第三章 ―以心否通―
多分、俺は犯人の一部始終を見ている
でも健忘症のせいで何故か思い出せない……
健忘症なんて出なかったら、あるいはこんな生臭い事件は解決できたかもしれないのにッ!!
そのあと色々調べてみたけど何もなかった
まあ、現場はこんなもんかな?
幸い、健忘症のせいで事態の度合いをあまり理解できてない
これは逆に好都合だ、恐怖感などにとらわれることもあまりないからな
それにしてもいくつか疑問がある
学校に行った智哉に聞いたんだけど、どうやら学校には誰もいなかったことだ
学校の先生は5人しかいないけどみんないないんておかしい、それに変に動くよりここにいた方がいいって先生は言ってたけど智哉が学校に行った時は何もなかった
もし同じクラスメートが黒樹を殺したのなら智哉が学校に行ったこともわかるし、始末するはずなのに……
そして一番考えなければならないことはこの時間に何故殺したんだ?しかもこんな場所に、この状況で
夜の方がばれにくいのに、こんなに生徒がいる中で何故だ?
相手は単純なのか?それともあえてなのか?
「ねえ、この森って入口って言うか道は一つだけ?」
さっき思った疑問をなんとか解決するためには、些細なことまで注意深く調べなきゃ、それに俺は健忘症のうえ転校してきたばっかりだから色々分からないしな
「うん、反対側は山奥だから道はないよ」
「じゃあ入り口付近の道でも調べてみる?可能性は低いけどもし入り口付近の道から犯人の痕跡が見つかったらクラスメートの中に犯人がいるっていう可能性は低くなるかもしれないし…」
道は一本しかないこの大きな森であえて入り口付近の道から入るようなことはしないかもしれないけど、一応調べてみよう
「じゃあ行ってみようか」
その場につくと入り口付近には長くて大きい柵があるけどあれってなんだろう?
それに門みたいなものがあるし、記憶を思い出せないから分からないのも仕方ないけど
「そういえばあの柵って何の意味があるの?」
「ああ、ここは自然保護区域だからだよ、勝手に入れないようにしているんだ、荒らされないようにっていう意味もあるけど、ここの森って野生の熊とかいるから町に降りてこないようにしている意味もあるんだよ」
そうなんだ、忘れてるって言うより多分知らないことこかもしれないな、この町に来てまだ日が浅いし
「でも、よく授業で入れたな、もしかして出入りは自由は七なのか?」
「いや、普段は入れないよ。看守も見まわっているし、ただ俺たちはここの村人だから授業の時とか特別な時だけある程度の範囲なら自由に入れるよ。それに裁判の話、覚えてる?」
ん?何の話だ?
「あ…、そういや忘れてるんだったよね。簡単に説明すると……」
ふむふむ、それしても都会の人とかは冷たいからな~、て思ってる場合じゃなかった。
「勝った理由は色々あるんだけど、実はそのうちのひとつがここは自然保護区域があるからだよ」
なるほど、結構すごい場所なんだな、ここは
そのあと周りを見てみたが、証拠たらしめる証拠は見つからなかった
そのあと俺たちは一度みんながいる場所に戻った、いつまでもみんなから離れてるわけにもいかないしな
さてそれにしても何か出てこないと犯人を見つけようがない、と悩んでいると
「俺思ったんだけどドラマとかでの定番のアリバイとかから探していく?」
そういえば一番最初にやっとくべきだった
「アリバイのこと忘れてたよ、でも確かみんな班行動だったよな?誰かいなくなったらみんな気がつくんじゃない?」
「そのことだけど、勝喜は忘れてるから覚えてないと思うけど、勝喜が突然いなくなったから俺たちだけで別々に勝喜を探してたんだ。俺は一応和泉と一緒にいたんだけど鷹志と文乃は二人で探してたみたいだよ?」
ん?ちょっと待てよ、それって俺だけアリバイがないから一番疑わしいじゃん、俺は覚えてないから分からない
しかし、俺は殺してないと思う、そう思うんだ
あの時の、証拠を探しに行った時に起こった頭痛で一部の映像の様子だと俺じゃない、と信じてる
―――――次の、瞬間……、また頭痛が起きた
今度はさっきよりかは痛くはないが、また一部の映像―――記憶が、と言った方がいいんだろうな、これはもう
その断片的な記憶は、それはいつもより鮮明に思い出していた、顔が分かるほどに
それは、みんなと行動していると、何故か和泉と同じ顔をした子を見つけ、俺はそれを追ってみんなから離れていった
今回は短かったけど、鮮明に見えてきた、どうやら記憶が戻り始めているようだ
今回の頭痛はあまり痛くなかったのと一瞬の出来事なので智哉は気づいてないようだ、心配させるのも悪いから言わないでおこう
そしてひとつ確信を持った、俺は絶対に犯人を見ている、根拠はないが確信を何故か持てる
もし知ってるのなら思い出さなければ、そう、殺られる前に思い出さなければッ!!
「……俺は犯人じゃないよ」
すると智哉はちょっと焦った表情で言った
「いや、俺はお前が殺したなんて思ってないよ」
でも、犯人がここで、あの時間帯で殺した理由が分かったような気がする
よく考えたらわかることだ、智哉のが言うとおりならこの森は普段誰も入れないんだから、隠すのにはちょうど良かったんだろう
そして殺した後に地中にでも埋めれば分からないだろう、なにせこんなに広い土地だ
それにここの森の土を触ってもわかるがかなりの水分を含んでいる、これだったら女性でもすぐに人一人分の穴ぐらいは掘れる
それ以外の方法でもここは自然でできてる土地だ、何があろうがおかしくない、川に流されたり、谷に落とされたりといくらでも理由をこじつけられる
しかしこれは「ここ」で殺した理由でしかない、なぜ「あの時」殺した理由もなんとなくわかってきた
こんなに広い場所だ、それに特別な人でもない限りさらに奥に行ったら戻ってこれないかもしれない、正直ここまでの道も獣道でできている
授業中に行方不明とでも誤魔化せば何とかなる
しかし、俺が犯人を見たのだったら、さっきの記憶―――和泉と似たあいつは誰なのだろうか?
俺はそいつを追いかけてから倒れるまで見つかってないってことは何らかのかかわりがあったはずだ
それにしても、暑くなってきたな……
おかしい、こんなに時間がたっているのに学校にいる先生たちはなぜ授業時間が終わってるのに気付かないんだ、終わってるのに帰ってこないなら不安になってきてもおかしくない
ちょっと学校の方が気になるな……
「先生、今この時間帯なら先生の一人や二人はいると思うんですけど、俺が学校に行って見ましょうか?」
「うん~、そうだな、お昼のこの時間帯に誰もいないのはおかしいから。よし、行ってきて確認してきてくれ」
よし、これでみんなから離れて森から出られる、道は覚えてないけど…まあ、こんな田舎だ、見渡したら学校ぐらいの建物はすぐに見つかるだろう
これで少しは情報が集まれば何か分かるかもしれない
……学校らしき建物を見つけて学校に行ってみると、何故か防火セキュリティが作動している
扉は完全に閉まっていた
これも犯人の仕業なのかな、しかし電気がないのによく動いたなと思ったがよく考えりゃあ防犯装置が電気で作動するとも限らないからなあ
しかし、誰がやったのだろうか
1階と2階の窓には鉄の網が張られてる、あれは窓がボールなどから守るためにあるやつだ
そして扉の鍵があろうと思うが、先生は多分この中にいるんだな
しかし、今の状況を見る限り、無理なのか、鍵がないのかの、この二つの可能性が高いかな
しかし、こんな大掛かりなことは一人ではできないだろう、多分共犯者がいるのかもな
もし森に犯人がいるとしたら、共犯者は多分外で妨害工作でもしているのかな
――――不意に和泉に似たやつを思い出した
記憶には覚えがないが―――本能が犯人だと訴えてくるようだ
でも証拠がなかったら意味ないしなあ
まあ、学校の周りのどこかから入れないか探すかな
ちょうど5分ぐらい徘徊していると、突然「カチカチッ」という音が聞こえた、この田舎の村では不慣れな音だと分かった、そしてこれがキーボードをタイピングしてる時の音だと俺は理解した
もともと都会に住んでいたからすぐに分かった
音がする方向に向かって行く、しかしこの村で、無線で接続できるはずもない、となるとどっから線を引っ張っているか
線があるおかげで、すぐに場所が分かった、俺はそっとそいつに近寄った
「何してんだ、お前」
相手は突然の出来事にビックリしたようだが、むしろ俺はそいつの容姿に相手以上いビックリした
あの記憶で出てきた和泉に似たやつだったからだ―――いや、これは和泉なのかどうかすらわからない
「お前……、和泉麗可…か?」
どうやら向こうもいきなり見つかって戸惑いを隠せないようだ
「なんで……ここに人が…」
とりあえず俺は逃げれないように距離を縮める
「お前、森にいたんじゃないのか?和泉」
どうやら、相手も何か戸惑ってるようだ
「逃がさないよ、何をしていたんだ……?」
「くッ…!!私は麗可じゃないわ」
じゃあ誰なんだ?ともかくこいつの正体が気になる
「じゃあお前の名前は誰だよ?顔もなんか似てるし……、それに麗可って名前知ってるってことは関係者か?」
「私の名前は和泉麗奈、麗可とは姉妹関係なだけよ」
姉妹関係だけって……、でも顔が似てるってことは……
「貴方が思ってる通り麗可とは双子よ、私が姉だけど」
あれ?じゃあ同い年のはずじゃあ……、なんで学校にいなかったんだろう?
それより俺はパソコンの中が気になったので、先にそっちを確認しよう
「ちょっとパソコン見させてもらうよ」
ちょっと強引にパソコンを取り上げ、中身を見てみた
中身は、変電所の管理システムの管理内容やら色々出ていた、それによく見たらこのパソコン、モバイルパソコンだ
内容を見る限り停電の理由はこの子が停電させたのか
「とりあえず、今すぐに電気を普及させろ」
それにしてもこんなところハッキングできるなんて彼女は何者なんだ?
「気になったんだけど、なんで学校にいなかったの?麗可とは学校が違うのか?それにこんな技術どこで手に入れたんだ?こんな田舎じゃあ無理だろ……」
「そんなこと別にあなたに関係ないでしょッ!!」
どうやら複雑な家庭事情なのか、それか別の理由か
ちょっと地雷を踏んだっぽいな
「それでなんでこんなことを?麗可もかかわってるの?それともほかに共犯者がいるのか?」
ここまで仕込んでいるんだからさすがに一人じゃあ難しいだろうな
―――いきなりまた頭痛がきた
これは、今まで一番きつい……、彼女が逃げられないようにしないと……
逃げられないように、彼女の手をつかんで治まるのを待った
今回はどんな記憶が……ッ!!
「それじゃあ一緒にみんなのところに来てもらうよ?」
そう言って、俺は頭痛が治まるのを待ち、彼女の手をしっかり握って歩き出した……
ため息をつき―――今の感情を隠しながら、俺は虚しく、嫌々、悲しく思いながら森へ向かった……
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今回も読みやすいように頑張ってみました(^_^;)
まあ、初心者なりに頑張ってみましたww
今回は主人公がとうとう事件解決しちゃうような雰囲気に向かっていますwww
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