真・恋姫無双アナザーストーリー
雪蓮√ 今傍に行きます 第12.3話
【優未の思い】
「はっ!はっ!つ~~っ!」
ベットの上で苦しむ私
「さ、最近は治まってたんだけどな……」
最近は動悸も落ち着いてたんだけど、ここ最近また起こる様になってきた。
「はっ!はっ!……はぁ~~~……治まった」
肩で息をしながらベットの上で大の字になる。
「……そろそろなのかな」
「かもしれませんね」
「っ?!」
独り言だったはずなのに返答が返ってきて驚き体を起こすと管輅さまが立っていた。
「勝手に入らせて頂きましたよ」
「なんで卑弥呼様といい貂蝉様といい勝手に部屋に入ってくるんですか?」
「ふふふ、一応インターホンを押したのですがお返事が無かったので、ごめんなさいね。お茶をご一緒しようかとお誘いに来たのだけれど」
管輅様は柔らかい微笑を浮かべて謝りながらもお茶のお誘いを受けてしまった。
「そうだったんですか、いいですよ。ちょっと待っててください。今着替えますから」
「わかりました。それでは居間の方で待たせていただきますね」
管輅様は扉を開けて居間へと向かっていった。
「さてと着替えないとね」
ベットから起き上がり動きやすい服に着替える。
「これでよしっと!……ん?」
ふと化粧箱の横に置かれているアクセサリーに目が止まった。
それは一刀君が私の誕生日にプレゼントしてくれたブレスレットだ。
「これ身に着けてるといつでも一刀君が傍に居てくれる感じがして恥ずかしくなっちゃうんだよね」
最初のうちはすごく嬉しくて毎日着けてたんだけどね。
だから私は特別な時以外は着けない様にしていた。
傷つけたくないって言うのもあるんだけどね。
「でも、今日は着けていこうかな」
ブレスレットを手に取り腕にはめるとキラリと日の光を反射して輝いた。
「お待たせしました管輅様」
「それほど待っていませんよ……あら?そのブレスレットは?」
「え、これですか?えへへ、一刀君からの誕生日プレゼントです♪」
「そうですか。それはよかったですね」
管輅様に見せると管輅様は自分の事のように喜んでくれた。
「はい!それで何処で飲むんですか?」
「そうですね……では、あそこにしましょう」
「あそこ?」
「着いて来れば分かりますよ」
管輅様は微笑むとそのまま歩き出していきました。
「あ、待ってくださいよ管輅様!」
先に歩き出した管輅様を慌てて追いかけた。
「そろそろ教えてくださいよ管輅様」
「ふふふ、もう直ぐで着きますよ」
あくまで着くまでのお楽しみみたいだ。
まあ、管輅様なら変なお店って事はないだろうからそこらへんは安心なんだけど。
「さあ、着きましたよ」
「ここって……」
そこは落ち着いた雰囲気のお店だった。
「なんで態々こんな遠くのお店なんですか?」
「ふふふ、入れば判りますよ」
「??」
入れば判るってどういうこと?
(カランッ)
管輅様は通いなれた店のように躊躇なく入っていった。
「あ、待ってくださいよ管輅様!」
私も慌てて中に入っていった。
「お帰りなさいませ。お嬢様方」
「……え?」
お店に入って第一声で固まってしまった。
「どうかしましたか?」
「え……、こ、ここって」
「はい、執事喫茶ですよ」
いや、笑顔で答えられても困るんですけど管輅様……
「お嬢様こちらへどうぞ」
「ええ」
管輅様は通いなれているのか執事に扮した店員にエスコートされて席に案内された。
「お嬢様もどうぞ、こちらへ」
「あ、はい……ん?」
なんだろ、今聴いたことあるような声だったような……?
声を聞いて執事の人を見てみると……
「か、一刀、君?」
「……え?……あっ」
お互い顔を見て動きが止まる。
「えっと……こ、こちらへどうぞお嬢様」
「は、はい……」
一刀君は気まずそうに管輅様が座っている席へと案内してくれた。
「ふふふ、中々いいお店でしょ?」
「……管輅様は知ってたんですか?」
「あら、何の事でしょうね」
管輅様は笑顔でとぼけているけど絶対してたよね。一刀君が居ること
「お嬢様、お飲み物は何にいたしましょうか」
そこへ、執事姿の一刀君が注文を取りに来た。
「では、こちらを頂きましょうか」
「かしこまりました……優未お嬢様は何に致しましょうか?」
(ボッ!)
「ふぇ?!え、えっとですね……」
「優未さん、メニューが逆さまですよ」
管輅様が笑いながら指摘してくるけど、そんなこと気にしていられなかった。
「お、同じものを……」
やだ……か、顔が熱いよ!一刀君にお嬢様って言われただけなのに!
「かしこまりました」
一刀君はお辞儀をしたあと微笑んでからオーダーをあげにいった。
「ふふふ、優未さんたら可愛らしいわね」
「か、からかわないでくださいよ!」
「あらあら、怒られてしまったわね」
管輅様はまったく反省して居ないのか終始笑顔だ。
「では、怒られついでにもう一つ……実は名前で呼んでくれたのは優未さんだけですよ」
「……え?」
今、管輅様なんて仰いましたか?
「あら聞こえなかったかしら?優未さんだけが名前付きで呼ばれたのよ」
「わ、私の心の声を読まないでくださいよ!」
「あらあら」
管輅様は困った顔で笑っているけど、もう、私はそれどころじゃなかった。
私だけが?何で?名前を知ってる?ホントにそれだけ?わからないよ~~~!
一人で悶々と唸っているところに、一刀君が注文の品を運んできた。
「お待たせいたしました。お嬢様」
「ありがとう」
「いいえ。……優未お嬢様如何なさいましたか?」
「な、なんでもないです!」
「さ、左様ですか……では、どうぞ」
一刀君はティーカップとケーキを置き、ポットから紅茶を注いでくれた。
ああ、なんかさまになってるな~。女装も良かったけど、これはこれで良いかも……
「それではごゆっくりとお寛ぎください。お嬢様、優未お嬢様も」
「あ、あのかずっ……し、執事、さんちょっと」
一刀君はお辞儀をして離れていこうとしたので私は呼び止めた。
「はい、何でしょうか。優未お嬢様」
「えっと……な、なんでここで働いてるの?」
「……」
一刀君は動きを止めて苦笑いを浮かべた。
「……及川に騙されたんだ……」
一刀君は周りに聞こえないように耳打ちして教えてくれた。
「及川って一刀君のクラスメイトの?」
「ああ……」
なんでも、事は数日前だったらしい
数日前……
「お~い、かずピー!」
「……」
「あれ?聞こえとらんのかいな、ならもう一度……お~い、かずっ」
「聞こえてるよ」
「なんや、聞こえてるんなら返事してくれてもえええやないか。うんもう、かずピーのいけず~」
「気持ち悪いから止めろ。……で、俺に何のようだ?それとかずピー止めろ」
「お願いや!バイト代わってくれへんかな?」
「はぁ?なんでだよ」
「いや~、それがやな。バイトとデートが重なってしもうてな」
「自業自得だろ。俺は嫌だぞ」
「そこを何とか!でないと、わて……わて!」
「だああぁぁ!引っ付くなよ!わかったから!代わってやるから!」
「ホンマか!いや~、持つべきものは親友やな!」
「で?いつバイトに出ればいいんだ?いつものバイト先でいいのか?」
「いや、そこじゃないんよ。日にちは次の日曜日や、これがその場所の地図と紹介状や!時間は9時開店やから8時半くらいにでも入ってくれればええよ」
「わかったよ。その代わり、バイト代半分よこせよ」
「わかってるわ。ほな、よろしくな!」
「……っと、言うことがあったんだ」
「へ~……じゃ、及川君に感謝しないとね」
「なんでだ?」
「執事姿の一刀君が見れたから♪」
一刀君は恥ずかしいのか頭をかきながら苦笑いを浮かべた。
「……あ、店長が呼んでる。では、優未お嬢様、ごゆっくりとお寛ぎください」
一刀君はお辞儀をしてカウンターに戻っていった。
「ふふふ、良かったですね。優未さん」
「……管輅、絶対に知ってましたよね。一刀君がここに居た事」
「私は占い師ですから……ふぅ、美味しい」
管輅様は優雅に紅茶を飲んでホッと息をついた。
「それにしても今日は人が多いですね」
管輅様は周りを見回してそんなことを言った
「そうなんですか?」
「ええ、いつもはもう少し人は少ないのですが……あら、なるほど」
管輅様は理由がわかったのか微笑んだ。
「え、どういうことですか管輅様?」
「見ればわかりますよ……ほら、あの娘なんて」
「ん?」
管輅様が指を指した方を見てみる。
「あれ?あの娘、たしか内の学校の……」
そうだ!たしか、一刀君のクラスで見たことある。
「ふふふ、それにあちらも」
「え?あ、私のクラスメイトの大久保さんだ……どういうこと?」
一刀君は及川君に代わってくれって言われたってことはここでバイトしてるわけじゃなさそうだし……う~ん、わからないな。
「ちょっと失礼しますね管輅様」
「ええ」
管輅様に少し席を外すことを伝えて、大久保さんの所向かった。
「こんにちは、大久保さん」
「え?……あ、音無さん。こんにちは」
「大久保さんは良くここに来るの?」
「いいえ、今日ここで北郷さまが一日執事をすると聞いてやってきましたの」
「え?誰がそんなこと言ってたの?」
「あら、音無さんはそれでここに来たのではないの?」
「私は知り合いがいつもここでお茶をするって言うから連れて来てもらっただけなんだけど」
嘘は言ってないよね。管輅様は知り合いみたいなものだし、うん。
「そうでしたの。なんでも『一刀さまを愛でる会』の会員の一人がこのお店の店長さんの娘さんらしいのよ」
「はい?今なんて?」
「え?お店の店長さんの娘さん」
「いやもうちょっと前なんだけど」
「『一刀さまを愛でる会』のことですか?」
「そうそれ!何なのその会って?」
いつの間にそんなのが出来てたんだろ。
「それでしたらこちらを見ていただいた方が早いかもしれませんわ」
そう言うと鞄から何かのチラシ見たいな物を取り出して見せてくれた。
「なになに……」
それを受け取り読み始める。
『第20回 北郷一刀さまを愛でる会
・会場:―――喫茶
・時間:9時~18時
・注意事項
・北郷一刀さまには手を触れないでください。
誤って触れてしまった場合、直ちに離れること。
・写真はお店の店員に許可を得てから行うこと。
・仕事上がりの北郷一刀さまの待ち伏せの禁止。
不振な振る舞いはお店にも迷惑がかかります。
・長時間のお店の滞在
他のお客様の迷惑にもなりますし、
北郷一刀さまにお会いしたい人も多くいます。
・よそ様に迷惑をかけないこと。
以上を守り、北郷一刀さまを愛でましょう。
主催者 貂蝉
「……は?」
あれ、目が悪くなったのかな?
目を擦りもう一度見る。
『主催者 貂蝉』
どうやら間違いじゃないみたい……ないにやってるんだろ貂蝉様は……
あ……なんだか目眩がするよ。
「だ、大丈夫ですか?」
「え?ああ、うん。大丈夫だよ」
大久保さんが心配そうに見てくるから笑顔で返す。
「なら良かったですわ」
「心配かけてごめんね。それじゃ私戻るから。あ、このチラシ貰ってもいい?」
「ええ、構いませんわ。ではまた。学園でお会いしましょう」
大久保さんに手を振って別れる。
「お帰りなさい。如何でしたか?」
「……管輅様は知っていたんですか?これ」
管輅さまにチラシを手渡すと、少し困った顔をした。
「あらあら、最近大人しいと思ったらこんなことをしていたのですね」
「それじゃ、管輅様は知らなかったんですか?」
「ええ、まったく困った人ですね」
苦笑いを浮かべながらも笑って許す管輅様はやっぱり大人だと私なりに思った。
「ですが、お仕置きは必要かもしれませんね。ふふふ」
「……」
前言撤回、管輅様はかなり怒っているみたいです。
「で、でも、管輅様もここで一刀君が働いているの知っていたんですよね?」
「いいえ、知りませんでしたよ」
「え、でも」
「知りませんでしたよ。占いで今日は吉日とでただけです」
いや、笑顔で言われても……、顔近すぎです管輅様。
「……本当ですか?」
「あら、信じられないのですか?」
「そう言う訳じゃないんですけど」
なんだかこれ以上聞ける雰囲気じゃないよ~。
管輅様は優雅に紅茶を一口飲んで微笑んだ。
「さて……執事さん、ちょっと」
「はい、如何致しましたかお嬢様」
管輅様が手を上げて一刀君を呼んだ。
「ここは確か写真のサービスがあったわよね?」
へ~、そんなのがあるんだ。だったら私も一刀君と写真取りたいな~。
「はい、ですがゲームに勝たなければなりませんが挑戦なさいますか?」
ゲームか……どんなゲームで勝負するんだろう?まあ、私がやる訳じゃないからいいんだけどさ。
「ええ……優未さんが」
ふ~ん、私が一刀君と勝負ね……ん?
「はいぃ?!わ、私!」
「ええ、そうですよ」
「いやいや、微笑みながら言わないでくださいよ!」
「だって、一緒に写真撮りたいんでしょ?」
「だから勝手に心の中を読まないでくださいよ!」
「ふふふ……じゃ、準備をお願いしますね。執事さん」
「かしこまりました。お嬢様」
「ちょ!か、一刀君?!私の意見は!」
一刀君は『大丈夫だから』と、笑顔を見せてくれた。
「いやいや、何が大丈夫なの?!」
「優未さん?もう少し声を抑えては如何ですか?周りの方が驚いていますよ」
「あ、すいません……じゃなくて!あぁ~、もう!んっんっんっ……ふぅ」
私はとにかく座りなおし紅茶を飲み干した。
「お待たせいたしました優未お嬢様。では、勝負の方法は如何なさいましょうか」
一刀君はトランプやオセロなど数点の勝負が出来る物を持ってきた。
「えっと……それじゃ、オ「トランプで」……はい?」
管輅様は私がオセロと言うのを遮ってトランプと答えた。
「トランプでよろしいですか。お嬢様?」
「いや、私はオ「はい」ちょっと?!」
またも遮られ、管輅様を見るがニコニコと笑顔で見ていた。
「……なんでトランプなんですか?」
「だって、優未さん。緊張感に欠けるオセロとか言い出しそうだったので。勝負事はやはりトランプですね」
がっくりうな垂れる私を見て一刀君は苦笑いを浮かべてた。
なによ~。一刀君も少しは庇ってよ~。
恨めしそうな顔で一刀君を睨んだけど一刀君は私を見てニッコリと微笑むだけだった。
「っ!」
その笑顔も反則だ~~~!
「あらあら優未さん?執事さんを見てお顔を真っ赤にするなんて初々しいですね」
「なっ!なに言い出すんですか!もういいですよ!トランプでも花札でも!」
「花札はこの中には無いようですが?」
「揚げ足取らないでくださいよ管輅様~!」
管輅様は手で口元を押さえてクスクスと笑った。
「では、何で勝負を致しましょう」
一刀君はトランプを手に取り笑顔で聞いてきた。
「そうだな~……し「スピードでお願いしますわ」……なんでまた先に言うんですか」
「優未さんの事だから、七並べとか神経衰弱見たいな緊張感の無いゲームを選択しそうだったから」
また管輅様は……なんで人が言おうとしてるのもを言い当てるんですか……はぁ。
「それが占い師の仕事ですから♪」
「だから心の中を読まないでくださいよ~~。うぅ~」
泣きそうになるよ。とほほ……
「あっと……本当にスピードでいいのか?優未」
一刀君が周りに分からない様に小声で話しかけてきてくれた。
「うん。ありがとう、心配してくれて」
「そんな事無いよ。なんだったら七並べでもいいぞ?」
「ううん。こうなったらスピードでいいよ。決まった以上、それに全力を尽くすだけだよ」
「そっか、俺が言うのも変だけど頑張れよ」
一刀君が笑顔で応援してくれるだけでなんでも出来そうになるから不思議だよ。
「ふふふ、お二人で密談もいいですが、周りを見てくださいね?」
「「え?……あっ」」
管輅様に言われて周りを見るとなんだか冷たい目線がヒシヒシと伝わってきた。
あぅ、大久保さんまでそんな目で見ないで!
「そ、それでは始めさせて頂きます。よろしいでしょうか、優未お嬢様」
「そ、そうですね!よ、よろしくお願いします!」
周りの目がものすごく痛いから早く終わらせて帰ろう!
一刀君が手際よくトランプを赤と黒で分けていく。
「それではお好きな方をお選びください。優未お嬢様」
「それじゃこっちで」
赤い文字で書かれているトランプを手に取る。
「さあ、優未さん勝つのよ」
なんだか一人だけノリノリな管輅様に私の中のイメージがどんどんと崩れていく。
「はぁ~」
「準備はよろしいでしょうか。優未お嬢様」
「は~い、ちゃっちゃと終わらせるよ~~」
やる気の無い声で答える私に一刀君は苦笑いを浮かべていた。
「では……」
「……」
「おめでとうございます。優未お嬢様の勝利です」
「……は?……え?ええ?!」
いつの間にか手元のトランプは無くなり、机の上には赤一色のトランプが積まれていた。
「あらあら、運が良いわね優未ちゃん」
運がいい?そんなわけ無いよ普通こんな綺麗に数字が並んでるわけが……っ!まさか……
そこで一刀君の顔を見るとニッコリと微笑んでいた。
「……なにか仕掛けたでしょ。一刀君」
「何のことでしょう。優未お嬢様」
う~!そ、そんな笑顔で答えたって騙されないんだから!
「と、とにかくこれはノー「では写真を撮りましょうね」フガーッ!」
管輅様に口を押さえられて話進められてしまった。
「では、準備を致しますので、こちらへどうぞ」
「はい。……ほら、脹れてないで行きますよ優未さん」
「……別に脹れてなんかいませんよ」
「あらあら」
直ぐにわかりそうな嘘に管輅様は困った顔で微笑んでいた。
「こちらでお待ちください」
一刀君はお辞儀をしてその場から居なくなった。多分カメラを持って来るんだと思うけど。
「まったくもう。管輅様は何を考えているんですか」
「あら、何をとは?」
「このことですよ!なんでこんな強引に!」
「……思い出、ですよ」
「……」
その一言で分かってしまった。もう、残されてる時間が無いことに……
「……後どれくらいなんですか?」
「もって二十日程度かと……」
「そうですか……」
まあ、分かっていたことなんだけどね。いざ言われるとやっぱり堪えるなぁ……。
「お待たせしました。優未お嬢様」
しんみりした空間に一刀君が現れたことにより穏やかな空気に、
「さあ、優未さん。この執事さんにお姫様抱っこして撮ってもらいましょう♪」
「ええ?!」
ならなかった。
「な、何言い出すんですか!そんなのしてくれるわけ無いじゃないですか!」
「あら、そうなの?」
「そうだよね。一刀君!」
「え?……」
私は否定してと目で訴え、横では管輅様が目を輝かせていた。
「えっと……」
一刀君はチラリと横を見るとそこにはこのお店の店長が立っていてなぜか頷いていた。
それはまさに、『やれ』と言っているように見えた。
「かしこまりました。では、抱かかえさせて頂きます」
「うええぇぇぇ?!ちょ、ちょちょちょっと待って!」
両手を前に出して手を振り一刀君を留まらせる。
「あらあら、店長さんの許可も出たのですから、なにを恥ずかしがっているのですか優未さん」
「そりゃ恥ずかしいですよ!なんで皆が見てる前でお姫様抱っこだなんて!」
そう、移動したはしたのだが、この喫茶店が一階と二階が吹き抜けになっている作りになっている。つまり、下からは皆が羨ましそうに見上げているのだ。
「さ、流石にここでそれは……きゃっ!か、一刀君?!」
一刀君はいつの間には後ろに回り、抱きかかえてきた。その瞬間……
『きゃ~~~~~っ!羨ましい~~~!』
と、下から悲鳴のような黄色い声があちらこちらから上がった。
「あらあら、結構力持ちなのね。彼」
「剣道で鍛えていますから。お嬢様」
「さ、サボってばっかり居るくせに!」
「それは、秘密でございます。優未お嬢様」
一刀君は私を見て苦笑いを浮かべた。
「あぅ~~。……恥ずかしい……」
体中の体温が一気に上がるのがわかるほど火照っちゃってるよ~。
「それでは、店長さん。お写真をお願いでしますか?」
「かしこまりました、お嬢様。それと、わたくしめのことはセバスチャンとおよび下さい」
店長さん、改め、セバスチャンさんはデジタルカメラを片手にお辞儀をして写真を撮る構えをした。
「では、撮らせていただきます。1+1は?」
それを言わすか!
「「2ー!」」
(カシャッ)
あ~、きっと顔引き攣ってただろうな~。
「ふむ……。お嬢様。もう一枚撮らせていただきます」
「はい……はい?!」
は?今なんと?
「では、笑ってくださいませ。1+1は?」
「ふふふ、えいっ!」
「え?うわ!」
「え、かずと、んん?!」
(カシャッ)
『きゃ~~~~~~~っ!』
『いや~~~~~~~っ!』
「……」
え、今何が?あれ、一刀君の顔が目の前に……って、これってまさか……
「ん……」
ひゃ~~っ?!ど、どどどどどうしよう!こ、こここんな所で一刀君とキスを!
「ご、ごめん、優未!こ、これは事故であって!無理やりキスをしようとしたわけじゃ!」
一刀君が慌てふためきながら謝るから、なんだか私の混乱はいつの間にかなくなっていた。
というか、ちょっと不満。
「ふ~ん、一刀君は私とキスするのそんなに嫌なんだ」
「そ、そんなことないよ!嫌じゃないよ。むしろ好きだ!」
「っ!……」
『きゃ~~~~~~~っ!』
「あらあら、大胆な告白ね。こんな大勢の前で」
管輅様は一刀君にキスをさせた張本人なのに愉快そうに笑っていた。
一階フロアの女の子達も一刀君が言った告白に卒倒する人まで出ていた。
あぁ~、学校に行ったら色んな人から睨まれそうだよ……これが雪蓮に知れたら……
それを想像しただけで背筋が凍りつきそうになる。
っと、そこへ……
「ごほんっ!」
セバスチャンさんが咳をして一刀君を見つめた。
「……あ、し、失礼しました優未お嬢様。取り乱したりしたことをお詫びいたします」
どうやら、言葉使いが元に戻っているのを注意した合図だったらしい。
「か、一刀君?そろそろ降ろしてくれると嬉しいんだけどな」
「っ!こ、これは失礼しました。どうぞ、お気をつけて」
ゆっくりと降ろしてくれた一刀君の顔は顔を赤くしていた。
「では、プリントアウトしてまいりますのでお席でお待ちください。お嬢様方」
セバスチャンさんはお辞儀をして印刷する為にバックヤードに戻っていった。
「お席までお供します。お手をどうぞ」
「え、あ、はい……」
「あらあら、ふふふ」
もういいですよ。開き直りました、なんでも来いです。
一刀君の手をとり階段を下りていく。
『はぁ~~、いいな~~』
溜息と供に羨む声が聞こえてきた。
「あらあら、これからは夜道を気をつけないといけませんね優未さん?」
「それ洒落になってませんよ管輅様……」
「ふふふ、では、孫策さんに守って頂いてはどうですか?」
「その前にこのことが知れれば雪蓮に殺されちゃいますよ」
「あらあら、そう言えば孫策さんも、でしたね」
「そうですよ。はぁ~」
まあ、溜息をついたところで問題は解決しないんだけど、吐かずにはいられないよ。はぁ~。
「お待たせいたしました。こちらが先ほどのお写真でございます。お嬢様」
「ありがとうございます」
セバスチャンさんが写真を台紙に挟んで持って来てくれた。
「ほらほら、優未さん?早く見せてくださいな」
「い、いやですよ!こんな恥ずかしい写真!」
「いいではありませんか。減るものではないでしょ?」
もう管輅様の目は何処にでも居る恋する乙女みたいに輝かせてるし。
「あら、私はこれでも20代前半ですよ」
「はぁ?!それ本当ですか!ってまた勝手に読みましたね!」
「ふふふ、優未さんは読み易くて楽でいいですね」
「読みやすいって……読心術ですか?!」
「似たようなものです。それに優未さんは結構顔に出るって知ってましたか?」
「ほ、本当ですか?!」
慌てて顔を抑えると管輅様はクスクスと笑い出した。まさか……
「ふふふ、それに騙され安所ですね」
「……むぅ~」
「あらあら、機嫌を直してください。ほら、このケーキ美味しいですよ」
「食べ物で機嫌が直るわけないじゃないですか。まったく……あ、美味しい」
一口食べてその美味しさに思わず口から出てしまった。
もしかして私って乗せられやすい?
「かもしれませんね。ですが、そこが優未さんのいいところだと思いますよ」
「……」
なんだか喋らなくても会話が通じるなら喋らなくてもいいように思えてきた。
「それでは、私が独り言を言う変人さんになってしまうではありませんか」
「いや、心が読める時点で変人だと思いますが……」
「それは、言ってはいけないことですよ優未さん?」
「う、は、はい」
なんか、管輅様が凄んで来たから思わず頷いちゃった。
「あら、もうこんな時間なのね。そろそろ出ましょうか。優未さんも居心地が悪いでしょ?」
「そ、そうですね……」
確かに皆が羨ましそうに写真が挟んである台紙を凝視してるし。
「お出かけですかお嬢様」
「ええ」
「では、こちらへどうぞ」
不思議に思うったんだけど、お出かけって言われてお金払うってなんか変な感じがするな。
「そこは不思議に思っても流すところですよ」
「あ、やっぱりそうなんですね」
「ええ、そう言うものです」
管輅様が会計を済ませると紙で出来たカードを二枚渡してきた。
「?これは?」
「ここのポイントカードですよ。それと、名刺です」
「は?名刺って誰の?」
もう一枚を見ると確かに名前がかかれていた。
『白桜 刃」
「……誰ですかこの人?」
こんな知らない人の名刺を貰ってもね。
「あらあら、それ北郷君の名刺ですよ」
「……はい?何でこれが一刀君の名刺なんですか?第一名前が違うじゃないですか」
「あらあら、先ほどの店長さん、セバスチャンも偽名ですよ?」
あ、やっぱり偽名だったんだそうだよね。そんな名前の人居るわけ……ん?と言う事は。
「この名前が一刀君のここでの名前ってことですか?」
「そう言うことです」
管輅様は微笑むと出口に向かい歩き出した。
「行ってらっしゃいませ。お嬢様」
そこには扉を開けて待っている一刀君が居た。
「優未お嬢様も行ってらっしゃいませ」
笑顔で送り出してくれる一刀君にちょっと悪戯心が沸いた。
「うん、それじゃ行ってくるね。白桜 刃君♪」
「うっ……」
「あははは♪」
一刀君は少し唸ると鼻をかいて照れていた。
「今日はありがとうございました。管輅様」
「いいえ、わたくしはただ、お茶に誘っただけですよ」
柔らかく微笑む管輅様の顔に一瞬だけ陰りが見えたような気がした。
だがそれも一瞬で直ぐにいつもの笑顔に戻った。
「では、わたくしはこれで……あ、そうでした」
「なんですか?」
歩き出そうとした管輅様は何かを思い出したのか立ち止まった。
「今日は家で大人しくしていた方がいいですよ」
「なぜですか?」
「ピンクの悪魔が優未さんを襲ってくると出ていたので」
「ピンクの悪魔?なんですかそれは」
「わたくしの占いではそれしか分かりませんでしたが、気をつけてくださいね。特に曲がり角には」
「?良く分かりませんけどわかりました。気をつけます」
「ええ。では、これにて失礼しますね」
管輅様は歩いていくとすっと姿が消えていった。
「こんな光景を知らない人が見たら大騒ぎになるんだろうな」
苦笑いを浮かべながら私も家に帰ることにした。
「あ、そうだ。夕飯の買い物しないと……」
踵を返して街に向かう。管輅様が言っていた事も気になるけど。
「ま、直ぐだし平気だよね」
気楽に考えて町のスーパーに向かうのだった。
その数分後、街に向かったことに後悔する私が居ることは今の私では知る由も無かった。
「さ~て、今日は何にしようかな。昨日は酢豚だったから、今日は和食で攻めて見ようかな」
道を歩きながら夕飯を何にしようか考える。
「ん~、久々に魚の煮付けもいいかな。いやいや、とんかつも捨てがたいな。ん~、迷うな~」
献立に悩みながら歩いていたせいで横から来る気配に気づかず歩き、やがて……
(ドンッ!)
「きゃっ!」
「わわっ!……イタタ……あ、だ、大丈夫ですか!何処か怪我は……」
「あ、平気よ。私も余所見してたのがいけないんだ、し……優未?」
ぶつかった相手は雪蓮だった。
雪蓮は尻餅をついてお尻を擦っていた。
「ご、ごめんね!夕飯考えてて全然前見てなくて!」
「別に気にしてないわよ対した怪我もしてないし……あら?何かしらこれ」
「あ、それは!」
そこで管輅様が言った言葉が甦ってきた。
『ピンクの悪魔が優未さんを襲ってくると出ていたので』
『気をつけてくださいね。特に曲がり角には……』
ま、まさかこの状況は……。
そう、まさに、曲がり角で雪蓮にぶつかり、雪蓮の髪の色は……ピンク!
恐る恐る雪蓮を見ると……。
「っ?!」
そこには肩を震わせて写真を凝視している雪蓮が居た。
無理無理!殺される!なにあの目に見えて黒い覇気が見えるんですけど!
「あ、なのね。これには理由があって!」
(バンッ!)
(ビクッ!)
雪蓮が勢い良く台紙を閉じて思わず方を強張らせた。
「優未?」
「は、はい……」
「これはどういうことかしら?」
「あのこれはですね……知り合いがお茶を飲みに行こうと誘ってきたので」
「それで?」
雪蓮は終始笑顔で私の話を聞いてたけど、全然笑っているようには見えなかった。
「と、言うことで。これは事故なんです……」
もう、さっきから雪蓮には使わない敬語を使いまくりだ。それだけ今の雪蓮は怖いんだよ。本当だよ?
あんな目で睨まれたら気の弱い人は気を失っちゃうくらい怖いんだよ。
「話は分かったわ。これが事故だって事も」
「そうそう、事故!だから仕方ないことなんだよ!」
(ピクッ)
思わずそう叫んでしまい。雪蓮の覇気が一瞬弱まったかと思ったんだけど、
「でもね、なんで一刀がここで働いているのを教えてくれなかったのかしら?」
「……え?」
「しかも、今日限り見たいね。一刀がここで働くのは」
「あ、あの雪蓮、さん?」
「それを、あなたは黙っていたのよね?」
「あ、いや……その……」
ああ~、雪蓮の覇気が段々と大きく……あ、動物の気配すらいつの間にか周りからなくなってるし……うええ?!人の姿まで無いよ!
「優未?ちょっとこっちに来なさい」
「え、いや……それは……」
行ったら、多分……いや、確実に殺される!な、何とかしないと……でも、雪蓮の手に写真を持ったままだし……。
「さあ、いらっしゃい」
ええい、こうなったら!
「ご、ごめん雪蓮!」
(バッ!)
雪蓮の手から写真を掻っ攫い全力で逃げ走った。
「待ちなさい!優未!」
うわ~~!追いかけてきたよ。しかも早っ!何あの速さ!
もしかして、体力も戻り始めてるとか?そんなの卑怯だ~~~~!
きっと追いつかれるだろうけどそんなこと気にしてられないよ!せめて長く生きたいし!
私の逃走劇は30分にも及んだ。
「はぁ、はぁ……もう、だめ……」
とうとう力尽きて手を両膝に当てて息をする。
「はぁ、はぁ……やっと追いついたわよ優未。さあ、覚悟は出来ているわね」
「……無念」
こうして、雪蓮の説教&お仕置きタイムがそこから30分続いた。
「で、そのお店で一刀は何時まで働いているの?」
「えっと18時までって言ってたような気がするけど……」
あれ?これってチラシに書いてあった時間だったっけ?もう分からないから適当で良いや。
「そう、ならまだ時間はあるわね。行くわよ」
「……行くってどこに?」
「何処にってその執事喫茶って所よ。早く案内しなさい」
「でもこれから夕飯の……はい、わかりました」
ああ~記憶が戻ってない頃の雪蓮の方が優しかった気がするよ~~。
うな垂れながらお店に案内する。
「……ここです」
「そう、ここが……入るわよ優未」
「あれ?雪蓮に優未?どうしたんだ」
雪蓮が入ろうとした時、横から誰かに声をかけられた。
相手は見なくてもわかる。一刀君だ。
「あら、一刀……って、なんで私服なのよ」
「なんでって……もう、終わりだし」
「はぁ?!折角来たのに~、もう一度着替えて私に接客しなさいよ一刀!」
「ええ?!そんな無茶な!」
「無茶でもするの!ほら!行くわよ!」
「え?ええ?!ちょ、ちょっと雪蓮?!」
ああ、一刀君が雪蓮にさらわれて中に入って入って行っちゃったよ。
一人残された私はただ、呆然とその光景を見ていた。
『きゃ~~~~~~っ!』
「……どうやら、まだ喫茶店には一刀君目当ての人が残っていたみたいだね」
中からの黄色い声が外にまで聞こえてきた。
後日談だけど、
「ふふふ、あら優未じゃない。見てみて私も一刀と写真撮って貰ったのよ♪」
雪蓮は私と同じ様にお姫様抱っことキスをさせて写真を撮ったらしい。
どう見ても、「させてる」より「している」感じがするんだけど。
「え?勝負?なにそれ、私そんなのしてないわよ。まあ、しても私の勝ちだからやってもやらなくても一緒よね♪」
なんて言ってたけど。きっと強引に迫ったんだろうな。
『優未にだけ写真撮らせるなんてどういうことよ。私も撮りなさいよ』なんて言ってさ。
まあ、雪蓮らしいと言えば雪蓮らしいよね。
これなら、私が居なくなっても平気、かな……
少しさびしいけど仕方ないことだよね。
やっぱり急に居なくなったらみんな不思議に思うのかな?それなら私は……
葉月「どうもこんにちは葉月です」
雪蓮「てい♪」
葉月「うぉ!い、行き成り何するんですか!」
雪蓮「ふふふ、葉月なんて死んじゃえ♪」
葉月「縁起でもないことを言わないでください!」
雪蓮「だって~、投稿は遅れるし、全然私出てないし」
葉月「そりゃ、優未の話だから当たり前じゃないですか。遅れたのは申し訳ないんですけど」
雪蓮「それだけじゃないわよ。一刀の執事姿を私に見せないのよ!」
葉月「別に良いじゃないですか、前回の話で一刀の女装姿を堪能してたじゃないですか」
雪蓮「そうだけど~。一刀の執事姿って蓮華も見てるのよ?私も見たいじゃない~」
葉月「はぁ……そんなもんなんですかね」
雪蓮「そんなもんなのよ。だから、今から書き直しなさい♪」
葉月「無理です」
雪蓮「なんでよ~」
葉月「それは次の話書かないといけませんからね」
雪蓮「そんなの後回しで良いじゃない~」
葉月「そんなのダメですよ」
雪蓮「ぶーぶー。なら次の話はなんなのよ」
葉月「次はいよいよ……」
雪蓮「いよいよ?」
葉月「秘密です♪」
雪蓮「えい♪」
葉月「うぉ!今首狙いましたよね!首!」
雪蓮「えへ♪」
葉月「えへ♪じゃなんですよ!」
雪蓮「なら教えなさいよ」
葉月「言ったらネタバレになっちゃうんですけど……」
雪蓮「ならヒントでもいいわよ」
葉月「そうですね……言えることはちょっと悲しい話になることですかね」
雪蓮「それって答え言ったようなものじゃない?」
葉月「やっぱそうですかね?」
雪蓮「ええ、もう誰の事を言ってるのかも丸分かりのような気がするわよ」
葉月「まあ、ちゃんと最後はみんな幸せ?になるようにするから我慢してください」
雪蓮「それは私に言うんじゃなくて読者さんに言うことなんじゃないの?」
葉月「それもそうですね」
雪蓮「それにしても今日の終わり方は意味深だったわね」
葉月「まあ、そうしないと話が成り立たないというかネタがないというか」
雪蓮「ネタに苦しんでるのね」
葉月「ええ、まあ……」
雪蓮「それじゃ、そろそろお開きにしましょうか。この後書きも無いネタから搾り出してるのよね」
葉月「まあそうなんですけど。その言い方は少し傷つきますよ雪蓮」
雪蓮「本当の事なんだから仕方ないじゃない?」
葉月「うぅ~……それじゃ、みなさん」
雪蓮「また次回をお楽しみにね~~~♪」
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投票第一位の優未の話になります。
オリジナルで一位を取れるとは思わずビックリしました。
さて、今回は次回の話しにつながる感じになっております。
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