No.143441

『舞い踊る季節の中で』 第42話

うたまるさん

『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。
明命√の作品となります。

前話の裏側の話になります。
一刀を心配する明命、一刀を探して都中を駆け巡り、やっと見つけることが出来た一刀に、明命は・・・・・・・・・・、

続きを表示

2010-05-16 08:01:11 投稿 / 全16ページ    総閲覧数:19805   閲覧ユーザー数:14041

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』董卓編

   第42話 ~ 明るき命は、暗き闇に踊る ~

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

        神の手のマッサージ(若い女性には危険です)

  最近の悩み:某天幕、某時刻:

        ぐぉぉぉぉぉぉぉぉっ、み・明命、あ・足があたってる。 そんな生足を無造作に、俺

        の前に、投げ出すのは危険です。 こう俺の青少年的な部分が特にっ!

        俺は胸の上に投げ出された明命の足に、其処から直接伝わってくる様々な物に必死に耐

        えながら、湧き上がる煩悩と激しい戦いを繰り広げる。 無論、この状態で決して明命

        の方向を振り向くわけには行かない。 なにせ、此処に明命の足が在ると言う事は、当

        然其処には、その付け根があるわけでして、暗い天幕の中、見えやしないだろうが、脳

        内で勝手に補完されてしまう危険性がある。 そうなれば、何とか必死に、押し返して

        いる俺の理性と言う名の戦線が、突破されてしまう可能性がある。

        彼女は俺を信用して、こうしていてくれると言うのに、それを裏切るような真似は絶対

        出来やしない。 だ・だから、明命そこで悩ましげに寝言を言うのはやめてくれっ! 

        危険だからっ! 本当に寝ているよね? 俺をからかって遊んでないよね? 答えなど

        分かりきった疑問が浮かんだ所に、俺の胸の上が軽くなった。 そして、『ドゴッ』

        グォッ! 俺は必死に悲鳴を上げるのを耐えながら、その衝撃に少しばかり感謝した。

        明命の寝相で、足が振り下ろされた天誅に、俺の青少年の部分に奔った痛みに・・・・・・・、

        

  (今後順序公開)

★オリキャラ紹介:

諸葛瑾:

  姓 :諸葛    名 :瑾    字 :子瑜    真名:翡翠

  武器:"双天" 対の双剣

  武力:52(平均的な将を60とした場合)

  智力:81

  政治:89

  家事:92

  魅力:想像にお任せします(w

  焦った時の口癖:『 あうあう 』又は 『 ぁぅぁぅ 』等の類語です

  性格:基本的に温厚で、外見に反して大人の女性

     だが、焦ると地が出てしまう。(朱里と違って、自分を律しています)

     警戒心が強い性格だが、一度心を許されると、親身になってくれる。

     妹がいるため、基本的には面倒見が良く、放っておくと、食事を取るのを忘れる明命を心配して

     よく食事を差し入れていた。

     やはり、妹がいるためなのか、時折人をからかって、その反応を楽しんだり、とんでもない悪戯

     を仕掛ける悪癖もある、だが性質の悪い事に普段が完璧なだけに、周りは怒るに怒れないでいる。

     家事全般は人並み以上に出来、そこらのお店以上と自負していたが、丹陽で知り合った男性の腕

     を見て自信を喪失。 以降こっそり腕を磨いているが、全然敵わないと嘆く毎日を送っている。

     武術は好きではないが、妹達を変態共から守るため、必要最低限身に付けたもの。

     姉妹揃っての発育の悪さをコンプレックスに思いつつも、それを武器にする強かさを持っている。

     自分を子供扱いしない男性が好みだが、言い寄ってくるのは変な趣味の持ち主ばかりで、17の時、

     現実の男(変態の多さ)に愛想が付いた時に『八百一』と出会う。 以降のめり込み、妹達を洗

     脳するも、基本的には周りには秘密にしている。そのうち執筆も行うようになり、掲載されるよ

     うになる。

     数年たった現在では、定期的な愛読者もつき『八百一』の主要作家の一人となっており、黄巾の

     乱後、作品が益々洗練され、世に愛読者を急増させる要因となった。

明命(周泰)視点:

 

 

一刀さんが張遼に連れ去られて、いいえ、張遼と共に軍から離れて四日、

私は、洛陽の街に侵入し、街の中の状況の確認と、一刀さんを探しています。

雪蓮様と冥琳様のお話では、まず間違いなく、この街のどこかに居るとの事です。

 

『所在さえ掴めればそれで良い。 緊急の事態が起きない限り、あやつが戻って来るまで放っておけ』

『邪魔さえしなければ、会うくらいは構わないわよ。 たぶん』

 

冥琳様と雪蓮様の言葉が、脳裏に浮かびます。

雪蓮様はともかく、冥琳様まで呑気な事を言われます。

一刀さんは、今敵の真っ只中に居るんです。

おそらく敵将の張遼と共に、

 

幾ら一刀さんが強いと言っても、一刀さんは人が良すぎます。

騙されたり、虚を突かれたりするかも知れません。

それに、数に押されたら、幾ら強くても関係がありません。

もしかしたら、悪夢に魘され、罪悪感に耐えられずに居るかもしれません。

 

そう心配して、街に入ったのですが、以外にも街は平穏です。

董卓軍が残りの兵力を集めている様子もなく、

敗戦の事実がもう既に広まっているため、騒然としているも、平穏と言える範囲です。

 

一度、董卓の屋敷を探って見たものの、中はもぬけの空でした。

どうやら、董卓はこの街から去ったようです。

それ所か、董卓の関係者は、この街を去ってしまったようです。

それで連合が解散するとは思いませんが、天子様の居られる都を戦場にする事を思えば、

連合としては助かりますが、董卓を捕らえ、処断するまでは、連合を解散するわけにはいかないので、

喜んでばかりはいられません。

 

軍部の方へ潜り込んで見ましたが、敗軍とは言え、さすが都を守護する本部です。

兵は少なくとも、警戒はきっちりされていました。

それでも、何とかそれらしき所を回ってみましたが、一刀さんも張遼も見つける事ができませんでした。

 

となると、後は空家に潜んでいるか、旅人に紛れ込んでいたとしたら、この広い都では探しようがありません。せめて、何か目印のようなものでも・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ、そう言えば

 

 『 はぐれた場合は、これを印にしよう 』

 

一刀さんのその言葉を思い出し、

宿屋、貧民街、空家、遊郭、等身を潜めそうな場所を急いで探しました。

一刀さんの事ですから、それなりに分かりやすくしてあると思ったのですが、なかなか見つかりません。

寝る間も惜しんで、月明かりを頼りに動いてみましたが、この広い洛陽の街は探すべき場所が多すぎて、とても時間が足りません。

 

この街に潜り込んで二日が経ち、私は冥琳様への報告をするため、一緒に潜り込んで来た連絡員の居る場所に、向かうため、街の中央の区域を横切る事にしました。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・私は、一体今まで何をやっていたのでしょう。

 

「・・・・・・はぁ~~」

 

気だるい脱力感に襲われる様に、私は深く息を吐いてしまいます。

街の中央区域の離れ、高位の官職に就かれる方々の住む区域、大きな屋敷の並ぶ中、立派な門に、あの目印が書かれた紙が張られていました。

 

二匹のお猫様が、気持ち良さそうに寝ている絵、落書きのような筆の運びの中にも、可愛らしさと温かみのある絵、一刀さんが前に書いてくれた絵に間違いありません。

ただ、それが張られた門の片隅には、

 

 『 張 』

 

と書かれた表札が、そして、此処が将軍職に就く者の家である事を示す紋、つまり此処は張遼の屋敷と言う事です。

私は、あまりの事に、頭が痛くなりました。

普通身を隠すとしたら、木の葉を隠すなら森の中と言うように、この洛陽の街で、庶人に混じってしまえば、探すのは難しくなるとは言え、そう言う所は、街の警邏も良く回る所です。

そういう意味では、此処は確かに安全と言えます。

董卓と一緒に逃げていった方の屋敷であれば、無人になった後、空き巣や強盗に見つかり、警邏の兵に見つかってしまう可能性もありますが、もともと漢の将軍である張遼の家で、本人も居るとなると、そういう心配もありません。

 

多くの情報があるであろう軍師や、高位の文官の屋敷ならともかく、将軍の屋敷は、押さえるとしても後回しになるため、盲点でした。

それに、まさか当人の家に潜んでいるだなんて、思いもしませんでした。

裏の裏は、表と言う事ですか・・・・・・・・、

 

とにかく、一刀さんの無事を確かめなければ、と思っていた所に、

 

ギィ~~~~~ッ

 

重い木と金具が軋む音と共に、門の扉が開かれ、

一つの影が、顔を出しました。

その影は、何処か悲しげな色を残した笑顔で、私に微笑みかけながら、

 

「やっぱり、明命だったか・・・・・・、よかった元気そうで」

 

一刀さんは、そう、嬉しそうに声を掛けて来ます。

いつものように、私の事を心配していたと、

無事でいた事が嬉しいと、

心から安心したように微笑みます。

そしてそんな一刀さんの安心する顔を見て、私は、

 

「中いいですか?」

「そうだね、ここだと落ち着いて話も出来ないし」

 

そして一刀さんの誘われるまま屋敷内に入るなり

 

 

 

 

 

 

 

パ~~~~ッン!

 

 

 

 

 

乾いた音と共に、私の手に痺れが奔ります。

でもそれ以上に、私の心が物凄く痛みます。

 

一刀さんは、私に叩かれた事に、驚きつつも、済まなさそうに、

 

「御免、勝手にやってばかりで、皆怒ってるだろうね」

 

そんな事を言って私に謝ります。

だから、私は、

 

 

 

 

 

 

 

パシ~~~ッン!

 

 

 

 

 

もう一度一刀さんの頬を叩きました。

 

「当たり前ですっ! でも勝手をやったから、怒っているんじゃありませんっ!

 なんで分かってくれないんですかっ!

 一刀さんが私を心配しているように、私だって、私達だって一刀さんを心配しているんですっ!」

「・・・・・・・・明命」

 

私は、一刀さんを怒鳴りつけます。

視界を滲ませながら、感情のままに、一刀さんに言葉をぶつけます。

 

「一刀さんは、何かを考えて動いているのだと思います。

 何をやっているかは聞きません。 詳しい事を話せない事だと言う事も分かります。

 でも、それでも、・・・・・・・・・・・・・・・・・・私が、どれだけ心配したと・・思って・・・・いるん・・・・・ですか・・・・・・・・」

「・・・・・・・・ごめん」

 

涙を流しながら、一刀さんを睨みつける私に、謝ってきます。

 

「分かっています。 一刀さんが、私が心配しない訳ないって事は・・・・・・、

 だから、あんな目印を教えたり、洛陽への抜け道を聞いたりしたんだって事は・・・・・・、

 でも、それでも、一刀さんが張遼に攫われたと聞いた時、

 私が、どんな思いをしたと思っているんですかっ」

「・・・・・・・」

「 一刀さんが私達のために、色々頑張ってくださる事は知っています。

 でも嫌なんです。 一刀さんが笑えなくなるのはっ!

 一刀さんには、笑っていて欲しいんです。

 あの温かな笑顔で、微笑んでいてくれて欲しいんですっ!」

 

ふわっ

 

子供のように、感情のまま喚く私を、一刀さんは優しく包み込むように抱きしめてきます。

 

「ごめん。 俺も一緒だから、明命には笑っていて欲しいと思ってる」

 

数日振りに感じる一刀さんの温もり、一刀さんの匂い、・・・・・・そして一刀さんの優しいさ、

確かに感じる存在感が、私の心を安らかな気持ちへと変えて行きます。

・・・・・・こんなの・・・・・・、狡いです。 

それに、一緒じゃありません。 一刀さんの私への想いと、私の一刀さんへの想いは・・・・・・・・・・・・、

 

「でも、我が儘かも知れないけど、俺は俺であるために、そして皆のために頑張りたいんだ」

 

そう言いながら、私に抱きしめる腕に、少し力が入ってきます。

少しだけ苦しいですが、それ以上に一刀さんの温もりと、心に触れていられるようで、とても心地良いです。

それに知っています。 一刀さんがこうして無意識に力が入る時は、一刀さんが自分の歩む道の怖さに、必死に耐えているのだと、

そして、私の温もりで一刀さんが、少しだけ勇気が湧く事を・・・・・・・・・・、

 

この人は狡いです。

こうやって、私を封じ込めてしまいますから・・・・・・、

私が一刀さんに、必要されていると思わせるのですから・・・・・・、

 

私を抱きしめながら、私への謝罪と説得の言葉を続けている一刀さん、

でも、その辺りは、どうでも良い事です。

大事なのは、一刀さんが無事だった事、

そして、こうして、私を想っていてくれる事です。

私の求めるものとは、少し違いますが、今はかまいません。

こうして、一刀さんを感じられるのですから、

 

 

 

 

一通り一刀さんの温もりに甘えた後、一刀さんから体を外すし、ふと見回すと、

 

はあぅっ!

 

屋敷の奥に人影が・・・・・、いいえ、気配には気がついていましたが、今のをしっかりと見られてしまいました。

一人は、ニヤニヤと見守るような笑みを浮かべ、 一人は、呆れたような表情を浮かべ、 最後の一人は、顔を赤くして、両手を手で隠していますが、しっかりと開かれた指先から、此方を興味深げに眺めています。

・・・・・・・・まぁ、いいです。知り合いに見られた訳ではありません・・・・・・・・。

 

それはともかく、一人は張遼ですが、あとの二人は、どなたでしょうか?

二人共、とても綺麗な方です。

・・・・・・・・・・・・人を心配させておいて、一刀さんは、あんな綺麗な方と一緒に過ごしていたわけですか、

一刀さんに、そんなつもりは無い事は分かっていますが、それでも、こう胸がムカムカします。

でも、これ以上、此処で一刀さんを問い詰めたりして、時間を無駄にするわけにはいきませんし、(全部終わってから問いただす事にしましょう)邪魔になりかねません。

 

とにかく一刀さんの無事が確認できた以上、戻るよう厳命されているので、立ち去ろうとした所を、一刀さんに呼び止められます。

一刀さんは懐から、封筒を取り出し、

 

「これを劉備に」

「雪蓮様にではなくてですか?」

「ああ、出来れば劉備が董卓の暴政が嘘だと知った後に、直接渡して欲しい。

 たぶん、彼女はまだ知らされていないはずだからね」

 

 

 

 

劉備に、手紙を渡した後、私は一足先に、張遼の家に忍び込み待っていると、部屋に案内された劉備達が、机につきます。

劉備達は、連れに翡翠様の妹君の諸葛亮と鳳統、そして護衛として趙雲を連れて来られました。

趙雲は三人とは違い、少し離れた場所に槍を壁に預け、御自身も軽く壁に身を預けられます。

ただし、片足は壁に付けられ、いつでも飛び出せるような体勢です。

もし一刀さんが何かをすればいつでも、己自身を一条の槍と化し、己の主を守られるつもりなのでしょう。

ですが、その重心の掛け具合からして、一刀さんと二人の侍女を脅威ではないと判断されたのか、その意識の大半を外へと向いているようです。

 

雪蓮様達は、私の報告に、

 

 『心配ないと想うけど、もし劉備達が快諾しない場合は、分かっているわね。

  それと上手く行った場合でも、一応劉備達の腹も探れたら探っておいて、

  言うまでも無いけど、無理はしなくてもいいから、戻る事を優先してね』

 

と言われましたが、この相手が居るようでは、そう簡単には行きませんね。

もっとも、それは一刀さんの思惑が上手く行かなかった時の事。

なら今はその心配をして、下手に意識を向けるべきでは在りません。

私の存在を知られるのは、その時のみ、

なら、此処は一刀さんを信じて、見守る事にしましょう。

 

『償いなんて物は一朝一夕に出来るものじゃない。 善政を引いていた董卓に償いたいと言うなら、君が出来

 る事で、君の守るべき民を守る事で、償っていくべきじゃないかな?』

 

劉備に、そう諭すように言う一刀さん。 そして、それを受け入れる劉備。

・・・・・・この二人は似ている所があります。

優しく、誰かが泣くのを嫌います。

雪蓮様もその辺りは一緒ですが、あの方は、守るべき民に向けてだけです。、

それを害する者には、容赦はしません。

 

ですが、この二人は違います。

敵であろうと、そうであった者であろうと、守ろうとします。

全てを守る事など出来やしないと言うのに、それをしようとします。

 

ただ決定的に違うのは、劉備は理想を語りますが、

一刀さんは理想に向けて自ら歩んでいると言う事です。

清濁も、苦痛も、叫びも、現実全てを受け入れた上で、歩まれています。

ですが劉備には、其処まで達していないように感じられます。

それ所か、君主としての自覚が薄く感じられます。

そんなのだから、配下の者に嘗められ、結果、噂に踊らされるのです。

 

一刀さんは、たぶんそんな劉備を、引き上げようとしているのだと思います。

現に、手紙を渡す前と、この屋敷に来た時とでは、別人のようになっています。

己が罪に狼狽え、落ち込んで居た彼女の姿は、

罪を背負う覚悟も無く、兵を率いた彼女の姿は、

酷くイラつくものでした。

 

『皆が笑っていられる世の中にしたい』

 

一刀さんと同じ事を言いながら、やっている事は酷く幼い。

その事が、一刀さんの苦しみに耐える姿を、酷く馬鹿にしているようで、イラつきました。

ですが、この屋敷に来た時の彼女は、僅かなりとも、王たる気概が見られます。

あの手紙に何が書かれていたかは知りませんが、少なくとも短い間に、机に付くだけの資格は得たようです。

 

 

 

 

あの二人が董卓と賈駆ですか・・・・・・・・、確かに、暴政を働くような人間にも思えません。

もともと、袁紹の流した出鱈目の噂など、信じていませんでしたが、此処まで、噂と対照的な人物と言うのも珍しいです。

 

そして、そんな二人を、救いだと言わんばかりに、引き受ける劉備。

二人を救う事で、己が罪を誤魔化そうとしているように見えてしまい、己が考えを戒めます。

一刀さんが、そんな風にだけ考える人間に、危険を犯してまで助けた二人を、更に危険を犯して預けるとは思いません。 なら、ここは素直に、劉備の成長を認める事にします。

 

劉備が二心を抱えているようなら、この場で始末する事もありえましたが、どうやら杞憂だったようです。

少なくとも劉備の瞳は、二人を心から歓迎していますし、それは真名を預けた事からも確かです。

ですが、気になるのは、諸葛亮の様子です。

一刀さんが二人を紹介した辺りから、酷く暗い眼をされています。

暗く、濁った目・・・・・・・・そして其処に映った感情は恐怖、

 

一刀さんの何に、恐れているのか分かりませんが、間違いありません。

趙雲の様子からして、一刀さんの武が、向こうに知られている様子は在りません。

では何故? そう思いましたが、それは直ぐに明らかになりました。

 

一刀さんが、合間を見て纏められていた本、冥琳様と相談しながら、天の知識を纏められた本を見た諸葛亮は、明らかに、その目の闇を一層深くし、その顔色を青褪めていきました。

諸葛亮は、一刀さんの智を恐れているようです。

 

でも何故、今それを恐れる必要が?

話の流れからして、劉備達にとって、申し分ないはずです。

一刀さんの知識が、早々に孫呉以外のところに広まるのは、正直防ぎたいですが、同盟国に恩を売っておくのは決して悪い事ではありません。 それに雪蓮様より、交渉が決裂しない限り、手出しは無用と言われています。

 

・・・・・・・・・・ですが、諸葛亮の目は危険です。

ああ言う目をした輩は、ろくな事を考えません。

周りが見えなくなり、自分を守るために、己が思惑のために、どんな手段をも厭わなくなります。

・・・・・・・・・・そんな悲しい人間と、悲惨な結末を、私は沢山見てきました。

 

もし、このまま終わるようであれば、覚悟を決めた方がいいかもしれません。

 

 

 

 

そんな私の想いとは裏腹に、一刀さんは諸葛亮を心配げに見守ります。

・・・・・・・・本当に心配げに

 

ズキンッ

 

一刀さんの、諸葛亮を心から心配する姿に、私の胸は痛みます。

 

(なんでそんな顔を、誰にでも見せるのですか)

 

そうもう一人の私が、叫びます。

でも、その言葉を認めつつも否定も出来ます。

一刀さんは、誰にでも優しいですが、誰にでも心を許している訳ではない事を、知っているからです。

今の所一刀さんが、本当に心を許しているのは、私と翡翠様・・・・・・・・、そして一刀さんは、お認めになら無いでしょうが、雪蓮様の三人だけです。

きっと一刀さんは、諸葛亮が翡翠様の妹だから、あそこまで親身に心配されているのだと思います。

そうだと分かってはいるのですが、やはり見ていて面白いものではありません。

 

心の中が不快に塗り潰されていく私とは裏腹に、諸葛亮は、一刀さんの心配に答えるかのように、その目に、済んだ光を取り戻していきます。

・・・・・・違います、一刀さんだけの力では在りません。

諸葛亮とは逆に、その目から、恐怖の色を失くした鳳統の握った手の温もりが、

諸葛亮の様子を心配した劉備と趙雲の眼差しが、

三人の優しさと信頼が、諸葛亮に光を取り戻させたのでしょう。

・・・・・・・・なるほど、互いを思いやる信頼と言う名の結束の固さが、彼女達の本当の強さなのかもしれません。

 

その目に光を取り戻した諸葛亮の様子からして、もう心配はないだろうと安堵の息を吐いた所に、

私は新たな衝撃を受けました。

 

 

 

 

 

 

 

 

パンッ

 

 

 

 

 

乾いた音共に部屋中に響いた音に、

その音の正体に、

私は己が目を疑いました。

 

あの優しい一刀さんが、女性に手を上げるだなんて、

むろん、武の事があるので、一刀さんだって、必要とあれば手を上げるでしょう。

ですが、今回のこれは、それとは意味が違います。

ましてや、翡翠様の面影を残す諸葛亮に手を上げる等・・・・・・、

自分の目で見ておきながら、信じられませんでした。

ですが、一刀さんの隠そうとしている辛そうな顔は、悲しみに満ちた瞳は、

それが事実なのだと、私に教えます。

 

ですが、一刀さんのお話を聞いていると、感情のままに、一刀さんに縋り泣く諸葛亮の話を聞いていると、

それは当然の事、幾ら事情があったにしろ、諸葛亮の犯した事は、主に対しての背信以外の何者でもありません。

主を騙して、戦に参戦させるなど、民を巻き込むなど、本来であれば斬首が相応しいでしょう。

ですが、あの甘き主は・・・・・・、劉備は、それを許しました。

諸葛亮に罪を犯させたのは、自分のせいだと、自分の罪だと、述べます。

 

・・・・・・・・・・そう言う事ですか。

一刀さんは、全てを承知の上で、こうなる事を見越していたのでしょう。

一体何時から、此処まで読んでいたのか分かりませんが、一刀さんは、劉備達の弱点と言うか、抱える問題を解決したかったのです。 同盟国として、利用できる力を、身につけてもらうために、生き残れるようにするために、

 

 

 

 

そして、劉備の胸の中で諸葛亮を、窒息しかけた彼女を助け出す一刀さん。

その目は、恥ずかしそうに、劉備の胸と虚空の間を往復しています。

 

ピキッ

 

そうですか、・・・・・・やっぱり一刀さんは、そういう無駄に大きいのが好きなんですか・・・・

それに、諸葛亮への態度が近すぎます。 なんで抱きかかえる必要があるんですか。

一刀さんは翡翠様の妹と言う事で、接しているのでしょうが、向こうは、そんな事は分からないはずです。そう言う事ばかりしていたら・・・・・・・・・・・・・・

そんな私の心配を余所に、一刀さんは、優しい笑みを浮かべながら、

う゛っ、心配していた通り、諸葛亮は状況に慌てながらも、頬を朱に染め、瞳を潤ませながら一刀さんを見詰めます。

 

ドガッ

 

『あんたはこっち来なさい。 其処に居たら話が進まないでしょっ!』

 

そんな一刀さんに、賈駆が背中から蹴り付け、一刀さんを引き剥がします。

暴力を振るうのは、引っかかりますが、今だけは許します。

よく一刀さんを、諸葛亮から引き剥がしてくれました。

一刀さんは、相変わらずこう言う事だけは、分かっていないようで、賈駆に言われるまま、席に座るも頭を捻っています。

 

・・・・・・・・そろそろ、一刀さんの無自覚に乙女心を弄ぶ様は、何とかした方がいいかもしれませんね。

こんな事ばかり、私達の知らない所でやられているかもと考えたら、此方の精神衛生上良くありませんし、

誰にでも優しくして、挙句に真名を許されるようでは、いつか問題を引き起こしかねません。

遠征から帰ったら、翡翠様に今回の詳細を話して、対策を相談しましょう。

きっと翡翠様なら、今回の件を上手く利用して、一刀さんを無自覚なりにでも、矯正してくれる筈、

まぁ、それで一刀さんのアレが無くなるとは思えませんが、しないよりマシです。

それに、今回の事も、本当にどういうつもりだったのか、その口から是非とも聞き出したいですし、

 

(ふふふっ、一刀さんがどんな言い訳を聞かせてくれるのか、今から楽しみです)

 

『そう言う訳だから、明命一緒に帰ろうか』

「はあぅっ」

 

我が事ながら、少し暗い気分に御浸っていた時に、突然かけられた一刀さんの言葉に、

思わず私は驚声を挙げてしまいます。

私の穏行は、完璧だったはずです。

・・・・・・内心では色々葛藤はありましたが、穏行に支障を来たす様な下手はしていないはずです。

現に趙雲でさえ、私の声に驚いていると言うのに、一体どうやって、一刀さんは私の存在を知ったのでしょう?

 

 

 

とにかく、存在が知られた以上、此処には居れません。

雪蓮様から、劉備達の腹を探るように言われていましたが、これ以上は危険ですし、一刀さんに止められてはいた仕方在りません。

私は、屋根裏から抜け出し、一刀さんに合流するなり、一刀さんが逃げ出さない様に、腕を絡ませます。

私の行動に、一刀さんは驚きながら、少し恥ずかしそうに、

 

「み、明命? あの、荷物が持ちにくいから、腕を・」

「手を離したら、御説教が嫌で、どこかに行ってしまいかねません」

 

私は、そう言いながら、腕を絡めた方の一刀さんの手荷物を奪います。

(何の荷物かは知りませんが、見た目より在りますね)

そんな私に、一刀さんは諦めたように嘆息を吐かれ、

 

「やっぱりあるんだ・・・・・御説教」

「当たり前です。 勝手をやって心配させた以上は、しっかりと御説教を受けていただきます」

「孫策じゃないから逃げ出しやしないよ。 そういう訳で、腕を・」

「駄・目・で・す」

 

私の言葉に、一刀さんは首を大きくうな垂れ諦めます。

ですが、その顔は少し頬を染め、何処か嬉しそうでした。

そんな一刀さんが、可愛くて、そして嬉しくて、私は腕を引き寄せ、その肩に頭を委ねます。

腕から、頬から、そして触れた場所から、一刀さんの温もりが伝わってきます。

周囲の香りに混ざりながらも、確かに感じる一刀さんの匂い。

そんな、なんでもない当たり前の事が、今の私にはとても幸せに感じます。

本当は、こんな事をやっているべきではないとは分かっています。

 

でも、この街を出るまで、

 

部下に合流する少し前まで、

 

こうして一刀さんの温もりに甘えて居たいです。

 

雑踏する都の通りを、今だけ、恋人のように歩いていたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

  第42話 ~ 明るき命は、暗き闇に踊る ~を此処にお送りしました。

 

今回もまたまた、予定していた量を遥かにオーバーしてしまいました。

本当は、この後最低でも、一刀と翡翠の視点があるのですが、この後に書くと、また20P越えになりそうなので、諦めて話数を増やす事にしました。

今回の話は、明命主体で、進めていきましたが、その目的は、一刀との距離を縮める事でした。

前半での明命の感情の発露、一刀がどのように受け止めたのか、それはおいおい話中で語るとして、一刀の明命達を見る目に変化を与えるきっかけになったのは確かです。

後半は、まぁ、前話の裏側なので、大分飛ばしながら書いてみましたが、明命がちょっと、黒くなってしまいました(w

 

しかし、前話白蓮が少しだけ活躍したと言うのに、誰も突っ込みなかったなぁ。 さすが白蓮(w

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
185
20

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択