No.166054

真恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第三十一話

狭乃 狼さん

荊州と揚州における大戦。

まずは導入部です。

そしてついに”ヤツ”が来る・・・!!

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2010-08-16 10:35:32 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:14871   閲覧ユーザー数:12605

 「反乱軍鎮圧のために、援軍を出してほしい、か」

 

 荊州・襄陽。

 

 荊州の牧に正式に就任した一刀は、自身の居をここに移し、多忙な日々をすごしていた。そんな時、揚州から援軍の使者として周泰が訪れた。

 

 「孫堅さまは兵はこちらで用意するので、船をできるだけ多く送ってほしいと仰せでした」

 

 一刀にそう語る周泰。

 

 「喜んで協力します、周泰さん。朱里、江陵の星と輝里に連絡を。惜しみなく孫家に協力するように、と」

 

 「はい。長沙の袁術さんにもお声をかけますか?」

 

 「いや。美羽たちはまだ、しばらく立て直しに時間がかかるだろうから、今回は江陵の水軍だけで行ってもらおう」

 

 「御意です。周泰さん、すぐに書簡をしたためますから、少々別室にてお待ちください」

 

 「はい!ありがとうございます!」

 

 部屋を出る諸葛亮と周泰。

 

 「それでお兄ちゃん。さっきの話の続きだけど、新野は月ちゃんたちに完全に任せるってことでいい?」

 

 一刀に問いかける劉備。

 

 「ああ。ただ、武将の数が少し手が足りないから、愛紗、君と藍さんで二人を助けてあげてくれ」

 

 「は。では、明日にでも出立します」

 

 「頼りにしてるよ」

 

 「はい!」

 

 嬉々として返事をする関羽。

 

 「江夏については白蓮と水蓮さん、柊さんに任せておけば、大丈夫、と」

 

 竹簡にそれぞれの名を記していく一刀。

 

 「江陵はどうしますので?」

 

 関羽が一刀に尋ねる。

 

 「紫苑に頼むつもりだよ。あと、補佐に恵(けい)さんと泪(るい)さんについてもらう、と。そんなところかな?」

 

 一刀のいう恵とは伊籍、泪とは韓嵩のことである。

 

 「では私のほうからその旨、伝えておきます」

 

 「頼むよ。さてと、今日はこれくらいかな」

 

 ん~~~~、と。伸びをする一刀。

 

 「じゃあ、私お茶を入れてくるね。おいしいお団子もあるから、一緒に持ってくるよ」

 

 そう言って席を立つ劉備。そこへ。

 

 「失礼します!!」

 

 突然、扉を開けて部屋に入ってく陳到。

 

 「どうしたんですか、蘭さん。そんなに血相を変えて」

 

 「た、たった今、宛より早馬が着きました!「曹」と「魏」の旗を掲げた軍勢に、攻め込まれていると!!その数、十万!!」

 

 『!?』

 

 思いもよらなかった事態に、言葉を失う一同だった。

 

 

 

 その頃、揚州・柴桑では。

 

 「じゃあ、こっちは長江を渡った対岸、烏林で陣を張ると」

 

 「ああ。荊州の援軍を合わせたとしても、水上の戦力はやはりあちらが上だろう。となれば、一番の策はやはり、”火”だ」

 

 孫策に自身の策を説明する周瑜。

 

 柴桑城の軍議の間で、会議中の孫家の面々。ただ、そこには家長である孫堅の姿はなかった。

 

 「幸いこの時期、風は北東の風がほとんどです。時折、一日だけ逆の風が吹く日がありますが、その日さえ避ければ、問題にはなりません」

 

 周瑜に続き、そう語る呂蒙。

 

 「ただ~、一つだけ問題があるとすれば~、烏林は荊州領だということです~。同盟関係にあるとはいえ~、勝手に領内に入るわけには行きませんよね~」

 

 間延びした口調で話すのは、姓名を陸遜、字を伯言といい、孫家の軍師三本柱の一人である。

 

 「穏のいうとおりね。まずは江夏に使者を出して、こちらの策を説明しておきましょ。確か、江夏の城主は公……なんてったっけ?」

 

 「……公孫賛、どのだ」

 

 「あ、それそれ。その人」

 

 「はあー、まったく。人の名くらい覚えておかないか」

 

 あきれる周瑜。

 

 「いや~。何でかこの名前だけは覚えらんないのよ。……なんでかな?」

 

 「知らん」

 

 

 

 「はっくしょん!!」

 

 「うお!?何だ姉貴、風邪か?」

 

 「ん~。誰か私の噂でもしてるのかな?」

 

 そんなやり取りを交わす、公孫賛とその妹公孫越。

 

 先の孫堅による江夏攻めの後、当時の牧であった劉琦から、公孫賛は江夏の城主を任された。それは一刀が牧となっても変わらず、地味に、無難に、そして普通に役目をこなしていた。

 

 「……噂をされる、ね。姉貴にそんな存在感あったっけ?」

 

 「……水蓮、それは喧嘩を売ってるのか?だったら喜んで買うぞ?」

 

 ぎろり、と。妹をにらみつける公孫賛。

 

 「じょ、冗談だって!」

 

 (喧嘩なんてしたって勝てっこないっての)

 

 子供の頃から姉妹喧嘩で姉に勝てたことなど、一度もない公孫越であった。

 

 そこに、

 

 「白蓮、いるか?柴桑から使者が来たぞ」

 

 執務室に入ってきてそう告げる華雄。

 

 本来なら新野で董卓に仕えていなければならないのだが、人手不足の親友を心配し、董卓と一刀の許しを得て、公孫賛の下に現在ついていた。

 

 「ん。わかった、すぐに行く」

 

 

 

 ちょうどその頃、長江を遡る船団の姿があった。闘艦と呼ばれる大型船五隻を中心とした、五十隻の大艦隊であった。その先頭を行く闘艦に翻る旗の文字は、「許」と「劉」。

 

 「壮観、というべきだな。のう、劉繇どの」

 

 「ですな。これだけの船団を用意できたこと、本当に感謝いたしますぞ、禰衡どの」

 

 劉繇と呼ばれた男が、後ろに立つ一人の女に声をかける。

 

 「どうかお気になさらず。わが主公の望みは、陛下の御名の下、大陸を安寧に導く事ゆえ」

 

 そう言って拱手する、禰衡と呼ばれた女。

 

 「仲達公にはよろしくお伝えくだされ。揚州を制した後は、漢の一門として陛下を盛り立ててみせまする、と」

 

 「それがしも漢のために尽力いたす。なにとぞ良しなに」

 

 揃って頭を下げる、劉繇と許貢。 

 

 「もちろんです。期待いたしますわ、ご両所とも」

 

 (漢のために、ね。ククク。よく言うわ)

 

 二人の言葉に答えながらも、気づかれぬようにほくそえむ禰衡であった。

 

 

 

 ところ変わって、荊州・宛県。

 

 「……これまで、か。恋、ねね。脱出の用意を。二人で一刀の元へ行きなさい」

 

 呂布と陳宮にそう告げる、丁原。

 

 「ははうえどのは?」

 

 丁原に問う陳宮。

 

 「あたしは残る。誰かが時間を稼がないとね」

 

 「……だめ。おかあさん残るなら、恋も残る」

 

 「ねねも残るですぞ!」

 

 そう言って丁原を見つめる呂布と陳宮。

 

 「駄目だ。お前たちはこれから、一刀の力にならなきゃいけないんだ。あたしのような老いぼれと違ってね」

 

 「でも!」

 

 「恋!!」

 

 「!!」

 

 ビクッ!

 

 さらに食い下がろうとする呂布を一喝する、丁原。

 

 「……この間言ったろ?どのみちあたしの命はもう長くないんだ。心の臓が、いつ破裂してもおかしくない。……だから最後に、母親としてお前たちを守らせておくれ」

 

 笑顔で二人を、そうやさしく諭す丁原。

 

 「……おかあさん」

 

 「ははうえどの……」

 

 いつしかその両の目に泪を浮かべる、呂布と陳宮。

 

 その時だった。

 

 どおおおおんんんん!!

 

 すさまじい破壊音が響く。それが城門の破られた音だと、三人はすぐに悟った。

 

 「……どうやら、手遅れだったかね?」

 

 「そ~でもないわよん」

 

 『え?』

 

 突然した自分たち以外の声に、思わずそちらを見る三人。そこにいたのは、

 

 「ば!化け物なのですーーーー!!」

 

 「だあああれが、地獄の底から這い出てきたような、怪物ですってーーー!?」

 

 「誰もそこまでいっとりゃせん!何者じゃ、ぬしは!?」

 

 小さな腰布(?)を身に着けただけの、どこから見ても変態にしか見えない”それ”に、丁原が突っ込む。

 

 「わたしは愛と美の伝道師、そして、ご主人様の忠実な肉奴隷、漢女(おとめ)貂蝉ちゃんよお。あ、心配しないで。わたしはあなたたちの味方よん。うふん」

 

 そう言ってニッコリと微笑む(おえ)漢女貂蝉であった。

 

 


 
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