はじめに
この作品の主人公はチート性能です。
キャラ崩壊、セリフ崩壊、世界観崩壊な部分があることも
あるとは思いますが、ご了承ください。
冀州・鄴
お茶を淹れてくる、といって出て行った左慈がいつまでたっても戻ってこない。胸騒ぎを感じた一刃は厨房の方へ向かってみると、何処からか
ガシャーーーーン
何かが割れる音が聞こえた。その音がした場所へ向かった一刃は、割れている茶器を見つける。
「礪?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「礪?いないのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
左慈の名前を呼んでみるも、返事はない。辺りを見回すが人影も人の気配も感じない。
(一体何処へ行ったんだ?)
そう考えていると、後ろに物凄い殺気を感じ振り返る。そこにはさっきまでいなかったはずなのに、2人の人影が立っていた。その内の一人を見て一刃は驚く。
「貴様は・・!!」
そう言葉をかけた相手は、洛陽で舞華を襲った男だった。その男の腕の中には気を失って抱えられている左慈の姿があった。
「礪!・・・・貴様ら礪に何をした?」
一刃は2人の男に殺気を向け放つ。そんな中、口を開いたのは別の男の方だった。
「別に何もしちゃいないさ。今は・・・な。」
くくく、と口を押さえながら笑った男。だが、その男からは信じられないくらい冷たい殺気が放たれている。只ならぬ雰囲気に一刃は動くことが出来ない。
「貴様らとは時が来れば再び会うことになろう。その時まで『この世界』を満喫するがいい。それと北郷に伝えておけ。貴様が守ろうとするものは我等が必ず消すとな。フハハハハハハハハハ・・・・・。」
高笑いする声だけがその場に響き渡っていた。2人の姿はもうなくなっていた。左慈を連れ去られてしまった不甲斐ない自分に愕然とする一刃。目の前の男に圧倒され、ただ黙って左慈が連れて行かれるのを見ることしか出来なかった。ガックリと膝をつき項垂れる。そんな一刃のもとに、帰って来た一刀たちが近寄る。
「一刃、大丈夫か?」
一刀の問いかけに黙って頷く一刃。しかし、そんな一刃の様子を不振に思った舞華が駆け寄り
「一刃?どうしたの・・・・・・、それは・・?」
舞華は一刃の目の前にあった割れた茶器を見つけると、一刃に尋ねる。一刃は小さな声でその問いに答える。
「左慈が・・・、礪が連れ去られました。」
「・・・っ、・・何だと!」「・・・本当なの一刃?」
一刀と舞華がその報告に驚く。
「誰に連れて行かれたのだ?」
「2人組の男としか・・・・。ただ、その内の一人は洛陽で舞華を襲った男です。」
一刃の言葉に舞華は凍りつく。あの時の恐怖が蘇ったのかもしれない。
「あと、師匠に言伝を・・・・・。『貴様の守ろうとするものは、我等が必ず消す』と。俺には何のことだかさっぱり分かりませんでしたが・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・そうか・・。」
一刃の報告に一刀は小さくそう呟いた。一刃の報告で一刀は確信する。今回の黒幕もまた蜀が関連していると。
「とりあえず、今後のことについて協議することがある。疲れているとこ悪いが、皆玉座の間へ集まってくれ。」
一刀の指示に各々「御意」と答えるのだった。
????
―――――――――――――――あなたへの謝儀は・・・・・・私自身よ・・・・。
(・・・・何?これは私?)
―――――――――――――――あなたの子供なら、産んであげる・・・・。
(私の目の前にいるのは、一刃?いや違う、一刃というより・・・・・・・)
―――――――――――――――私の名前は曹孟徳。転んでもタダでは起きないんだから・・。
(・・・・北郷?・・・・・・まるで北郷の若い頃のような・・・・・・。)
―――――――――――――――今の華琳は王者じゃないよね?
(何を言ってるの。私は魏の王、曹孟徳よ。それになんで私の真名を馴れ馴れしく・・・・。)
―――――――――――――――華琳ってこんなに小っちゃいんだな。
(・・・・なっ、なんて失礼なことを言うのかしらこの男は・・・・。)
―――――――――――――――小さくて、可愛いって意味なんだけど・・・・・。
(可愛いなんて・・・・・・・・・・・、言われたことなかったな・・・・・・・・・・・。)
―――――――――――――――・・・・ト、私の力を貸して欲しい?
(これは戦場?相手は何?白装束?この光景は一体・・・?)
そんな事を考えていると目の前が広い光に包まれていく。
(眩しい・・・・・・。)
そうして瞳を閉じる・・・・・・。
目が覚めるとそこには目を赤く腫らした桂花と雛里、秋蘭の姿があった。
「・・・・・ここは・・?」
「ここは北郷領の鄴です。」
曹操の問いに桂花が答える。
「・・・どうして、こんなところに・・・・?」
そう問いかける曹操に雛里は今までの出来事を話す。曹操が矢で狙撃を受けたこと、その間に春蘭たちが謀叛を起こし、それに乗じた蜀が許昌を制圧したこと、その追撃から逃れるために北郷へ助けを求めたことなど・・・・。その報告を聞いた曹操は「・・・そう。」と短く呟いた。
「申し訳ありません。私たちが至らないばかりにこんなことになってしまって・・・・・。」
桂花と雛里はそう言って項垂れる。そんな2人に
「いいのよ。元はといえば私が狙撃されて倒れていたのが原因なんだし。貴方たちを責めるつもりはないわ。」
そんな曹操の言葉に桂花も雛里も泣きながら曹操に抱きついた。そんな2人を優しく抱きしめると、頭を撫でる。そんな曹操の下へ秋蘭が近付く。
「華琳様、姉者がこんなことをしてしまって申し訳ありません。すべては妹である私の責任・・・・。いかな処分も甘んじて受ける次第です。」
「あなたの罰する理由なんてないわ。それにあなたが生きていてくれただけで嬉しいわ。」
曹操の言葉に秋蘭は涙を流す。
「北郷殿にもそう言われました。『華琳様を助けられるのなら私の命などいりません』、と言った私に、『曹操の命が助かっても君がいなくなったら曹操は悲しむんじゃないかな?」そういってくれました。だから私が生きていられるのも北郷殿のお陰です。」
「そう・・・・、北郷には随分と世話になったのね・・・。何か礼をしなければいけないわね・・・・。」
秋蘭の報告に曹操はそう呟く。そんな様子を見ていた男が口を開く。
「まぁ、それはあまり気にしなくていいよ。」
その声に曹操は、視線を移すとそこには一刀の姿があった。
「それに、これから夏侯惇たちのいる許昌へ戦を仕掛ける。そのために夏侯淵殿たちの協力をお願いしたいんだけれど、どうかな?曹操殿。」
笑顔で問いかけてくる一刀の姿が、さっき見ていた夢の映像の男と重なる。曹操の顔がみるみる赤くなっていく。そんな様子に一刀も秋蘭も「??」といった感じで見ている。
「曹操殿?」
「っ、何でもないわよ。それにこちらは貴方のところでやっかいになっている身、貴方の要請を断るなんて出来ないわ。ただ、叶うなら春蘭は私の手で逝かせてあげたいのだけれど・・・・・。」
曹操は暗い声でそう呟いた。その言葉を聞いて
「夏侯惇を殺すということなら俺は力を貸せないよ。彼女は蜀の連中に操られているだけなんだから・・・。それに曹操、君にとって夏侯惇とはその程度の者だったのかい?」
一刀の言葉に曹操は黙ってしまう。
「君の大切な人は、俺たちが必ず救ってみせる。だから君は身体を治すことに集中しててくれ。これ以上、荀彧や鳳統たちを心配させないように・・・・。」
一刀はそういうと部屋を後にしようとする。そんな一刀を曹操は呼び止める。
「北郷、・・・チョット聞きたいんだけど・・・・。あなた昔、私と会った事ある?」
曹操の問いに一刀の表情は変わった。だが動揺を隠すように問い返す。
「・・・・どうして、そんなことを?」
「さっき『夢』を見てね・・・・。貴方と戦場で白装束の者と戦っている『夢』を。それが妙に気になって。」
曹操の言葉に一刀は俯いて何かを考えていたかと思うと
「いや、ないと思うよ。」
短くそう言った。その言葉に
「そう・・・、変な事聞いてごめんなさい。」
曹操はそう謝る。一刀は今後の協議のため秋蘭たちと部屋を後にした。
玉座の間
玉座の間には、北郷軍の将はもちろん魏の夏侯淵、許緒、典韋、鳳統、徐晃、趙儼、曹仁、曹洪、王粲と草々たる面々が一堂に介していた。一刀は先の襲撃の真相を皆に説明すると、今後の作戦について提案する。
「蜀の黄忠将軍の話によると黄忠将軍同様、劉璋に人質をとられて無理矢理仕えさせられている武将が多いと聞く。そしてその人質は長安に集められ監視されているらしい。そこで我々は、許昌へ戦を仕掛け蜀との先端を開く間に、別働隊で長安へ潜入。人質を救出する2面作戦を遂行する。許昌攻防戦では、おそらく劉璋は黄忠将軍たちのような都合よく操れる者たちを前線に送ってくると思う。そこで許昌での戦の前に長安での救出作戦を成功させられれば、黄忠殿たちは反劉璋勢力を纏めて我等とともに蜀を攻撃する算段だ。許昌での部隊については、魏の夏侯淵殿たちの部隊と、我が北郷軍の部隊とで分かれて行動する。夏侯淵殿たちは夏侯惇将軍の救出を目的とし、我が北郷軍はその補佐を担当。救出に成功したらあとは蜀の連中を殲滅。その流れで行きたいと思う。そこでだ・・・。」
そういうと一刀は星の方を向いて
「星、それと恋、君たち二人に長安での人質救出の役を受けてもらいたい。この任務は敵に気取られないようにするため少数での任務となる。大変危険な任務だが、引き受けてくれるかい?」
「ふっ、笑止。我が槍は主とともにある。主の望むためならばこの趙子龍、いかな難題でもこなして見せようぞ」
「・・・大丈夫、ご主人様。恋と星は無敵。」
一刀の言葉にそれぞれ呼応する星と恋。その姿に一刀は微笑む。
「敵は、夏侯惇将軍をはじめ、永倉、沖田と猛者揃いだ。恐らく蜀本国からも増援の部隊があろう。しかし、我等に負けは許されない。今回の作戦で許昌を含め荊州北部まで制圧し、蜀を牽制する。そのためにも各員奮励努力されたし。以上。」
そういうと軍議は終了。それぞれ戦のための準備にうつるのであった。
益州・成都
「劉璋様、北方の北郷が許昌へ向けて進軍を開始したと報告が・・・。」
伝令の報告にも劉璋は顔色一つ変えずにいた。
「そうか・・・・、ならば黄忠たちを向かわせろ。あと新野に駐在させている壬生狼の武田、井上、谷も向かわせておけ。連中もいれば北郷軍に遅れを取ることもあるまい。」
「御意。」
劉璋はそう伝令に指示を出す。そんな劉璋の後方から話しかける影がある。
「大した君主ぶりだな、劉璋。」
「っ、・・・なんだ捲簾殿か。」
姿を現したのは捲簾と呼ばれる青年だった。
「あなたにいただいた、この壬生狼と呼ばれる猛者たちは素晴らしいですなぁ。私に忠実な上、武でも他の武将を凌駕するほどの力を持つ。これなら我が野望である『天下統一』も時間の問題。この大陸で私が帝として君臨するという大いなる野望のな。」
「それは結構。だが、俺たちとの約を違える事のないように頼むよ。その時はあんたの命はないと思っておいてくれ。あくまでもこれは『取引』なんだから・・・・。」
「分かっておりますよ。」
そういうと劉璋はその場を後にしていった。捲簾はその背中をじっと見送った。
そして数日後、蜀と北郷の戦いの幕は切って落とされた。
あとがき
飛天の御使い~第弐拾伍幕~を読んでいただきありがとうございます。
いよいよ、蜀との戦が本格的に始まります。
無事に曹操も意識を取り戻しましたし、
今後益々目が話せない?!展開を目指して執筆頑張ります。
拙い文章ですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
感想やコメントもいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。
Tweet |
|
|
30
|
2
|
追加するフォルダを選択
左慈の前に現れたのは一体何者なのだろうか。
そして、その目的とは?
北郷と蜀との戦が今まさに始まろうとしている。
恋姫†無双の二次創作です。
続きを表示