私には美羽さまが居ればよかった。
美羽さまの恐怖に震える可愛い泣き顔や、素敵な笑顔があれば満足だったのに、
「あれ? 七乃、一人か?」
「ええ。お嬢さまはお部屋でぐっすりと眠ってますよ」
気がつくとこの男が私達の間に入ってきていた。
「確かに美羽は今日の祭、かなり楽しんでいたからな」
「そうですねー」
普段以上の元気でよりバカみたいにお祭りを楽しんでいた美羽さま。
色々な物に目を輝かせていたのは実に可愛らしかった。
「ところで、七乃は美羽と一緒に寝てないでいいのか?」
「はい。私としても美羽さまと一緒に寝たかったのですが……」
少し思う事がありましてね。
「一刀さんにじっくりと、私の浴衣姿を見せようと思いまして」
「そ、そうか……」
「そうなんですよー。お嬢さまと一緒に居たいのを我慢して、わざわざ一刀さんのためにこうして
外で待っていたんですよー」
私だってお祭りで疲れてるのに、一刀さんのためにこんな事をしてるんですよ。
「ですから、ちゃんと気の利いた言葉を期待してますからね♪」
くるり、と回転して一刀さんに全身を見せる。
「さぁ、早く私が満足する褒め言葉を言って下さい♪」
三国一の種馬である一刀さんなら、女性を満足させる言葉を言うのは簡単な事ですもんね。
「……うん。七乃の浴衣姿、似合ってるよ」
「えー。それだけですかー?」
もっと、気の利いた事は言えないんですかね?
「悪い。それしか言葉が見つからないんだ」
「はぁ……まったく、一刀さんはダメダメですね」
「面目ない」
そんなので、私を落とそうだなんて――
「でも、七乃の浴衣姿が似合ってるのは本当の事だし、綺麗だとも思っている」
「……どうせ、他の女の子にも同じような事を言ってるんじゃないんですか?」
「う……っ、それは確かに否定は出来ないけど、七乃を綺麗だと思っている気持ちに嘘は無い」
「あー」
なんという真っすぐな言葉。
よく、こんな恥ずかしい言葉を臆面も無く言えますね。
それは素直に凄いと思いますよ。
「……では、一刀さんも喜んでくれてたみたいですし、私はそろそろ部屋に戻りますね」
「そうか。気をつけて戻れよ」
「は~い♪」
北郷一刀。私と美羽さまの間に勝手に入ってきた男。
三国一の種馬に相応しく節操のない変態。
ですが……
ああ。何となくこの男の虜になる気持ちが分かるような気がします。
飾り気の無い言葉。
心の底から出す本音。
それで口説かれてしまったら、それは落ちてしまいますよね。
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美羽「七乃はわらわの物じゃ!」
一刀「いや、俺のだろ」
作者「何を言ってるんだ? 七乃は俺の嫁だ!」
美・一「っ!?」
七乃「私は誰の物でもないですよー」
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