真・恋姫無双アナザーストーリー
雪蓮√ 今傍に行きます 第14話
(ジリリリリリリリリッ!)
「んっ……」
(カチッ)
「……もう朝か……」
目覚ましの音とカーテンから漏れる日の光で目が覚める。
「……」
だけど、起きる気力がない。
「昨日の今日ですんなり切り替えられるわけ無いわよ……」
昨日の夜……それは優未が私の目の前で消えた夜。
「はぁ……夢、なわけないよね」
そう……これは夢じゃなくて現実。
それが現実だったと知らしめるかのように私の腕には一刀から優未に送られたブレスレットをつけているから。
優未が光りになって消えた時、これだけが消えずに残った。
「優未……なんで消えちゃったのよ」
しかし、答えが返ってくる事は無かった。
あの後の事は良く覚えていない。
気がついたら私の部屋の前に立っていたのだ。
「制服がシワだらけね……ふふ、自業自得か」
私はお風呂に入らずそのままベットに倒れ込み枕を濡らし、泣きつかれて寝てしまったようだった。
「取り合えずお風呂に入ろうかしらね……」
重たい体を起こしお風呂場へと向かう。
「おはよう雪蓮。昨日お風呂はいらないで寝たでしょ。ダメよ女の子なんだから気をつけないと」
母さんには心配かけたくないしね。
「うん、そうね。今度からは気をつけるわ」
私はいつも通りの感じで返事を返した。
「っ?!雪蓮、どうかしたの?昨日何かあったの?」
「え?何にも無いわよ?」
あれ?いつも通り答えたつもりだったんだけどな。
「はぁ、何年あんたの母親してると思ってるのよ。娘の態度が違うことくらい直ぐわかるのよ」
「……」
母さんは優しく私を抱きしめてくれた。
「もう、母さん?私子供じゃないわよ」
「あんたはいつまで経っても子供よ。私の大事な子供。だからいつでも甘えていいのよ。頼っていいのよ。それは両親なんだから」
やっぱり、母さんには叶わないわね。こっちに来ても……
「……うん、ありがとう。……母さん」
私は暫く母さんを抱きしめおの温もりを感じた。
「もう平気よ母さん」
「あらそう?私はもう少し抱きしめてたいわね」
「お断りよ。私を抱きしめていいのは一人しか居ないんだから」
「あらあら、それは焼けちゃうわね。お母さん悲しいわ!」
「ふふふ」
「ふふふ」
「ん?何してるんだ二人して」
居間で母さんと笑っていると私たちを見て首をかしげた。
「なんでもないわよ。ね、母さん」
「そうね、女の秘密よ♪男は入ってきちゃダメよ」
「?」
父さんは首を傾げて笑いあう私達を見ていた。
「どうやって一刀に話そうかしらね……」
学園に向かう道すがらそんなことを考えていた。
「回りくどいのは私が嫌いだし、やっぱりストレートに言った方がスッキリするわよね」
「あ、でも、それで一刀がショックを受けすぎるのも嫌よね……う~ん」
腕を組んで歩きながら悩んでいると……
「歩きながら考え事は危険よ雪蓮」
「え?」
振り返ると琳が立っていた。
「運動神経がいいから平気よ」
「それは余計なことをしたわね。まあいいわ、学園に行きましょ」
「いつの間に先導してるのよ」
呆れながらも琳と学園に向かう。
「……」
横目を見ると、いつもの変わらない態度の琳がいた。
「なに?人の顔を見て」
「べっつに~一刀からどうやってそのイヤリングを貰ったのかな~って思ってただけよ」
「なっ!お、教えるわけ無いでしょ!」
琳は頬を赤くした琳は歩く早さを上げて前に出た。
「恥ずかしがらなくてもいいじゃないのよ。教えなさいよ」
「うるさいわね!教えないったら教えないの!」
「ブーブー、ケチね」
「ケチで結構よ」
「あ、雪蓮さんに琳さん!おはようございます!」
「おはようございます。雪蓮殿に琳殿は、お二人で何を騒いでいるのですか?」
二人で騒ぎながら歩いていると桃香に愛紗が合流してきた。
「それがね、イヤリングをどうやって一刀から貰ったのか教えてくれないのよ」
「あ~、私も知りたいです!琳さん教えてくださいよ~」
「ぅ……」
桃香は乗り気だったが愛紗は一瞬後ろに引いたわね。
「教えないって言ってるでしょ。だったら、あなた達が一刀から貰ったら教えてくれるのかしら?」
「教えるわけ無いじゃない」
さらりと私は言ってのけた。
「ちょ、ちょっと恥ずかしいかな、えへへ♪」
「つまりはそう言うことよ。愛紗も同じでしょ」
「はい?!そ、そうですね」
まあ、仕方ないわね。二人だけの思い出にしたいものね。
だが、私はある違和感を私は感じていた。
十字路の少し前で一刀が路地から歩いてくるのが見えた。
「か~ずと、おはよっ♪」
「うわっ!し、雪蓮!おはよう」
「な~に、赤くなってるのよ」
「だ、だって、あ、当たってるし……」
「可愛らしいこと言うじゃない」
「はい、そこまで」
「もう、なんで邪魔するのよ琳」
「私じゃなくても止めるわよ」
「……」
「わわ、雪蓮さんうらやまし、じゃない、ずるいですよ!」
「桃香、それ同じ意味じゃない?」
「ええ?そ、そうかな?」
「あ、あのそろそろ離れてくれると「だ~め♪」……り、琳助けてくれよ」
「ふん、自分で何とかなさい」
「そんな~、と、桃香っ!」
「え、っと……えへへ、私も抱きついちゃお♪」
「うええ?!あ、愛紗、たすっ?!」
「桃香さまと雪蓮殿に抱きつかれてうれしそうですね。カズトサマ」
「あ、愛紗?と、取り合えず落ちつこう」
「ええ、私はオチツイテイマスヨ。カズトサマ」
「え、笑顔だけど笑顔じゃないよ!と、桃香、愛紗を止めてくれよ」
「ええ?!ああなった愛紗ちゃんは私でも止められないよ~。だから、一刀さん頑張って♪」
「ふふふ、大変ね一刀」
「も、元はと言えば雪蓮が抱きついてきたからだろ?!」
「嬉しくなかったの?」
「いや、うれしかったけどさ……じゃなくて!何とかしてくれよ!」
「もう、しょうがないわね」
まあ、自分がまいた種だからね。
「愛紗、ちょっと待ちなさい」
「なんですか、雪蓮殿。そこをどいて頂きたいのですが」
「まあ、落ち着きなさい。ちょっとこっちに来てくれるかしら?」
「……なんでしょうか?」
もうちょっと……いまだ!
「えい♪」
「なっ!」
「あ、あぶなっぶむ?!」
「んっ!」
あらら、強く押し付けちゃったかしら。
一刀は愛紗を抱きとめようとしてたみたいだけど、桃香が腕に抱きついていてうまく抱きとめられなかったみたいね。
「か、一刀さま。あ、あんまり動かないでください!んんっ!」
「ご、ごめん!」
「……ちょっと一刀?いつまでそうしているつもりなのかしら?」
琳の眉間がピクピクと動かして相当お怒りのようね。
「ご、ごめんな愛紗」
「い、いえ。一刀さまのせいではないので御気になさらないでください」
「それでもごめん」
「ああ、頭を上げてください。このような場所で」
愛紗ったらオロオロと周りを気にしその行動がなんだか可愛らしいわね。
だけど、さっきから感じていた違和感は徐々に私の中である確信を持ち始めていた。
でもそれは信じたくない……外れて欲しい。
「ね、ねえ、一刀」
横で桃香と話している一刀に声をかける。
「ん?なに?」
「あ、いや……」
「?」
躊躇っちゃうわね……でも聞かないと。
「一刀、優未の事なんだけど……」
しかし、期待とは裏腹に一刀の口から告げられたのは衝撃的なものだった。
「優未って誰?雪蓮のクラスメイト?」
「……え?優未よ。いつも一緒に登校してたでしょ」
「え……そんな人と登校したことないと思うけど……桃香はどう?」
「ううん、私も無いよ。愛紗ちゃんはどうかな」
「申し訳ありませんが私も記憶に無いですね」
「そんな……琳はどうなの?」
「無いわね。可愛らしい娘なら覚えてるはずだけど」
まさか全員が優未の事を忘れてる?どういうこと……
「雪蓮、どうかしたのか?顔色が悪いぞ」
「なんでもないわよ……大丈夫だから」
私の中で黒いものが広がっていくのが分かる。
お願いこれ以上広がらないで!
「本当に大丈夫か?休んだほうが「大丈夫って言ってるでしょ!」っ?!」
「ちょっと雪蓮。貴女らしくないわよ。少し落ち着きなさい」
「うるさい!琳には関係ないでしょ!」
「なっ!あなたねえ!」
「わわ、ど、どうしよう愛紗ちゃん」
「雪蓮殿に琳殿も落ち着いてください。皆が見ています」
「それを言うなら、私にではなくて雪蓮にいいなさい」
「私は冷静よ!おかしいのはあなた達よ!」
もう何がなんだかわからなかった。
口から出る言葉は自分でもわかる酷い言葉だった。
「なんで分からないの?!優未よ?いつも一緒に登校してお昼食べたじゃない!」
「だから、そんな娘知らないって言っているじゃない。どうしてそれがわからないのかしら?」
「居たのよ!確かにここに居たの!明るくて悪戯が好きで、でも好きな人を一途に思い続けたのそれが優未なの!」
「……雪蓮」
なによ……その私を哀れむような目は、そんな目で私を見ないで頂戴っ!
「と、とにかく落ち着きましょう。ね、雪蓮さんも」
「……煩い」
「え?……ひっ?!」
「っ?!桃香さまお下がりください!雪蓮殿血迷ったか!」
「煩いわね……どいつもこいつも、なんで分かってくれないのよ……」
ああ、もういいや。一刀が居ても優未が居ないんじゃ意味がないもの……
一刀と優未が居て意味があるのよこの世界は、そんな一人が欠けた世界なんて、
私はいらない……
「……ふふ、もういいや……」
もう、笑うしかない……
「え?今なんて言ったのですか雪蓮殿」
優未が居ないなら……
みんな忘れてしまったのなら……
「こんなお友達ごっこは終わりよ……」
「雪蓮、あなた本気じゃないでしょうね」
「いいえ本気よ。はっ、何が友達よ。友達が一人消えても忘れるくらいの友情しかないなら友達なんてするんじゃなかった!」
「雪蓮さん……」
「雪蓮殿……」
「……」
三人とも悲しい顔で私を見ている。
でも、一刀の顔だけは見れなかった。見たら後悔しそうだったから……
「ふん、これでお別れよ」
私は踵を返して歩き出そうとした。
「雪蓮……」
「……なによ」
一刀が呼び止めたのに睨みつけるように振り向いた。
(パンッ!)
「一刀さん?!」
「一刀殿!」
「一刀……」
「……え?」
今、何が起きたの?
すると徐々に頬が痛み叩かれたのだと分かった。
「何するのよ一刀!」
「……」
一刀の目は怒っているようにも悲しんでいるようにも見えた。
「ごめん」
「……」
一刀は一言私の目を見て謝った。
「でも、今回は雪蓮が悪いと思う……友達なんだからさ、そんなこと言ったらダメだよ」
一刀は微笑みながら私に伝えてきた。
「もし、まだ桃香たちに酷いことを言うなら、俺は雪蓮でも許さないよ」
一刀の顔から笑顔が消え真剣な表情になった。
それでも一刀の目を見れば分かる。一刀は私を叩いた事に後悔していることに、
ホント、一刀は優し過ぎるわよ……
「あっそ、なら許さなくても結構よ。さようなら」
でも、私の口から出てきた言葉は一刀たちを突き放す言葉だった。
「雪蓮……」
私の後ろで一刀が私の名前を呼んだけど私は振り向かず歩き去った。
「はぁ~~~~~~~」
歩きながら自己嫌悪に陥る。
「あそこまで言う必要なかったかしら」
「でも、あの時は頭に血が上ってというかなんと言うか自分を抑えられなかったのよ」
暫く一刀には会えないわよね。あんな別れ方したんだから……
「……はぁ~~~~~~~」
もう、溜息が付き足りないくらいよ。
……優未ならどうするのかしらね。こうなった時は……
『え?そんなの決まってるよ。謝って今までどおり!これで万事オッケーだよ!』
なんていいそうね。
でも私は優未じゃない。そんなに簡単には謝れないのよ。
「はぁ~、とにかく今日一日は一刀たちに会わないようにしないと気まずすぎるしね」
早歩きで学校へ向かう。
いつもより早くついちゃうけど一刀たちに会うよりはましよね。
とにかくお昼は一刀が来なさそうな場所で摂って、帰りは下校時刻ギリギリでいいわね。
だけど、下校時刻ギリギリを選んだことに後悔することになるとは今の私には想像も出来なかった。
学園に着くとホームルームにはまだまだ時間があった。
「とにかく教室で大人しくしてようかしらね」
一刀たちがいつも通りに登校してくるなら私のクラスによる時間はないはずだし。
「おはよ~」
「おはようございます。天音さん」
「おはよ、う?」
あれ?何か教室の雰囲気が少し違うような……
その答えは直ぐにわかった。
優未の席が、ない……
優未の席は、窓際の一番後ろの席だったがそこにあるはずの席が無くなっていた。
「ね、ねえ。あそこに席ってあったわよね?」
「え?そうでしたかしら?前から無かった様に思いますけど」
まさか……ここまで存在が無くなるものなの?
「あ、あの天音さん?顔色が悪いようですが保健室に行かれてはどうですか?」
「え、ええ。そうさせて貰うわ。悪いけど鞄を席に置いておいてくれるかしら」
「わかりました。お一人で大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ」
クラスメイトに鞄を預け教室を出る。
まさかここまで優未の存在が消されているとはね。
考え事して歩いていると曲がり角を曲がる一つの影が見えた。
「……ん?今の後姿は……」
気になるわね、後を追いかけてみるか。
「……やっぱり」
あとを着けて見ると理事長室へと入って行くのが見えた。
「……」
(コンコン)
『は~い、あいてるわよ~ん』
相変わらず気持ち悪い喋り方をする人ね。
苦笑いを浮かべるも直ぐに真顔になって理事長室の扉を開けた。
「あら、何かごようかしらん?」
「……」
部屋を見回すが先ほど入っていった人は見当たらないわね。
「ここに人が入っていったはずだけど?」
「あら?来てないわよぅ。見間違いじゃないのかしら?」
あくまでしらを切るつもりのようね。
でも、私の勘が告げているのよ。
「出てきたらどうかしら?管輅、だったかしら?」
「……」
理事長、貂蝉だったかしら?その顔が険しくなった。
「あなた達二人に聞きたい事があるから出てきてくれるかしら?」
「……どうしてわかったのですか?」
「そうね……勘とだけ言っておきましょうか」
管輅はカーテンの裏から微笑みながら出てきた。
「わたくしを覚えているということは優未さんのことですね」
「その言い方だと私も優未の事を忘れているいいかたね」
「はい、そのはずなのですが。なぜ……」
管輅は本当に不思議そうにしていたけどそれは私も知りたいことよ。
「それも気になるけど、なんで皆から優未の記憶を消したの?」
「それが優未さんの願いだったからです」
「優未の願い?どう言う事よ」
「そうですね。貴女には聞く権利がありますね、貂蝉?」
「わかったわん。ここじゃ人が来る可能性があるから移動しましょう……ふんぬ!」
貂蝉は手をかざすと空間が裂け黒い裂け目が現れた。
「大丈夫よん。私達の移動手段みたいなものだから」
貂蝉は何事もないと言うけど普通は躊躇うわよ。
「大丈夫ですよ。わたくしも使っているものですか」
管輅も一言告げると黒い裂け目に入っていった。
「……なるようになれね」
私も意を決して黒い裂け目に入った。
「何も無いところなのね」
「殆ど移動に使うだけですからね」
「この空間は時間と切り離されているからゆっくりと話が出来るわよん」
「っ?!い、今どうやって出したの?」
管輅が手をかざすと椅子とテーブルが姿を現した。
「これくらいこの空間なら簡単に出せるのですよ。さ、どうぞ」
「あらん?私の椅子がないじゃない」
「あなたの分は自分で出してくださいね」
「ああん、管輅ちゃんたらいけずなんだから」
「貂蝉は放って置いて話を進めましょうか」
「え、ええ」
「あれは……そうですね一週間前くらいでしょうか。優未さんから連絡がありました。大切な話があるっと」
「あ、夜遅くにすいません管輅さま」
「いいえ、いいのですよ。それで大事な話というのは?」
「はい……記憶を、みんなから私の記憶を消して欲しいんです」
「なぜ、っと聞いてもかまいませんか?」
「……雪蓮や一刀君に悲しい思いをさせたくないから、かな」
「貴女らしいですね。でもよろしいのですか?」
「うん、もう会えないんだから覚えて貰えててもつらいだけだよ」
「……」
「それに雪蓮に言われちゃったからさ」
「なんとです?」
「一刀君を悲しませたら許さないって言われてさ。……だから」
「本当に後悔はありませんね」
「……はい」
「わかりました。では、みなさんの記憶から優未さんの記憶を消すことにしましょう」
「はい、ありがとうございます」
「いいのですよ。わたくしにはこれくらいしかすることが出来ませんから」
「そんな、管輅さまには感謝しても仕切れませんよ。本当なら雪蓮が記憶を戻した時点で私は消えているはずだったんですから」
「心優しいのですね。優未さん」
「や、やだな~私はやさしくなんて無いですよ」
「いいえ、優しくなられましたよ」
「えへへ、優しくなれたならきっとそれは一刀君のおかげかな」
「一つお伺いしてもよろしいですか?」
「え?なんですか」
「優未さんは雪蓮さんと北郷さんどちらが好きなのですか?」
「そんなの選べませんよ。雪蓮は友達として好きだし、一刀君は恋人として好きです。でも、一刀君は恋人として見てくれてないですけどね」
「そうですか……」
「と、言うわけです」
「馬鹿ね……ホント馬鹿よ」
もう涙が出ないと思っていたけど頬に温かいものが伝った。
「それにしてもどうして雪蓮さんだけが……あら、それは」
「え?これですか?優未のです。消えた時これだけが消えずに残って」
「少々お貸しいただいてもかまいませんか?」
「ええ、いいですけど。これがなにか?」
左腕に身に着けていたブレスレットを管輅に手渡した。
「……これは……貂蝉、あなたもこれを見てください」
「ちょっと壊さないでよ?」
「わかっているわよん。あらん、こんなことってあるのかしら?」
「あなたもそう思うのですね」
「どういうこと?」
「このブレスレットには本来無いはずの力が備わっています」
「普通のブレスレットじゃないの?」
「本来は普通のブレスレットですがこれにはある術がかけられています」
「術?」
「はい、これには我々の術を弾く効果が備わっているようです。試してみましょう」
「ちょっ!何するつもりよ!」
管輅はあろうことかブレスレットを宙に投げ、手から何かを飛ばした。
あんなことしたら壊れるに決まっているじゃない!
(シュンッ)
「え?」
ブレスレットに当たる寸前の所で放たれた気みたいなものは消えうせた。
「ど、どうなっているの?」
「見ての通りですよ。これがこのブレスレットに備わっている力です」
「でもなんでこんなことが?」
「予想でしかありませんが、多分、優未さんはこのブレスレットだけは消したくなかったのかもしれません」
「それが無意識のうちにそのブレスレットに術をかけたのではないかと思います」
「それと私の記憶が消えないのとどういう関係が?」
「もしかして雪蓮ちゃんそれ身に着けたまま寝なかったかしら?」
「え?……あっ」
確かに身に着けてた……
「私は皆が寝静まる深夜を見計らい術を発動させました。ですが、あなたはそれを身に着けていたおかげでそれを間逃れたのです」
「それにしてもおかしいわね」
「どういうことよ貂蝉」
「お師匠様に前に聞いたのだけど、優未ちゃんには術を使う素質はないって言っていたのよね」
「確かに優未さんには素質はありませんでしたが、それは我々から見た観念ですよ。それに一度に強力な術を使えなくても溜め込んでいけばそれは何れ強力になります」
「塵も積もれば山となるってことかしら?」
「日本には便利なことわざがありますね。まさにその通りです。ですが、このブレスレットの力も徐々に無くなって来ています。そのうち完全に消えるでしょう」
「それで、私の優未との記憶は消えるの?」
「いいえ、消えませんよ。それとも消しますか?」
「馬鹿言わないでよ。私だけでも優未がここに居たって覚えててあげないと可哀想じゃない」
微笑むと管輅も微笑んだ。
「先ほどより顔つきがよくなりましたね」
「そうかしら?まあ確かに気分が少し楽になったのは確かだけどね」
「それは良かったです。それでは北郷さんたちと学生生活を楽しんでくださいね」
(ガンッ!)
そうだった……忘れてた。
「あらあら、わたくしなにか悪いことおっしゃいましたか?」
管輅はニコニコと笑いながら見ている。
「……何処まで知ってるのよ」
「あら、何のことですか?わたくしは何も知りませんよ」
「はぁ、まあいいわ。私はこれで戻るわ」
席から立ち裂け目に歩いていく。
「それじゃ学生は勉学に励んでくるわよ」
一言、管輅と貂蝉に言って空間から出て行った。
昼、なんだか嫌な予感がして教室から出て曲がり角で様子を伺っていると一刀が教室に訪ねてきた。
「あっぶな~、流石に暫くは顔合わせられないわよ」
そのまま弁当を持って一刀が来なさそうな場所に移動した。
「はぁ、美味しくな~い」
弁当はいつも通り何の失敗もしていない。けど、美味しくなかった。
一人で食べるとこんなに味気なかったのね。
「こんな青空の下で食べても気分が晴れないものなのね」
今私が居るのは進入禁止になっている屋上、しかも出入り口の上だ。
「はぁ、この後どうなっちゃうのかしら私達……」
「それは貴女次第ではなくて?」
「っ?!り、琳!どうしてここだと分かったのよ」
琳は腕を組んで見上げていた。
「貴女風に言えば勘、かしら?」
「からかってるの?」
「別にそう言うわけじゃないわ」
「別にいいわ。で、なに?私に説教でもしにきたの?」
「して欲しいのかしら?」
「ごめんこうむりたいわね」
「安心なさい。ただ伝えに来ただけよ」
「何をよ」
「……一刀が心配していたわよ」
「っ!そ、そう」
「一刀、彼、後悔してるわよ貴女を叩いたことに」
「……」
「どうするつもりなの?」
「どうもしないわ。あんな言い方したんですもの、もう戻れないわよ」
一刀の事を思うと胸が痛くなる。でも、それ以上に一刀が優未の事を覚えていない事がどうしても許せなかった。
「はぁ、貴女も知っているとは思うけど一刀はしつこいわよ?多分、ちゃんと話さない限りずっとつきまとうかもね」
「はは、随分と一刀のこと知ってるのね。やっぱり好きな人だからかしら?」
「……」
琳は私を睨みつけて殺気さえ出しているように見えた。
「冗談よ。そんなに睨まないでくれるかしら」
「……冗談は状況を見て言うべきね。まあいいわ、私がいいたことは一つ。ちゃんと一刀と話すことね」
「考えておくわ」
「そう、なら期待しておきましょうか。それと私への謝罪はいつでも受け付けているわよ」
「それも気が向いたらね」
「ふん、相変わらずね。それじゃ戻るわね。いつまでもここにいたら私も不良の仲間入りになりそうだから」
「酷いわね私不良なんかじゃないわよ」
「ありえないわね」
「ぶーぶー」
「ふふ……」
琳は笑いながら学内へと入っていった。
「……ありがと、琳」
琳に聞こえないように感謝の言葉を伝えた。
授業と授業のそれは現れた。
「あ、あの雪蓮さん、じゃなかった天音先輩は居ますか?」
「桃香?」
「あ、しぇれ、天音先輩!」
「あはは、雪蓮でいいわよ。言いずらそうよ」
苦笑いを浮かべながら伝えると桃香も同じように苦笑いを浮かべた。
「あ、あのお話いいですか?」
「……話すことは無いわよ」
「あぅ、で、でも一刀さんあの後、全然笑ってくれないし、相当後悔してるみたいなんですよ」
「……」
「だから、あの、一刀さんに会ってくれませんか?」
「それは出来ないわ」
「どうしてですか?!わ、私は雪蓮さんの言ったこと気にしてませんよ!」
「ちょ、声が大きいわよ」
「あわわ、すいません。で、でも、あれじゃ一刀さんが……」
桃香も桃香なりに私の事心配してくれているのは分かってるけど、それでは私は……
「ごめんなさい。でも、もう会うつもりは……」
「そんなのダメですよ!」
「桃香……」
「喧嘩したまま分かれるなんてそんなのいいはずありませんよ」
「終わったことよ。桃香も忘れなさい」
「無理です。仲直りしてくれたら忘れます」
「……あなたってこんなに強情だったのね」
「考えを曲げるつもりはありません。私はあんなつらそうな顔をした一刀さんの顔を見たくないし、笑っていて欲しいんです」
(キーンコーンカーンコーン)
「……予鈴がなったわよ。桃香も戻りなさい」
「雪蓮さん!」
「いいから戻りなさい」
私は叫ぶことはせず低い声で桃香に言った。
「……はい」
桃香は俯きながら戻って行った。
「まったく、琳といい桃香といいお人よしすぎよ」
桃香の後姿を見送りながら呟いた。
放課後になり、みんな思い思いに雑談をしていた。
「本当に頑固ね桃香は」
次の休み時間も桃香は教室に現れて私を説得しに来た。
「とにかく桃香がまた来ないうちに教室から抜け出さないと」
鞄を持って教室を出て桃香に出会わないように遠回りをして下駄箱へと向かうことにした。
「やはり来ましたね雪蓮殿」
「……愛紗」
「少々よろしいでしょうか?」
「あなたも一刀に会えって言いたいの?」
「そう言いたい所ですが私にはあなたを説得できるだけどの弁が出来ません。だから……」
そう言うと愛紗は私を睨みつけてきた。
「なるほど、力で従わせようってわけね」
「はい」
「いいわ、そう言うの嫌いじゃないわよ」
「不動殿にも許可を得ています。では参りましょう」
そのまま愛紗についていく。
「雪蓮殿は着替えますか?」
「面倒だからこのままでいいわ」
「わかりました。では、私は着替えてきますので少々お待ちください」
愛紗は更衣室に着替えに行った。
「愛紗殿はどうしたのでござるか?いつもの気合が違う出ござるが」
「まあ色々とね」
「ふむ、聞かない方がいい感じでござるな」
「ごめんなさいね」
「いやいや、気にしなくてもいいでござるよ。なんだか愛紗殿の本気が見れそうでござるからな」
いや、それ半端ないんですけど……
「お待たせしました」
「なっ、その服装は……」
愛紗が着てきた服装は見覚えがあった。
「その服はどうしたの?」
「これは私の私服でした。こちらの方が動きやすいのでこれで戦わせていただきます」
た、確かに私服だったかもしれないけど本気でやばいかもしれないわね……
「戦い方はどするのでござるか?」
「無制限でやらせていただきます。それと出来れば道場の外で見ていただいたほうがいいかもしれません」
「ちょ、どんだけ本気で戦うつもりよ」
「もちろん全力ですよ」
冗談じゃないわ、全力でやられたら今の私じゃ数合ももたないわよ。
「って、なんで薙刀なのよ!竹刀でしょ普通!」
「こちらの方が私にはなれているので今回はこれでいかせて貰います」
ああ、私死んじゃうかも……
「はああぁぁぁっ!」
「くっ!」
本当に冗談じゃないわよ。
(ブオンッ!)
なんで薙刀でこんな音が出るのよ!
「避けていては勝負になりませんよ!」
「か、簡単に言ってくれるわね」
あ~、やっぱりやらないとダメかしらね、やだな……
「……これで終わりですか雪蓮殿」
「はぁ、仕方ないか……」
「っ?!雰囲気が変わりましたね。やっと本気を出してくれますか」
「ふぅぅぅぅ……あまりやりたくないけどね……行くわよっ!」
「っ?!早い!くっ!」
これを防ぐ普通?ならこれならどう!
「はぁっ!」
「くっ!まだまだああぁぁ!」
やばっ!
(ダッ!)
危ないと感じて後ろに飛びのくとそこに薙刀が振り下ろされていた。
「あっぶないわね。脳天直撃するところだったじゃない」
「避けると思っていましたから」
「よく言うわよ」
あとどれくらい持つかしらね……5分、いや3分が限度かそれ以上は体の負担が大きすぎるわね。
「一つ聞きたい」
「何かしら?」
「何を悩んでいるのですか?」
「っ?!」
「あなたの剣戟には迷いがある。剣を交えれば分かります。それが武人です」
「まいったわね。どんな言葉よりくるわその言葉」
「ではなぜ一刀さまに会われないのですか?一刀さまは今日一日、笑ってはくれますがどこは陰りがありました」
「愛紗、言葉じゃなくてこれで話すのでしょ?」
「……雪蓮殿では私には勝てませんよ」
「言ってくれるじゃない」
「事実を言ったまでです」
はぁ、仕方ない。この体でもつかどうか分からないけどこう言われたら意地でも勝ちたくなるのよね。
「なら次の一撃で終わりにしてあげる」
「やれるものなら……私も最高の一撃を出しましょう」
愛紗の構えが変わった。あの構えは青龍逆鱗陣、か。あれやばいのよね~。
「覚悟はよろしいか雪蓮殿」
仕方ない、体中のリミットを外すか……あ~、筋肉痛で済めばいいけど、無理か。
「……ええ、いつでも」
(ゴクッ)
誰かの唾を飲む音が道場内に響いた。それほどまでに周りの空気は澄んでいた。
「「はあああぁぁぁぁ!」」
互いの剣戟が交わる寸前に愛紗が微笑んでいたことに気がついた。
『いい剣戟ですね』
そう言われている様な気がした。
「っ?!」
「……なんで途中で止めたのよ」
「何のことですか?」
結果は私の勝ち、だけど……
「はぁ、無しよ。この試合は」
愛紗の攻撃は確実に私の持っていた竹刀を折るほどの威力だった、だけどそれを途中で緩めた。
「簡単なことです。雪蓮殿なら私が勝っても勝たなくても一刀さまに会いに行くと信じていますから」
「なによそれ。私が居なくなれば一刀を独り占めできるかもしれないのよ?」
「それこそ愚問ですね。私は正々堂々と奪って見せるだけですよ。もちろん雪蓮殿が相手でもです」
愛紗は微笑みながら手を伸ばしてくる。
「はぁ、なんだか試合に勝って勝負に負けた気分ね」
「なるほど、では引き分けということですね」
「いい性格してるわよホント」
「褒め言葉として取っておきましょう。それとそろそろここを立ち去ったほうがよろしいかと」
「なぜ?」
その疑問は直ぐにわかった。
「すごいではないか、やはり雪蓮殿も剣道部に入部してほしいでござるよ!」
「い、いやほら、もう受験前だし、三年は普通引退でしょ?」
「なに気にすることはないでござる!」
「気にするわよ!ちょっと、愛紗何とかしなさいよ」
「では、早くここから逃げ出したほうがよろしいでしょうな」
「もう人事だと思って笑わないで頂戴よ」
「あ、待つでござる。雪蓮殿!」
冗談じゃないわ。とにかく逃げないと!
私はそのまま鞄を持って剣道場を後にした。
「はぁ、はぁ、さ、流石にあの後の走りは疲れるわ」
あのあと暫く不動に追い掛け回されたおかげでもう体力が殆ど無い状態。
「なんとかここまでこれたけど、暫くは動けそうもないわね……」
ここは一刀に教えてもらった秘密の場所。
「ここなら誰も気づかないでしょう」
ただ一人を除いてはだけど、ね。
「でも、一刀もきっと帰ったわよね……」
木に寄りかかり空を見上げる。
十月も終わりに近づき紅葉美しい木々もその葉を落とし始めていた。
「なんだかあっという間の七ヶ月だった気がするわね。」
優未にあって一刀と再会して、まさかの愛紗に桃香、それに名前は違うけど曹操も……
「ホント慌しい日常だったわ」
目を瞑ると風が吹き私の髪なぞった。
あ、なんだか急に眠気がここなら誰も来ないし平気、よ……ね……
私はそのまま木に身を預け眠ってしまった。
「んっ……ここは」
やば、寝すぎちゃったかしら。
あたりは夕焼けに包まれて青かった空には一番星が輝いていた。
「そろそろ帰らないと……あれ?」
私こんなのかけてたかしら?
私の体には白い布がかけられていた。手にとって見るとそれはこの学校の上着だった。
「え……もしかして……っ?!」
横を見ると一刀が眠っていた。
「……んっ……」
「っ?!」
やばっに、逃げないと……
「しぇ、れん……」
「っ?!」
起きちゃった?!
恐る恐る一刀を見るが目を覚ました様子は無かった。
「何よ寝言か。ビックリさせないでよね」
「……しぇ、れん……」
「はいはい、なんですか?まあ、寝言に返事しても意味無いんだけどね」
苦笑いを浮かべると気づかれないように立ち上がろうとした瞬間……
「…………ごめん……」
「え?」
「んん……ご、め……な…………たた…………して……」
一刀は寝言で私を叩いた事に対して謝っていた。
「……なによ。これじゃ帰るに帰れないじゃない」
私は座りなおして一刀の頭を持ち上げ私の膝に乗せた。
「ホント、一刀は優しすぎよ。バカ……」
一刀の髪をすいてやると気持ち良さそうに微笑んでくれた。
「……でも、ありがとう一刀……でも、あなたのせいじゃないのよ。あなたの…………」
一刀の寝顔を見ていたらなんだか自分が一刀を避けていたのが馬鹿らしくなって来ていた。
「ん……こ、こは?」
「起きたみたいね一刀」
「しぇ、れん?雪蓮?!」
「は~い、雪蓮ちゃんですよ~」
「?なんで雪蓮の顔が目の前に?」
「それは膝枕をしているからよ」
「え?…………ええ?!お、俺いつの間に?!」
「私が乗せたのよ。嫌だったかしら?」
「そ、そんな事無いよ!柔らかくて気持ちよくて!って、俺は何を言ってるんだ!す、直ぐに起き上がるから」
一刀は勢いよく起き上がりいつまでも謝ってきた。
「本当にごめん!俺、雪蓮が寝てるのに気がついて風邪ひいたら悪いと思って、そしたら俺も眠くなってきて」
「謝りすぎよ。別に気にしてないから」
「それに、今朝だって女の子なのに頬を叩いたりしちゃったし、痣とか出来てないか?」
「大丈夫よ。それにあれは私の方が悪かったんだから一刀は謝る必要ないわよ。だから、ごめんなさい」
「そんな!それでも、女の子に手をあげたことは事実だし……そうだ、何か俺に出来ることは無いか?」
「何かって何よ」
「何でもいいよ!パシリでもかばん持ちでもなんでも」
「なら…………そうね。目を瞑ってくれるかしら?」
「目を?わ、わかった……これでいいか?」
「ええ、そのままじっとしてて頂戴」
一刀は同じように叩かれると思ってるのか歯を食いしばっていた。
ふふ、可愛いわね。でも、違うんだな~
「んっ……」
私は一刀に近づきそっと口づけをした。
「ん?!」
「ふふ、これでお仕置きはお仕舞い。さ、帰りましょ」
私は一刀に背を向けて歩き出すと、一刀も慌てて追いかけてきた。
校門を抜けたあたりで一刀が話しかけてきた。
「なあ、雪蓮」
「なに?どうしてあんなに怒ったんだ?俺、何か気に触るようなことでも言っちゃったのか?」
「そんなんじゃないわよ。一刀は気にしなくていいのよ。私の勘違いだったんだから」
「でも……あれ?」
「え?なに?」
「雪蓮ってそんなブレスレットしてたっけ?」
多分、髪を掻き分けた目に付いたんでしょうね。ブレスレットは消え始めてる夕日の光りによって輝いていた。
「ああ……これは大事な宝物よ。大事な、ね。見る?」
「え?いいのか?大事なものなんだろ?」
「そうだけど、一刀になら特別にいいわよ……はい」
「腕から外し一刀に手渡した」
「へ~、綺麗だね」
そりゃ、あなたが優未に贈ったものだからね。
「ありがとう、返すね」
その時だった。私は驚き動くことが出来なかった。
「一刀?なんで、泣いているの?」
「え?……あ、あれ?本当だ。何でだろう。不思議だな」
「……」
「ははは、おかしいな、なんで…………な、いて…………」
一刀は涙を拭くも直ぐに目じりに涙が溜まってきていた。
「ご、めん……気に、気にしなくていいから……」
そこでは私は分かった。一刀も優未の事を完全には忘れていないって事に、このブレスレットを見て心の片隅に残っていた優未との思い出がそうさせているのだと。
それが嬉しくて、そして辛かった。
一刀は心のどこかで優未を覚えていてくれたことに、でも、そのせいで悲しんでいることに。
「一刀っ!」
だから私は一刀の背中からきつく抱きしめた。
「雪蓮?」
「いいのよ?泣いたって、泣きたい時くらい誰でもあるんだから」
「ありがとう、雪蓮」
一刀に優しく話しかける。顔は見えなかったけどきっと一刀のことだ微笑んでいたに違いない。
あたりは完全に暗くなっていた。
「もう大丈夫だよ。ありがとう、雪蓮」
「もう少しこうしてたいな~」
「ええ?!さ、流石にもう暗いし。家族が心配しちゃうよ」
もう、少しは雰囲気を読みなさいよ。
「はぁ、分かったわよ。もちろん送ってくれるんでしょ?」
「仰せのままにお嬢様」
一刀はいつものように微笑んでくれた。
「それと、ごめんね今朝の事」
「もうそれはいいわよ。ちゃんと責任とって貰ったしね♪」
ふふ、顔を赤くしてかわいいわね
「さ、私を家までエスコートして頂戴♪」
「うわっ!だ、抱きつかなくてもいいだろ?!」
「だ~め、か弱い女の子を手も繋がずに歩かせるつもり?」
「だ、だったら手を繋ぐだけでいいじゃないか」
「それじゃ面白くないから却下♪」
「はぁ、なんだか、わがままお姫様みたいだな」
「あら、私は一刀が好きなただのわがまま女の子よ♪」
「同じ意味じゃない?」
「気にしたら負けよ一刀」
そのまま一刀に家まで送ってもらい。
母さんに一刀を見られ根掘り葉掘り聞かれ、一刀は苦笑いを浮かべていた。
翌朝、案の定、酷い筋肉痛になっており、学校を休んだのは秘密♪
葉月「おわりました~~~如何だったでしょうか?」
雪蓮「前半から中盤にかけて随分と重い話ね」
葉月「あいや~うまく表現できているか不安で仕方が無いですね。ですが書きたい事はかけていると自分では思っています!」
雪蓮「私が壊れたことが描きたかったのかしら?(ボキボキッ)」
葉月「ちょ、なぜ指をならすんですか?」
雪蓮「え?返答次第で肉片にしようかと思って♪」
葉月「ひぃぃぃぃぃっ!」
雪蓮「さあ、白状なさい!」
葉月「そ、そんなことより時間の話ですよ!次回はいよいよ拠点になります!」
雪蓮「……で、今回は誰なのよ」
葉月「今回は愛紗に琳と雪蓮です」
雪蓮「なら許す!」
葉月「ほっ……」
雪蓮「それでどんな話にするか決めているの?」
葉月「まだ未定です。そこらへんも楽しみに待って頂けるとうれしいです」
雪蓮「なら後ろから狙われないような作品にしなさい」
葉月「ガクガク、そうします」
雪蓮「ところで葉月」
葉月「はい?なんですか?」
雪蓮「この話って完結するの?」
葉月「……するんですかね?」
雪蓮「なにその不安にさせる発言は」
葉月「いや~、このまま学生生活をエンジョイさせながらフェードアウトもいいかっ、その剣をこちらに向けないでくれますか、雪蓮さん?」
雪蓮「なんだか、話が聞こえなかったからもう一度言ってくれるかしら?」
葉月「ちゃ、ちゃんと完結させますよ!」
雪蓮「よろしい♪」
葉月「ぐすん、それでは皆さん次回をお楽しみに」
雪蓮「またね~♪」
貂蝉「ちょっと~久々の登場なのに少なかったじゃないのん」
管輅「作者があなたを出したくないからではないのですか?」
貂蝉「まあ!こんな美しい肉体を持ったあたちをないがしろにするなんって、許さないんだかるぁぁぁぁあああああ!」
管輅「暑苦しい人は嫌われますよ」
貂蝉「ぶぅるはっ!ちょっと痛いじゃないの管輅ちゃん!」
管輅「はぁ……」
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さて、前回に引き続き優未が消えた翌日のお話になります。
登校中の雪蓮に非常なまでの現実が突きつけられます。
今回のお話は賛否が分かれるかと思いますが楽しんで読んで頂けるととても嬉しいです。
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