最終章 ―他人思想―
俺たちは森の方につくと彼女には入り口付近で待ってもらった
俺が彼女のパソコンを持ってる限り、逃げられない
いまだに自分の記憶を疑う―――犯人があいつだったなんて……ッ!!
症状が治ったことはまだ誰にも言っていない、試してみるか
自問自答してるうちに俺はみんながいるところへ着いた
「智哉……、ちょっと俺と一緒についてきてくれる?」
俺は智哉が戸惑いの表情を隠そうとしているように見えた―――いや、見えてしまう
「あと和泉も来てくれる?」
「え…!?私も?なんで?」
「ちょっと聞きたいことっていうか、確認したいことがあるんだ」
姉のことはまだ教えないでおこう、これは試しているのだ
犯人じゃないと信じたいために、俺の疑いを消すために、俺の記憶はまだ思い出していないと確信したいために……
「なんかわかったの?」
と智哉が俺に聞いてきた
「うん~、分かったというより確認したいことがあるんだ……」
俺は誘ってみるためにあえて「確認」という単語を使ってみた
これで来なかったら俺の疑いが消えない、来たらホントに確認がとれる
さて、俺の思い出した記憶によれば黒樹を殺した犯人、いや、共犯者は―――智哉と和泉なんだけどな……
入り口付近に近づくと、そこにいる彼女に気付いたのか、彼らの表情は一変して変わった
どうやら俺が考えてること、症状が治ったことにも気がついただろう
俺は虚しく、悲しく、寂しい気持ちを抑えて、単刀直入で彼らに聞いてみた
「俺……、なあ、ホントのこと言ってくれ……、殺した犯人って……」
駄目だ、友達にこんなこと言えない、言いたくない
「勝喜が思ってる通りだよ、友達だから勝喜が何言いたいのか分かるよ」
あっさりと智哉はためらいなく言った
「何が友達だよッ!!なんで殺したんだッ!!なんで俺と一緒に犯人捜すのに協力するんだよ………ッ!!」
俺は知りたくなかった、忘れていたかった、だからこそ協力してほしくなかった
「それはそうと、なんでわかったんだ?」
智哉は俺に友達のように軽く聞いてきた
ここに引っ越してきてから初めてできた友達なのに……、こんな都会人嫌いの村でも頑張ってこれたのは智哉のおかげなのに、彼がいなくなったら、ホントに俺の「居場所」がなくなるかもしれないのに、なんでこんなこと聞いてるんだろう……
「記憶が戻ったんだ、正直和泉たちが犯人だと思ってたよ、うん、現場を見た記憶を見るまでは……」
「じゃあ勝喜が思い出さなければまだバレなかったんだろうね、でも麗奈さんを見つけた時点でもう無理だったかな」
「そうなのか、俺は犯行内容とかは知らないから、現場しか見てないし……」
「じゃあ教えようか?もう逃げられないし、それに騙してたから、これぐらいのことなら教えてもいいよ」
俺は正直犯行計画とかどうでもよかった、しかし動機とかも気になる……
「簡単に説明すると、電話回線は授業で森へ行くときに麗奈さんに切ってもらったんだ、車と橋も麗奈さんにね、そして麗可が授業中に消えて黒樹に手伝ってもらって探しに行く、そしてみんなから離れた隙に殺そうって計画だったんだけどね」
「そこで俺が消えたということ?」
「その通りだよ、麗可が消えようとしてたら、なぜか勝喜が消えたんだよ、多分状況を報告しに来た麗奈さんを見つけて追いかけて行ったんだろうと思う、電気は通ってないし、連絡手段がないから口伝で伝えないといけないからね、でも逆に勝喜が消えたのを利用して殺そうってことになったんだ、そして黒樹にも勝喜を探すのに手伝ってもらって、誰も来なさそうなところで殺した後に勝喜にばれちゃったんだ、でも勝喜が死体を見て気分を悪くして記憶障害になって今まで健忘症だったってこと」
俺は記憶を思い出しながら、智哉の話を聞くことしかできなかった
「じゃあなんで殺したんだよ…」
「勝喜は知らないと思うけど、俺はもともと都会に住んでいたんだよ、そして勝喜と同じようにいじめられていたよ」
「でもあんなイジメぐらい無視しても大丈夫じゃないか?ひどいものでもないし……」
「勝喜はまだいいよ、俺の時はひどかったんだよ、先生や親に注意されてからいじめはマシになってたけどね」
「じゃあなんで和泉たち姉妹が関係してるの?」
「実は転校前の学校は麗奈さんと同じ学校に行ってたんだ、転校してきたときは驚いたよ、でも黒樹たちに麗可さんのお姉さんが都会に住んでるってだけでいじめられたんだ、どんな理由だよって思ったけどな……ッ」
「それじゃあ、いじめが嫌で黒樹たちを殺したってことかよッ!!」
「そうだよ、でももう一つ理由があるんだ、それは勝喜がいじめられているの見て、昔の自分を思い出してしまう、自己嫌悪してしまうんだ、だから勝喜のためにも殺した」
「俺のためだと?違うだろ」
「そうかも、ホントは勝喜が昔の自分見たいで腹が立つ、そんないじめられている自分が許せないからかも、だから僕は君を好きなれそうにないよ」
倒れるとき聞いた言葉だ、じゃあ友達なのに嫌いってことかよ、俺も智哉を好きになれそうにない―――だが嫌いにもなれない……
「周りのことが何言おうと、そんな昔のこと関係ないだろ!!他の人から見た『自分』だろ、他人が理解しているだけの『自分』という自我だろ!!ホントの『自分』理解できるのは自分だけなんだよ……、他人が理解、確認、判断した『自分』なんていろんな人から見た『自分』のうちの一つだろ、そんなこと気にする必要なんかないよッ!!」
◆
「何時だと思ってるの!?起きなさい!!」
休日、母親に起こされた俺は昔のことを思い出していた
俺は起きてでかける準備をした
「どこ行くの?」
「ちょっと友達を迎えに行くからー!!」
そういいながら、俺は少年院に向かった―――……
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とうとう完結します
今回も読みやすいように努力しました(^_^;)
やっと初めて一作目が完結したましたww
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