「待て星!!一人で行ったところで、なぶり殺しにされるだけだ!!。」
公孫賛が目の前にいる少女に向かって大声を出した。
少女は肩に槍のような武器を携え、純白の着物を身に纏っていた。
「伯珪殿、この私があのような族共に負けると仰いますか。」
「そうは言っていない!!ただお前一人が行ったとしても、数の暴力には耐え切れないだろう!?」
「はっはっは、ご心配召されるな。この趙子龍、見事あの族共を打ち倒してご覧に入れましょうぞ!!」
そう言うや否や、クルリと身を翻すとあっという間に敵陣の方へと消えていってしまった。
公孫賛は唇を噛み締め、やがて舌打ちをすると、
「誰か居る!!」
「ッハ!!」
「劉備の所からはまだ援軍は来ないのか?」
「いえ、伝令によりますともうじき敵の本陣後ろから強襲するとのことです。」
「分かった。では各隊に出陣の準備を急がせろ!!準備が出来た隊から随時出陣し、敵の注意を此方に惹きつけるようにしろ!!」
「ッハ!!」
「・・・星、無事でいろよ・・・。」
公孫賛は晴れ渡った空を見上げながら呟いた・・・
俺達が公孫賛の軍に向けて伝令を飛ばしてしばらくした後、向こう側から戦闘が始まったと思われる叫び声や地響きが聞こえてきた。
「始まったみたいだな・・・。皆、準備はいいかい?」
俺は後ろに控える三人に振り返った。
「いつでも大丈夫です!!」
「鈴々もなのだー!!」
「私も大丈夫だよ!!」
「よし、じゃあ皆!!突撃開し・・・。」
俺が『紅蓮』『蒼天』を引き抜こうとした時、放っていた斥候の一人が戻ってきた。
「報告!!現在敵本陣前にて、何者かが凄まじい勢いで突き進んでいます!!恐らく公孫賛様の客将である趙雲将軍かと!!」
あの数をたった一人で突破するなんて無茶だろう!?
俺の知っている趙雲は確かに猛将だが、いくらなんでも無謀すぎる!!
「伝令ご苦労!!皆、俺はこれから自分の隊を率いて趙雲を助けようと思う!!愛紗と鈴々は左右から強襲して敵を混乱させてくれ!!桃香、君は本陣を率いて敵本陣後方から攻撃をしてくれ!!」
突然の作戦変更で三人は驚いたが、すぐに現状を把握してくれたのか『分かった(なのだ!!)!!』と口々に言ってくれた。
「それじゃあ、突撃開始だ!!」
『オオオオォォォォォォォォォ!!!!!』
俺が声を張り上げると、周りにいた自警団の人たちも叫んだ・・・
一体何人切り伏せ、突き殺したのだろうか。
気付けば私の周りには屍の山が出来ていた。
(啖呵を切ってここまで来たが、少々不味いな・・・。)
何しろ斬っても斬っても敵が湧いてくるのだ。いくら倒してもまるで勢いは止まらず、それにもかかわらず私の足場が少しずつ無くなっている。
「見ろ!!あの女肩で息をしてるぞ!!」
「もう少しだお前ら!!それであの女を八つ裂きにできるぜ!!」
(・・・全く、なんと都合が悪いのか。)
溜息をつきながら、私は愛槍『龍牙』を構えなおした。
「貴様らなどではこの私は倒せん。それでもかかってくると言うならば・・・」
周りに殺気を振りまきながら体制を低くしていった。
「我が愛槍『龍牙』が貴様らが命を食い散らすだろう!!」
その言葉で何かが切れたのか、賊共は一斉に掛かってきた。
右から来た相手の攻撃をいなし、その間に後ろから斬りつけてきた者へと蹴りを入れる。
そして背中ががら空きとなった相手に龍牙を突き刺し、その返す刀で前の敵を切り払う。
だが、
「ッしまった!?」
私は地面に広がる血溜りに足を取られ、体制が崩れてしまった。
「もらったぁぁぁ!!!」
左からやって来た男がここぞとばかりに剣を振り上げた。
(・・・すまない、伯珪殿・・・)
私は目を瞑り、覚悟を決めた。
・・・だが、いくら待っても相手が斬ってくる様子はない。
恐る恐る目を開けると、そこには・・・
「ふう、なんとか間に合ったな。・・・前にもこんなことがあった気がするな・・・?」
二本の剣を携えた男が、周りの黄巾党を切り倒した後があった。
「立てるか?」
俺は後ろに引っくり返っている趙雲に手を差し出した。
「あ、ああ。かたじけない。」
少女の方も少し警戒しながらも手を差し出してくれた。
「怪我は無いようだね。全く一人で本陣に飛び込むなんて、とんだ無茶をするな君は。」
「どうしてそれを・・・?」
「俺達の斥候が教えてくれたんだ。たった一人で周りの敵を蹴散らしながら本陣に向かっているヤツがいるってね。」
「・・・・・・。」
「まぁ、いくらあの『趙子龍』でも無謀だとは思ったし。」
俺が何気なくそのことを口に出した途端、少女の顔が驚きに変わった。
「どうして私の名を・・・?」
「へ?どうしてって、それは俺達公孫賛の軍を助けるために・・・」
「・・・私は伯珪殿にしかまだ字を教えていなかったはずですが・・?」
「あ、それは・・・えーと・・・。」
まずい、そういえばこの子は俺に会ったばかりなんだった・・・
俺がオドオドしていると、趙雲はニヤリと笑った。
「初対面の相手の名はともかく、字を知っているとは・・・。まぁ、後で貴方に聞いてみるとしよう。」
いつの間にか、俺達の周りにはまた黄巾党達が集まっていた。
趙雲は槍みたいな物を構えると、俺に背中を預けてきた。
「先程の腕、見事でしたぞ?期待しても宜しいですかな?」
俺も『紅蓮』『蒼天』を構えると、俺も背中を合わせた。
「期待・・・ね。それに答えられればいいけど。」
「フフ・・・。それでは参りましょうぞ!!」
「応っ!!」
そして俺達は迫り来る黄巾党達に向かって斬りかかった・・・
その時黄巾党達が見たものは信じられないものだった。
少女が後ろに下がるのと同時に男の背後から出てきた黄巾党を突き殺し、その間に男が前に出て黄巾党を斬り倒していた。
・・・まるで、二人は長年共に連れ添ってきたようだった。
それほどまでに二人は息がピッタリと合っていた。
「・・・ダメだ、あんな奴等に勝てるわけねぇ・・・!!」
黄巾党達はその光景を目の当たりにして恐れを為したのか、その場から逃げ出していった。
「・・・周りの敵は片付けたみたいだな。」
俺は紅蓮と蒼天を仕舞うと、趙雲に話しかけた。
「少しばかり逃がしたようですが、まぁ問題はありますまい。それにしても・・・」
と趙雲は俺の事をジロジロと見てきた。
「な、なんだよ。」
「・・・いや、何でもありませぬ。」
趙雲はそういうと、槍を担いで敵本陣に向かおうとした。
「あー、今から本陣に向かうのかい?」
「そうですが、何か?」
「そのことなんだけど、もうじき落ちると思うよ?だって・・・」
そういいかけた途端、
「敵将ッ!!討ち取ったりー!!」
『オオオオオォォォォォォォ!!!』
っと雄叫びが敵本陣聞こえてきた。
「っね?」
「・・・・・・。」
俺と趙雲は顔を見合わせると、桃香達が待つ本陣へと歩いていった。
「白蓮ちゃ~ん!!」
「うおぉうっ!!と、桃香、苦し・・・」
公孫賛を見つけた桃香は、いきなり突進して抱きつくと首に手を巻きつけて叫んでいた。
対する公孫賛はというと、首を絞められて今にも昇天しそうな勢いで顔が真っ青になりつつあった。
見かねた愛紗が桃香に近づいていった。
「桃香様、公孫賛殿が苦しそうにしているではありませんか!!」
「あ、そうだった。ゴメンゴメン・・・」
あははと笑う桃香であった。
「ッゲホ、ゲホ・・・。あ~死ぬかと思った・・・。」
「大丈夫か?」
「ああ、なんとか・・・。さて、今回はありがとう桃香。助かったよ。」
「あぁ~、いいよいいよそんな畏まらなくて。困っているときはお互い様でしょう?」
「それでもだ。桃香達が来てくれなかったら、趙雲が死んでいたかも知れないしな。」
「伯珪殿は心配性ですな。現に私は生きているではありませぬか。」
「桃香達が助けてくれなかったら、今頃お前は死んでいただろ!!」
「まぁ・・・、否定はしませぬが。でもこのお方が助太刀をしてくれたゆえ、助かり申した。」
すると、公孫賛の視線が俺を向いた。
「へぇ~、お前が最近噂されてる『天の御使い』か。」
「まぁ、巷ではそういわれてるみたいだね。」
俺は肩を竦ませながら答えた。
「ご主人様、この人は・・・」
「ああ桃香、それは私が言おう。・・・私の名は公孫賛、字は伯珪だ。よろしく。」
「私の名は趙雲。字は子龍だ・・・と、『天の御使い』殿は分かるのでしたな。」
趙雲が此方を見てニヤリとした。
俺はそれを見て溜息をつきながら、二人に自己紹介した。
「俺の名前は北郷一刀。好きに呼んでくれ。」
「北郷・・・か。趙雲を助けてくれて本当にありがとう。」
「そんな、当然のことをしたまでだよ。それに、目の前で誰かを見捨てることが出来ないから・・・。」
俺は苦笑しながら言った。
・・・それから俺達はそれぞれの自己紹介と情報交換をして、しばらくは共同で黄巾党を討伐することにした。
なにやら噂によると、今まであちこちに逃げていた黄巾党が一大結集をしているらしい。
なので、俺達は集まって来る連中を分断して一つ一つ潰していくことにした。
そして、来るべき決戦へと準備を整えていった・・・
あとがき
あ・・・暑い・・・。
只今の温度計32℃です。蒸し暑いです。
その為頭がボーっとしていて、途中自分が何かいているのか分からなくなりそうでしたよ。
それはともかく。
また更新が遅れてしまいました・・・。申し訳ない。
でも、アリウェルが俺を放してくれなくて(武装神姫で名づけたキャラ)、仕方がなかったんだよ。
・・・あ、ゴメン。物投げないで、ホントにゴメンって。
まぁ、なるべくゆっくりせずにやっていきたいのでよろしくお願いします。
ではお疲れ様でした!!
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第九話です。
そろそろ黄巾の乱が終わりに近づいてきました。
話は変わりますが、武装神姫おもしれぇ!!