No.166490

真・恋姫無双 華雄の目立ってやるぞ!大作戦

狭乃 狼さん

刀香譚本編の途中ですが、夏祭り参加作品第三弾です。

華雄が何やら始めようとしています。

真夏の夢をご堪能ください。

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2010-08-18 15:06:46 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:14414   閲覧ユーザー数:12661

 「頼む、北郷!!協力してくれ!!」

 

 いきなり部屋に入るなり、一刀に土下座をする華雄。

 

 「ど、どうしたんだよ?話があるからって待っててみれば」

 

 「私は、私は、もう、我慢がならないんだ!!」

 

 土下座をしたまま肩をわなわなと震わす華雄。

 

 「いやだから、ちゃんと説明をしてくれないと、何がなんだか」

 

 その一刀の言葉に、きっ!と、真剣なまなざしを向ける華雄。

 

 「なあ、私の存在意義は何だ?」

 

 「は?」

 

 存在意義。レーゾンデートル。いきなり出てきた哲学用語(?)に、ポカンとする一刀。

 

 「出番が来たと思えば、戦場でただ猪のように敵に突撃し、挙句にあっさりと退場。その後は白蓮並み、いや、今やそれ以上に存在感のないキャラに仕立て上げられ、さらには新作では出番すらなかった!!作品説明には『出るの?』の一言だ!!」

 

 かなり鬱憤がたまっていたんだろう。次々と出てくる不満の数々。一刀も思わず、「不憫な……」と、涙が一筋ほろりと流れる。

 

 「だからだ!!今後私が生き残るために、一人立ちしていけるために!!頼む!私の計画に協力してくれ!!

 

 再び土下座をする華雄。

 

 「(ぐすっ)……わかった。不肖、この北郷一刀、惜しみなく、協力させてもらおうじゃないか!!」

 

 がっし、と。涙を流しながら、華雄の両手をつかむ一刀。

 

 「あ、ありがとう、北郷!!」

 

 「で、さしあたって、俺は何をすればいい?何でも言ってくれ!!」

 

 「では、これを見てくれ。これが私の最後の手段だ!!」

 

 「こ、これは!!」

 

 

 

 その数日後。とある海岸にて。

 

 「よーし、いいぞ~!もっと笑って!!目線こっちに!!」

 

 カメラを片手に、被写体に指示を出す一刀。その被写体とは言うまでもなく、華雄だった。

 

 が、その格好が凄かった。

 

 紫の、体にぴっちりとしたそれは、『スク水』!!しかも、競泳用!!もちろん、胸にはひらがなで『かゆう』の文字!!

 

 これを見て萌え無いやつがいるだろうか!!いや、居まい!!

 

 「ど、どうだ北郷?こ、こんな感じか?」

 

 一刀の指示通り、目線を一刀に向け、にっこりと笑う華雄。

 

 (うん。生きてて良かった)

 

 絵をお見せできないのが残念です。

 

 ……というわけで、華雄が提案した作戦、それは、自身の写真集を発表するというものだった。

 

 「よっし。水着はこれぐらいでいいか。つぎ、行こうか」

 

 「ああ」

 

 暗転

 

 さあ~、と。優しい風が吹き抜ける。あたりには、紅葉した葉っぱがその風に乗って舞う。

 

 その中に、箒を手に持ち、掃除をする一人の女性。その服装は、白地に赤い線の入った、いわゆる巫女服。

 

 無論、華雄である。

 

 「いいよ~。そのはかなげな表情がまたなんとも!男心をくすぐるよ~!」

 

 「そ、そうか?」

 

 箒を持ったまま、もじもじと照れる華雄。

 

 (萌え~~~~~!!)

 

 さらに、

 

 「おはよう、北郷。ほら、コーヒー。冷めないうちに飲めよ」

 

 そう言って、コーヒーカップを差し出す華雄。その格好は、

 

 「わ、ワイシャツ一枚……!!(じ~~~~~)」

 

 「ば、馬鹿。あまり見るな。は、恥ずかしいじゃないか」

 

 真っ赤になり、うつむいたまま自分のコーヒーをすする華雄。

 

 (あ~。天国ってあったんだ……)

 

 で、今度は。

 

 ピシイッ!!

 

 響く鞭の音。そして、

 

 「ほら、なんて言ってほしいんだ?罵るのか?それとも恥辱にまみれたいのか?」

 

 ぐりぐりと。

 

 軍服姿で、一刀を踏みつけながら、言葉で攻める華雄。

 

 「の、罵ってほしいです!!恥辱にまみれさせて欲しいです!!」

 

 「ふん、この変態が。貴様などに私の言葉はもったいないが、思う存分に味あわせてやろう。さあ喜べ、この豚が!!」

 

 「あ、ありがとうございます~~~!!」

 

 (あ~、こーゆーのも新鮮でいいかも)

 

 ……ちょっと違う方に往こうとしている、一刀であった。

 

 

 

 で、最後はここだ、と。一刀は華雄に、ある場所につれてこられたのだが。

 

 「あの、さ。何で目隠しなんかするわけ?てか、ここどこ?」

 

 「いいから、もう少しだけまってろ。よし、ここに立って、私が良いというまで、動いてはだめだぞ。目隠しもとるなよ?」

 

 そう言って一刀から離れる華雄。

 

 「な~、たしか計画書はさっきので終わったはずだろ?」

 

 「ひ、一つだけ書くのを忘れていたのがあったんだ!い、今着替えているから、もう少し待て!」

 

 しゅるしゅる、がそごそ。と、衣擦れの音だけがあたりにこだまする。そして、

 

 「も、もういいぞ。目隠しを取っても」

 

 「やっとかい?やれやれ、いったい何を忘れてたんだか」

 

 目隠しをとる一刀。

 

 「……」

 

 思わず、見入ってしまった。

 

 純白の、ドレス。同じ色のヴェール。そして、手の中の、ブーケ。

 

 ウエディングドレスをきた華雄が、そこにいた。

 

 「……へ、変か?その、に、似合わないか?やはり、私にはこんな」

 

 「綺麗、だ」

 

 「!!」

 

 「これは、写真にはできないな。こんなに綺麗な華雄、ほかのやつには見せたくない」

 

 「北郷……」

 

 そのとき、

 

 がらーん、がらーん、がらーん。

 

 教会の鐘が響く。

 

 それを合図に、どちらからとも言わず、寄り添い、口付けを交わす二人だった。

 

 

 

 それからしばらくして、華雄の写真集、題して、

 

 『真夏の天使 華雄』

 

 の発売と相成ったわけだが、

 

 「ほんごーーーーーーー!!きっさまという男はーーーー!!」

 

 「ごめんってばーーーー!!ほんの、ほんのちょっとしたミスじゃないかーーー!!」

 

 「ほんのちょっと、ですむような事かーー!!なんなんだこれは!?あの時撮った写真は一体どうした!?」

 

 自分の写真集を手に、一刀に詰め寄る華雄。

 

 「だから手違いなんだって!!出版にまわすフィルムを間違えたんだよ!!だから決してわざとじゃないってば!!」

 

 つまりはこういうことである。

 

 実際に発売された写真集に使われたのは、先日撮ったものではなく、戦場での負けシーンとか、公孫賛とともに吊るされているものとか、そんなものばっかりであった。

 

 「これじゃ、一体何のための作戦だったんだ!!これを期に、真のヒロインとして台頭するはずだった私の夢は、夢は……」

 

 がっくりと落ち込む華雄。

 

 そんな華雄を慰めようと、必死で謝る一刀。だが、その懐には、一つのフィルムが入っていた。そう、正真正銘、あのときのフィルムが。

 

 (こんなもの、世の中に出したら、華雄のファンが増えて、俺が傍に居られなくなっちゃうもんな。華雄には悪いけど、これは、俺の秘蔵コレクションとして、ひと夏の思い出として、永久に封印させてもらおう)

 

 わんわんと泣きじゃくる華雄をなだめながら、そんなことを考えていた一刀であった。

 

 ~完~

 


 
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