「頼む、北郷!!協力してくれ!!」
いきなり部屋に入るなり、一刀に土下座をする華雄。
「ど、どうしたんだよ?話があるからって待っててみれば」
「私は、私は、もう、我慢がならないんだ!!」
土下座をしたまま肩をわなわなと震わす華雄。
「いやだから、ちゃんと説明をしてくれないと、何がなんだか」
その一刀の言葉に、きっ!と、真剣なまなざしを向ける華雄。
「なあ、私の存在意義は何だ?」
「は?」
存在意義。レーゾンデートル。いきなり出てきた哲学用語(?)に、ポカンとする一刀。
「出番が来たと思えば、戦場でただ猪のように敵に突撃し、挙句にあっさりと退場。その後は白蓮並み、いや、今やそれ以上に存在感のないキャラに仕立て上げられ、さらには新作では出番すらなかった!!作品説明には『出るの?』の一言だ!!」
かなり鬱憤がたまっていたんだろう。次々と出てくる不満の数々。一刀も思わず、「不憫な……」と、涙が一筋ほろりと流れる。
「だからだ!!今後私が生き残るために、一人立ちしていけるために!!頼む!私の計画に協力してくれ!!
再び土下座をする華雄。
「(ぐすっ)……わかった。不肖、この北郷一刀、惜しみなく、協力させてもらおうじゃないか!!」
がっし、と。涙を流しながら、華雄の両手をつかむ一刀。
「あ、ありがとう、北郷!!」
「で、さしあたって、俺は何をすればいい?何でも言ってくれ!!」
「では、これを見てくれ。これが私の最後の手段だ!!」
「こ、これは!!」
その数日後。とある海岸にて。
「よーし、いいぞ~!もっと笑って!!目線こっちに!!」
カメラを片手に、被写体に指示を出す一刀。その被写体とは言うまでもなく、華雄だった。
が、その格好が凄かった。
紫の、体にぴっちりとしたそれは、『スク水』!!しかも、競泳用!!もちろん、胸にはひらがなで『かゆう』の文字!!
これを見て萌え無いやつがいるだろうか!!いや、居まい!!
「ど、どうだ北郷?こ、こんな感じか?」
一刀の指示通り、目線を一刀に向け、にっこりと笑う華雄。
(うん。生きてて良かった)
絵をお見せできないのが残念です。
……というわけで、華雄が提案した作戦、それは、自身の写真集を発表するというものだった。
「よっし。水着はこれぐらいでいいか。つぎ、行こうか」
「ああ」
暗転
さあ~、と。優しい風が吹き抜ける。あたりには、紅葉した葉っぱがその風に乗って舞う。
その中に、箒を手に持ち、掃除をする一人の女性。その服装は、白地に赤い線の入った、いわゆる巫女服。
無論、華雄である。
「いいよ~。そのはかなげな表情がまたなんとも!男心をくすぐるよ~!」
「そ、そうか?」
箒を持ったまま、もじもじと照れる華雄。
(萌え~~~~~!!)
さらに、
「おはよう、北郷。ほら、コーヒー。冷めないうちに飲めよ」
そう言って、コーヒーカップを差し出す華雄。その格好は、
「わ、ワイシャツ一枚……!!(じ~~~~~)」
「ば、馬鹿。あまり見るな。は、恥ずかしいじゃないか」
真っ赤になり、うつむいたまま自分のコーヒーをすする華雄。
(あ~。天国ってあったんだ……)
で、今度は。
ピシイッ!!
響く鞭の音。そして、
「ほら、なんて言ってほしいんだ?罵るのか?それとも恥辱にまみれたいのか?」
ぐりぐりと。
軍服姿で、一刀を踏みつけながら、言葉で攻める華雄。
「の、罵ってほしいです!!恥辱にまみれさせて欲しいです!!」
「ふん、この変態が。貴様などに私の言葉はもったいないが、思う存分に味あわせてやろう。さあ喜べ、この豚が!!」
「あ、ありがとうございます~~~!!」
(あ~、こーゆーのも新鮮でいいかも)
……ちょっと違う方に往こうとしている、一刀であった。
で、最後はここだ、と。一刀は華雄に、ある場所につれてこられたのだが。
「あの、さ。何で目隠しなんかするわけ?てか、ここどこ?」
「いいから、もう少しだけまってろ。よし、ここに立って、私が良いというまで、動いてはだめだぞ。目隠しもとるなよ?」
そう言って一刀から離れる華雄。
「な~、たしか計画書はさっきので終わったはずだろ?」
「ひ、一つだけ書くのを忘れていたのがあったんだ!い、今着替えているから、もう少し待て!」
しゅるしゅる、がそごそ。と、衣擦れの音だけがあたりにこだまする。そして、
「も、もういいぞ。目隠しを取っても」
「やっとかい?やれやれ、いったい何を忘れてたんだか」
目隠しをとる一刀。
「……」
思わず、見入ってしまった。
純白の、ドレス。同じ色のヴェール。そして、手の中の、ブーケ。
ウエディングドレスをきた華雄が、そこにいた。
「……へ、変か?その、に、似合わないか?やはり、私にはこんな」
「綺麗、だ」
「!!」
「これは、写真にはできないな。こんなに綺麗な華雄、ほかのやつには見せたくない」
「北郷……」
そのとき、
がらーん、がらーん、がらーん。
教会の鐘が響く。
それを合図に、どちらからとも言わず、寄り添い、口付けを交わす二人だった。
それからしばらくして、華雄の写真集、題して、
『真夏の天使 華雄』
の発売と相成ったわけだが、
「ほんごーーーーーーー!!きっさまという男はーーーー!!」
「ごめんってばーーーー!!ほんの、ほんのちょっとしたミスじゃないかーーー!!」
「ほんのちょっと、ですむような事かーー!!なんなんだこれは!?あの時撮った写真は一体どうした!?」
自分の写真集を手に、一刀に詰め寄る華雄。
「だから手違いなんだって!!出版にまわすフィルムを間違えたんだよ!!だから決してわざとじゃないってば!!」
つまりはこういうことである。
実際に発売された写真集に使われたのは、先日撮ったものではなく、戦場での負けシーンとか、公孫賛とともに吊るされているものとか、そんなものばっかりであった。
「これじゃ、一体何のための作戦だったんだ!!これを期に、真のヒロインとして台頭するはずだった私の夢は、夢は……」
がっくりと落ち込む華雄。
そんな華雄を慰めようと、必死で謝る一刀。だが、その懐には、一つのフィルムが入っていた。そう、正真正銘、あのときのフィルムが。
(こんなもの、世の中に出したら、華雄のファンが増えて、俺が傍に居られなくなっちゃうもんな。華雄には悪いけど、これは、俺の秘蔵コレクションとして、ひと夏の思い出として、永久に封印させてもらおう)
わんわんと泣きじゃくる華雄をなだめながら、そんなことを考えていた一刀であった。
~完~
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刀香譚本編の途中ですが、夏祭り参加作品第三弾です。
華雄が何やら始めようとしています。
真夏の夢をご堪能ください。
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