そばにいてやれない私を許してほしい…
お前が戻ってくるまで、居場所はなくさせない
これは私の誓い…そして願い
だから早く戻ってきてくれ
私が私に戻れるように…
笑顔でまた私の名前を呼んでほしいよ…一刀
~冥琳side~
冥琳「…この件に関しては邑の長老格と話をしてみてくれ。可能な限り希望は叶えると伝えろ!…その件はだな…」
私は今、将や兵達に指示を出している。
復興をすることはもちろん。私達が納めている邑が襲われた影響が思ったよりも大きく、処理する案件は多かった。
しかし、今はこの方が良かった。
一刀のことを考える暇ができないからだ。
一度そのことを考えてしまえば、もう仕事など手につくはずもない。
だから、今はこの忙しさがありがたかった…
冥琳「至急決めなくてはいけないことは他にあるか?」
指示を出していた文官たちが目配せをして答える。
文官「…あとは私達だけでも処理することができます。結果のほうはお伝えしますので、少し休まれてはいかがですか?」
冥琳「……いや、休む必要などない」
私は大丈夫といわんばかりに声を張って答える。
文官「いえ…休んでください。朝からずっと仕事をし続けています。これでは体が持たないでしょう…また何かあったらお呼びしますので、今は…」
しかし、さすが私達が選んだ優秀な文官というべきか。私の強がりを見抜いているかのように、強引でも休ませるようにする。
そうしてついに私は根負けをしまった。
冥琳「……そうか…すまない心配をかけてしまったようだな…」
文官「いえ…気になさらないでください。」
文官たちは部屋にあった書簡を片付けると部屋を後にした。
冥琳「…優秀な文官がいるのも考え物だな…すぐに嘘がばれてしまう」
私は苦笑した。
体は正直で、先ほどから思うように体を動かすことができず、人がいなくなると椅子に体が崩れ落ちた。
しばらく椅子に体を預けていると、頭に思い浮かんできるものはやっぱり一刀のことだった。
冥琳(これだから休みたくなかったのだがな…)
そう思いながらも、考えることをやめることができず、最後にはあきらめることにした。
一刀…私にとって最初は才能があるものとしての対象でしかなかった。
一刀を鍛えればきっと呉の夢…いや、雪蓮と私の夢を叶える為に必要になるだろうと考えていた。
しかし、一刀は酒屋という店があり、そこまで将というのに憧れを持っていたわけじゃなさそうだったため、私の話し相手として城に来させて仲良くなってから将に引き入れるつもりだった。
知識を教えることに関していえば、話した時人柄を確認していたため、悪用するものとは思っていなかった。それに、そこまで詳しいことなど教えるつもりなどなく、簡単なものだけ教えていた。
しかし…私はその時勘違いをしていた。
まず、将に対して憧れがないわけではなく、庶民として自分の考えを実現させようとしていたこと。
次に、知識を教える時に予想以上に頭が柔軟で、面白い考え方をするため私自身一刀ならどう考えるか聞きたくなってしまい、詳しいことまで教えてしまったこと。
最後に、いろんなことをぬきにしてでも私のそばにおいておきたいと思わされたこと。
以上三つのことがあり私は一刀にのめりこんでしまっていた。
もしかしたら、その時から一刀のことが好きになり始めていたのかもしれない。
そう…私には珍しいことなのだが、一刀のことを好きになったきっかけというか、時期があいまいなのだ。
どんなことにも、理由があり、それを見つけ出すことができていた私なのだが、一刀のことに関して言えば答えなど見つかったためしはない。
それどころか、自分が嫉妬深く、こんなにも心配性だと初めて気付かされたぐらいなのだ。
本当に一刀はおもしろく、そして興味が尽きることはない。
彼のそばにいるだけでいくつ物新しい発見を見つけることができる。
そして…私は大陸に知られる大都督”美周郎”から、ただの”周公謹”として、そばにいられた。
だが…今は”周公謹”に戻ることができない。
そう、一刀を心配する一人の女性としてそばにいることができない。
なぜなら私は大都督。私まで動けなくなってしまったら、呉は潰れてしまう。
そんなことはさせない。そして一刀も喜ばないだろう…
だから私は他のものに悟られないようにしなくてはいけない。
どんなにつらくても…
どんなにそばに居たくても…
どんなに一刀のことを愛しいと思っていても…
私は”美周郎”という仮面を外すことはできない。
けど、祈るくらいならいいだろ?
心の中で心配することもいいだろ?
だから私は一刀が笑顔で私の名前を呼んでくれるまで、この仮面は外さない。
冥琳「一刀…まっているからな…」
窓から見える空を眺めながらそう呟いた…
~冥琳side・終~
あなたはわかっているの?
あなたが守りたかったものはここにあるのよ?
あなたが目指しているものはここにあるのよ?
あなたが笑うからその願いはかなうのよ?
だからはやく戻ってきなさいよ…一刀。
~雪蓮side~
私は今復興をしている邑に視察に来ている。
いくら形だけ元に戻しても、襲われた傷跡は人の心に残る。
すべて元に…いえ、前以上に良くするためには、安心させ、襲われた人の心を癒す必要があるのだ。
そのために私は、話しかけたり一緒に仕事をしたりして心を癒すようにしている。
だから、決して政務がめんどくさくて抜け出しているわけではないのだ…そう決して。
天気は快晴。
一度襲われた邑も、段々復興してきている。
そして、私たちのことを真似しながら遊んでいる子供達…
その姿を見て自然と笑みがこぼれる大人たち。
けして全員とはいえないが、この邑にも笑顔が戻ってきた。それは私達が守ることができた何よりも変えがたい宝。
それなのに…
その笑顔を守るために頑張っていた、一刀はここにはいない。
雪蓮「やっぱり、この笑顔を見ていると私達が行ったことは間違いじゃないと思わせてくれるわ。でも…」
民達の笑顔を見ても決して私の心は晴れることはなかった。
なぜならそこには私が一番好きな笑顔がない。
私を虜にし、私に力を与えてくれる笑顔がなかった…
私は邑を見てまわりながら考える。
私の罪と、私が背負わなくてはいけない業、そして今は曇ってしまっている私達の光のことを…
一刀のことははっきり言ってしまえば一目ぼれだった。
一刀の笑顔を見たときに、私は生まれ持った勘が囁いたのだ。
”この男の子は、呉を、そして私達を癒し、愛し、かけがえのないものを守ってくれる人になる”
そしてそれは本当のことだと話をしてわかった。
一刀は、私達が守っている宝のことを誰よりも大切に思っていた。
私のことをちゃんと私として見てくれた。
そう…孫呉の王としての私だけじゃなく、ただ一人の女性孫策としての私を…
それがわかった時、私は一刀にもっと私を知ってほしい…もっと一刀のことが知りたい。
誰よりも私が一刀のそばにいたいと思わせてくれた。
私はこの尊い光を自分の手元におきたいと思った…
しかし、一刀は最初私の元に来てくれることはなかった。
だからといってあきらめられることできず…真名を預けることでつながりをなくさないようにした。
冥琳や祭が一刀のことを知っているとは思っていなかったし、お酒を買いに行くだけじゃ…つながりとしては弱いと思ったからだった。
それからというもの、一刀に逢いたいがために政務を抜け出したり、お酒を頼んで持ってきてもらうようにしたりと、少しでも多く一刀と逢えるように行動をした。
そして何時も困った顔をしながらも最後は笑顔を見せてくれる一刀を見て我ながらべた惚れだと思わされるのだった。
そしてしばらくたった後、私が…いえ私達が望んでいたことが実現する。
一刀が仲間になってくれた日だった。
その日私と冥琳は、初めて一刀の心に触れた気がした。
きっかけは祭が話してくれた幼い頃から誓っている一刀の志を聞いた時だった。
その話を聞いて私は、無理やりにでも一刀を仲間にしたいと思った。
一刀は私が思っている以上の人物だったから…
そしてその日私達は光を手に入れたのだった。
しかし…その光は輝きを失ってしまった。
あれだけ人を笑顔にし、私達を癒してくれた光が消えかかっているのだ。
光が消えてしまいそうになるのは私の罪だ。
私が、一刀を仲間にしたいと思わなければ、その輝きが失われそうになることはなかった。
だからコレは私の業…
一生背負っていき、償っていかなくてはいけないもの。
けして逃げることはゆるされない、他のものに分けていいものじゃない。
そう、一刀を臣下としておき、獣の巣窟に向かわせてしまった王としての責任…
もちろん、私は逃げることなどするつもりはない。
それでは、私は一刀のそばにいることは許されない。
一刀はやさしいから、そんなことは言わないかもしれないが、それでは私が私を許すことができない。
だから私は背負う…すべてを…
雪蓮「…なーんて。母様も将がこうなってしまった時にはこんな事思っていたのかしらね…王というのは大変だわ…」
そう言いながら、覇道半ばに死んでいった前王のことを考える。
雪蓮「まぁ考えてもわからないけど…ただこれだけは言えるわ。一刀が今輝きを失っているのが私の罪なら、その罪をそのままにしておかない。絶対に取り戻してみせる。そして教えてあげるのよ…」
私が教えてもらったこと。
人の笑顔は人を幸せにする。かけがえのない宝を一刀は守って、守り通したのだと…
私の願いも一刀と同じ
皆が笑顔で楽しくいられる国を作ること
それには一刀…あなたも入っているのだから…
雪蓮「…さーて。はやくこの視察を終えて一刀のところにいかなくちゃ♪」
雪蓮の心は雲ひとつない空のように澄み渡っていた。
~雪蓮side・終~
私は一刀を助けると誓った。
それは、体だけじゃなく心も…
愛する人を助けるために私は何でもしよう
一刀は私が同じ闇に陥った時に救い出してくれた。
今度は私の番。
一刀は私がただ一人愛し、私のすべてをゆだねることができる人だから…
~思春side~
思春「なぁ一刀…外にでも行かないか?」
一刀「…………」
一刀は答えない。
思春「あ…そうだ!お前が酒を作ってくれたことがあってから私も興味を持つようになったんだ。」
一刀「………」
思春「…そ…それでな?私も作りたいと思っているのだが…できると思うか?私は今まで武しかやったことがないのだが、精一杯やってみようと思うんだ。だから、私に造り方を教えてくれないか?それで…お前に私が作った酒を最初に飲んでもらいたいと思っているのだが…いいか?」
一刀「………」
思春「約束だからな?」
一刀「………」
思春「………おっと長い間い過ぎたみたいだな。私はこれから用事があるからもう行くな?」
一刀「………」
思春「……またくるからな」
私はそう言うと一刀の部屋からでた。
その瞬間、私は涙が止まらなくなっていた。
まぶしかった笑顔。
傍にいると安らぐ雰囲気。
それがすべて遠い過去に思え、その記憶がすべて表情のない一刀の顔で塗りつぶされていく。
私はもう限界だった。
もう見ていることが苦痛になっていた。
そして、私はもしこの世に神というものがいるのならその存在を呪った…
しかし、すぐにでもその考えを捨てる。
悲観的になってしまえば、一刀は救えない。
それでも私は考えてしまう。
思春「…私には一刀を救うことは無理なのだろうか?私のことを救ってくれた一刀を元気にすることさえもできないというのか…」
自分に対しての怒りがこみ上げてきた。
武によって多くの民を救ってきた私は、愛している一人の男を救うことができない。
この現実を受け止めたくはなかった。
でもそれは事実なのかもしれない。
もう、いろんな手を尽くしてきた。私が考えうるすべてのことをやったつもりだった。
でも一刀は元気にならない。
剣を振るってきたこの手はなんて無力なんだろうか…
私の頭はどうしてこんなにもおろかなんだろうか…
私は自分の力のなさを呪った…
考え事をしながら歩いていたのだろう、ふと意識を外に向けると、森の中の水辺に私はいた。
ここには見覚えがあった。よく一刀は皆から逃げるといつもここにいた。
一刀が言うには、ここにいると心が落ち着いて、もやもやしていたものがなくなっていくのだとか…
思春「…フッ…今の私には丁度いいという事か…」
そう呟くとその場に腰を下ろした。
そうして、しばらく何も考えることなく水辺を眺めているとふっと昔のことを思い出していた。
「僕は皆が笑顔になってほしいんだ」
「…笑顔?」
「うん!」
「…どうやって?」
「んーむつかしいことはわかんないけど、僕達を見ていると皆笑顔になっているような気がするから、僕達が笑っていればいいんじゃないかな?」
「……フフフッ」
「あ!笑うなよ~そう言う思春は何か方法があると思うの?」
「うーん……私は一刀と違って喧嘩がつよいから、皆を守って笑顔にする……と思う」
「えーそんなの危ないよ…思春が怪我したら俺笑えないよ…」
「そ…そう?/////」
「うん!だからもし思春が皆を守るなら、僕が思春を守るよ」
「…私に一回でも勝ってから言うんだな」
「…それを言わないでよ…」
「フフフッ…でももしそれで他の皆や…その…一刀が怪我なんてしたら私も笑えなくなっちゃうと思うからやっぱり私が守ると思うよ?」
「それでもだめだよ…お父さんが言っていたもん。男は女の子を泣かしたらいけないって…それにもしそれで僕が怪我をしちゃっても自分は皆の笑顔を守れたんだって思えれば大丈夫だよ…多分だけど…」
(…最後のがなかったらいいのになぁ)
「…なら…私も一刀の考え方には賛成できるから一緒にその願いを叶えてあげる。…それで皆を笑顔にする。」
「ほんと!…ならコレあげるよ」
「ん…なにこれ?」
「へへ~良く聞いててね…よっと」
チリーン…チリーン…
「うわぁ…綺麗な音…」
「でしょー…これはここよりも遠くのほうでしか手に入らない貴重なものなんだって。お父さんのお酒を買いに来た人がくれたんだ!コレ二つあるから一つあげる。一緒に願いを叶えてくれるって言った友達に!!」
「…あ…ありがとう…大切にする。」
「うん!…」
それは幼い頃、私と一刀がこの鈴に誓った約束
あの頃は一刀がやるなら…といった考えでしかなかったが、今では私の考えも同じ
この鈴がなくても約束を破ることはないだろう…でもこの鈴は私と一刀の絆の証
私の一番大切なもの…
私は昔のことを懐かしみながら絆の証を見ていた。
そして願うのだった。
一刀と一緒に笑いあえますように…と…
そして鈴を大切にしまいその場を離れる。
私は気付いたのだ
一刀が笑顔になる方法を…
私は絶対にあきらめない…
それを心に誓い行動を開始するのだった…
~思春side・終~
秋華のあとがき改め懺悔こ~な~
思春「…ほう…何を懺悔するのだ?いろいろあると思うが…」
そうですね。今回更新が遅かったことですかね…
思春「今までで一番遅かったな…どうしたんだ?」
はっきり言います思春の話がうまく書けませんでした
思春「なぜだ?」
いろんな状況が浮かびましたが…どれも納得できず…迷ってました。他の二人はすぐ書けたんですがね~
思春「そんなに難しかったのか?」
まぁそうですね。さっきも言ったけどいろんなことが浮かんだんで…
思春「で…コレは納得できるんだな?」
まぁそうですね。一番納得できるものを書いたつもりですが、皆さんが納得できるかはわかりませんのでどうか、暖かい目で見てください
思春「…なっとくできないが…まぁそういうことらしいので頼む」
お願いします。
では次回ですが、いよいよ主人公が登場します。
もちろん救いますとも…秋華はバットエンドは嫌いなので…
思春「それはいいな…ぜひたのむぞ?」
任せてください。
では今日の思春ちゃんですが…
目が悪い思春
思春「…?意味がわからないが?」
まぁとにかくこれ読んで…
思春「まったく強引なやつだな……」
思春「/////い…いや…メガネはいらないって……え?なんでかって?………だってあまりに良く見えるとお前の顔が見れない……だって……あなたが好きだから…はっきり見えると恥かしくて…顔を見ることができないもん……//////」
こんなことを言う女の子リアルにいないかなぁ…
思春「いたらひくと思うが?」
俺は引かない!!!
思春(本当にだめ人間だな…)
Tweet |
|
|
96
|
8
|
追加するフォルダを選択
コレだけ時間が掛かったのに…
どうかなぁ…うまくかけてるかな…
注意
続きを表示