No.147396

外史演義 その2

真面目に書いてみると難しい('A`)
暇つぶし程度にどうぞー(*゚∀゚*)
ちょっと編集してみました( ゚∀゚)o彡°

2010-06-03 03:13:56 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:9112   閲覧ユーザー数:7009

 

 

琢県の楼桑村は、あまり大きくない村であったが交通の要所であった。

旅人がよく立ち寄るので酒屋もあれば楽器を弾く者もいて、活気のある賑やかな宿場であった。

しかし、最近は黄巾党の影響からか、旅をする者もめっきり減ってしまった。

 

 

北郷は城内で開かれている市に来ていた。

 

 

「いつ来ても賑やかだよな~」

 

 

北郷は荷車を引きながら賑わう市の様子を観察する。

現代のフリーマッケットのような光景にどこか懐かしさを覚えるのである。

 

 

ちなみに北郷の服装は聖フランチェスカの制服ではない。

この世界ではキラキラ光る制服だと目立ち過ぎてしまうので庶民が着るような簡易な服装をしている。

もちろん制服は捨てずに大事に畳んでおいてある。

 

 

徐々にこの生活に慣れて来た北郷であったが、元の世界に帰る手掛かりは何一つ見つかっていなかった。

 

「いつまでこの生活が続くんだろ……」

 

 

とため息と共に口に出した北郷は足をとめた。

 

 

「るんるんるんるーん♪」

 

 

陽気に鼻歌を歌いながら大量の蓆や沓を背負った少女が横を通り過ぎていったのである。

それだけなら問題ないのだが、少女の歩いた後には蓆や沓がいくつか残っていたのである。

北郷は唖然としながらその光景を見つめていたが、我に返ると慌てて少女を呼びとめた。

 

 

「ちょっとそこの君!」

 

現代でナンパする時のようなセリフに若干違和感を覚えた北郷だがそんなことにかまっていられない。

少女はどんどん足を進めているのだから。

 

 

北郷の呼びかけに気付かないのか少女の足は止まらない。

北郷は先程より大きな声で再度呼び掛けた。

 

 

「そこの蓆少女! 止まってくれ~!」

「えっ、えっ。もしかして蓆少女って私?」

 

 

もしかしなくてもそうである。

キョロキョロと周りを見渡した後、後ろに振り返った少女は北郷と目が合う。

 

 

「あの~、何か用ですか?」

「…………………………」

 

少女の呼び掛けに北郷は答えない。

否、北郷は少女に見惚れていて答えられなかったのである。

 

 

少女の容姿は、赤銅色の髪を腰辺りまで伸ばしていて両サイドに羽の髪飾りを着けている。ぱっちりと大きく優しげな深緑の瞳は今まで見たどんな人より澄んでいた。

 

 

文句なしの美少女を前に北郷は言葉が出なかった。

 

 

「あの~、どうかしました?」

「えっ、あっ、って近いー!」

 

いつの間にか目の前に居た少女に北郷は思わず大声をあげてしまった。

 

 

「ご、ごめんなさい」

 

 

少女も近過ぎたことに気付いたのか顔を赤らめながら少し後ろに下がった。

 

 

「……ごめん大声出して」

「ううん。私こそ……」

 

 

初々しいカップルのような二人。

しかしようやく落ち着いた北郷は口を開いた。

 

 

「そこらに落ちている蓆や沓って君のだよね?」

「えっ、あっ、ホントだー! またやっちゃったよ~」

 

 

どうやら常習犯のようで少女はそれらを拾い始めた。

それを黙って見ているはずもなく北郷もそれを手伝い始めた。

 

「あっ、大丈夫ですから」

「いいのいいの。二人でやった方が早く終わるしね」

「……優しいんですね」

「単なる自己満足だよ」

 

それ以降は無言で作業をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ~。それじゃあお母さんと二人で作ったんだ」

「はいっ。お兄さんも御一ついかかですか?」

 

あのあと少女はこれらを問屋に納めに行くと言うので北郷は心配なのでそこまでついて行くことにした。

 

(母親と二人で蓆を織るってまるで劉備じゃないか……)

 

少女と話しながらそんなことを考えていた一刀。

 

 

「そんなわけないか……」

「なにがですか?」

「なんでもないよ」

「……?」

 

首をかしげる少女を見て北郷はありえないと結論を出した。

 

 

――――こんなおっとりとした美少女が劉玄徳なわけがない。

 

と。

 

 

しかしそんな北郷の考えは音をたてて崩れ落ちることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃ劉備ちゃん。今日もたくさん持って来てくれたね」

「はいっ! お母さんと一緒に頑張りました」

「劉備ちゃんのところの蓆や沓は頑丈だからいつも世話になってるよ。今日は少しおまけしておこう」

「ホントですか!? ありがとうございます!」

 

 

目の前のやりとりを見ていた北郷は混乱していた。

 

(こんな可愛い娘が劉備!? あの蜀を建国した劉備!? 曹操に英傑と認められた劉備!? 買って来たお茶を川に捨てられた劉備!? こんなおっぱいでかい娘が劉備!?)

 

 

北郷の頭の中に三国志の劉備像が流れる。

北郷の知識では劉備は男だったはずだった。

しかし目の前の劉備と呼ばれている少女は花も恥じらう絶世の美女。

 

 

(いや、まだ同姓同名っていう可能性が!)

 

 

「ねえ劉備さんの字って何?」

「字は玄徳だよ♪」

 

確定だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ北郷さんは最近この村に来たんだ~」

 

問屋を出たあと、北郷は買い出しに行くから、と別れを告げたのだが、劉備は、今度は私がお手伝いします、とついて来たのである。

可愛い女の子と二人で歩けるチャンスをわざわざ逃すほど北郷は無粋ではなかった。

 

 

女将からのお使いを終え、重くなった荷車を二人で引いていた。

劉備はあまり役に立っていなかったのだが。

 

市のはずれに差し掛かると何やら人垣で道が埋まっていたので、二人は足を止めた。

 

 

「なんだあの人たちは?」

「どうしたんだろね?」

 

 

二人も何があるか気になったが、荷車が邪魔でなかなか近付けなかった。

 

 

しばらくすると人がまばらになってきたので盗まれないように荷車を視界に入るところにおいて、二人は騒ぎの中心に向かった。

 

 

「人が多いからはぐれないようにしっかりと握っててね」

「えっ、は、はい」

 

北郷は劉備の手を握ってどんどん人ごみをかき分けていく。

一方劉備は突然手を握られたことに顔を赤らめていた。

 

 

(一刀さんの手、温かい……)

 

父親が亡くなってから、このように異性に手を引かれたことなど無かった劉備は恥ずかしくもあったが、少し嬉しく思っていた。

 

 

 

 

 

 

「むむむ」

「どうしたの一刀さん?」

 

 

人々が注目していたのはポツンと地面から飛び出た高札だった。

 

「字が読めない」

 

そう。北郷は字が読めなかったのである。

言葉は通じるのに、何故か字が読めなかったのである。

 

「えっとね、簡単に言えば、黄巾党をやっつけるための兵隊さんを募集してるんだって」

 

劉備はかつて私塾に通っていた時期があった字を読むことは可能であった。

 

「黄巾党ね……」

「うん……」

 

やや空気が重くなる。

実際のところ北郷は黄巾党を他人事だと思っている。

平和が充満している日本という国で生まれ育った北郷には大量の賊が人殺しや盗みを働くことが想像できないのである。

 

 

「許せないよこんなのって……」

 

 

だが劉備は違う。

この世界で生まれ育った劉備は賊の所業によって起こる悲劇を知っている。

そして、今の弱りきった国ではそれを防げないことも。

 

 

「同じ人間なのに力の無い人だけが悲しむなんて……許せないよ!」

 

 

劉備は悔しそうに唇を噛み締めて嘆くのだった。

 

 

――――やっぱりこの娘はあの劉玄徳なんだ……。

 

 

北郷は劉備を見ながらそんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

「力のない人を苛める世の中を、私がぜーったいに変えてみせるんだから!」

 

 

 

 

 

 

今この時、劉玄徳の戦いが始まったのである。

 

 

その瞬間を間近で見ていた北郷は震えていた。

落雷が直撃したかと思うほどの衝撃が全身を駆け巡った。

そして、気がつけばただ純粋に惹かれていた。

目の前の少女に。

 

 

「でも、どうすればいいんだろ?」

 

 

そして北郷はずっこけた。

 

(あそこまで格好良く宣言してそれはないだろ!)

 

北郷の心の声は劉備には届かない。

 

 

 

 

「少しよろしいでしょうか?」

 

凛とした声が二人の耳に届く。

その声の主は、美しい黒髪をサイドで一本に纏めていた。

琥珀色の瞳は力強く凛々しい。

肩に担ぐは青龍偃月刀。

 

 

「えっと、君は?」

 

先に口を開いたのは北郷だった。

 

「我が名は関羽。字は雲長。賊に苦しむ民草のために青龍刀振るっている者です」

「えっと、その関羽さんが何かようですか?」

 

 

またも唖然としてしまった北郷の代わりに劉備が答える。

 

「失礼ながら先程のあなた様の御志を拝聴しておりました。そしてその御志に深く感銘を受けました。もしよければ詳しいお話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」

「え、でもまだ何も決まってないんだけど……」

 

 

矢継ぎ早に言葉を紡ぐ関羽にやや押され気味となる劉備。

我に返った北郷もその様子を見ている。

 

 

「むっ。ならばこれからあなたはどうされるのですか?」

「それを今から考えようかな~ってね。あはは」

 

 

迫り寄る関羽に気圧される劉備。

 

 

「ど、どうしよう一刀さん?」

「俺に聞かれてもな……」

 

 

狼狽する劉備にどこか他人事な北郷。

というより北郷は、自分が何かしなくても大丈夫だろうと考えていた。

あと関羽に見惚れていたのである。

 

 

どうしようかと考える劉備。

曇りなき眼で劉備を見つめる関羽。

美少女二人を見て目の保養にする北郷。

 

 

そんな三人に割って入るかのようにこれまた美少女がやって来た。

 

 

 

 

「こら愛紗! 鈴々を置いて行ったらダメなのだ!」

 

 

二人より幼さの残る少女。

円らな瞳に赤い髪。

手にする得物は丈八蛇矛。

 

「すまない鈴々。だが我らが使えるべきかもしれないお方が見つかったぞ」

「ホントなのか!?」

「ああ。こちらのお方だ」

「鈴々は張飛なのだ! よろしくなのだお姉ちゃん!」

 

張翼徳。その人であった。

 

 

(こんな幼い子が張飛だとぉぉぉぉぉ!?)

 

 

これまでで一番動揺する北郷だった。

 

 

「え、えっと私は――――」

 

 

劉備がとりあえず自己紹介をしようとしたところ、くぅ~、と可愛い音が鳴った。

 

 

三人の視線は一人に注がれる。

 

 

「す、すみません。ここ最近まともに食べていなかったもので……」

 

 

関雲長のお腹の音だった。

 

 

「にゃはは。愛紗は腹ペコなのだ」

「お前に私の分も分けてやってるからだ!」

 

顔を真っ赤に染め上げて張飛に怒鳴るのだった。

 

 

「じゃあとりあえずウチの店に来る?」

 

 

こうして四人は北郷が働く定食屋に向かうのだった。

 


 
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