No.143972

『舞い踊る季節の中で』 第43話

うたまるさん

『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。
明命√の作品となります。

孫策達の下に帰還した一刀、そんな一刀に待ち受けていた運命とは・・・・・・・・・・・・、

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2010-05-18 21:28:39 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:19867   閲覧ユーザー数:14153

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』董卓編

   第43話 ~ 舞い落ちた華、けれど其の美しさが翳る事は無し ~

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

        神の手のマッサージ(若い女性には危険です)

  最近の悩み:最近俺は思う。 世界が違えば、女の娘の男に対する警戒心も違うのかもしれないと、

        修学旅行とかや、比較的仲の良い男女数人で泊まりに行った時等、夜中における、悪友

        を始め、男子数人の不健全な企みも、女子達にバレた時の、女子達の目を覆うばかりの

        体罰振り、生憎俺は何れも参加しなかったので、被害は免れていたが、アレが普通と思

        っていた。 だけど翡翠や明命といい、この世界の娘は、そう言う事に無頓着なのか、

        男である俺と平気で同じ部屋で寝る。 「・・・・・・すぅ~・・・・」「・・・・ん・・・んぅ~・・・」

        と、すっかり熟睡されている。 明命達は家族だから、まだ分かるけど、月や詠まで、

        こうだとすると、やはり価値観の差なんだろうか・・・・・・・・、しかしそれにしても、二人

        の女性特有の匂いが・・・・・・明命と翡翠とは違った香りが、俺の青少年の部分を刺激する。

        ・・・・・・・・まったく、これが俺だからまだ我慢できるけど、あいつだったら、・・・・やめて

        おこう、考えるだけで、色々危険な気がする。

        

  (今後順序公開)

★オリキャラ紹介:

諸葛瑾:

  姓 :諸葛    名 :瑾    字 :子瑜    真名:翡翠

  武器:"双天" 対の双剣

  武力:52(平均的な将を60とした場合)

  智力:81

  政治:89

  家事:92

  魅力:想像にお任せします(w

  焦った時の口癖:『 あうあう 』又は 『 ぁぅぁぅ 』等の類語です

  性格:基本的に温厚で、外見に反して大人の女性

     だが、焦ると地が出てしまう。(朱里と違って、自分を律しています)

     警戒心が強い性格だが、一度心を許されると、親身になってくれる。

     妹がいるため、基本的には面倒見が良く、放っておくと、食事を取るのを忘れる明命を心配して

     よく食事を差し入れていた。

     やはり、妹がいるためなのか、時折人をからかって、その反応を楽しんだり、とんでもない悪戯

     を仕掛ける悪癖もある、だが性質の悪い事に普段が完璧なだけに、周りは怒るに怒れないでいる。

     家事全般は人並み以上に出来、そこらのお店以上と自負していたが、丹陽で知り合った男性の腕

     を見て自信を喪失。 以降こっそり腕を磨いているが、全然敵わないと嘆く毎日を送っている。

     武術は好きではないが、妹達を変態共から守るため、必要最低限身に付けたもの。

     姉妹揃っての発育の悪さをコンプレックスに思いつつも、それを武器にする強かさを持っている。

     自分を子供扱いしない男性が好みだが、言い寄ってくるのは変な趣味の持ち主ばかりで、17の時、

     現実の男(変態の多さ)に愛想が付いた時に『八百一』と出会う。 以降のめり込み、妹達を洗

     脳するも、基本的には周りには秘密にしている。そのうち執筆も行うようになり、掲載されるよ

     うになる。

     数年たった現在では、定期的な愛読者もつき『八百一』の主要作家の一人となっており、黄巾の

     乱後、作品が益々洗練され、世に愛読者を急増させる要因となった。

一刀視点:

 

 

明命と共に洛陽を抜けだし、陣に帰還した俺を待っていたのは、

長い、長~いお説教だった。

まぁ、俺がやってきた内容が内容だけに、その事で大きな声で怒鳴る訳にはいかないためか、説教の内容は、表向き秘密裏の作戦行動を、皆に説明も無しに執った事と、その事で皆に配させた事に対する事だった。

冥琳は、ある程度俺の行動が読めていたためか、比較的短い時間で済んだが(それでも半刻)、一緒に隊を率いていた蓮華の説教は凄まじく、説教は二刻(4時間)にも及んだ・・・・・・・・・(汗

思春は、もともと饒舌ではないのか、短く

 

「・・・・・・もう少し我等を信じろ、未熟者が・・・・・・・」

 

と言うありがたいお言葉と、こう人をミジンコ以下の気分にさせるような、冷たい視線を始終送られた。

・・・・・・あの思春、君は武を極めなくても、そのうち視線だけで、人を再起不能に出来るようになるんじゃないかな?

最後に陸遜は、

 

「さすがに、これ以上は、可哀相ですから~」

 

と、優しく言ってきてくれたが、

 

「私の事を真名で呼んだら、許してあげちゃいます~」

 

と真名を呼ぶに有るまじき事を言ってきたので、

 

「いや、それはおかしくない?」

 

と返した所、愚痴交じりの説教を半刻も受けてしまった・・・・・・・・何故?

ちなみに、孫策はと言うと、

 

 

 

 

『・・・・・一刀のう゛ぁかぁ~~~っ!』

 

と、陸遜に余分な事を言ったためだ、と言わんばかりに、俺を恨めしげに見ながら、俺の横で同じように正座をしていた。

何故、こんな事になっているかと言うと、冥琳曰く、

 

『元はと言えば、雪蓮が後先考えずに、北郷に『好きなようにしろ』等と、許可を与えたのが原因、

 なら、許可を与えた雪蓮も同罪、折角だから、一緒に反省してもらおう』

 

と発言した事に始まる。

無論、そんな意見に大人しく従うような孫策じゃない、

 

『そんな事言ったら、一刀の行動を読めずに、止めれなかった冥琳も同罪じゃない』

『ほう・・・・・・・・伯符よ、それは本気で言っているのか?』

 

そう呟く冥琳は、赤黒い何かを陽炎のように体から発し始め、

 

『やばっ! 逃げるわよ一刀』

 

と言って、俺を巻き込んで逃げようとする孫策、

俺の手を掴んで、天幕の外へ駆けようとする孫策の行動に、俺は呆れながら、

さすがに、此処で逃げるのは後々不味いと思い。

 

タッ、

ヒョイ、

 

『えっ!?』

 

孫策が地を蹴って加速するにあわせて、此方が孫策を押すような形で後押ししてやる事で、姿勢を崩す孫策に、空気投げの要領で一瞬だけ浮遊させ、そのまま地面に倒れ込まない様に、今度は俺が孫策の手を支えてやる。

その甲斐あって、孫策はそのまま地面に座り込む形になる。

無論、ただ姿勢を崩させただけでは、こうはならない。 孫策が一瞬宙に浮いた隙に、無防備に晒されている背中の下の方にあるツボを点穴し、下半身を一時的に麻痺させた訳だ。 いつぞや思春にやった奴に比べて、危険は少なく、気脈にも干渉して打ったため、俺が解穴しない限り、孫策の足は自分の意志で動かせる事は無い。

 

もっとも、手加減して打ったため、四半刻もすれば勝手に解ける程度のものだが、今はこれで十分。

そんな訳で、孫策は嫌々ながらも俺と一緒に説教を受ける羽目になった訳だが、

 

『裏切り者ーーーーっ』『後で覚えてなさいよ』

 

等と、人聞きの悪い事を最初こそ言っていたものの、説教を受けるうちに、そんな元気は無くなったようである。

ちなみに、点穴した効果はとっくに切れている筈だが、孫策がこうして最後まで説教を聞いていたのは、効果が切れているのに気がついていないか、足が痺れて動けないだけだろうと俺は思っている。

まぁ俺は正座は慣れているので、半日やそこらは大丈夫だ。まぁ、硬い地面の上と言うのは、さすがに少しだけ痺れるが、この程度ならば放っておいても問題は無い。

 

 

 

 

「あぁ、自業自得とは言え、酷い目にあった」

 

昼から夕刻にかけて、丸半日を掛けての御説教を終え、俺が凝り固まった体を解しながら立ち上がっていると、

 

「ちょっと一刀、いい加減人の足を戻しなさいよっ!」

 

等と、孫策の怒声が聞こえてきた。

あぁ、やっぱり、気がついていない方だったか、・・・・・・・・いや、この場合両方かな

 

「もうとっくに解けてるよ。 冥琳の説教の途中ぐらいで解けてるはずだけど、気がつかなかった?」

「嘘言いなさいっ、痺れて全然動かせないわよっ!」

「それはただ血流が悪くなって痺れているだけ、時間が経てば戻るよ」

 

俺は、そう言いながら、孫策の足の裏を突いてやる。

 

「ひやっ!」

 

孫策は、足の裏に感じた痛みと言うか、強い痺れに、声(以外に可愛らしい声)を挙げて飛び上がり、四つ這いの姿勢になり、そのままの姿勢のまま、俺を涙目に睨みつけて来るが、俺はそれを笑顔で受け流し、

 

「ほら、そうやって感覚があるって事と、飛び上がれたって言う事は、解けている証だよ」

「この、う゛ぁ一刀っ! いきなりなんて事すんのよっ! 大体自分だけ平気って何よ、卑怯よ反則よっ!」

「俺のは修行の成果だよ。

 俺だって、昔は孫策のような目に、毎日遭ってたんだ。 卑怯呼ばわりは止めてくれ、

 それに、血流を操れるようになれば、丸一日だろうが関係なくなるよ」

 

俺はそう言いながら、足が痺れて立てない孫策を抱き上げ、

 

「ち・ちょっ、いきなり何をっ」

「何時までも、地面に四つ這いになってる訳には行かないだろ」

 

俺はそう言いながら、何故か顔を赤くしている孫策を、簡易椅子に座らせてやる。

椅子に座らされた孫策は、正座から開放された足の感覚に眉を顰めつつも、いまだ頬を赤く染めながら、俺に小さく礼を言う。

まぁ、立てない相手に対して、当たり前の事をやったわけだが、・・・・・・・・あの、みんな、なんで、そんな冷たい視線をされるのでしょうか? 俺何か悪い事やった?

何故か皆から冷たい視線を浴びせられ、俺は居心地の悪さから現実逃避するように、

 

「足を揉み解してやれば、早く直るけどどうする?」

「んー、止めて置くわ、変な声が出そうな気がするし」

 

等と孫策の言葉で、周りの視線の冷たさは、何故か一層酷くなる。・・・・・・・・何故?(汗

それに変な声ってなんだよ、そりゃあ、最初は痛いかもしれないけど、変な事なんて何も無いはずだぞ。

そんな周りの様子に戸惑う俺に、孫策は王の顔に戻り、

 

「一刀、今日はもう休んでもいいわ。

 明日には私達は洛陽入りする。 その後に大事な話があるから、それまで大人しくしていなさい」

「ん、わかった。 それと孫策」

「なに?」

「ありがとう」

 

俺は、今持てる気持ち全てを籠めて、孫策に笑顔を向けて礼を言う。

孫策は孫策達で、それなりの思惑合っての事だろうけど、それでも、俺の我が儘を聞いてくれた事には違いない。 そしてそのために、きっと色々手を回してくれたし、心配もしてくれたと思う。

だから本当は色々謝りたかった。 でも賀斉さんが教えてくれた。 こういう時は、礼を言うものだと、謝るべきより相応しい言葉があると・・・・・・・・、

 

 

 

雪蓮(孫策)視点:

 

 

「ありがとう」

 

そう言い残して、一刀は天幕を出て行く。

謝罪と感謝、そして親愛を籠めた笑顔を残して、

・・・・・・何処か悲しみに彩られた笑顔で・・・・・・、

私は、そんな一刀の笑顔に、二つの意味で胸が痛んだ。

一つは、一刀の素敵な笑顔に、

そして、もう一つは、一刀の悲しみの原因に、

 

正直、一個人で言えば、一刀の元の笑顔を知っているだけに、あの悲しい笑顔に、私は罪悪感を突きつけられる。

でも、私は王だ。 個人の感情等に捕らわれる訳には行かない。

もし、一刀の笑顔が戻らず、二人に恨まれる事になっても、それ覚悟の上での事。

もっとも、二人は絶対、そんな事をしないでしょうけどね・・・・・・・・、本当極悪人よね、私は・・・・・・、

だからこそ、何時までも、そんな気持ちで居るわけには行かない。

 

「蓮華、穏、今回は一刀の事で心配かけたわね。 今日はもう良いわ、自分の天幕に戻って頂戴」

「いいえ姉様、私も少し言い過ぎました。 お許しを」

「うぅ、私は、もう少し愚痴りたかったですぅ~」

 

蓮華はともかく、穏の言葉は、私も同意見。

だけどこればかりは、今の一刀に強制するわけには行かない。

まぁ、あんな手では、一刀は真名を読んではしないわね。

別に、一刀は穏を嫌っている訳ではないから、何かの拍子で呼んでくれる様になるわ・・・・・・・・・私と違ってね。

 

「明命は、此処に少しだけ残って、 それと思春、分かっているわね」

「はいっ」「はっ」

 

 

 

 

明命の報告を聞き終え、今は冥琳と二人だけ、

思春が、天幕の外に居るはずだから、心置きなく私は冥琳と話をする事が出来る。

 

「ねぇ、どう思う?」

「何がだ? 北郷か、それとも劉備か」

「分かってて聞き返さないの、両方よ」

 

親友の悪癖に、溜息を吐きつつも、話を促す。

 

「正直、想像以上だ。 北郷、劉備共にな。

 劉備の所は、天が見放さない限り、大きく強くなるだろうな。 今まで甘さ故に付け入る隙など、幾らでも

 あったが、おそらく甘さを残したまま、付け入る隙が無くなっていくだろう」

「矛盾しているわね」

「ああ、だが伏竜、鳳雛、二人の天才がそれを可能にするだろうな。

 今までは所詮学生上がりの天才だったが、北郷が二人を、そして劉備を大きく成長させてしまったと見て

 良いだろうな」

 

冥琳は、問題だとばかりの言葉を言いながらも、其の顔はちっともそうは言っていない。

 

「話を内容を聞く限りだと厄介そうなのに、全然そうは聞こえないわよ」

「なに、劉備達が簡単に潰れてくれる様では困る。 それでは同盟を組んだ甲斐も無いのだからな。

 私が気にしているのは、其の天才二人を、一時的にとは言え、恐怖に囚わせた北郷の事だ」

 

二人の軍師は、一刀の事を、一刀の才を恐れたと言う。

伏竜、鳳雛の二つ名で、大陸中に知られた二人が・・・・・、

ましてや、諸葛亮は恐怖で闇に堕ちかけさえしたと・・・・・・・・、

 

「今回の出来事、 北郷は連合の顔合わせの時に、劉備の陣営から帰ってきた時から動いて居たのだろうな。

 そうでなければ説明が付かない。 途中多少の変更があったとは言え、あやつの考えた通りに事は運んだ

 と見て良いだろうな。 問題は、北郷の人を見抜く目と、何処まで先を呼んでの行動かと言う事だ」

「何処まで見ていると思う?」

「今は分からんとしか言いようが無いな」

 

私の言葉に、冥琳はあっさりと、白旗を上げる。

冥琳にしては珍しいわね。

そんな私の思考を読み取ったのか、

 

「仕方あるまい。 軍師としてのあやつを、私は殆ど知らないのだからな、

 ・・・・・・だが、限られた情報の中で、少なくとも、私と同程度は読んでいると見ていいだろうな。

 北郷の持って来た土産が、それを物語っている」

 

そう楽しげに、親友は語るが、私には今一ピンと来ない。

一刀が、軍師として優れた素質があるのは分かるけど、分からないのは、一刀の才能を自分以上のように言いながらも・・・・・・、

 

「冥琳は、諸葛亮達みたいに、一刀の才能を恐れないの?」

 

私のそんな言葉に、親友は鼻で笑いながら、

 

「そんな物は雪蓮、お前の時に克服したよ。 確かにあやつの才能と知識は恐ろしいと思うが、

 ・・・・・・雪蓮、お前は北郷の武を脅威とは感じても、北郷自身を恐れはしまい? それと同じ事さ」

「なるほど、分かりやすい例えね」

 

冥琳の返事を聞いて、我ながら馬鹿な質問をしたと反省しつつ、心の中で、そんな馬鹿な質問をした親友に謝罪する。

実際、つい先程も、呂布とは別の意味で、一刀の化物さの一端を、この身で体験したばかりだけど、一刀に恐怖するかと言えば、そんな事はない。 それは、一刀の事を知っているから、・・・・・・あんな化物じみた武を持っているとは信じられないくらい、優しい人間だと知っているから、

 

だけど、そんな優しい人間を、私は巻き込んだ。

汜水関と虎牢関では、多くの人間を殺させた。

一刀はその事で凄く傷ついていると思う。

全ての悲しみと罪を、其の背に背負って、苦しんでいると思う。

今は、気を張っているけど、街に帰ったら、また悪夢に魘されるのだと思う。

己が心を、蝕まれながら、逝ってしまった者達の事を忘れずに、向き合うのだと思う。

そして、それでも真っ直ぐ前に進むのだと・・・・・・・・・、

 

そして私は、そんな一刀に、更に現実を突きつけなければいけない。

どう言い繕うとも、一刀は、其の事に傷つくだろうし、罪を感じる。

・・・・・・これは私が突きつけなければいけない事、隠してもいつかは知れるし、そうなれば一刀は立ち直れなくなるかもしれない。 少なくとも、私達を信頼する事は無くなる・・・・・・・・それだけは防がねばいけない。

 

「ありがとう・・・・・・か、本当はそんな事を言われる資格も、優しくされる資格も無いって言うのにね。

 どこまで、底抜けのお人好しなのかしら・・・・・・・・」

 

私の自嘲じみた呟きに、親友は只黙って、優しく見守ってくれた。

 

 

 

一刀視点:

 

 

洛陽入りした俺達は、ある屋敷を本陣に待機する事になった。

無論、何処の諸侯もそうだが、兵の殆どは外壁の外で待機させている。

俺達が一日遅れたのは、只単に他の諸侯の争いに巻き込まれたくなかったためだ。

冥琳としては、最初は一番乗りしたかったらしいが、その理由も俺の持って帰った土産で、無くなった。

 

俺も別に張遼の屋敷で無為に過ごしていた訳ではない。

これから先、やはり、少しでも多く正確な情報が欲しい訳で、そのために、各州の特産物や人口、税収と其の目録を記載した書物や、より正確な地図を夜中に、こっそりと頂いてきた。

幸い、場所と警備体制は詠が、せめてもの礼だと言って教えてくれたので、簡単に手に入れる事が出来た。

 

桃香達は、結局あのまま張遼の家を本陣としたらしい。

まぁ、確かに其の方が色々都合は良いだろうし、今の所、月達の生存がばれた様子は無い。

そんな中、俺は頂いて来た書物に目を通しながら、頭の中で各諸侯の勢力の修正を行い、今後の展開を予想し直していた。

 

・・・・・・・・やはり、袁紹と公孫賛の所しだいだな。

他の有力な諸侯は、ある程度読めるし、遠い涼州は今の所考える必要は無い。

一番の問題は、袁紹だ。 アレだけは考えが読めない。

これだけの連合を短期間で作る手腕と、時期を読む能力、月達に反論の余地を与える暇を、与えなかった事からして、現時点で最大の勢力を持っているのも分かる。

だけど、あの性格だ。 幾らか計算染みた物を感じるが、とんでもない事に違いは無い。

 

おそらく、ある意味孫策と同類なのだろうな。

孫策は人並み外れた勘を持っているが、アレは天分の才と、多くの経験から導き出されたものだろう。

だが、袁紹のは、月旦評や、知っている情報だけで見ても、おそらく強運、そして磨かれた能力が、それを活かしているのだろう。 少なくとも、甘やかされただけの御嬢様、と甘く見るのは危険に思える。

 

そして公孫賛、広大な幽州を一人で纏め上げているだけあって、曹操とかに比べたら見劣りするも、他の諸侯に比べたら優秀であるの事は分かる。 今のままでは、今後を生き残れるかと言えば、無理と言わざる得ないだろう。 その理由としては、彼女の内へ内へと向かう性格と、直ぐ南にある袁紹の存在だ。 たとえ、袁紹が直ぐに手を出さなくても、曹操と決戦した後、生き残った方の勢力に討たれるに違いない。

ただ気になるのは、彼女に優秀な将や軍師がついた場合だ。 そうなれば、今まで内へと目を向けるしかなかった彼女は文字通り化ける可能性が・

 

「一刀ーーっ」

 

俺の思考を止めたのは、孫策の呼ぶ声だった。

どうやら例の大切な話と言う、準備が出来たようだ。

 

 

 

 

孫策と冥琳そして思春に連れられて来たのは、近くにある孫策達に宛がわれたもう一つの屋敷だった。

此処は、主に怪我の重い者や、療養を必要とするものが運び込まれていた。

そんな屋敷の奥の一室、其処に彼女が居た。

 

「おう北郷殿か、秘密裏の作戦行動とやらは、無事に終わったのか」

 

俺の姿を確認するなり、賀斉さんは、そう元気良く右手を上げて挨拶をしてきた。

寝台の上に半身を起こしながら、俺に笑いかけてくれた。

前と代わらぬ豪快な笑みを浮かべて、俺を迎えてくれた。

 

ただ、以前と違ったのは、顔色が少し悪いのと、

 

左手が腕の半ばから、失っていた事だった。

 

 

 

 

俺が呆然と、見詰める中、賀斉さんは俺の視線に気が付き

 

「ああ、これか、まぁ言わば勲章と言うやつよ。 北郷殿が気にする事ではない」

 

左手を少し上げながら、そう俺に自嘲気味に言う。

俺は、その事で、何があったのか聞こうとしたが、孫策の言葉が俺を押し止めた。

 

「賀斉はね、暴走の責を取って、諸侯の前で、自ら腕を斬り落としたのよ」

「・・・・・・・・え?」

 

俺の思わず聞きなおした声に、孫策は答えない。

只、賀斉さんを見詰めたままだ。

そして、賀斉さんは、やれやれと言った感じに溜息を吐き、目を瞑る。

別に孫策の声が聞き取れなかった訳ではない。 只信じたくなかっただけ。

俺の弱い心が、孫策の言った言葉の意味を拒絶しただけ、

だけど、時間が経つにつれ、その意味を理解する。

 

 

賀斉さんは、俺の策のために左手を失ったのだと、

 

 

・・・・・・・・分かっていた事、戦とは、こう言う物だと、

近しい誰かが逝ってしまう物だと言う事を、

それを思えば、賀斉さんはマシなのかもしれない。

・・・・・・だけど、賀斉さんのそれは違う。

失わなくても良かったもの、

それを俺が奪ってしまったのだ。

俺が無謀とも言えるような策を、提示してしまった故に、

彼女は、其の辻褄を合わせるために、左手を失ってしまったんだ。

 

正直目を逸らしたい。・・・・・・・・・・・・だけどそれは出来ない。

逝ってしまった者達の為にも、それはやっちゃいけない事、

それに、それをやってしまったら、二度と俺は歩めなくなる気がするから、

だから、俺は必死に耐えながら、己が罪を、彼女の左手を見詰める。

 

「なんじゃ、其のしけた面は、儂は何て教えたっ」

 

彼女は、目を瞑ったまま、そう俺を叱り付ける。

 

たぶん彼女には、見なくても、俺が今どんな顔をしているのか、容易に想像がつくのだろう。

 

俺はきっと凄く情けない顔をしている。

 

でも、此処で立ち止まる訳にはいかない。

 

賀斉さんの想いを無にする訳にはいけない。

 

今まで犠牲にして来たもの達の為にも、

 

俺は、賀斉さんの教えを、例え苦しくたって、実践して見せなければいけない。

 

北郷一刀、覚悟を決めたんだろ。

 

だから俺は、

 

 

「賀斉さん、ありがとう・・・・ご・・ざい・・・・・・ま・・・・・・・・・す」

 

 

涙を流しながらでも、無理やり笑顔を作り、言葉にならない言葉を、

 

沢山の謝罪と、感謝の気持ちを籠めて、彼女に伝える

 

 

 

 

「まったく、男の癖に女々しく涙を流しおって、

 言っておくが、私は欠片も小僧の事を恨んだりはして居らぬわっ、

 これは私の戦人としての誇りぞ。 それをそんな情けない顔をしおってからに」

「す・すみません」

 

賀斉さん重傷を負っているとは思えない言葉に、俺はますます恐縮しながら謝る。

 

「あの一戦で、確かに私らは、七百以上の兵を失った。

 だが、袁術には二万近くの兵を失わせる事ができた。

 其の上、虎牢関も其の日の内に落とせたのじゃ、

 それだけの大戦果を挙げたと言うのに、何を恥じる必要がある。

 この左手とて、其の戦果を無駄にしないためのもの、

 多くの同胞の命を守るためなら、私のような年寄り一つの命だとしても安いものじゃ」

 

そう、何の迷いも無く賀斉さんは、俺の罪を笑い飛ばす。

こんな物で罪を背負うなと、・・・・・・だけど、それだけは出来ない。

俺は背負うと決めたのだから、目を逸らさないと決めたのだから、

だから、俺は

 

「ありがとうございます」

 

もう一度、そして、今度こそはっきりと、賀斉さんにお礼を述べる。

いまは、きちんと笑えないかもしれないけど、それでも一生懸命笑みを浮かべながら、彼女の優しさに、誇り高さに、敬意を、そして多くの気持ちを籠めて、彼女に真っ直ぐ笑みを向ける。

それで、全てが伝わるとは思わない。

俺の罪が無くなる訳でもない。

 

でも、だからこそ、真っ直ぐ歩まなければいけない。

彼女の優しさを、遺志を引き継いでいかなければいけない。

俺が選んだ道は、そういう道だから、

そして、俺はこうして、この世界の人達の優しさに、生かされているのだと分かるから、

 

「ふん、まだまだじゃな。 じゃが、お前の心根だけは、ありがたく受け取っておこう」

 

なのに、そんな賀斉さんの言葉に、俺は少しだけ救われた気がした。

情けなくも、嬉しくて、もう一度、頬に涙が伝うのが止められなかった。

 

 

 

雪蓮(孫策)視点:

 

 

一刀は、賀斉から虎牢関での戦いぶりを聞いた後、

 

『一刀、私はこれから賀斉と今後を話すから、貴方は明命の手伝いをして頂戴』

 

そう言って、追い出したのだけど、去り際に、

 

『ありがとう』

 

と、私の耳元に残して行った。

まったく、私にまで言わなくてもいいのに、

 

「孫策殿も大変じゃの」

「そうね、一刀があんな感じに一々落ち込んでるから、気苦労が耐えないわ」

「そっちの事じゃないんじゃがな・・・・・・」

 

等と賀斉が訳の分からない事を言う。

最初はニヤニヤへんな笑みを浮かべていたのに、私の返事を聞くなり溜息を吐くなんて、失礼しちゃうわね。

だけど、そんな表情も少しだけ不安げな顔になり、優しい目で、一刀の出ていった戸の方を見つめながら、

 

「しかし、あやつ大丈夫か? かなり打ちのめされているように感じられたが、

 それに、先日に会った時に比べ顔色も悪かった。 また倒れやせぬか?」

「本人は自覚していないけど、今の状態は、正直良くないわね。

 でも大丈夫よ、ちゃんと一刀を癒してくれる娘が居るから、少し時間は掛かるけど、必ず立ち直るわ。

 今より強くなってね」

 

そう一刀は、必ず立ち直るわ。 翡翠と明命がそんな事させたりしない。

なにより、此処で立ち直れなくなる程、一刀の覚悟は脆いものじゃない。

一刀の本当の強さは、武でも、智でもない。

純粋までの優しさが成す心だと、そう私は信じている。

だから、私はそれを手助けしてやるだけでいい、それに・・・・・・・・、

 

「ふっ、そう言う事か・・・・・・、じゃが孫策殿は良いのか?」

「私に出来る事なんて無いわ。 こうして、この世界の現実を教えてあげる事と、偶に街を引き摺り回して、

 気を紛らわせて上げる事位しかね。 

 賀斉、今日は悪かったわね。 一刀を鍛える出汁に使っちゃって」

「構わぬさ。 この老体でも、これからを担う者達の力になるなら、幾らでも力に為ろう」

「そ、ありがとう。 礼を言っておくわ」

 

彼女の目を真っ直ぐ見て、礼を述べる。

賀斉には、今回本当に世話になったのは間違いない。

士族達の説得を始め、虎牢関では自ら志願してくれた。

そして、何より一刀に色々な事を教えてくれた。

交わした言葉は少なくても、一刀は賀斉から多くの事を学んだ。

戦人の想いを、・・・・・・其処に命を懸けなければいけない、悲しい決意を、

そして、それにどう答えていけばいいのかを、一刀は学んだはず。

 

 

 

 

「で、賀斉の所はこれからどうするつもり?」

 

私は、一度小さく息を吐き出し、気分を入れ替えて、賀斉に改めて問う。

むろん、これからと言うのは賀の一族の事だ。

 

「まぁ、たかが左手が失ったくらいじゃ、一族を纏める事くらいは出来る

 もっとも、戦場に出る事は、さすがに、ああ見得を切った以上は適わぬからな、娘に任す事にするさ」

「ちょっと、賀斉のとこの娘って、たしか十を過ぎたばかりじゃなかった?」

「うむ、つい先月十二に成った所じゃ」

 

賀斉は当たり前のように言うが、私は少し呆れた。

物心付く頃から戦場に居た私が言うのもなんだけど、それはどうかと思う。

私の場合は、母さんがアレだから仕方ないけど、賀斉は其の辺りは、幾らか良識が在ると思ったんだけど、

そんな私の考えを呼んだのか、

 

「孫堅殿じゃあるまいし、さすがにあやつ一人に任す気は無い。 そうじゃの、北郷殿を婿養子にで・」

「駄目よっ」

「冗談ぐらい、最後ぐらいまで言わせんか」

「よく言うわよ。 冗談言っている感じには聞こえなかったわよ」

「相変わらず良い勘をしておるのー、 まぁ本気で快諾してもらえるとは思ってもおらん。

 娘には、義妹を付ける。 頭はからっきしじゃが、娘を可愛がっておるし、ちょうど良かろう」

 

絶対、今のは本気だった。

私が冗談に乗ろうものなら、言質を取ったとばかりに、娘を寄越して来るに違いない。

まぁ一刀が、そんなものを了承するとは思えないけど、これ以上話をややこしくして欲しくない。

私の言葉が元で、そんな事態になろうものなら、まず間違いなく翡翠の報復が待っている。

 

あの娘は、感謝しても感謝しきれない程、私達に尽くしてくれているけど、一度本気で怒らせると色々な意味で後悔させられる。 一度怒らせてしまった事があったけど、あれだけ人に、堪える報復と言う名の悪戯を仕掛けておいて、政には一切影響を与えないように手を回しとく用意周到さが凄い。 それも翡翠の非凡さを表す一つだけど、正直二度と味わいたくないものだったわ。

 

「そう、分かったわ」

 

 

 

美羽(袁術)視点:

 

 

連合の天子様への謁見も明日に控えていたが、正直妾には興味は無かった。

 

『妾が次の皇帝なのじゃ』

 

等と孫策の口車に乗って見せたが、口実が欲しかっただけに過ぎない。

 

「七乃~」

「は~い、なんでしょうかお嬢様」

 

七乃は、妾の呼びかけに、何時もどおり左手の人差し指を立てて見せるが、すぐさま指を畳み、今度は首の下で右手を左手の掌で包むように併せて、妾を優しく見詰める。

 

「七乃どう思う?」

「そうですね~、孫策さん達は、順調に力をつけているようです。 それなのに私達は、たいした功も挙げれ

 ず、大打撃を受けてしまいました。 さぞ上の方々は面白くないでしょうね~」

「そのために、張遼を身請けしたのじゃが、足りぬか?」

 

妾の問いかけに、七乃は顎に指を当てて考えて見せるが、すぐに元に戻り、

 

「やはり足りないと言わざる得ないでしょうね。

 ですが孫策さんの功は、美羽様の功、つまり袁家の功ですから、其の辺りを上手く言い包めば何とかなるで

 しょう。 それに、氏族の中でも纏め役でもある賀一族の当主を失う事になりましたから、上の方々は孫策

 さん達から安心してしまうでしょうね。 何より今回失った兵の補充と調練で、それ処では無くなるでしょ

 う。 御自身達を守る事だけは、精力的に働かれるお方達ですから」

 

七乃の言葉に、我が一族の事ながら少しばかり溜息が出でしまう。

おそらく張遼も、あやつらに取り上げられてしまうだろうが構わぬ。

騎兵と言うのは元来、攻めてこそ絶大な効果がある。

守る事しか頭に無いあやつらでは、使いこなせはしまい。

 

「今度の事で、孫策の腹は分かったのじゃ、妾達の悲願の日も近い。 頼んだぞ七乃」

「はい、美羽様」

 

そう、もうすぐじゃ・・・・・・・・そして、そのためには孫策、最後に一働きしてもらうぞよ・・・・・・・・・・・・・、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

  第43話 ~ 舞い落ちた華、けれど其の美しさが翳る事は無し ~ を此処にお送りしました。

 

今回は、戦が一段落ついた一刀に新たなる試練が降りかかりました。 と言うお話でしたが如何でしたでしょうか。 一刀は、今回の戦で、知識以外の、多くのものを学んだと思います。 一刀の心が、それを処理し切れるのか、それは、一刀自身と二人の想いに掛かっています。

さて、今回の話の途中、賀斉の娘の話が出てきましたが、残念ながら登場予定はありません。

さすがに、彼女にフラグを立てるのは不味いでしょう(w

 

さて、次回のメインのお話は、お留守番役の人達のお話になります。

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
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