はじめに
この作品の主人公はチート性能です。
キャラ崩壊、セリフ崩壊、世界観崩壊な部分があることも
あるとは思いますが、ご了承ください。
陳留
突然の蜀軍の侵攻に許昌を追われた季衣たちは、少ない手勢で追っ手の追撃をかわしながら秋蘭たちの部隊との合流のため陳留を訪れていた。春蘭の暴走によって蜀は魏の国土を飲み込み、超大国となってしまった。今のこの状況では、どう逆立ちしたって勝ち目は無い。そして、未だ曹操は意識を取り戻さない状態が続いている。この状態で移動させるのは身体的にもかなり負担がかかるため、無理はさせられないと桂花や雛里は思っていた。しかし、蜀の追っ手は確実に陳留にもやってくることだろう。どうすればいいか2人が頭を抱えている時に、物見に出していた兵が戻ってきた。
「南方より砂塵を確認。旗印から夏侯淵将軍の部隊だと思います。」
その報告のあと、その部隊から4騎が突出してきた。それは秋蘭、流琉、葵、茜だ。秋蘭たちは、季衣たちのもとへ向かい状況の説明を求める。
「季衣、一体どういうことなんだ?何故姉者が我等を裏切ったのだ?」
いつもは落ち着いている秋蘭が、取り乱している。姉・春蘭の謀叛ともとれる行いに、未だ混乱しているのだった。そんな秋蘭に季衣は事の顛末を話す。
「春蘭様と部下の永倉、沖田が突然、蜀との同盟を一方的に決められまして。それに桂花と雛里は猛反対したんですけど、そうしたら春蘭様たちが、「この国の事を考えないようなものは、反逆者だ。反逆者は斬れ!」と言い出して、許昌にいた魏軍の兵はみな春蘭様たちに組していて、それに加えて蜀の兵まで入り乱れてしまって・・・・・。反逆者として討たれそうになっていた2人を助け出して、逃げてきたんです。」
季衣の報告に秋蘭は何か腑に落ちない。
「姉者がそんなことを考えるわけが無い。」
「ボクだってそう思いましたよ。でも春蘭様の目はまるで別人のように冷たい目をされてました。あんな春蘭様、見たこと無い・・・・・。まるで何かに操られてるかのようで・・・・・・。」
そういうと季衣は涙をハラハラと流した。秋蘭はそんな季衣を優しく抱きしめると桂花と雛里に視線を移した。
「桂花、雛里、我々はこれからどうすればいい?」
そう聞かれるも、桂花は何も答えない。ずっと俯いたままだった。そんな桂花に代わり雛里が答える。
「陳留に残って戦おうにも今の我等の兵力は全部合わせても1万弱。とても許昌に展開する魏・蜀軍には遠く及びません。それに北方には北郷もあります。今の私たちは絶体絶命の状況です。こうなってしまっては、全滅覚悟で戦うか、どちらかの陣営に降るかしかないと思います。許昌に戻ったとしても恐らく皆、死罪は免れないでしょう。そうしたら私たちならいざ知らず、華琳様まで危険にさらすことになる。それならば、北郷へ降り我等の命と引き換えに、華琳様の助命をお願いしたほうが幾分マシかとおもいます。」
「しかし、北郷がそれを受け入れるだろうか?」
雛里の提案に秋蘭は疑問を問い返す。
「分かりませんが、蜀や孫呉へ降るよりはいいかと思います。私は直接の面識はありませんが、桂花さんのお話では北郷という男は義に熱いと聞いていますし、彼らの軍は弱きものを救わんと戦っている者たちですので野心は無いと思います。その点、劉璋や孫権などは天下統一という野心を掲げている連中です。そのために華琳様を見せしめに殺すことも躊躇わないでしょう。それにここからなら蜀や孫呉へ行くよりも北郷へ出向いたほうが近いですし、華琳様の負担を考えたらこれしか・・・・。」
雛里の答えに、秋蘭も覚悟を決め
「それでは、これより冀州・鄴へ向かう。我等の命に代えても華琳様をお守りするぞ。」
秋蘭のその言葉に一同は「応」と応えた。
冀州・鄴
曹操暗殺の報を受けてから数週間、一刀たちは北方の異民族の討伐を片付け今後のことで話し合いを続けていた。そんな軍議の最中に伝令が飛び込んでくる。
「申し上げます。許昌が蜀軍によって制圧されました。また、荊州南部は孫呉の軍が制圧したそうです。」
その報告に議場はざわつく。一刀と朱里たち軍師陣だけはこのことを予見していたかのように落ち着いている。
「やはり動いたか・・・・・。魏の重臣たちはどうなったのだ?」
「数名が陳留へ逃げたとの報告がありますが、それを蜀軍が追撃しているみたいです。ただ、気になることがありまして・・・・。許昌に布陣していた曹操軍が蜀の兵と連携して追撃に出ている模様です。これは何者かの謀反の可能性も考えられます。」
その報告を聞いて一刀はある人物のことを思い出す。春蘭の傍にいたあの沖田という男。『剪定者』の類である沖田が曹操軍にいたことに疑問を感じていた一刀だが、もし今回の蜀の侵攻が沖田たちの企んだ事なのだとしたら、沖田は蜀に関係する者だということが分かる。今回の蜀の行動は、魏内部から手引きするものがいなければ、いくら曹操がいないからといって大国である魏をこうも簡単に制圧したりは出来ないはずだ。疑惑は益々確信へと結論を導こうとしていた。そんな時、国境に配備してある軍から伝令が飛んできた。
「北郷様、国境付近に夏侯淵将軍の率いる軍が現れました。数は1万弱。ただ、こちらと戦う意志はなく保護を求めて北郷様との面会を希望しておりますが、いかがいたしましょう?」
「奴ら、何を今更・・・・。こちらを攻めるだけ攻めておいて保護だと?ふざけるな。」
伝令の報告に怒りを露にするのは愛紗や霞たちといった武官組。そんな愛紗を宥めるように朱里が止める。
「愛紗さん、落ち着いてください。今は状況を判断するためにも会って話を聞くべきです。」
「しかし、朱里・・・・・。」
「愛紗よ、落ち着くのだ。目先のことだけで判断するなと主にも言われていたであろう。」
星も愛紗を宥める。そんな様子を見ながら一刀は立ち上がると
「分かった、では俺が出向くとしよう。夏侯淵将軍にもそのことを伝えておいてくれ。」
「御意。」
一刀の指示に伝令兵は部屋を後にした。
「義叔父上、奴らの罠かもしれません。行くならば我等も護衛に・・・・・。」
「いらん。そんなことで向こうに警戒されては元も子もない。それにお前は俺に護衛が必要だというのか?そんな事を言うのなら、せめて一人前に正確な判断を下せるようになり、俺を倒せるほどの力を持ってから言え。」
そんな一刀の言葉に返す言葉もなく俯く愛紗たち。
「朱里と詠は俺についてきてくれ。今後のことも話し合わなければならんだろうからな。」
「「はい。」」
一刀、朱里、詠の3人は国境の砦へと向かっていった。
冀州国境付近
「突然の訪問であるにもかかわらずお目通りいただき感謝する。」
そういって頭を下げるのは秋蘭、季衣、雛里の3名。
「いや、こちらもある程度のことは聞いている。大変な思いをされたようだな、夏侯淵殿。」
一刀のかけた言葉に3人は顔を上げて一刀を見上げた。一刀の言葉はとても敵である自分たちに向けられたのものとは思えなかった。そんな一刀の心遣いに秋蘭は再び頭を下げる。
「報告では保護を求めていると聞いたが、詳しいことを教えてもらってもよいかな?」
報告を促され雛里が前に出る。
「君は?」
「私は鳳統。姓は鳳、名は統、字は士元と申します。魏軍で軍師をしております。」
手短な挨拶を終えた後、雛里は事の顛末について話した。曹操が何者かに狙撃され意識不明の重傷であること、その報が広く知れ渡ってしまったことにより孫呉が侵攻してきたこと、春蘭の暴走による蜀との同盟と反逆者扱いを受けて許昌を離れたこと、曹操の安全を確保するための保護だということなど・・・・・。その報告に一刀は一つ尋ねた。
「夏侯惇ほどの忠義の士がこんな謀叛まがいの行動をするとは考えられないんだが・・・・・。」
「それは我々も同じ見解です。しかし、実際にこういう行動にでてしまっているので・・・・。」
雛里はそう言うと言葉を詰まらす。そこで一刀は秋蘭に自分の推測を確かめるために話を振る。
「夏侯淵殿、夏侯惇殿の部下に『沖田』という男がいたと思うんだが、彼について何か知ってるかな?」
一刀の問いに秋蘭は首を傾げ、横に振る。そこへ季衣が割り込んだ。
「沖田は、永倉というものと一緒に数ヶ月前我が軍へ入隊した者です。腕も立つので春蘭様の側近をしてました。でも、それがどうかしたんですか?」
疑問に思う季衣に一刀は自分の推測を話す。
「沖田という男は、恐らく神仙の類のものだ。夏侯淵将軍も連合のときのことは覚えているな?袁紹たちの偽者を遣わしていた連中。沖田らはその一味であろう。恐らく、夏侯惇将軍は奴らに術で操られているのかもしれん。そして、今回の蜀の侵攻ではっきりとした。袁紹の偽者を使い、連合で戦を起こさせたのも、今回のことも、曹操暗殺を行ったのも恐らく蜀の仕業だろう。そして沖田たち神仙の者もその蜀に属していることになる。奴らの狙いはこの俺だ。魏制圧はその第一歩といったところだろう。その事を考えると奴らとの決戦もそう遠くない先に起こるのだろうな。」
一刀の推測に秋蘭たちは言葉を失ったが、そう考えるのが一番自然だと思った。
「それで、君たちはどうしたいんだ?」
「そちらで華琳様の身の安全をお願いしたい。」
「しかし、我がほうではそなたらの降伏に異を唱えるものも少なくない。実際、そちらとの戦では多くのものが犠牲になったからな。」
秋蘭たちの要望に一刀は現実を突きつける。
「それは百も承知。そこを無理にお願いしたい。我々の首と引き換えにでも華琳様を保護してはくださらんか?」
「夏侯淵、それは本気で言っているのか?」
「勿論本気だ。華琳様の命が助かるのなら私の命などいらん。それはここに付き従ってくれている皆も同じだ。」
秋蘭の言葉に、季衣も、雛里も、そして後方に構える兵たちも全て頷く。
その姿を見た一刀は空を見上げる。その瞳からは涙が零れ落ちていた。その姿に秋蘭たちは酷く驚いた。
「北郷殿?」
「夏侯淵、君が、いや君たちがそれほどまでに主に忠誠を抱いていることは分かった。」
「それでは・・・・。」
「だが、その決断を俺は悲しく思うよ。」
予想外の答えに秋蘭たちは驚く。そんな秋蘭たちに一刀は静かに話し始める。
「夏侯淵、君たちの命と引き換えに曹操を助けたとして、曹操は喜ぶと思うかい?そんなことで君たちが命を失ってしまうことのほうが、曹操にとっては裏切りになるのではないのか?」
一刀の言葉に秋蘭たちは言葉を失う。さらに一刀は続ける。
「それに、妹の君が暴走する姉を止めないでどうする?君にとって夏侯惇とはそんな存在だったのか?曹操と同じくらい大切な存在ではないのか?命を捨てることは簡単だ。だが、俺はそれを潔しとはしない。同じ命なら、懸命に生きることを、生きて何が出来るか考えろ。俺は命を粗末に扱うようなやつは助ける気にならん。だが、懸命に生きて何かを成し遂げようとする者がいるのなら、俺は誰に反対されても手を差し伸べよう。それが、たとえかつての敵であったとしても・・・・。どうする夏侯淵?」
そう話しかける一刀の顔は慈愛の心を表すかのような穏やかな顔だった。そんな顔を見て秋蘭は俯く。その瞳からは涙が溢れ出ている。
「・・・・・北郷殿、姉者を助けるために力を貸してくださいますか?」
一刀を見つめる夏侯淵の瞳には先程までとは違う力強い決意が見て取れた。それをみて一刀は手を差し伸べ
「あぁ、俺たちでよければ力になろう。君の姉君を取り戻すために・・・・。」
その手を秋蘭はしっかりと握った。季衣や雛里もその姿を見てほっと息を漏らす。
「なんにせよ、皆追撃戦で疲弊しているようだし我が城でゆっくり休むといいだろう。朱里、詠、準備を頼む。」
「「御意。」」
一刀は2人に指示を出し、魏軍の兵たちとともに鄴へと戻ろうと馬に跨る。
シュッ シュッ
ザシュッ
朱里や詠の、そして秋蘭たちの目の前で、一刀の身体が静かに馬から落ちてゆく。
「「ご、ご主人様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
その悲鳴は、遠くまで響き渡っていった。
冀州・鄴
「か、関羽さま!大変でございます。」
「何事だ?」
「北郷様が何者かに狙撃されました。」
「何だと!・・・・やはり今回の降伏は罠だったか・・・・。よし、皆のもの出撃の準備だ。我等を騙した曹操軍を殲滅するぞ!」
「応!」
物々しい雰囲気のまま愛紗たちは国境へ向かう。
「フフフフ、せいぜい派手に踊ってくださいよ・・・・・・。」
あとがき
飛天の御使い~第弐拾参幕~を読んでいただきありがとうございます。
前回の作品で、読者の方に非常に不快になるような描写がありましたこと
改めてここでお詫び申し上げます。
今後はこのようなことのないようよく吟味して投稿する様に心がけたいと思います。
拙い未熟な文章ではありますが、少しでも
楽しんでもらえれば幸いです。
感想、コメント、批判なんでも大歓迎です。
前回のように至らぬ点等がありましたらバンバンご指摘ください。
よろしくお願いします。
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恋姫†無双の二次創作です。
許昌を追われた季衣たちはどうなってしまうのか?
そして季衣たちがとった行動とは?
今回は少し短めです。
拙い作品ではありますが
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