No.153640

飛天の御遣い~第弐拾四幕~

eni_meelさん

本編再開です。
何者かの襲撃を受けた一刀。
その狙いとは・・。
拙い未熟な文章ですが、
少しでも楽しんでいただければ幸いです。

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2010-06-27 09:43:45 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:3173   閲覧ユーザー数:2859

はじめに

 

この作品の主人公はチート性能です。

 

キャラ崩壊、セリフ崩壊、世界観崩壊な部分があることも

 

あるとは思いますが、ご了承ください。

 

 

北郷side

 

シュッ  シュッ

 

遠距離から弓の放たれる音を確認した。

 

(かなりの腕だな・・・・。周りに気配はないということは、かなりの遠距離からの狙撃か・・)

 

向かってくる2本の矢のうち1本をさりげなくかわすと、もう1本の矢は自分の肩に当てる。

 

ザシュッ

 

だが、刺さったかに見えた矢は一刀の手がしっかりと掴む。一刀は刺さった風に見せながら馬から落ちていく。落ちていく間に矢の飛んできた方向へ視線をやり、刺客の姿を確認する。落ちていく一刀の姿に朱里と詠は取り乱して

 

「「ご主人様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

 

と叫び声をあげるが、地面につく寸前で体勢を立て直し、着地するやいなや一刀は素早く馬に乗り直し、刺客のいるところへと単身駆け出す。仕留めたと思っていた刺客は突然の一刀の接近に虚を突かれ、逃走することが出来なかった。そんな刺客の下へ一刀が近付く。そして、一刀はその刺客の姿を見て目を疑った。目の前にいたのは

 

(・・・黄忠?!・・・・・・。紫苑か・・・・・。)

 

かつて自分に仕えてくれていた黄忠こと紫苑だった。黄忠は逃げられないことを悟ったのか、懐から短刀を取り出し自害しようとした。一刀は素早く短刀を取り上げそれを防ぐ。

 

「君は、黄忠さんだね?」

「・・っ、どうして私の名を?」

 

一刀の言葉に黄忠は驚く。そんなに名が通っているわけではない自分の名前を知っていた男に、恐怖を感じる。一刀は、硬直している黄忠に静かに話し始める。

 

「他の者には明かしてはいないが、俺は昔『天の御遣い』と呼ばれていたことがあってね。まぁ、天の知識とでも思ってくれればいい。それよりも黄忠、捕まる恐怖も分かるが自分の命を粗末にするものではない。君には君の帰りを待っている者がいるのではないのか?その者が君の死を知ったらきっと悲しむに違いない。だから自害なんてしないでくれ。」

「・・・・・っ、・・・・・・・・。」

 

そう言われ、脳裏には愛しい娘の璃々の姿が浮かんだ。そんな娘を助けるためとはいえ、意にそぐわぬ任務をすることへの自分自身への嫌悪感と、失敗したことにより娘に及ぶであろうことを思うと涙が出てきた。そんな黄忠の様子に一刀は何か事情があるに違いないと思い黄忠に話しかける。

 

「黄忠、君には何か事情があるのではないのか?もし良かったら話してくれないか?俺たちに協力できることあるのならば、力を貸してもいいんだが・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

しかし黄忠は何も喋ろうとしない。どうしたもんか、と思っていた一刀だが黄忠に向けられる不穏な視線を察知する。次の瞬間、黄忠の颶鵬を取り上げて徐に矢を3箇所に放った。

 

ザシュッ

 

「ぎゃぁぁぁ」

 

その3本の矢は陰に隠れていた者たちを射倒した。その光景に黄忠は驚いたが、一刀は何食わぬ顔で颶鵬を返すと、微笑みながら

 

「とりあえず、邪魔者は排除した。これで喋りやすくなったんじゃないのかな?」

 

そう飄々と言った。その心遣いに黄忠は小さな希望を見つけた気持ちになった。そして、黄忠はこれまでの経緯を一刀に話した。娘の璃々を人質に取られ、やむを得ず曹操暗殺に手を貸してしまったこと。それでも娘は返してもらえず、今度は北郷暗殺を命令されての行動だったこと。それを聞いた一刀は

 

「成る程、それで璃々ちゃんの居場所に検討はついているのかい?」

「いえ、それはまだ。ただ私の供の者が内密に探ってくれてはいるのですが・・・・。」

 

 

そう話している最中、一騎の騎馬が近付いてきた。その騎馬の者は一刀を確認するといきなり襲い掛かってくる。突然の剣撃も一刀は冷静に捌いていく。

 

「紫苑様、大丈夫ですか?この者は私が引き受けますから、早く逃げて。」

 

そう言うと乗っていた馬を黄忠に渡して、そのまま一刀に斬り込んで来た。そんな様子を見た黄忠が慌てて止める。

 

「ちょっ・・・・待って槐(えんじゅ)、その人は敵ではないのよ。」

「えっ?・・・・・でも。」

「いいから剣を下しなさい、槐。」

 

黄忠の厳しい言葉に困惑しながらも剣を下した女性は、黄忠のところへ行く。一刀も、ふぅ、とため息を吐き刀を鞘に納め、黄忠のもとへ行く。

 

「とりあえず名乗っておこう、俺は北郷という。君は?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「槐、ちゃんと名乗りなさい。北郷様は璃々を助けるために力を貸してくださると言っているのよ。」

「っ、本当なのですか?」

 

黄忠の言葉に槐と呼ばれる女性は一刀を見た。一刀は

 

「まぁ、俺たちで力になれることだったら喜んで力を貸すよ。だから名前を教えてくれるかな?」

 

そう尋ねると

 

「私の名は張任。姓は張、名は任。紫苑様にお仕えしております。」

 

張任はそう名乗った。一通りの自己紹介も終え、今後の行動について考える。張任が、

 

「紫苑様、璃々様の幽閉されている場所が分かりました。」

「本当?槐、場所は何処なの?」

「璃々様は長安にいらっしゃいます。調べでは劉璋は、各地の有力な武将たちの近親者を数多く幽閉し、自分の駒として動かすために一箇所にまとめて幽閉しているみたいです。それにより、紫苑様のように意に反することを強要されている武将たちも多いといいます。」

 

そう報告する。その報告を聞いて

 

「ということは、そこが攻略できれば反劉璋の勢力を結集させることが出来るというわけだな。そんな真似までされて劉璋に組するものもいるわけはない。ならば、その者たちが、劉璋の命を聞かなくていいように憂いをなくしてやればいいというわけか。」

「しかし、どうやって・・・?」

 

一刀の案に黄忠も張任もどうすればいいのか分からない。

 

「どちらにしろ、北郷と蜀との戦は避けては通れない。ならば、こちらから仕掛けて別働隊で長安攻略に出る。こちらが戦をしている間に、うちの隠密行動に長けた武将を忍び込ませ人質を解放。それを合図に反劉璋勢力と結託して蜀を攻撃。今の蜀は超大国だ。まずは少しでも敵の勢力を削ぐことを考えねばならん。そのために、黄忠、張任、君たちには蜀内部で劉璋に不満を持つ者たちを纏めていてもらいたい。戦では恐らく劉璋は君たちのような意のままに操ることの出来る手駒を最前線に配置してくるだろう。それを逆手にとって、救出後は反転し我等と共に蜀を討つ。君たちも劉璋にずっと仕えるつもりはないのだろう?」

 

一刀の言葉に黄忠も張任も頷く。

 

「であれば、君たちは一度益州へ戻って準備を頼む。救出が成功したら我が陣営から合図を送る。」

 

一刀がそういうと黄忠と張任は引き上げて行った。

 

(さて、そろそろ戻らないと心配かけるな・・・・・。)

 

そう思いながら、朱里や詠たちのもとへと向かっていった。

 

 

一刃side

 

左慈に負わされた傷もだいぶ良くなり、今では剣を振るうことも出来るようになっていた一刃は中庭で一人鍛錬をしていた。ここ数ヶ月、まともに剣を振るってなかったことに不安を覚えていたが前と変わらず剣は振るえていた。そんな一刃のもとに舞華と左慈がやって来た。

 

「一刃、まだ本調子ではないのだからあまり無理しないでください。」

 

舞華はそう言って苦言を呈するが、その瞳からはあの時の険はとれていた。

 

「分かってる、少し汗を流したらまた戻るから・・・・。」

 

そういって再び剣を振るう。それから暫くして、鍛錬が済んだのか一刃が舞華たちのところへやって来た。

 

「一刃兄さま、これで汗を拭ってください。」

 

そう言って手拭を渡してきたのは左慈だった。あの一件以来、左慈は一刃のことを敵視するのを止めた。それは一刀の言葉があったからだったのだが、憎しみの気持ちをはずして接する一刃は在りし日の兄と過ごしているような感じで嫌じゃなかった。そんな左慈の態度を一刃も嬉しく思っていた。そんな一刃たちのもとに伝令が入る。

 

「一刃将軍、北郷様が狙撃されたとの報が。関羽将軍が手勢を率いて国境へ向かわれました。」

「なんだと!」

 

その報告に一刃も国境へ向かおうとするが、舞華と左慈がそれを引き止める。

 

「一刃、ダメよ。まだ万全じゃないんだから。」「兄さま、無理しないでください。」

「しかし、愛紗たちが・・・・。」

 

そういって行こうとする一刃を舞華は諌めて、

 

「愛紗さんのところには私が行きますから、あなたは左慈ちゃんとお留守番しててください。」

「いや、しかし・・・・。」

「お・留・守・番・で・す。」

 

言い返そうとする一刃を舞華が黙らせる。そんな舞華の様子に冷や汗を流しながら苦笑する一刃であった。結局、舞華が愛紗たちの所へ行くようになり一刃と左慈は城に残ることになった。

 

 

国境付近

 

舞華が愛紗たちの軍に追いついたのはもう間もなく国境の砦に着く寸前のことだった。愛紗たちは、突然やってきた舞華の姿に

 

「舞華殿、どうしたのだそんなに慌てて・・・・。」

 

そう尋ねたが、舞華は愛紗のもとへ近付くと質問に答える前に

 

 

 

パァーーーーーン

 

 

 

 

愛紗の頬に平手を見舞う。その光景に霞や恋たちは唖然とした。愛紗も突然の出来事に頬を押さえながら呆然としている。そんな愛紗を睨みつけながら舞華は言う。

 

「愛紗さん、何故軍を動かしたのですか?」

 

舞華の問いに愛紗は口調を荒げながら答える。

 

「決まっているだろう、降伏すると見せかけて義叔父上を暗殺しようとした魏の連中を殲滅するためだ。」

「どうして魏の仕業だと分かるんですか?」

「奴らは降伏する振りをして我が国を乗っ取る気なのだ。許昌を追われた奴らが考えそうなことだろう。」

「そんな事をしても魏の方々には何の利点もありませんよ。彼らは、蜀の軍に追われている。そんな中で北郷様を暗殺して何の得があるのです?これ以上敵を増やすことは自分たちの首を絞めるだけの事。どうしてそれが分からないのです?」

「仲間が傷つけられたんだぞ。そんな奴らを信用することなど出来ん。」

 

愛紗のその問答に舞華は俯き、静かに

 

「そうやってあなたはまた無益な戦で人を殺していくのですね・・・・。」

 

そう呟いた。その呟きに愛紗は激高する。

 

「貴様、それは聞き捨てならん。私は弱き者のため、仲間のため、そして平和な世の中を造るために戦っている。人を殺すだけを目的に刃など振るわん。」

「だったら、魏の方々が助けを求めているのです。怨みや憎しみを乗り越えて手を差し伸べてあげてもいいじゃありませんか。それが平和な世の中を築くために必要なことではないのですか?」

「多くの仲間が奴らとの戦で傷つき倒れ命を失ったのだ。そんな奴らを許すことなど出来るはずがないだろう。文官の貴様に、戦で失うことを知らぬ貴様に何が分かる?」

 

そんな愛紗の言葉に舞華は黙って俯いた。肩が震えている。よく見るとその瞳からは涙が零れ落ちていた。

 

 

そんな舞華の様子に困惑する愛紗に

 

 

 

パァーーーーーン

 

 

 

容赦のない平手が頬を張った。張ったのは恋だった。

 

「・・・・・愛紗、舞華に謝る。」

「・・・っ何故だ?私は何も・・・・」

 

そう言い返そうとした愛紗だが、恋の冷たい殺気混じりの視線に口篭る。

 

「恋の言うとおりや、愛紗。今回のことはあんたが全面的に悪いで・・・。」

 

霞も殺気の混じった視線で愛紗を見つめる。そして、愛紗に語る。舞華の涙のわけを・・・。

 

「舞華も連合軍との戦であんたらに恋人を殺されてるんや。だけどそんな怨みも飲み込んであんたらが目指そうとしている平和のために一緒に戦っとる。ウチらだってそうや。例え袁紹に化けた者が企んだ事だったとしても、多くの同胞を奪ったあんたらへの怨みがないわけやない。だけど、ご主人様の目指すもののためにウチらも怨みを飲み込んでこうやって仕えとる。ウチらみたいな目にあうもんを少しでも減らすために、悲しみを少しでも無くしていくために。それやのにあんたがそんな考え方でおるんやったら、ウチらはあんたらと一緒には戦えんで。」

 

そんな霞の言葉に愛紗は何も言えず黙ってしまう。そんな殺伐とした雰囲気になっているところへ魏軍と共に戻ってきた一刀たちが声を掛ける。

 

「なんでお前たちが雁首揃えてここにいるんだ?」

 

その口調には怒気が混じっていた。そんな一刀に霞が今までの経緯を説明する。

 

「伝令?なぁ、朱里、詠、お前たち伝令なんて出したか?」

「いえ、出してませんよ。結局無事だったわけですし・・・。」

 

では誰が?そんな疑問を浮かべていた一同だったが、一刀にある可能性が浮かぶ

 

「まさか・・・・・・・・・・。」

 

 

冀州・鄴

 

「兄さま、お茶持ってきますね。」

 

そういうと左慈は一刃の部屋を後にする。厨房に行って茶器を揃えて一刃の部屋へ戻ろうとした左慈の前に見知らぬ男が立っていた。男は少しずつ左慈に近付いてくる。その男の醸し出す雰囲気に左慈は恐怖を覚える。身体が震えて動かない。男はどんどん左慈に近付いてくる。

 

(怖い・・・・。逃げたいのに身体が動かない・・・・。助けて、・・・助けて・・・兄さま・・・・。)

 

そして左慈の目の前に立った男は左慈を見てこう呟いた。

 

 

「貂蝉のヤツ、こんなところに隠していたとはな。だが、これで全てが揃う。『鍵』、『銅鏡』、そして『北郷一刀』。ふはははははは・・・・・・・・・・・」

 

ガシャーーーーーン

 

割れた茶器のその場所に左慈の姿は無くなっていた。

 

 

あとがき

 

飛天の御遣い~第弐拾四幕~を読んでいただきありがとうございます。

 

いよいよ本編再開です。

 

頑張って構想を練らなければ・・・。

 

あと、猪々子応援作品の方は本編よりも閲覧数が伸びませんでした。

 

やっぱり世間では猪々子は受け入れられないのでしょうか?

 

猪々子ファンが少ないことに少々切なさを覚えてしまいました。

 

でも私は猪々子を猛プッシュで応援しますよ。

 

猪々子好きの人のためにおまけを付けました。かなり強引ですが・・・・・。(いろんな意味で)

 

拙い作品ではありますが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

 

感想やコメントもいただけると嬉しいです。

 

よろしくお願いします。

 

 

おまけ

 

南蛮出発の日。文醜は兀突骨の墓の前にいた。手には文字の書かれた竹簡のようなものを持っていた。それを不思議に思った顔良が尋ねる。

 

「文ちゃん、それは何?」

「アタイの『気持ち』っていうか『想い』かな。兀ちゃんに向けての・・・・。」

 

顔良はその竹簡を覗き、そこに綴られた文字を見た。書かれている文字を見た顔良の瞳からは、涙が一滴零れ落ちた。そこには文醜の兀突骨に対する想いが拙い文字と文面で綴られていた。その竹簡を兀突骨の墓に添えると、手を合わせる。

 

(兀ちゃん・・・、アタイの素直な気持ち書いたから。読んでくれよな。それじゃあ、行って来ます。)

 

心の中でそういって文醜たちは蜀へ向かって進軍を開始したのだった。その言葉を残して・・・・・。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

我绝对不忘记一直以一方注视了的和善的你的面貌

 

 

 

什么时候的日再次能遇见,那时不犹豫说

 

 

 

「喜欢你的事」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(訳)

 

ずっと傍で見守ってくれた

 

兀ちゃんの優しい面影を

 

アタイは絶対忘れない。

 

いつかまた出会うことが出来たら

 

その時は躊躇わずに言うから・・・・。

 

「アタイは兀ちゃんのこと、大好きだ」って

 


 
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