何処を見ているか」
「何処って…顔は正面見ているけど…目線は…って、え~!」
「ちょっとびっくりしすぎよ」
「だって、行きはあんなに殺気を放ってたんですよ」
「でも今は熱い眼差しで見ているわよ」
「確かに…。あの戦いで何かあったのかしら?」
「これでレイが思春を好きになってくれたらいいのにな~」
「でもそれはさすがに無理でしょう…」
「そ~よね~。………っあ!」
「どうしたんですか姉様?」
「ふっふっふ~。い~こと思いついた~。蓮華ちょっと耳を貸しなさい」
「?はい…」
「……を……して…………に……よ」
「ってええ!本気ですか?」
「そうよ~。だから蓮華手伝いなさい!」
「わかりました」
おわり?
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これはきついです。
大丈夫かな?受け入れられたらうれしいです。
は~俺に文才があったら…。
第2章はレイver.しか考えていません。