真・恋姫無双アナザーストーリー
雪蓮√ 今傍に行きます 第13話
夢、夢を見ている……
そこは夜空が綺麗な高台。
向かい合う二つの影。
「ごめんね……」
口からは謝罪の言葉、この一言にはどのような意味があるのだろう。
「――――――」
「もう時間切れみたい」
「――――――」
「だめだよ。ほら……」
「――――っ!」
「大丈夫、きっと……ううん、必ず会えるよ」
「―――――?」
「うん、必ず……」
「――――――」
「今までごめんね。……」
「―――――?」
「……ありがとう」
「――――っ!!」
「だめぇっ!……はぁ、はぁ……」
ここは……私の部屋?
「夢か……なんて夢を見るのよ縁起でもない……」
だけど、これは本当に夢の話なのかしら……
「夢に決まってるわ。まだ、大丈夫よ……まだ……」
自分に言い聞かせるように何度も呟く、何度も……
「よし、そろそろ起きないとね」
ベットから抜け出し髪を整える為に洗面台に向かう。
「あら雪蓮、今日随分と早く起きたわね」
「なんだか起きちゃったのよ」
階段から降りてくる音に気づき、母さんが朝食を作りながら話しかけてきた。
「まだ出来てないわよ?」
「いいわよ。先にシャワーを浴びてスッキリしてくるから」
そうよね。熱いお湯に浴びればこのモヤモヤもスッキリするかもしれないわね。
我ながらいい考えだわ。
だけど、そんな考えは直ぐに消えうせた。
「……なによこれ」
目が赤く腫れてる……しかも目じりから涙の後見たいなのがうっすらと残ってるし……
「まさか、さっき見た夢のせい?」
(ブンブンッ!)
首を振り頭の中から夢で見た光景を追い出す。
「そんな事無い……そんな事無いわよ」
そう、いつも通りの日常なんだから。
「さて、早くシャワーを浴びてスッキリするわよ♪」
無理やりにでも明るくする。そうしないとなぜか分からないけど潰れそうな気がするから。
しかし、シャワーを浴びても湯船に浸かっても気分はよくなることは無かった。
「あら、今日は全然食べないのね」
「ちょ、ちょっとダイエットをね」
母さんに嘘をつく。普段は吐かないような嘘を……
「あら、やっぱり好きな子が出来るとそうなるもんなのかね~」
「ちょ!そ、そんなんじゃないわよ!」
母さんの赤くしながら反論する。
これじゃ好きな人が居ると言っているようなものじゃない。
「やっぱり、居るのね……どんな子なの?」
やっぱり、母さんは目を輝かせて興味津々だ。
「……」
父さんは知らない振りをしているけど、私の彼氏が気になるのかチラチラと私を窺い見ていた。
「もぅ、違うってば!」
「顔を赤くして否定したって説得力無いわよ。そう思うわよね貴方?」
「……そ、そうだな……」
「父さんまで!もう!ご馳走様!」
「ほらほら、お弁当忘れてるわよ」
居間から出て行こうとした時、弁当を忘れていると呼び止められ引き返した。
「……ん!」
手に取ろうとして手を引かれた。
「行ってきますは?」
「……行って来ます」
「はい、行ってらっしゃい」
笑顔で手を振る母さんに見送られて家を出た。
はぁ、母さんにも困ったものよね。
「まあ、母さんも勘がいい方だから何かを察したのかもしれないけど……」
「流石に、好きな人はないんじゃない?……まあ、好きな人なら居るけどね。ふふふ♪」
一刀の事を思うと自然と頬が熱くなり、さっきまでのモヤモヤ薄らいでいく。
「流石に単純ね、私たら」
呆れるほど単純だ。それくらい一刀の事が好きだってことなんだけど……
「一刀は理解してるのかしらね……何度か好きって言ったこともあるし、き、キスもしたことあるし……」
それでもいつもと態度が変わらない一刀にヤキモキさせられて。
「ホント、女たらしね。一刀は」
そんな一刀の事を考えていると、
「あ、雪蓮だ。おはよ~~!」
優未が手を振って走ってきた。
「優未……」
優未の顔を見て今朝の夢を思いだしてしまった。
あれは夢、優未とはなんの関係もないのよ。いつも通りに挨拶してるじゃない。
「あら、優未おはよう」
私もいつも通りの挨拶をする。
「……」
さりげなく優未の体を確認したけど何処も異常は無さそうね。
「ん?どうかした雪蓮?」
「なんでもないわよ。それよりも優未、今日の数学、順番から言って当たる番じゃないの?ちゃんと宿題やったの?」
「ええ?!そうだっけ!……あ、あの~雪蓮?お願いがあるんだけどな~」
「や~よ。自分で何とかなさい」
「雪蓮の意地悪ぅ~~~!」
「ふふふ、膨れてもダメよ。自分の事なんだから」
「うぅ~!」
「そんなリスみたいに頬を膨らませたってダメなものはダメよ。えい♪」
膨れた優未の頬を突こうとするが避けられた。
「ふ~んだ。私の可愛いほっぺを触っていいのは一刀君だけなんだから、触らせないも~ん」
「ふ~ん……そう言われると触りたくなるわね。触らせなさい!」
「やだよ~だ♪」
「こら待ちなさい優未!……っ?!」
あれ?今、優未の姿がぼやけた様な……
目を擦ってもう一度見てみたけど何にも変わってはいなかった。
気のせいかしら……
「雪蓮~?どうしたの?」
立ち止まっていた私を不思議に思ったのか優未が近づいてきた。
「なんでもないわよ。それより……ていっ!」
(ぷにっ)
「にょわ!私のほっぺ触ったな~!」
「ふっふ~ん♪柔らかいほっぺね。もっと触らせなさい!」
「ぬぬぬぬぬ!これ以上触らせるものか~~!」
「優未。ひらり、ひらりと避けていくのはいいんだけど前見てないと……」
「え?……あ痛っ!」
「路地から出てきた人にぶつかっちゃうわよって言おうとしたんだけど」
「そう言うのは早く言ってよ~。あ、あのごめんなさい!」
「こっちこそよそ見しててすいません……って、優未に雪蓮じゃないか」
「え?……あ、一刀君だったんだ!」
優未がぶつかった相手は一刀だった。
「おはよ、一刀」
「おはよう雪蓮、優未」
「おはよ、一刀君!」
「うぉ?!ち、ちょっと優未?!」
「なっ!優未離れなさいよ!」
優未はあろうことか一刀に抱きつき、さらに頬ずりまでして!うらやましいじゃない!
「やだよ~。ん~!一刀君のほっぺはスベスベで気持ちがいい~♪」
「ちょっと優未、いい加減に離れなさい」
「ゆ、優未くすっぐったいよ……」
「ほら、一刀にも迷惑でしょ」
「やだったら、やだ~」
むっ……ちょっと頭に来たわよ……よ~し、こうなったら!
私は一刀の腕を取り思いっきり引っ張り寄せた。
「わわっ!なにするのさ雪蓮~!」
「優未だけずるいわよ。私だって一刀に頬ずりするんだから」
この肌触り、病み付きになりそうだわ。
「ちょ、ちょっと雪蓮……」
「ん~、一刀のほっぺ病み付きになりそ~♪」
「あ~!ダメだよ!私のほっぺなんだから~!」
「いや、誰のでもないからね?!」
一刀はそんなこと言ってるけど聞く耳持たないわよ。これは反則級だわ。
「……あなた達、通学路のど真ん中で何をしているの」
「ん?」
後ろに目を向けると琳が呆れながら立っていた。
「あら、琳じゃない。一刀のほっぺはあげないわよ」
「はぁ~、何を分けのわからないことを……そんなのいらないわよ」
「え~、こんなにスベスベで気持ちが良いのに。あ、でもこれで一人ライバルは減ったことになるんだ」
「言われて見ればそうね。よかったわ」
「べ、別に興味なんて無いわよ。ふんっ!」
興味ないとかいいながら横目でチラチラ見てくるところが可愛らしいじゃない。
(ぴとっ)
「っ!」
(すりすり~)
「くっ!」
ふふふ、面白い反応だわ。
「ちょっと優未」
小声で優未に話しかける。
「何?一刀君のほっぺは渡さないんだからね」
「違うわよ。ちょっと耳かしなさい」
「う、うん……」
「……だから……ね……どう?」
「雪蓮、お主も悪よの~。にひひひひ♪」
優未たら、琳にいやらしい目線を向けてそんな笑い方してたたどこぞの悪代官みたいよ。
「な、なによ……」
まあ、あんな顔をして見られたら後ずさるわよね普通。
(ぴとっ)
「……」
(すりすり)
「……っ」
優未が琳に見せびらかすように一刀に頬ずりをはじめた。
我慢してるわね……なら。
(ぴとっ)
「……っ!」
「ふふふ♪」
(すりすり)
「ちょ、ふ、二人ともくすぐったいよ」
「ふふふ、これくらい我慢なさい。男の子でしょ」
「そんな事言われたって……」
ん~中々しぶといわね。何かいい方法は……
「あれ?一刀さん達じゃないですか。何してるんですか?」
っ!これだわ!
「桃香、いい所に来たわね。ちょっと来なさい」
「え?え?な、なんですか?」
「しまった!」
ふふふ、もう遅いわよ琳。
琳に向かってニヤリと笑う。
「くっ!」
「桃香、実はね。ゴニョゴニョ……」
「ふんふん……ほえ~……えっ!いいんですか?」
「良いわよ。思いっきりやっちゃいなさい」
「でも、一刀さんに迷惑なんじゃ……」
「大丈夫よ。むしろ桃香にやってもらったら喜ぶんじゃないかしら」
「え~、なんだか恥ずかしいな~……えへへ~♪」
一瞬、頬ずりした自分を想像したわね。
「えっと、それじゃ失礼しますね。一刀さん♪」
「え、と、桃香まっ!」
(すりすり)
「わ~!一刀さんのほっぺ、スベスベで気持ちが良いです~」
「でしょ~。でも今だけだからね。一刀君のほっぺは私のなんだから」
「え~、みんなのほっぺですよ~。ねっ!雪蓮さん!」
「そうね。皆の一刀ね。そう思わない、琳?」
そこで私に優未、桃香は琳を見る。
「な、なによ……べ、別に一刀なんてなんとも思ってないわよ」
琳が顔を赤くして横を向く。
(キラッ)
「ん?琳、あなたそんなのしてたかしら?」
「え?あっ……」
琳の様子がおかしいわね……っと、その前に。
「逃がさないわよ。かず、と!」
「うわっ!」
腕を取り一刀を引き寄せる。
「どこに行くのかしら。か・ず・と♪」
「え……っと……学園?」
「ふふ、ここに居なさい」
「……はい」
一刀は観念したようにうな垂れて私の横に立っている。
「で、そのイヤリングはどうしたのかしら?」
「か、買ったのよ。それがなにか?」
「ふ~ん……。ねえ、それ私もつけてみたいんだけど、いいかしら?」
「なっ!だ、ダメに決まっているでしょ」
「なんで?別にプレゼントされた物を身に着けさせてって言ってるんじゃないわよ」
「くっ……あなた、分かって言ってるわね……」
「さあ?何のことだか」
悔しそうに睨みつけちゃって。
「ねえ、あのイヤリングがどうしたの雪蓮?」
「綺麗なイヤリングですね。私も欲しいな~」
優未と桃香は分かってないみたいだけど。
「ねえ、一刀」
「え、な、何?」
「何ビクビクしてるのよ。一つ聞きたいことがあるんだけど」
「?なんだ?」
「まさかっ!」
「優未っ!琳を抑えなさい!」
「え?!う、うん!」
「くっ!雪蓮覚えてなさい」
「ふふふ、直ぐ忘れるわよ♪」
「え?え?な、何が起こっているんですか?」
「さあ、私も良く分からないけど雪蓮が抑えろって言ったから」
「さて、一刀。琳の誕生日って確か、21日だったわよね?」
「え?違うよ。24日……あっ」
口を押さえても遅いわよ一刀。
「そ、ありがと……一刀っ!」
笑顔で答えながら一刀のほっぺを抓る。
「いひゃい、いひゃい!ち、ちひれる!」
「千切れやしないわよ。まったく!」
「?琳さんの誕生日になにかあるんですか?って、なんで教えてくれなかったんですか、琳さん!」
「はぁ~、分かってないのは桃香だけみたいね」
「む~、ずるい、こんな綺麗なの!」
優未は琳を羽交い絞めにした状態で頬を膨らませていた。
「あのね、桃香。なんで一刀が琳の誕生日を知っていると思う?」
「え?それは前に誕生日を教えたからですよね?」
「そうね。なら、今日は何日?」
「今日は、25日ですよね?」
「まだ分からないの?」
「さあ?」
「はぁ~……琳のイヤリングは土曜日にはしていなかったのよ。なのに今日しているってことはその間に買ったってことよね」
「はい……あ」
「わかったようね」
「え~!いいな~琳さん!」
「くっ、屈辱的だわ!だからいらないって言ったのよ」
「なら着けなければ良いだけの話じゃないの?」
「そ、それは」
「嬉しかったんでしょ?」
「だ、誰が嬉しいわけが無いでしょ」
「顔を赤くして言っても説得力無いわよ」
「~~っ!離しなさい優未!学園に行くわよ!」
琳は顔を赤くして音が聞こえるかってくらい勢い良く歩き出していった。
「あらら、琳たら行っちゃったよ」
優未はわざとらしく遠くを見るように琳を見ていた。
「別に恥ずかしがらなくても良いのにね」
「ね~。嬉しかったら嬉しいって思えば良いのに」
「あら、今日は着けてるのね」
「ん?うん、なんとなくね~」
「そう」
「あ、あの……いひゅまへつまんへいるのへひょうか」
「あら、忘れてたわ。モチモチスベスベで♪」
「イタタ……酷いじゃないか雪蓮」
「あら、私がいけないのかしら?」
「う゛……」
笑顔で一刀に迫ると一刀は言葉を詰まらせた。
「も~、一刀さんがかわいそうじゃないですか」
桃香は一刀を引き寄せてその豊満な胸に一刀の顔を埋め……何鼻の下伸ばしてるのよ一刀は!
「と、桃香?く、苦しいよ……」
「え~、抱き心地がいいからもっといいんだよ?」
「いや、なんか嫌な予感がするから、離れてくれるとうれしいな」
「は~い、残念だな」
やっと離れたわね。さてそれじゃ……
「か、一刀さま?それに桃香さまもこんな所で」
「あ、愛紗ちゃん。おはよ~。ねえねえ。琳さんが一昨日誕生日だったんだってよ!」
「琳殿がですか?それはめでたい事ですね」
「だよね~。それでね。琳さんの耳にね。一刀さんからプレゼントされたイヤリングを着けてたんだよ」
「ほう……プレゼントですか……」
あ、愛紗の目の色が変わったわね。一刀逃げた方がいいんじゃないかしら?
そう思いながら一刀には言わないで遠くから優未と傍観する。
「私もあんな綺麗なの欲しいな~」
「そうですね……」
「(どんどんと愛紗の嫉妬度が上がってるわね)」
「(うぅ~、愛紗怖いよ、愛紗怖いよ)」
ああ、そう言えば愛紗のお説教を何時間も聞かされてたわね優未は。
「そう言えば、愛紗ちゃんも前に綺麗な髪留めつけてたよね」
なに?
「ええ?!こ、これはですね。その……」
「(ねえ、愛紗の様子が変わったけどまさか……)」
「(そのまさかね。どうやら愛紗も今月が誕生だったみたいね。まさか髪留めとは思わなかったけど)」
髪留めとは盲点だったわね。気づかなかったわ。
「その髪留め綺麗だよね。何処で買ったの?」
「ええ?!こ、これはですね……その……」
あの慌てよう間違いないわね……ちょっとからかって見ようかしら
「愛紗、それ綺麗よね。ちょっと貸してくれないかしら?」
「だ、ダメです!これは大事な物ですから!」
「一刀に貰ったからよね?」
「っ!なぜそれを!」
「えー!愛紗ちゃんも一刀さんに貰ったの~?!いいな~」
「いや、これはですね。桃香さま!」
「いいな~」
「あ、あの桃香さま?」
「いいな~」
「……」
「いいな~」
「つ、着けて見ますか?」
あ、愛紗が落ちた。
「ええ!悪いよ!折角、一刀さんからのプレゼントなんだから!」
ならそんなじっと見なければいいのに。
「あ、あの皆さん?」
「あ、ごめん。忘れてたわ一刀」
「うぅ……」
もう、そんな顔したら抱きつきたくなるじゃない。
「ほら、いじけないの。それでなに?」
「そろそろ行かないと遅刻しちゃうんじゃないかと」
「は?今何時よ」
「……8時20分」
「げっ!優未!桃香に愛紗も!急ぐわよ!このままじゃ遅刻しちゃうわ」
「ええ?!なんでそんなに時間経ってるの?!」
「と、桃香さま急ぎましょう!」
「ま、待ってよ愛紗ちゃん!私、足遅いんだよ~」
優未たちは急ぎ学園に向かい走り出す。
「ほら、一刀も急ぐわよ!」
一刀の手を取り走り出す。
一刀の手はいつ握っても私の心を温かくする。しかし……
「なあ、雪蓮」
「なに?」
走りながら一刀が話しかけてきた。
「今日の優未、なんか変じゃなかったか?」
「変って?」
「ん~、うまく言えないんだけど、いつもよりテンションが高いって言うか」
「そ、そうかしら?ほら、それより早く行かないと本当に遅刻するわよ!」
「うわっ!そ、そんなに引っ張らないでくれよ雪蓮!」
流石は一刀ね。
私が感じていた事を一刀も感じていた。その事が嬉しくもあり、また、辛いことでもあるんだけどね。
私は前を走る優未の後姿を見ながら思った。
あなたはどうしたいの?優未……
「……ふぅ」
やっぱり何処か優未の態度がおかしい。
学園についても優未はいつも以上に明るかった。
それにあのブレスレット……
優未は前に、
『え?ブレスレット?』
『ええ、あんなに嬉しそうにしてたのに何で身に着けてないの?』
『だって、折角一刀君がプレゼントしてくれたのに傷がついたら嫌だしさ』
なんてことを言ってたのに今日は身に着けてるし。
「優未、ちょっと」
「え?なに?」
優未にクラスの生徒と話して居る所を呼び寄せた。
優未は性格もあってクラスの中でムードメーカーになっている。
「今日はブレスレット着けてるわね」
「え?うん」
「いつもは傷が付くから身に着けないって言ってたのにどうして?」
「え、今日は身に着けたい気分だったからかな。別に対した理由はないよ」
「そう」
明らかに動揺した……優未は嘘を付くのが下手で直ぐに目が泳ぐのよね。
でも、今は納得した振りをしておくことにした。
「それだけ?」
「つれないわね。お昼はどうするの?」
「もちろん一刀君と二人き「ダメに決まってるでしょ」ちぇ~」
口を尖らせて文句を言う。
「まったく、お弁当作る程度に我慢しておきなさいよ」
「は~い……って、なんで一刀君のお弁当作ってきたこと知ってるの?!」
「そりゃ、いつもより大きめの袋を持って来ればわかるわよ」
「あぅ……」
本当に分かりやすい娘ね。
「それじゃ負けられないわね」
「え?それってどういう……」
優未の目の前に手提げ袋を見せ付けた。
「まさか……」
「そ、私も一刀の為にお弁当を作ってきたって訳」
「ええ~?!」
「あら、そんなに驚くことじゃないじゃない?」
「そ、そうだけど~」
「もう、可愛いわね優未は!」
「ええ?!ちょ!私、そんな趣味無いから!」
優未に抱きつこうとしたが優未は後ずさりそれを阻止してきた。
「もう、私だってそんな趣味は……」
「そこで黙らないでよ!」
「あ、いや……あるかな?って思って」
まあ、あの時は体の疼きを鎮める為によく、冥琳を抱いたけど……
「……」
「ちょ!何赤くなってるの雪蓮!」
「え、な、なんでもないわよ」
しまった。一刀としたことを思い出して顔を赤くしちゃったわ。
それを勘違いしたのか優未は自分の体を抱きしめて後ずさりした。
「わ、私の体は一刀君のものなんだから雪蓮にはあげないんだから~!」
『『『……』』』
クラス中がシーンと静まり返る。
「……はい?」
思わず聞きなおしてしまった。
「だ、だから、私の体は、むぅ~~!」
「ちょ!大きな声で何言ってるのよ!」
慌てて優未の口を塞ぐ。
「少しは周りを見なさい!」
「まふぁり?……あ」
周りの様子に気づいた優未は徐々に顔を赤くしていき……
「に、にゃ~~~~?!」
「ちょ、優未?!」
発狂して走り出し教室から出て行っちゃった……
「……って、優未、もう直ぐ授業よ!」
慌てて優未を追いかける。
ちょ、どれだけ全力疾走よ。距離が縮まらないわよ。
「止まりなさい優未!教室に戻るわよ」
「いや~~!恥ずかしくて教室に戻れないよ!」
まったく、世話の焼ける娘ね。
「少し疲れるけどしかたないわ、ね!」
少し体内の気を操り体のリミットを外す。
「捕まえ、た!」
「あぅ!は、離してよ雪蓮~」
「はぁ、はぁ、ダメに決まってるでしょ。あ~しんどい……」
記憶を思い出してから一度だけ使ったけど、やっぱりこの体じゃ付いてこれないみたい。
「とにかく戻るわよ」
「うぅ~皆の顔見れないよ~」
「自業自得よ」
「雪蓮の意地悪~」
「はいはい、一刀に慰めてもらいなさい。クラス中に一刀に捧げるって大声で言って恥かいたってね」
「そんなの言えるわけ無いよ~~」
顔を赤くして悶絶する優未。
あ~ん、ホントに可愛いわね優未は。
「取り合えず教室に戻るわよ」
「……は~い」
教室に戻ると女子生徒から囲まれる優未。
「た、助けて雪蓮~~~~!」
「自分の言ったことなんだから自分で解決なさい」
「ええ!そう言いながら見て楽しんでるだけでしょ!」
「ふふふ、がんばりなさい優未」
私は微笑みながら先生が来るまで優未を見ていた。
「やっと昼だ~~~!」
優未は両手を挙げて立ち上がる。
「雪蓮、行くよ~」
「落ち着きなさい。まったく……」
優未は入り口に立ち私を急かしてくる。
「別に一刀は逃げないわよ」
「そうだけど~。早く一刀君に会いたいんだよ~」
「初めてを捧げる人だから?」
「なっ!ち、違うもん!」
「あら、違うんだ」
「う……違く無いけど、違うの!」
「はいはい、ほら行くわよ」
まあ、なんて言うか一途ね。蓮華とどっちが一途かしらね。
ああ、でも蓮華よりは積極的かしらね。積極性から言ったらシャオといい勝負かも。
今ここに居ない私の妹たちを思う。
「ふふふ♪」
「な、何笑ってるの雪蓮?」
「え?何でもないわよ。それじゃ行きましょうか」
「あ、うん。……ねえ、ホントになんで笑ってるか教えてよ~」
「秘密よ♪」
「え~!」
「ふふふ、早く行かないと一刀の横貰っちゃうわよ」
「あーっ!そんなのダメなんだから!」
廊下を歩きながら優未をからかう。
「あ、雪蓮に優未」
そこへ一刀が歩いてきた。
「あっ!一刀君っ!」
ん!この展開はっ!
「は~い、そこまでよ優未」
「あぅ!は、離してよ~」
一刀に飛びつく寸前で優未の首根っこを掴み引き寄せる。
「まったく、油断も隙もないんだから」
「別に抱きつくくらいいいでしょ~!」
「ダメに決まってるでしょ」
「なんでよ!」
「なんでもよ」
優未と言い争いをしていると。
「あ、一刀さんみ~つけた!」
「「え?」」
(ぷにっ)
「うわっ!」
一刀の後ろから腕が伸びてきて首周りに抱きついてきた。
「と、桃香さま!お待ちください」
すると後ろから愛紗が走りながら近づいてきた。
「一刀さんお昼一緒に食べましょうよ」
「ダメだよ!一刀君は私とお昼食べるんだから!」
「私達ね。優未」
「もう、そんな細かいことはいいの」
「い、いや。俺の意見は?」
「あら、一刀に意見なんてあるの?」
「……大人しく待たせていただきます」
「と、桃香さま。みなと一緒に昼食を摂ればいいではありませんか」
「ん~それもそうだね。みんなで食べたほうが美味しいもんね」
「優未もそれでいいわね」
「は~い」
優未は不服そうにしていたが渋々了承した。
「そう言うことよ。琳もいいわね」
「「「「え?」」」」
一刀たちは一斉に首をかしげて私を見る。
「……いつから気づいていたのかしら?」
「最初からに決まってるじゃない」
横にやられていた一刀の後ろから琳が出てきた。
「ふぅ、まあいいわ。みんなで食べるのよね。なら、中庭にでも行きましょう」
琳は開き直ったように手を腰に当てて指示しだした。
「ちょっと、後から来たくせにでしゃばらないでよ~」
「あら。なら、優未は何処か食べる場所でも決めていたのかしら?」
「そ、それは……まだだけど」
「なら別にいいじゃない。桃香たちもそれでいいのでしょ」
「はい、私はかまいませんよ」
「私もです」
「雪蓮はどうなのかしら?」
「一刀と一緒なら何処でもかまわないわよ」
「ほらね」
「ぐぬぬぬぬっ……」
琳に口で勝てるわけ無いでしょうにまったく優未ったら、いつになった分かるのかしら?
「ほらほら、優未もそれくらいにしなさい。一刀と食べる時間が無くなっちゃうわよ」
「雪蓮がそういうなら……」
「それに、琳と愛紗には色々と聞きたいことがあるしね」
目を細めて琳と愛紗を見ると、琳は苦い顔をして、愛紗の方はというと顔を赤くして動揺していた。
「ふふふ♪さあ、お昼休みはまだまだあるわよ。じっくりと聞こうじゃない♪」
「にひひ♪楽しみだな~。ね、琳」
優未はニヤリと笑いながら琳を見ていた。
「くっ……自ら虎穴に足を踏み入れてしまったようね」
「あ……う、うぅぅぅぅ」
愛紗は顔を赤くして唸っていた。
「もちろん、一刀からも聞くから覚悟してなさい」
「あは、あはははは……はぁ」
こうして、楽しい楽しいお昼が始まるのでした♪
放課後、
「は~、やっと終わったね」
「ええ、そう言えば今日は一刀部活に出るみたいだから一緒に帰れないわね」
お昼が終わった時、一刀に言われていた事を思い出す。
「そっか、そんなこと言ってたね……それじゃ、二人だけでブラブラして帰ろうか雪蓮!」
一瞬、優未に陰りが見えたけど気のせいかしら?
「ええ、偶にはいいわね」
そのせいもあってか私は優未と寄り道をして帰ることに同意した。
「何処に行こうかな~。雪蓮はどっか行きたい所ある?」
「そうね~……まずは腹ごなしにクレープでも食べに行きましょうか」
「それ賛成!じゃ、さっそくレッツゴ~!」
優未は右腕を上げて歩き出す。
「まったく、食いしん坊なんだから」
呆れながらも笑顔になる。
「待ちなさい優未!」
先に行く優未を追いかけて走り出す。
「え~、早くクレープ食べたいもん!」
まったく、私は一度リミット外して思いっきり走れないってのに。
まあ、それなりには走れるくらいにはなったんだけどね。それでもちょっとしんどいわ。
「少し鍛えたほうがいいかしら?」
走りながら体を鍛えようと心に誓った。
「ん~、ここはやっぱり王道のチョコバナナだよね!」
「私はイチゴカスタードかしらね」
「あ、それも美味しいよね~」
優未と二人で注文をする。
「お、いつもの彼氏さんは一緒じゃないのかい?」
「今日は部活なんだって」
出店のお兄さんが話しかけてきた。
「そうかい。それにしても結構来てくれるよな君達さ」
「ええ、美味しいからね」
「お、それは嬉しいこと言ってくれるね~。よし、オマケして少し多く入れてあげようかな」
「きゃ~、お兄さん最高!」
「はっはっは、これからもご贔屓してくれよ?」
「もちろんだよ!ね、雪蓮!」
「ええ。また来させてもらうわ」
「おうよ。よし出来上がりだ」
「ありがとう。お兄さん!」
「ありがとう」
クレープを受け取り歩きながら食べる。
「ん~!バナナが多い♪」
「こっちはイチゴが多いわ」
私と優未のクレープには溢れんばかりの果物が盛り付けられていた。
「それにしてもちょっと多すぎないかしら?こんなに盛り付けても大丈夫なのかしら?」
「え~大丈夫じゃない?いつも行列が出来てるくらいなんだし。そう言えば今日はまだ行列出来て無かったよね」
「開いたばかりだったんじゃないの?あの時間にいつもあそこで店を開くって前に言ってたし。
「ふ~ん。あむ……ん~!甘~い!」
「ほら、口の端にチョコつけてるわよ」
「え~どこどこ?」
「もう……ほら、じっとして」
「むっん~~~」
「はい、取れたわよ」
「ありがとう雪蓮!あむ……」
もう、これじゃ手のかかる子供じゃない。
クレープを頬張る優未を見てなんだか優しい気持ちになった。
「え~違うよ。一刀君は~……」
クレープを食べた後、街でウィンドウショッピングしていた。
「そうかしら?一刀はこう言った大人しいのが好きそうじゃないかしら」
「分かってないな~。一刀君は少し幼い感じが好きなんだよ。だから、きっとこれが好きだと思うな」
何を言い合っているかというと、一刀の好みの服は何かと言う事でヒートアップをしていた。
「それは幼すぎじゃないかしら?ならこっちの方がいいんじゃない?」
「ん~、そうだな~。ならこれなんかどう?」
「あら、いいわね。これなら私でも着れるかしら?」
「なら、二人で着て一刀君に迫ろうか?」
「それいいわね。なら、色違いを二人で買いましょうか♪」
「いいねそれ!」
「でしょでしょ!なら私は……このピンクがいいかな」
「私は……これかしらね」
私は白を選んだ。
「え~雪蓮が白?赤かと思った」
「なによ~。いいじゃない。それに一刀なら綺麗って言ってくれるだろうし」
「すごい自信だな~雪蓮は」
「あら、一刀が似合わないって言うと思う?」
「……思わないかな」
「でしょ?ほら、会計に行くわよ」
「わっ!待ってよ!……あっ!ちょ、ちょっと雪蓮こっち来てこっち!」
優未が呼び止めるので傍まで行く。
「なによ?」
「この帽子、この服に似合いそうじゃない?」
手に取ったのは季節はずれの麦藁帽子だった。
「確かに似合いそうね。ならこれも買いましょう。50%オフだし」
二人して麦藁帽子を被る。
「ふふふ♪」
「あはは♪」
そのまま会計を済ませて外に出ると回りは暗くなり始めていた。
「お腹空いたね」
「そうね、そろそろお開きかしら」
「ねえ、今から食べに行かない?」
「ええ?もうそんなお金残ってないわよ」
「大丈夫、大丈夫!ワンコインだから!」
「ワンコインって100円?」
「まさかそんなに安くないよ500円」
まあ、500円ならいいかな。
「分かったわ。家に電話するからちょっと待ってて、まだ大丈夫だとは思うけど」
「は~い」
携帯電話を取り家にかける。
「あ、もしもし母さん?私今日夕飯いらないから」
「え?ち、違うわよ!優未よ。ゆ・う・み!だから少し遅れるわ」
「大丈夫だから、母さん心配しすぎよ」
「うん、22時前には家に着くようにするから」
「うん、それじゃあね」
電話を切り振り替えると優未がニコニコして待っていた。
「お待たせ、それじゃ行きましょうか」
「うん!私のお勧めを紹介するよ」
そう言うと優未は先に歩き出した。
「じゃ~ん、ここだよ」
優未が腕を上げて紹介してくれた店は。
「ラーメン屋?」
「そう!ここのラーメン美味しいんだよ安いし!」
優未は店の戸を引き中に入って行ったので私も着いて行く。
「へいらっしゃい!って、嬢ちゃんかい」
「また来たよ~。今日は私の親友を誘ってきました~」
「どうも」
「おやおや、これまたべっぴんさんだな~。よっしゃおじさん腕によりをかけぜ」
気さくで人の良さそうなおじさんは椅子から立ち上がり厨房に立った。
「いつもの二つね!」
「あいよ!それにしてもあの兄ちゃんの知り合いはべっぴんばかりだな」
兄ちゃん?ってだれのこと?
「ねえ、優未、兄ちゃんって誰?」
「え?ああ、一刀君のことだよ。ここ教えてくれたの一刀君なんだよね」
「え!そうだったの?!」
「おうよ、あの兄ちゃんもお金が少なくなるとよくここに来るんだがよ。いつもうまそうに食って帰りやがる」
厨房ではおじさんが一刀の事について話してくれた。
「私には教えてくれなかったわよ」
これはお仕置きが必要かしらね?
「ここのラーメンはね、すごくコシがあって美味しいんだよ!」
「はっはっは。兄ちゃんに教えられた時は毎週来るくらいだったからな」
「だ、だって~美味しかったんだもん!」
「うれしこと言ってくれるね~仕方ねえ!今日は新しいお客さん連れてきたお礼にチャーシューをオマケだ!」
「きゃー!おじさん最高!」
「これ以上褒めてもなにも追加しないぜ」
「バレたか」
「ふふふ」
優未が楽しそうに店主と話しているとおかしくなってつい笑い出してしまった。
「あ、なんで笑うんだよ!」
「別になんでもないわよ」
「む~」
口を尖らせていた優未だったが。
「へいよ!ラーメン二丁おまち!」
「来た来た!頂きま~す!」
目の前に置かれたラーメンに目を輝かせて手を合わせる優未。
「ずるずるずる……ん~~~!やっぱり、おっちゃんのラーメンは世界一だね!」
「相変わらず、嬢ちゃんは大袈裟だな」
「そんな事無いよ!美味しいよ!この味、私忘れないんだから」
「はっはっは。そうかい、ならいつでも来てくれよ」
「うん!……ほらほら、雪蓮も食べないと伸びちゃうよ」
「え、ええ。そうね……」
私は優未の言った言葉に引っ掛りを感じたが、優未がラーメンを進めてくるのでそのことは過ぎに頭の中から消えてしまった。
「あら、本当に美味しいわね」
「でしょ!」
こんな美味しいラーメンを二人だけで秘密にしていたのね……ちょっと許せないわね。
「なんで黙ってたのよ。こんな美味しいお店」
「だって、一刀君と二人だけの秘密だったし~。えへへ♪」
ああん、可愛いなコンチクショウ!そんな顔したら襲っちゃうわよ。
「なら、なんで教えてくれたのよ。一刀との秘密だったんじゃないの?」
「ん~なんでかな?雪蓮になら教えてもいいかなって思ったからかな?良くわかんないや」
優未は笑顔で答えまたラーメンをすすった。
「良く分からないって、あなたね……」
呆れながらもラーメンをすする。
その後は他愛もない話をしながらラーメンを完食した。
「おっちゃんご馳走様!はい、500円」
「あいよ!また来てくれよ!」
「もちろん!」
優未は手を振りながら店を出て行った
「ごちそうさま」
私もお礼を言って店を出た。
「さてと……まだ時間あるよね雪蓮」
「え?まだ8時20分過ぎたくらいだから平気だけど、何処行くの?」
「ん?とってもいいところ!付くまでは内緒だよ♪」
優未は人差し指を口元に当ててウィンクをした。
「はぁ、仕方ないわね。着いて行くわよ」
「そう来なくっちゃ!それじゃタクシーで」
「って、そんなに遠いの?!」
「え?そうでもないよ。ただ、お腹一杯で歩きたくないだけだったり♪」
「なによそれ」
「タクシー代は私が出すから安心してていいよ」
「はぁ、分かったわよ行くって言ったんだから行くわよ」
そのままタクシーを捕まえて移動を始めた。
「ここは……そこは町が見渡せる高い台だった」
「すごいよね!ここから見るこの街が私一番好きなんだ」
優未は手すりに手を乗せて街を見下ろしていた。
だけど、私はそれどころではなかった……
この風景何処かで……そうだ、今朝の……っ!
「ゆっ「ねえ、雪蓮?一刀君の寮はどこら辺にあるのかな……」え?」
優未に離しかけようとしたが優未が言葉を遮り話しかけてきた。
その顔はどこは子供を見守る母親のような顔のようだった。
「……」
「私ね?初めて一刀君見た時、優しそうな人だなって思ったんだ。会ってみてその考えが間違っていないことにとてもうれしくなった」
「雪蓮はもう知ってるんだよね。私がこの時代の人間じゃないこと」
「っ!……ええ。南海覇王を握った時に教えてもらったわ」
「そっか……最初はさ、使命とかどうでもよかったんだ。でも、一刀君の悲しい顔を見たら、胸の辺りが痛くなってその気持ちがどうしてか分からなかった」
「……」
「そうしたら、教えてくれたんだ。雪蓮を救えば一刀君は悲しまなくて済むって……ずっと笑っていてくれるって」
「だから、私は雪蓮の記憶を戻すために協力した。一刀君の笑顔を見続けるために……」
「そして雪蓮は記憶を取り戻した。これで一刀君の笑顔が見続けられるそう思った。でも、それと同時に私は役目を終えた……」
役目……それは優未のここでの存在理由が全うしたこと……それは……
「だからね、本当は雪蓮の記憶が戻った時に私は消えるはずだったんだ」
「っ?!」
「でも、私は願っちゃった。もっと……一刀君の傍に居たい。一刀君と雪蓮と笑っていたってさ」
「……なら、ずっと居ればいいじゃない!」
「それは無理だよ」
「なんでよ!……っ!」
優未の体が淡く光りだしていた。
「ごめんね……」
「ごめんねってなによ。お別れみたいに……」
「もう時間切れみたい」
「時間切れって、そんなのまだ分からないじゃない」
「だめだよ。ほら……」
「なっ!優未。あなたからだがっ!」
優未は手を前に出すとその手は透けて優未の顔が見えた。
「うん、私の物語はここまで……」
「ここまでって……」
「雪蓮も知ってるよね?魏に降り立った一刀君のこと……」
魏……南海覇王に教えてもらう以前……生まれ変わる前に見せてもらった記憶を思い出す。
「そう、その時とは状況が違うけど、私の役目はとっくに終わってるの無理言ってここにどどまらせて貰っていただけ」
「……もう会えないの?」
「大丈夫、きっと……ううん、必ず会えるよ」
「本当に……また会えるの?」
「うん、必ず……私は信じてる」
優未は会えることを信じてるなら、私だって信じないと……
「なら、私が信じないわけには行かないわね」
「ははは、雪蓮らしいね」
優未は笑っていたがその体は徐々に薄くなっていった。
「今までごめんね。……」
「なんで謝るのよ?」
「だって、いつも迷惑かけちゃったし」
「なに言ってるのよ。それが優未のいいところじゃない」
「……あ……りが……と……しぇれ……ん……」
(カラーンッ)
最後に優未は笑顔で私の名を呼んで姿が見えなくなった。
「優未?……何処に行ったのよ……」
呼んでも優未は出てこなかった。
優未の立っていた所には一刀が優未にプレゼントしたブレスレットが落ちていた。
「悪ふざけはやめなさいよ。何処かに隠れてるんでしょ?」
隠れているわけじゃないことは分かっている。だけど、それを信じたくない。
「優未……優未ぃぃぃっ!!」
夜の高台に雪蓮の声が響き渡った……
葉月「さて、本日は如何だったでしょうか?」
雪蓮「ちょっとちょっと!優未居なくなっちゃったじゃない!この裏切り者!」
葉月「ちょ!行き成りなんですか。それにだれが消えないって言いましたか?」
雪蓮「言ってないけど。そこは、消えないのが普通でしょうが」
葉月「普通なんですか?」
雪蓮「そうよ。それに皆幸せにするって言ってなかったっけ?」
葉月「……さて、ブレスレットを残して消えてしまった優未ですが物語りはまだまだ続きます」
雪蓮「人の話を聞け~~~~~~っ!」
葉月「聞いてますよ。第一、私の物語は前半と後半に分かれてるんですよ?前半でこの話したんだから何かあるとか思わないんですか?」
雪蓮「なら復活するの?」
葉月「それはまだ言えませんよ。今後の話のキモになるかもしれませんから」
雪蓮「教えなさいよ」
葉月「だめですね。いくらこの物語のヒロインでも教えられません」
雪蓮「ぶーぶー!」
葉月「そんな口を尖らせると、そんな口になっちゃいますよ」
雪蓮「ならないわよ!まったく……それよりも、拠点はどうなるわけ?」
葉月「ああ、その事ですか、次回の拠点は既に決まってますよ」
雪蓮「誰なの?」
葉月「まあ、お楽しみってことで待っていてください。実はメイン書くより拠点の方は全然シナリオが決まってなくて毎回頭を悩ませてるんですよ」
雪蓮「……それでよく書けるわね」
葉月「ぶっちゃけ、自分の妄想で書いてますよ!」
雪蓮「あなた、頭大丈夫?社会的地位保ててる?」
葉月「ひどっ!雪蓮、それは酷すぎですよ!」
雪蓮「だって……ねぇ~」
葉月「ぬあ~~~そんな目で見ないでください!学生の時に暇さえあればネトゲしてたのが見透かされているようだ~!」
雪蓮「口に出してるじゃない」
葉月「はっ!しまった~~~~!」
雪蓮「もう遅いわよ」
葉月「うぅ~……もう、お開きにします……」
雪蓮「まったく……それじゃ皆さん、次回も絶対見てよね、お姉さんとの約束よ♪」
葉月「また次回です~~」
雪蓮「またね~~~」
優未「わ、私ってこれで終わりなの?!」
卑弥呼「何を言う私なぞ全然出て来ていないのだぞ」
貂蝉「私はたまに出るかしら。どぅふ♪お師匠様より出番が多いわ」
卑弥呼「むぅ~、貂蝉より影が薄いとはもっと体を鍛えねばなるまいな」
管輅「これ以上むさ苦しくならないでくださるかしら?」
優未「……私もここの仲間入りしちゃうの?!」
Tweet |
|
|
92
|
12
|
追加するフォルダを選択
今回はなんとか一週間以内に投稿できたかな?
さて今回は少し悲しい話になっております。
皆さん色々と意見がおありでしょうが温かく見守っていただけるとありがたいです。
作者も書いていて涙腺が緩くなってしまいました(TwT)
続きを表示