No.164198

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第二十七話

狭乃 狼さん

荊州の乱が終わって数日後。

襄陽の城に集まった、荊州の面々。

いろいろとお話中の様子をお伝えします。

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2010-08-08 11:16:22 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:15671   閲覧ユーザー数:13422

 「本当に無事でよかったよ、白蓮」

 

 そう言って、笑顔で公孫賛の手をとる一刀。

 

 「あ、ああ///ありがとう、一刀」

 

 思いがけず手を握られて、真っ赤になりながら返事をする公孫賛。

 

 荊州の騒乱が集結してから三日。

 

 襄陽城の広間に、荊州に所属する将と文官が一同に会していた。全員の労をねぎらうためと、今後のことを話し会うためである。

 

 「劉翔様、まずは御礼を述べさせていただきます。娘の璃々を自ら救い出してくださいましたこと、この黄漢升、本当に感謝いたします」

 

 「おにーちゃん、ありがとう!!」

 

 深々と頭を下げる黄忠と、その娘の璃々。

 

 「頭を上げてください、黄忠さん。・・・正直言えば、全く打算がなかったわけでもないんですし」

 

 頭を下げる黄忠に対し、申し訳なさ気に言う一刀。

 

 「それでもですわ。危険を冒してまで城に潜り込み、見も知らぬものたちのために命を賭したのは事実ですもの」

 

 そんな一刀に、笑顔で答える黄忠。

 

 「そうじゃな。一刀兄がおらなんだら、妾たちはここに、こうしておらなんだも知れんのじゃ。胸を張ってよいのじゃぞ、一刀兄」

 

 黄忠に続いて、袁術が一刀に言う。

 

 「……いや、美羽と七乃さんにこそ、俺は謝らなきゃいけない。俺が余計なことをしなければ、そしてもっとうまくやれていれば、紀霊さんを死なせずに済んだかもしれない。二人とも、ごめん」

 

 袁術と張勲に、頭を下げる一刀。だが、

 

 「……ふざけないでください」

 

 「え?」

 

 張勲の言葉に思わず顔を上げる一刀。

 

 「自分が余計なことをしなければ?もっとうまく出来ていれば?そんなものは自己満足の逃げ口上にすぎません。思い上がるのも、大概にしてください」

 

 まっすぐに一刀を見つめ、その自己弁護に等しい台詞をたしなめる張勲。

 

 「……」

 

 一刀は二の句が告げなかった。張勲の言葉はまさしく正論だった。

 

 「……ですから、二度と自分を卑下するようなことは言わないでください。紀霊さまも、うかばれませんから」

 

 目に涙を浮かべ、それでも、笑顔を作って一刀に言う張勲。

 

 

 「……そう、だね。今のはお兄ちゃんが完全に悪いね」

 

 「ですな。主は女心というものが全くわかっておられぬ」

 

 「そうね。女たらしのクセに、肝心なところはすさまじく鈍感だったりとかね」

 

 立て続けに、一刀に非難の言葉を浴びせる、劉備、趙雲、賈駆の三人。

 

 「ちょっと待て!!桃香はともかく、後の二人は言いがかりだ!!特に詠!!俺のどこが女たらしと?!」

 

 その一刀の台詞に、

 

 『はあ~~~~~~~~~~~』

 

 と、その場の全員がため息をつく。

 

 「な、なに?みんなして」

 

 「一刀兄は心底鈍感なのじゃな。女装なんぞするくらいじゃから、女心も良く判っているかと思うたが」

 

 「美羽!!それ、シー!!シーーーーーーッッ!!」

 

 慌てて袁術の口をふさぐ一刀。

 

 「じょ!女装ですと!?義兄上、まさか」

 

 「へう~。一刀さんてそんな趣味があったんですか?」

 

 「とうとう本性現したわね!この変態!」

 

 女装、の言葉に、思いっきり引く関羽と董卓。そして一刀を罵倒する賈駆。

 

 「そこ!思いっきり引かない!てか、俺は変態じゃない!!」

 

 「女装趣味のあるやつを変態と呼んで何が悪いのよ!!この変態!!」

 

 悲痛に叫ぶ一刀に、さらに容赦なく突っ込む賈駆。

 

 「だから趣味じゃないっての!あれは潜入のために仕方なく……!!」

 

 「その割りには、ずいぶんと手馴れていましたな」

 

 弁明しようとする一刀に、趙雲が突っ込む。

 

 「……一刀。はっきり言ったらどうだ?昔とった杵柄だと」

 

 「白蓮!!」

 

 「どういうことだ、白蓮」

 

 公孫賛に華雄が問う。

 

 「私塾に入ったばかりの頃な、一刀と桃香が良くやってたんだよ。入れ替わってのいたずらを、な」

 

 「「う……」」

 

 二人して顔を真っ赤にする、一刀と劉備。

 

 「華琳や蓮華、それに麗羽のやつも被害にあってたっけな。……二人とも、水泳事件のこと、忘れていないだろうな?」

 

 一刀と劉備を睨み付ける公孫賛。

 

 「忘れてません!忘れてませんから、もう、勘弁してください、白蓮さん……」

 

 なみだ目で訴える一刀と劉備であった。

 

 「……あ。袁術ちゃんがかつてない顔色になってる」

 

 「え?」

 

 「……(ぴくぴく)」

 

 一刀に口を押さえられたまま、顔を真っ青にし、白目をむいて痙攣している袁術。

 

 「うわ!!ごめん!!」

 

 「ぶはっ!!し、死ぬかと思ったのじゃ……」

 

 「お嬢様、大丈夫ですか?」

 

 「うむ、大丈夫じゃ。……そういえば、川の向こうに手を振っているかかさまが見えたような気がするが」

 

 (そ、その川って、三途の……?ぜんぜん大丈夫じゃないし)

 

 

 「あの~。そろそろ本題に入りませんか?」

 

 おずおずと手を上げていう諸葛亮。

 

 「そ、そうだな。え~と、まずは」

 

 「荊南諸城の扱いからいきましょうか」

 

 一刀にそう提案する黄忠。

 

 「そうだね。……まず、美羽の意見から聞こうか。現状、図らずも南郡の諸城は袁家の領地ということになってるけど、今後はどうしたい?」

 

 袁術に問いかける一刀。

 

 「妾としては、元の領主に城を還したいと思うておるがの。正直、妾たちだけでは南郡をすべて統治するのは、少々難しいしの」

 

 まじめな顔で一刀に言葉を返す袁術。

 

 「そっか。……朱里、各城の元城主さんたちはどうしてる?」

 

 「それなんですが、皆さん、このまま袁術さんの下で働きたいと仰ってるんです」

 

 「「は?」」

 

 諸葛亮の言葉に、思わずあっけに取られる袁術と張勲。

 

 「各城を落とすとき、紀霊将軍はでき得る限り、被害を出さないように苦心されました。陥落後は城主の方や民たちを手厚くもてなし、事情とともに謝罪をされてもいました」

 

 黄忠が南郡攻略の際の様子を、一同に説明する。

 

 「皆さん、紀霊将軍の最期を耳にされ、その忠心にいたく感銘を受けられたしょうでしゅ。はわわ」

 

 「なので、紀霊将軍の分まで、袁術さんを支えて差し上げたいと、そうおっしゃってましゅた。あわわ」

 

 かみながらも、交互に話す諸葛亮と龐統。

 

 「……美羽、七乃さん。どうだろう?南郡の統治、引き受けてもらえないかな?」

 

 「「……」」

 

 一刀に問われ、顔を見合す袁術と張勲。

 

 「……やってみたいのじゃ」

 

 「美羽?」

 

 「かかさまの望んだ為政者になるのが、妾の今の目標なのじゃ。民を愛し、民に愛される為政者になるのが」

 

 一刀を見据え、はっきりという袁術。

 

 「一刀兄。南郡は妾に任せてたも。必ずや、よく治めて見せるのじゃ!」

 

 胸を張って言う袁術に、一刀はやさしく微笑み、

 

 「わかった。……いいかい、沙耶」

 

 隣に座る劉琦に確認する一刀。

 

 「はい。袁術さん。貴女を荊州牧・劉琦の名の下、南郡の太守に任じます。……頑張ってね、美羽ちゃん」

 

 太守の印綬を、にっこり笑顔で袁術に手渡す劉琦。

 

 「御意、なのじゃ!」

 

 笑顔で印綬を受け取る、袁術であった。

 

 

 

 「さて、次はと」

 

 「白蓮ちゃん、これからどうするの?」

 

 劉備が公孫賛に問う。

 

 「水蓮とも相談したんだが、このまま一刀の配下に加えてもらおうと思ってる。どうだろう、許してもらえるだろうか」

 

 一刀に問う公孫賛。

 

 「いいのかい?こっちとしては大歓迎なんだけど」

 

 「ああ。よろしく頼む」

 

 「こちらこそ。期待してるよ、白蓮。水蓮さん」

 

 公孫賛と、その妹の公孫越に、微笑む一刀。そして、その笑顔で真っ赤になる二人。

 

 「……やっぱり女たらしじゃない」

 

 その様子を見て、なぜか不機嫌になる賈駆。

 

 「詠ちゃん、なんで機嫌悪いの?」

 

 「べ!別に機嫌悪くなんかなってないわよ!!ボクはただ……!!」

 

 「……そっか(にこにこ)」

 

 あせる親友を見て、優しい笑顔になる董卓だった。

 

 

 

 「では、最後は私ですね。劉北辰様、この黄漢升、その幕下にお加えいただきたく思っております」

 

 「もちろん喜んで。よろしくお願いします、黄忠さん」

 

 「紫苑、ですわ。私の真名、お預けいたします」

 

 そう言って、深々と礼をする黄忠。すると、一刀の目に飛び込んできたのは、

 

 (う。桃香よりすごいんじゃないか、あれ)

 

 目の前で、たゆんたゆんとゆれる黄忠の胸に、思わず目を奪われる一刀。

 

 「……おにいちゃん、どこ見てるの?」

 

 「……義兄上?鼻の下が伸びきってますが?」

 

 「へう~~。一刀さん、フケツです」

 

 「……やっぱり、一刀兄も大きいほうがいいのかの?」

 

 一斉に、冷たい目を一刀に向ける一同。

 

 「あ、あの、皆さん?目が、怖いんですけど?」

 

 たじろぐ一刀。そこに、黄忠が一言。

 

 「あらあら、仕方ないですわね。……ご主人様、よろしければ、今夜にでもお見せいたしますわよ?……もちろん、二人っきりで」

 

 「是非!!……あ」

 

 しまった、と。思ったときはもう遅かった。

 

 「コンンンノ、スェッソウナシガーーーーーーーーー!!!!」

 

 「アニヴエ!?オンドゥルラギッタンディスカーーー?!」

 

 「こんのど変態!!天誅ーーーーーー!!」

 

 「あんぎゃあああああーーーーーーー!!!」

 

 三人の嫉妬神に、追いかけられる一刀。

 

 「自業自得」

 

 「さらば、一刀」

 

 「安らかに永眠してください、一刀さん」

 

 手を合わせて一刀の冥福を祈る、一同であった。なむ。

 

 ちーーーーん。

 


 
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