No.147076

外史演義 その1

頑張れ一刀のあとはこれでも投稿しよっかな( ゚∀゚)ノ

設定などはまだ全然決まってない(´Д⊂

呼んでくれたら嬉しいよん(*/∀\*)

2010-06-01 21:42:50 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:10142   閲覧ユーザー数:7691

 

 

漢王朝

 

 

それは高祖劉邦を始祖とし、一度は滅びたものの光武帝劉秀によって再興された約四百年続いた統一国家である。

 

 

乱れた世の中ではそれを正そうとする者が現れる。また逆に正しい世の中ではそれを乱そうとする者が現れるのが世の常。

 

 

後漢王朝末期

 

悪化する治安、官吏の横行、賊徒の跳梁。

王朝にはすでに建国時の理念などなく、ただ腐敗の一途を辿るのみであった。

 

 

力こそが正義の時代、犠牲になるのは力のない民衆である。

高官たちはのさばる賊徒たちを見て見ぬふりをするのみ。

それを見た賊徒はどんどんその数を増やしていき、ためらうことなく盗みや暴行を働き、罪なき民衆たちを踏みにじった。

 

 

しかしその賊徒たちもほんどが元農民である。

作物を作っても重税を課され、明日を迎えることもままならない。

そんな日々に耐えかねた農民たちが武装蜂起して賊になり下がるのである。

 

 

そのような負の連鎖の中、ある占い師によって民衆たちに一筋の希望が生まれた。

 

その占い師、姓は管、名は輅、字は公明。

世に名高いエセ占い師であった。

 

 

そのエセ占い師である管輅の占いとは、『東方より飛来する一筋の流星。その流星は天の御遣いを乗せ、乱世を鎮静す』というもの。

 

 

その占いは瞬く間に大陸中を駆け巡りやがて大陸を覆い尽くした。

 

エセ占い師である管輅の占いを信じてしまうほど、民衆は疲弊しきっていたのである。

 

 

その占いから二ヶ月が経った頃、未だに天の御遣いは現れなかった。

 

 

占いをあまり信じていなかった者は、やはりエセ占い師か、と嘲笑っていたが、占いを信じていた者は嘆き悲しんだ。

 

 

――――しかし、天の御遣いは人知れずこの世界に降り立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぇっくしょん!」

 

大量の皿を洗っていた青年は盛大にくしゃみをした。

 

 

彼こそが乱世を鎮静するためにこの世界に降り立った天の御遣い、北郷一刀であった。

 

 

「誰かが俺の噂をしていたに違いないな……」

 

 

ぶつぶつと呟く北郷に女将から怒声を浴びせられる。

 

 

「こら一刀! ぶつくさ言ってないでさっさと皿を洗って買い出しに行きな!」

「はいっ!」

 

料理を作っている女将に叱責された北郷は、ビクッと背筋を伸ばして再び皿洗いにとりかかった。

 

 

なぜ彼がこのようなことをしているのかというと約一ヶ月半前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ここはどこだ?」

 

 

目を開けた北郷が最初に発した言葉だった。

 

「えっと……俺は北郷一刀。聖フランチェスカ学園の二年生で剣道部に所属。それとは別に爺ちゃんから剣術を習っている。学校に遅刻しそうになって、誰かにぶつかることをちょっと期待しながら曲がり角を曲がったところで視界が真っ白になって……………………気付いたらこんなところにいたってわけか……」

 

 

北郷の目の前に広がるのは遥かなる地平線の向こうにそびえ立つ山々。

もちろんこんな景色に見覚えはない。むしろ日本にこんな場所があったかも怪しい。

 

 

そして北郷はぐるっとまわりを見渡した。

 

 

「ん~~、あれは街かな?」

 

そこに北郷の瞳に写っていたのは、壁。

壁と言ってもただの壁ではなく、街をとり囲むようにして作られているものだ。

 

「歩いて行けそうな距離だし、ここに居ても仕方ないから………………行くか!」

 

 

パンッと両頬に気合を入れて北郷は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

「名前と目的はなんだ?」

 

 

街に着いた北郷は城門のところで門番らしき鎧を身にまとった二人の兵士に呼びとめられていた。

 

 

「えっと、名前は北郷一刀。目的は…………旅の途中で立ち寄ろうと思いまして……」

 

 

腰に携えた剣を見た北郷は物々しい雰囲気を感じて咄嗟に旅の途中と答えた。

 

 

「なかなか聞かんような名前だな……。それに見たこともないような服を着ている。お主、生まれはどの辺りだ?」

 

訝しむような視線を北郷に向ける兵士。

北郷はここで仮説を立てる。

 

 

――――ここは、俺がいた世界じゃないのか。

 

と。

 

自分でもバカバカしいと思ったが、映画やドラマでしか見たことのないような城門や、目の前の兵士が身に纏う鎧に剣。

これだけの要素が揃っていればそう考えるのも無理はなかった。

 

 

そしてそれに追い打ちをかけるように北郷の目に入ったのは直方体の石。

その石には『楼桑村』と刻まれていた。

 

 

 

 

 

 

「へぇ、ここよりさらに海を渡った島からやって来たのか……。それは大変だっただろう」

「それなら聞いた事の無いような名前も見たことの無いような服も頷けるな。よし、通っていいぞ」

「ありがとうございます!」

 

門番より許可をもらった北郷はいそいそと村の中に入っていた。

 

 

「ふぅ……」

 

門番が見えなくなったところで北郷は一息ついた。

 

「まさか中国に…………でも兵士が…………劉備の生まれた村…………」

 

北郷は呟きながら頭を整理していく。

しかしやはり限界があるのか一旦考えるのをやめて村の人に聞き込みをすることにした。

 

「時は後漢王朝末期。現在の皇帝は霊帝劉宏。大陸各地に大賢良師張角を筆頭とした黄巾党が現れ、暴虐の限りを尽くしている、か……。まるっきり三国志の始まりじゃないか……」

 

げんなりとする北郷。

 

「タイムスリップなんかマンガやアニメの世界だけと思ってたんだけどなぁ……」

 

 

未来からダメダメ少年を救いに来た青い猫型ロボットや、心臓病の主人公を救うためにやって来たパンツだけだと北郷は思っていた。

しかし実際に体験してしまった北郷は何とも言えない気分になっていた。

 

 

「これからどうすればいいんだろ……」

 

右も左も分からないこの時代に身寄りの者などいるはずもなく、これからのことを思うと不安で一杯になる。

 

しかし北郷はすぐに行動を起こした。

 

 

「悩んでても仕方ないか。それに俺はどっちかって言うと行動派だから、うじうじしてないで行動あるのみだ!」

 

拳を握りしめて決意したところで北郷のお腹が音を立てる。

 

 

「腹が減っては戦は出来ん! と言うことでまず腹ごしらえをしよう」

 

 

北郷は適当な店を見つけると早速注文をした。

しばらくすると次々に料理が運ばれてきて、北郷は手を合わせて食事を開始した。

 

 

「うめぇ! っていうかホントに千八百年前かよ!?」

 

北郷は回鍋肉や麻婆豆腐を食べながら、時代錯誤だろ! と言いたくなるのであった。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。食った食った。……女将さんお勘定!」

「はいよ~」

 

料理を堪能した北郷は次に何をしようかと考えながらポケットから財布をとりだし一万円札を女将に渡した。

 

「なんだいこれは?」

「えっ? 足りなかった!? 俺のなけなしの諭吉なのに!?」

 

北郷は狼狽するが根本的なことが分かっていなかった。

 

「ちゃんとした硬貨で払ってくれなきゃ困るよ」

「………………えへっ」

 

時代も国も違うこの店で福沢諭吉が使える道理はなかったことに気付いた北郷は思わず可愛い子ぶってごまかそうとした。

 

「一文無しで食い逃げかいあんた?」

「あははははは」

 

 

こうして北郷は皿洗いに従事することとなってしまった。

 

 

「これは逆にチャンスじゃないのか?」

 

皿を洗いながら北郷は考える。

この境地を利用してこの店に就職しよう、と。

少なくとも元の世界の帰る方法が見つかるまでは。

 

 

そして皿洗いを終えた北郷は女将に頼み込むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのような経緯があり北郷は定食屋で働くことになったのである。

 

 

「さあて、買い出しに行くとしますか!」

 

 

天の御遣いとしてこの世界に降り立った北郷一刀。

しかし彼自身まだそのことには気付いていない。

そして彼がこれからどのような働きをするのかは天のみぞ知る。

 

 

 

 


 
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