No.167318

夏の失言

tanakaさん

恋姫†夏祭りをやっている事に最近気が付いたので、軽い気持ちで書いてみました。
華琳様がいる! それだけで十分なんです!
短いのは勘弁して下さい。

2010-08-21 23:44:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4122   閲覧ユーザー数:3622

 夏の暑さは人の心に一瞬の油断を与える。

 まさかこのわたしが、あんな失言をするなんて。

 ほんと、全てはこの夏の暑さのせいだわ……

 

 

「……行かないで」

 何を思ったのか、部屋から出て行く一刀を呼び止めていた。

「華琳?」

 一刀が不思議そうな顔でわたしを見ている。

 ああ、何でわたしは一刀を呼び止めてしまったのかしら?

 一刀だって用事があるだろうし、ずっとこの部屋に居させるわけにはいかない。

 それなのに――

 暑さにやられてしまったのか、または寂しさを感じたからだろうか。

 とにかく一刀に何処にも行って欲しくなかったのだ。

「華琳どうかしたのか?」

「何でも無いわ。いいから早く出て行きなさい」

 行くなと言ったり、行けと言ったり、わたしは何を言っているのかしら?

「そうは言ってもな華琳……」

 一刀はわたしの言葉に苦笑いを浮かべながら、ある場所を指差す。

「お前が俺の服の裾を掴んでるから、動けないんだよ」

「……あ」

 指摘されて慌てて手を放す。

 自分でも気がつかない内に一刀の服を掴んでいたようだ。

「なぁ、華琳。本当に何も無いのか? 何か言いたい事があるなら言ってもいいんだぞ」

「言いたい事なんて……」

 そんなの言えるわけないじゃない。

 わたしを一人にしないでなんて絶対に言えない。

「何も気にしなくていいわよ」

 だからわたしは、普段通りを装う。

 一刀は、わたしだけの物じゃないんだから。

「そうか。分かった」

 それだけを言って一刀は――

 

 何も言わずにただわたしの側に座っている。

 何で? どうして? 何か用事があるんじゃないの?

「一刀。あなた用事があるんじゃなかったの?」

「ああ。確かに用事はあるし、この後仕事も控えてるぞ」

「じゃぁ、なんで――?」

 こんな所に居るのよ!?

「寂しそうな顔をしていたから……」

「え……?」

「華琳が寂しそうな顔をしているから。今日は華琳の側に居るって決めたんだ」

「寂しそうな顔なんて……」

 わたしがそんな弱い部分を見せるわけが――

「好きな女の子が悲しい想いをしているのに、それを無視して他の所に行くなんて俺には出来ない」

「…………ばか」

 ほんと、この男はバカなんだから。

「だから今日は華琳の側にずっと居てもいいだろ?」

 バカでスケベでエッチで変態な男。

 そんな、どうしようもない男だけど――

「……察しなさいよ馬鹿」

 一刀と一緒に居られるのは嬉しく思う。

 幸せだと感じる。

 こんな事、本人を前にして言うつもりはなかったけど、

「好きよ。一刀」

 

 こんな暑さだ。多少おかしな事を言うのは仕方が無い。

 だって、夏の暑さは人の心に油断を与えるのだから。

 


 
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