No.139219

恋姫異聞録56

絶影さん

拠点話しです。次回も続きになります

何と言いますか、考えていたより長くなってしまって
次に続いちゃいます。気がついたことが登場人物を
増やすとセリフで文がめっさ長くなる・・・。

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2010-04-27 22:09:30 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:14684   閲覧ユーザー数:11431

 

城壁の外では大勢の兵達の声が上がる。魏の演習は凄まじい、実戦さながらのぶつかり合いを繰り返し

兵たちは怪我が耐える事はない、しかしその中からこそ魏の精兵と呼ばれる兵が生み出される

そしてもう一つ、信頼できる衛生兵たちがいるからこそ兵たちは己の身体を顧みず訓練に身を投じることが出来るのだ

 

「良いか、一人の遅れが百人の仲間を殺す。十人が遅れれば千人の戦友が死ぬと思え!」

 

凛とした秋蘭の声が戦場に響き渡る。秋蘭一人が率いる新参と古参の混合兵に対するは凪達三羽烏率いる新兵部隊。

数は明らかに秋蘭のほうが少ないにも関わらず、凪たちは防戦一方となってしまっていた

 

「心を乱すな、冷静に対処すれば負ける事はない!確実に敵を押さえ、削るのだ」

 

兵をむやみに動かすのではなく要所要所で兵を進め、時には動きを止めて凪達将には一切無視をする

無理に凪たちが手を出そうものなら秋蘭の鏃を潰した矢が襲い掛かる。凪たちは動きを完全に封じられ

満足に動くことも出来ずに兵を削られていくだけとなってしまった

 

「よく見ておけ、覚えずともよい。見るだけでも己の力となる」

 

「はいっ!」

 

少し離れた所から全体を万遍無く見渡す春蘭と季衣、春蘭は妹の戦い方を見せて季衣の経験としようと

していた。季衣に一から説明するよりも実際に見て感じさせた方がよいと思ったのだろう

 

「難しく考えるな、季衣は前に言った三つのことを守ればよい」

 

「はい、一つ華琳様を守る!一つ命令は絶対!一つ己を信じよ!」

 

「そうだ、自分に出来ることを精一杯にやればよい、頭を使うことが苦手なら他の得意な者に任せれば良いのだ」

 

「解りました。周りに得意なものがいなければ」

 

「うむ、先ほどの三つのことを守り抜け、一番大事な事は」

 

「最後の己を信じよ!ですね」

 

春蘭は笑顔で季衣の頭を優しく撫でる。季衣は自分と似ているからこそ余計なことを考えさせず、三つだけ守ることを

教え込ませ、その凄まじい武力を磨くことに集中させているのだ。お陰で季衣の『守』る武力は凄まじく親衛隊で

最強の名をほしいままにしていた

 

「余計なことを考えないで華琳を守るだけに特化した武・・・か、中々良いじゃない、季衣は下手に前線に回すより

そのほうが力を発揮できるわ」

 

「一番の理由はそうではない、季衣や流琉に無用に人を殺して欲しくないだけだ」

 

「さすが姉様です。季衣さんや流琉さんのことを考えてお二人に合った戦い方を教えているのですから」

 

珍しく関心する詠とその横で頷く一馬に春蘭は笑顔を向けると、隣の季衣も同じように笑顔になる

そして春蘭は一馬に近づくと、もう一人の義弟がよくするようにガシガシと頭を撫でた

 

「一馬は詠の指示に忠実にな、昭の軍が編成された時、騎馬兵のお前が要となるだろう」

 

「は、はい姉様!粉骨砕身で頑張ります!!」

 

春蘭に撫でられながら一馬は顔を赤くする。詠と季衣はそれを見ながら笑っていた、相変わらず純情な奴だと

 

「ん~、そろそろ決着が付くわね。やっぱり秋蘭の勝だわ」

 

「そのようだ、やはり詠が向こうに入ったほうが良かったのではないのか?」

 

「駄目よ、僕に何かあったとき三人で対応が出来なければこの先どうなるか」

 

「ふむ、では一馬も抜く訳は?」

 

「一馬はいざと言う時に昭の護衛か逃がす役目を持っているから当てにしては駄目。最悪、舞を使う場面でも

戦闘不能になった昭を連れ帰ることが出来るわ、王と同列のものを簡単に死なせるわけにはいかないもの」

 

「なるほど」と頷きながらなおも頭をガシガシと撫でていた。どうやら一馬を褒められて自分のことのように嬉しかった

ようで撫でられる一馬はますます顔が赤くなっていた

 

「なぁなぁ、その優秀な一馬をウチんとこの副官に頂戴、惇ちゃん」

 

「またか?駄目だと言っているだろう」

 

撫でる春蘭に後ろから抱きつくのは霞、元々一馬の能力を高く買っていた霞は以前から毎回のように

一馬を副官に置くことを訴えていて、前に烏桓族を討伐しに北で一馬が副官を務めてから前よりも気に入って

しまったらしい、今回の軍編成でも一馬を副官にと申し出ていた。だが一番の目的は

 

「まったく、お前が一馬を欲しいのは兵を任せて好きなように戦いたいからだろう」

 

「あはは~ばれてたか、でもな今度こそうちは馬騰のような英雄とやりあいたいんやからしゃぁないやん」

 

そういっていじけてしまう、前回の戦では出られなかった所か、あれほどの英雄と戦いたくても戦えなかったことが

彼女の中でフラストレーションを溜めていたのだろう

 

「しかたないな、私が少し相手をしてやろう」

 

「え?ホンマ!やった!!ほんなら武器は本物使ってええよな?」

 

やれやれと笑って頷く春蘭に霞は顔を輝かせて喜び、早速武器を取りに行こうと身を翻すと城門から荷物を運び込む

流琉と美羽が視界に入る

 

 

 

 

 

 

「・・・?なんやあれ、なにもってきたんや?」

 

「うわー、すっごく良い匂いですね春蘭様」

 

「うむ、そうだな何を持ってきたのか・・・昭っ!」

 

流琉たちの後から城門を出てくる涼風を肩車した男と目が合うと春蘭は手を振り、気が付いた男と頭の上の娘は

笑顔で手を振り替えした

 

「兄者、何を持ってきたのですか?お手伝いいたします」

 

「ああ、有り難う一馬。昼飯を持ってきた、そろそろ昼だからな」

 

「良い匂い、また何か作ったのね?僕も手伝うわよ」

 

男は「有り難う、お願いするよ」と応えると詠と一馬は荷車に乗った食料を下ろし始める。春蘭も荷物を下ろすのを手伝い

始めるが霞はせっかくの勝負を邪魔され、不満顔で男に詰め寄った

 

「ええーい、昭も間が悪いなっ!今から惇ちゃんと勝負を」

 

「まぁ食え」

 

「もごっ・・・もしゃ、勝負をやな、モゴモゴ・・・・・・うまっ!なんやこれごっつ美味いっ!!」

 

男は詰め寄る霞の口にパンを詰め込むと霞は睨みながら口を動かし、次第にパンの味に夢中になってしまったようで

もしゃもしゃとパンを口に運ぶ

 

「なんとなくソースの味が好きじゃないかと思ったけど間違いじゃなかったようだな」

 

頷きながらひたすら口に運ぶ霞を見て季衣も我慢が出来なくなったのか、流琉を急かしパンを受け取り口に運ぶと

味に感動したのか顔を輝かせ無言でバクバクとパンを口に詰め込んでいった

 

「こういう味すきそうだもんな季衣も、所で秋蘭は?」

 

「秋蘭はあっち、凪たちに圧勝して帰ってくるわよ」

 

パンにメンチを手早く挟む詠は視線を演習していた兵達の方にむけ、男は視線の方に目を向けるとそこには

秋蘭に指導される三羽烏の姿があった

 

「まだまだだな、其方は将が三人いるのだからそれを巧く使わなくては駄目だ」

 

『『『はいっ!』』』

 

「凪は三人の中で一番周りが見えている、他の二人に指示を出せ」

 

「はいっ!」

 

「沙和のところは兵の士気が一番高い、そこを無駄にするな。手足のように兵を動かせ」

 

「はいなの~!」

 

「真桜の兵は柔軟性がある、二人の穴を巧く埋めれば隙はなくなる」

 

「はいっ!」

 

指示する秋蘭を見ている男の顔を見ながら詠がニヤニヤし始め、男の横腹をひじで突付く

 

「惚れ直した?」

 

「ああ・・・って恥ずかしいこと聞くなよ」

 

顔を赤くする様を見て大笑いする詠の声で秋蘭は男が着ていることに気がつき軽く笑う、男はそれを見て

更に顔を赤くしてしまう、男のしぐさを見て笑いながら秋蘭は休憩の支持を全体に飛ばした

 

「来ていたのか、また何か作ったのだな?」

 

「お疲れ様、涼風とソースって言う調味料を作ったんだよ」

 

「そうか、お手伝い偉かったな涼風」

 

秋蘭は男の肩に座る娘の頭を撫で、男の肩から娘を抱き取る。

 

「食事にしようか、皆の分も持ってきたんだ」

 

「フフッ今度はどんなものを食べさせてくれるんだ?」

 

まるで炊き出しのように大量のパンとメンチを揚げ、多めに作ったソースは直ぐになくなり一人一個になってしまった

だが沢山食べる奴らがいることが解っていたので一緒にタマゴサンド等も作って兵たちも食べられるようにしておいた

兵達の食料費は結構なものになってしまうと思っていたのだが今回は華琳がそれとなく出してくれて

「新しいものを食べさせてくれたお礼よ」といってくれたのだ

 

 

 

 

 

 

俺たちは地面に持ってきた布を敷き、その上で食事を取ることにした。輪を作って食事するこの感じは遠足に

来てお弁当を食べるような気持ちになってくる

 

用意したパンを秋蘭が口に含むのを少し不安気に見つめると、秋蘭は租借しながら柔らかく笑う

 

「どうだ?うまいか?」

 

「ああ、これが天で学生だった時に食べていたものか、今度はこの調味料で何か作ってみよう」

 

俺が作った調味料で秋蘭が食事を作る。そんなことを言われたらまた今度何を作ろうかと楽しみになってしまう

まったく俺を乗せるのが巧い、笑顔で俺を見てさっき凪たちに指導していた厳しい顔とはまったく違うものを俺に向ける

、解ってやっているところがあるから本当にずるいよ

 

「涼風と昭は?」

 

「ああ、涼風と俺はもう食べた。今食べさせているのはタマゴサンドとサラダだ、酢があったから違うものも作ってみたんだよ」

 

「まえに言っていた『どれっしんぐ』という物だったか?」

 

頷く俺は千切ったタマゴサンドを秋蘭の口に持っていくと、秋蘭は周りに人がいるにもかかわらず俺の指ごと口に含む

一瞬俺の体が固まり、次に顔が赤くなり汗が噴出してくる。何てことするんだよ・・・うぅ

 

「ふむ、美味い。大丈夫だ誰も見ていない」

 

「うぅ・・・意地悪だよな本当に」

 

秋蘭は笑顔の後に少し顔を曇らせ、また顔を笑顔に戻した。そして膝の上の涼風を自分の膝に乗せ、俺の眼を見つめる

 

「行ってくるのだろう?」

 

「うん、今日は遅くなる。それで美羽のことなんだが涼風がお姉ちゃんになって欲しいと」

 

「それで昭が父か?それなら私は母になるな」

 

「いいや、美羽がな『それなんじゃが妾の母は七乃じゃ、口にはださんし七乃には絶対言わないんじゃが、ずっと妾を守り

育ててくれたのは七乃じゃから、できることなら秋蘭には妾の姉になって欲しい』と言っていたんだ」

 

「そうか、それは気が楽だ。大きい娘が急に出来ても困るからな」

 

冗談交じりの笑顔で俺に言うと、俺の手を握って「行ってらっしゃい」と言ってくれた

 

「ああ、行ってきます」

 

そういって立ち上がり城門へと歩みを進める。また覚悟を決めないと・・・・・・

 

男が城門に入っていく姿を見た詠は溜息をつき、自分も城の中へと歩いていく

 

「まったく、本当に難儀な性格をしてるんだから」

 

真桜も男の姿を見ると他の二人にごまかしながら城へと歩いていく

 

「・・・阿呆やなぁ、隊長は」

 

二人はそれぞれ呟きながら城へと入っていった

 

 

 


 
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