No.137510

恋姫のなにか 13

くらげさん

早め早めに。今回は番外じゃありません

2010-04-20 02:09:28 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:17442   閲覧ユーザー数:9410

今回も早めにUPできました。ガンバッタゾ。

新キャラ出てませんし相変わらずの華琳無双です、前回の反動かギャグが恋しかったので。

いつも通りっちゃいつも通りの内容です、開いて下さった皆様に感謝を。

女が三人寄れば姦しい、らしい。では一人の女を三人の女が囲んでいる状況は―――イジメ以外の何と表現すれば美しいのだろうか。

 

「ねぇ華琳?別に私は怒ってるんじゃないのよ?」

「うーそーだー!!絶対雪蓮怒ってるじゃん!月も冥琳もー!私が何したのよー!」

 

先ず、鬼の形相で冥琳が部屋のドアをブチ破ってくれた。その時点ではなんじゃらほい?という感想でしかなかったのだが―――

次に全く笑っていない目付きの月が乗り込んできた辺りで死を覚悟した華琳。

【何したのかわからないけどせめて遺書だけでも書かせて下さい】と土下座して時間を貰ったのだが―――そこで、B級ホラーとかサスペンスとかの映画でよく見る目付きになった雪蓮が窓から乗り込んできた。

 

「何をしたか、か。 はっはっはっ、華琳。ウチの妹はな、それは大層お前に感謝していたんだぞ?一刀先輩とデート出来るとな?

それをお前、あろう事か脳味噌から吹き飛ばしているなど―――あっはっはっはっ、笑わせてくれるじゃないか?

一昨日からずっとしょんぼり俯いたまま部屋に引き篭もってしまったぞ?嗚呼、これはお前が首だけになって謝罪するしかなかろう?」

 

冥琳の脳内には、華琳をシバきすぎたという根本的な問題は残っていないらしい。

が、冥琳の言葉に華琳は「あ?!」としまった。という時に人が作る表情をしながら声を上げた。

 

「うふふ、しょうがない華琳ちゃん。  馬鹿って死んだら治るみたいですよ~?」

「ねぇ華琳。私はこのやるせない気持ちを何処にぶつければいいの?

あーでもないこーでもないって頭悩ませながら一刀とのウキウキデートプラン練ってた所にアンタの自慢メール見せられた時の怒り、何処にぶつければいい?」

「雪蓮さっき怒ってないって言ったじゃん!」

「そんな昔の事は忘れた!!」

「MIGYAAAAAAAAAA!!!!!!」

 

華琳の米神にすらっと細長い雪蓮の指が食い込んでいく。

ごめんなさいごめんなさい!!と何とか声を搾り出したのは良いが、それを聞いているのが満足そうな月だけな辺り不憫で仕方ない。

 

「あれ~?華琳ちゃん、こんな水着持ってたんだ~オットナ~」

「おぉ、なんと際どい黒ビキニ。お前の様な体型の娘がこんなビキニを着てプールに行っては大変な事になるなぁ」

「おねがいだからそれだけはかんべんしてぇ・・・・・・」

「あ~ら、随分余裕ぶちかましてくれんじゃないアンタ。マジで割るわよ」

目の前で自室を我が物顔で蹂躙し始めた親友達に懇願する華琳。

それもその筈、親友達の頼みを完全に忘れて二人で水着を選びに行った時に一刀が選んだ代物なのだ。

とは言っても本当に一刀が選んだわけではなく、色んな水着を試着してみたのだが、一刀の視線がテレくさそうに背けられたのが件の黒ビキニなのだ。

実際お子様体型なのは華琳にとっても悩みの種だったのだが、こんなちんちくりんでも一刀が意識してくれたのが嬉しくて、ついつい着たまま会計を済ませそうになり――思わず一刀が腕を掴んで引き止めて、その引っ張る力の強さに抗えずに胸の中に飛び込んでしまったという嬉し恥かしのイベントまで付着してたりする思い出の一品。

そのイベントを事細かに、勝手知ったる何とやらとコーヒーを淹れて飲みだした親友達にメールで知らせたのだが―――これは果たして自業自得になるのやら。

 

「おねがいだからぁ・・・」

「ふむ・・・月、流石にコレに手を出すのは止めておこうか」

「むー・・・まぁ、私もそこまで鬼じゃありません」

「ほら、雪蓮もその辺りで止めておけ。残った怒りは帰りにゲーセンでパンチングマシンにぶつけろ」

「ねぇ華琳、悪いのは約束を忘れたアンタよね?」

「いだだだ・・・つーかそもそも雪蓮が無茶しなきゃ忘れてなかったっての・・・」

「なんか言った?」

「なんにも!!」

 

流石に今回は腹に据えかねたのか、それともそれだけ未だに冥琳の手の中にある水着が大事なのか、華琳はぷーっと膨れたままだった。

 

「まぁ落ち着け二人とも。 なぁ華琳、今回は痛み分けとしようじゃないか。

確かに約束を忘れたお前に非はある。が、全てをお前任せにした私達にも落ち度はあるわけだ」

「そもそも一刀くんとデートの約束したのは私だけだっての!」

 

華琳の反論に冥琳の頬がヒクリと引き吊るのを雪蓮と月は見て取った。なので自然を装って彼女と華琳から距離を取る。

一応は温厚な冥琳がキレた所など、想像したくもない。

 

「―――まぁそう言うな。お前が聞いてきた喫茶店だが、雑誌に載らないレベルの所を用意した。

確かに私と妹が混ざってはその日はデートにならんだろうが、二人で会う時に良い雰囲気のレストランを用意してやっても構わん」

「へ?いいの?」

「あぁ。しかし、世の中はギブアンドテイクだ、分かるな?」

「えーっと・・・私は何をすればいいのかにゃ?」

「何、簡単だ。だが今回の様な事態を避ける為にメモでも取って置いたほうがいいな。

――よし、行くぞ? プールでデートする際にはお前達以外に私と明命。それに―――あそこで気を伺っている二人も同行すると言えばいい」

「そんだけ?ってか、皆の予定まで考えらんないよ」

「アタシは何時でも良いわ」「私もです、合わせますから」

「と、言う事だ。まぁ私はそういう訳にもいかんが―――最悪、明命だけでも構わんさ」

 

そう言って微笑む冥琳は優しい姉の顔をしていた。少なくとも表面上は。

しかし策士・冥琳がタダで負ける訳が無い。

 

(私が行けなかった場合、ソレをネタに一刀を拉致すれば良い。妹には感謝され、私は存分に美味しい思いが出来―――)

「おおお!なんか冥琳からお姉ちゃんオーラ出てる!!」

(華琳はこうして手玉に取れる。何と素晴らしい、良いこと尽くめではないか)

「でも冥琳、水着選びはどうするんですか?」

「あぁ、それか。 此方からアプローチするしかないだろうな。私も月も押しが強いと思われているだろうし―――

そこでガッツポーズを取っている馬鹿の面倒まで見る心算はない」

「そうですね・・・」「だねぇ」

 

呆れた様にそういう冥琳の視線の先には、任侠立ちで拳を掲げ上げる雪蓮の姿。

 

「だが、華琳。お前には少し働いて貰うぞ」「ほへ?」

「ってな訳で、お礼のデートは期待しててね~♪」

「また高級レストランっすか・・・正直庶民の俺としては勘弁して貰いたいんですけど・・・」

「私もドレス見て欲しいなー」

「はいはい、分かりましたよお嬢様」

「気持ち篭ってないー!」

 

ぶー!とホッペを膨らませながらも、組んだ腕は放さない華琳の横顔をつい笑ってしまいながらも見てしまう一刀。

バイト終わりの、何時もの二人での帰り道。

喋る内容はやはりデートの事だった。

 

「え~っと、あ、そだそだ。プールなんだけどさ、雪蓮と月に冥琳に明命ちゃんも来るってさ~」

「なにそのハーレム。つか、なんでまた?」

「えへへ~♪ 一刀君に水着選んで貰っちゃった~って自慢したら、皆行きたいってさ~♪」

「なんかスゲー恥かしいんですけど」

「まぁコッチは冥琳の都合あるから、時間大分掛かるかもだけど」

「ま、しょうがないっすよね」

「此処でお姉さんの命令!皆の水着選んで上げること!」

 

び!と鼻を人差し指で押しながら、真面目な顔で言う華琳。

 

「なんでまた・・・」

「だって・・・私もう水着見せちゃってるし・・・」

 

そう言うと頬を赤く染めて俯いてしまう華琳。んー?と思いながら言葉が続くのを待つが、一向に出ないので一刀は自分から切り込む事にした。

 

「確かに華琳さんのは「かーりーんー!」・・・華琳のは見てる、けど。それがどうしたんすか?」

 

むー、と唸りながら、けれど顔に真っ赤にして喋る華琳。残念ながら暗い夜道という事もあってその表情を一刀が伺う事は無かったが。

 

「だって・・・当日に皆だけお披露目とかズルイじゃん・・・雪蓮と冥琳は私よりおっぱい大きいし。

・・・皆にだけ見惚れるとか、そんなのやだもん」

(・・・・・・押し倒していいかな、俺)

 

普段は天真爛漫な華琳の不意打ちのヤキモチは一刀にクリティカルで入った。もう華琳ルートに突入しろよお前。

しかし、そこで華琳は甘酸っぱい空気を読めずにホッペをパンパンと叩くと、組んでいた腕を離して駆け出す。

 

「あーはずかし!!今日此処まででいいや!!」「え、でも」

「いいっていいって!」

 

ばいばーい!と手を大きく振ると軽快に駆け出す華琳。

一刀は暫し呆然と見送った後、さっきの良い雰囲気はからかわれただけなんだろうかと考えながら一人で帰路に着いたのだった。

一人寂しく家路を歩く事になった一刀は、手持ち無沙汰も手伝って普段寄らないコンビニへ足を向けた。

何か飲み物と、暖かい物でも買おうかなぁと思いながら雑誌の所で立ち止まっていると、不意に視線が黒く染まった。

 

「うぇ?!」「だ~れだ?」

 

鼻を擽る甘い、良い匂い。それに、聞き慣れた―――と言っては言いすぎだが、それでも誰だか判別出来る程度には聞いた人の声。

そして、遠慮する事無く背中に当てられたたゆんたゆんな膨らみ。

 

「・・・・・・まさか、雪蓮先輩っすか?」

「うふふ♪悪い子一人捕まえちゃった~♪」

 

予想に違わず、スッと退けられた掌の代わりに顔に映ったのは雪蓮だった。

彼女の私服姿を見た事はあまり無いが、それでも共に出かける時やこの前家に訪れた時とは違う、大人しめの服装。

下もスカートではなくズボンだったが、似合わないという事は断じてない。

 

「こ~んな遅くに・・・って、そっか、バイトよね?」

「ええ、帰り道についフラッと。先輩は?」

「シャオのお菓子、蓮華が食べちゃってね。 夜に食べるのはどうかと思うけど、ちょっと可哀想だったから」

 

無論、食べたのは蓮華ではなく雪蓮自身であるし、菓子はシャオのではなく蓮華の物。

しかも菓子の共に母・祭の酒をかっぱらって飲んでいたオマケつきだ。

しかしそんな事実があるとは知らず、一刀は意外に蓮華って食い意地張ってんなぁとか思った。哀れ蓮華。

 

「でも、この辺りって一刀くんの帰り道じゃないんじゃない? それとも、この辺りでバイト始めたの?」

「いえいえ、今日は華琳さんと一緒に帰ってたんです。まぁ毎週末はいつもなんですけど」

「あ、じゃあお邪魔だった、かな?」

 

伺う様に向けられる雪蓮の視線に、何かくすぐったい物を感じながらも置いてかれました。とありのままを語る一刀。

 

「ふ~ん、じゃあ・・・一刀くんは今空いてる?」

「まぁ、明日休みですし。あ、もう大分遅い時間ですし、家まで送りますよ」

「あー・・・うん、えっと、それは嬉しいし有り難いんだけど・・・」

「?」

 

急に視線をずらし、頬を赤く染めながらもチラチラと一刀とコンビニに備え付けの時計を見比べて口篭る雪蓮。

はっきり物を言う先輩にしては珍しい。と思いながらも、催促はせずに先を待つ一刀。

「あ・・・あの、ね? えーと・・・その・・・」

「はい」

「あの、すいません・・・」

 

二人を遮る様に、遠慮がちに声を掛ける赤毛のポニーなスーツの女性。

そういや雑誌の前だった。と一刀は雪蓮の手を引いてすいません。と謝ると誰も人が居ないお菓子コーナーの前に移動する。

 

「あ、あの・・・その・・・えっと・・・」

(あーお菓子食いたい、甘い物食べたい。プリン・・・エクレア・・・)

「・・・聞いてる?」

「・・・すんません、ちょっとプリンの誘惑に・・・」

「! あー、このプリンおいしそ~、でも、こっちも捨てがたいかなぁ・・・一刀くんどっちが好み?」

「なめらかな方で。 んで、さっき何か言いたそうでしたけど、なんです?」

(ええぃ、覚悟決めろ私!)「こ、このプリン食べたかったら、私を家に招きなさい!!・・・とか、ダメかなぁ?」

「へ? いや、そりゃ構いませんけど・・・・・・シャオちゃんのお菓子は良いんですか?」

「シャオの? あ、ああ。いいのよ、美容の為には我慢もしなきゃね」

「でも・・・もう遅いですよ? 今からウチ来たら、帰るの大分遅くなっちゃうと思いますけど・・・」

「・・・華琳は良くて、私はダメ?」

 

その言葉の意味を一刀は考えた。たぶん、というか絶対に華琳が頻繁にDVD片手に泊まりに来る事を知っている。

そして、美女が警戒心ゼロで泊まるという事に非常に苦悩している事に、全く気付いていない。

 

(何で俺は男扱いされないんだろう、なんかそういうオーラ出てんのかな・・・・・・泣いていいかな?)

「あ・・・迷惑、だった?」

「いや、迷惑って事は無いですけど・・・・・・あのですね・・・・」

 

キョロキョロと周りを見渡し、先程自分達以外で唯一の客だったポニーのお姉さんもいなくなっている事を確認した一刀。

今此処に居るのは自分達と、美女にお泊りを懇願されている自分に嫉妬の眼差しを向けるバイトのお兄さんだけ。

 

「あの・・・前も言いましたけど、一応俺も男・・・なんですけど・・・」

「―――そんなの」

 

分かってる。そう続けたかった雪蓮の言葉は、自身のケータイから響くメロディに遮られた。

 

「あ・・・どうぞ、俺先に買い物して外います」

「あ、ご、ごめんね?」

 

雪蓮は慌てて電話を取り出すと、相手を見て瞬間的に己の内に眠る黒い感情を解き放った。

 

着信:華琳(バカ)

『やっほ~ん、一刀くんに皆の分の水着選ぶように~って言っといたよ~ん♪ねぇ、偉い?思わずケーキ奢りたくなっちゃった?』

「   」

 

そんな事を教えるために、この小娘はさっきの桃色空間を破壊してくれたのか。

よろしい、ならば戦争だ。とりあえずグーパンでぶっとばす。

 

「ねぇ華琳―――空気読め」

「ちょ!なによそれ~!せっかk」

 

ブチッと通話を切ると、そのまま電源をOFFってズボンのポケットに入れた雪蓮。

そのまま、乱雑にお菓子の袋を適当に引っ掴むと座った眼でカウンターに置いて会計を済ませる。

 

(はぁ・・・なんでこうなんのかしら・・・)「・・・ごめんね、おまたせ」

「いえいえ。あ、持ちますよ」

 

返事を待たず、ビニール袋を片手で持つと―――流れる様に、空いた手をもう片方の手で埋める一刀。

 

(・・・・・・はい?)

「んじゃ、行きましょっか」

「う、うん・・・」

 

今まで何度か(二人きりでは無いにせよ)買い物をした事はあるし、荷物をこうやって持ってもらった事もある。

しかし此処までアグレッシブにスキンシップを取られた事は、あのお泊りの一件以来無かった。

 

(・・・突っ込まない方が吉、よね?)

「あー、華琳さんから聞いたんですけど・・・雪蓮先輩も、プール来てくれるんです、よね?」

「う、うん。  お邪魔、だった?」

「華琳さんの目の前でハーレムキタコレと喜んだ漢ですよ俺は?」

 

そう言って茶化すように微笑む一刀に、雪蓮もスケベ。と微笑んで答える。

 

「でー、なんですけど・・・・・・あの、水着とか、選ばせて貰えたらなぁなんて・・・」

「それ、華琳に頼まれたりした?」

 

その言葉にぐっと詰まってしまう一刀。不味い事聞いたかな。と悔やみはしたが、そこの所をハッキリさせたいのが乙女心。

 

「まぁ・・・そうなんですけど・・・一番の理由としては・・・」

「しては?」

「先輩の水着姿は一番乗りしたいかなぁ。なんて」

ビニール袋を持った手で、鼻を掻きながら照れて呟くように言った一刀。

もう片方の手は繋いだままなので、立ち止まってしまった雪蓮を支えに前につんのめってしまう。

 

「先輩? 蹲ってどうかしました?」

「なんでも・・・ないのよ・・・」

 

雪蓮は必死に垂れた鼻血と、押さえ付けていなければ意志を振り払って襲い掛かってしまいそうな唇を抑えるのに全身全霊を込めている。

 

「いや、どう見ても危なそうなんですけど・・・体調でも悪いんですか?」

「平気・・・ホント平気・・・でも、ちょっとだけ休ませて・・・」

 

荒ぶる気を押さえ込まなければ、明日の三面記事に『痴女現る!!』の見出しと共に自分の顔がデカデカと掲載されてしまう。

 

(落ち着け私・・・此処で襲ったって何の得にもなりゃしないのよ・・・)

「えっと・・・この辺り良くわかんねぇな・・・座れるトコ探してきます」

「ごめん・・・傍にいて・・・」(休憩専門のホテルが角曲がった先に・・・)

 

一刀が離れてしまえば、その首筋に吸い付いて美味しく戴いてしまう。

当たり前っちゃ当たり前だが、雪蓮がそんな葛藤に苛まれているなど一刀は夢にも思わない。

 

「解りました・・・ずっと此処にいますから」

 

そう言って、握った手に込める力を強めた一刀。その力の心地よさに、雪蓮を抑えつけていた何かがブチンと切れた。

 

(「戴きます」と心の中で思ったならッ! その時スデに行動は終わっているんだッ!)

「雪蓮ちゃん、大丈夫ですか?」

「・・・・・・月、さん?」

「はい。 どうしたんですか雪蓮ちゃん、そんなにハアハア言っちゃって、苦しいの?」

 

直ぐに車呼びますね?と言ってケータイで何処かに電話している月の手首を、雪蓮は折れろと念を込めて握り潰す。

 

(アンタ・・・マジ空気読んで、いやいいわ。もうここでケリつけようじゃない)「月・・・どうして此処に?」

(残念無念また来週~♪  テメーだけに美味しい思いさせねーですよ?)「華琳ちゃんが、急に電話が切れたって・・・」

(華琳シバく)「あの子ったら・・・」

(雪蓮の敗因はたった一つ・・・たった一つのシンプルな理由ですよ・・・テメーは私を舐めすぎた)「大事になる前で、本当に良かったです」

 

月はそう、一刀に向かって言った。そしてそれに一刀も胸を撫で下ろしながら頷いたが、言葉に込められた意味まで理解していない。

 

「あの、雪蓮先輩ってまさか「大丈夫だったら。ちょっと立ち眩みがきちゃっただけ」・・・なら、いいんですけど」

「念のため、送って行きますね?」

「あ、宜しくお願いします。俺はちょっと寄る所有るんで」

 

一刀のセリフは真っ赤な嘘だったが、ソコに突っ込むのは野暮ってモノだろうと雪蓮も月も何も言わず、三人で暫し車を待った。

「なんだ、そう肩に力を入れなくてもいいだろう」

「いや無理です。マジで」

 

雪蓮と月が月の家の車(リンカーン)に乗り込んだのを見送って、もう今日は遊ぼうと夜の街へ向かった一刀。

于吉でも誘ってカラオケでも行くかなぁとケータイを取り出していた一刀は、車内でソレを見かけた冥琳に見事キャッチされてしまった。

そして、リムジン車内でガチガチになっているのだが、何度嗜めても治らないそれを見て冥琳は溜息を溢した。

 

「寛げとまでは言わんが、せめて挙動不審なのはやめてくれんか?見ていて笑えてしまう」

「すげー・・・冷蔵庫完備だよ・・・映画の中だけじゃなかったのか・・・」

「きーいーてーるーかー」

 

興味深そうに、車内に設置された小さめの冷蔵庫をおそるおそる開けては閉めてを繰り返す一刀の首根っこを引っ掴んで、胸に押し付けて窒息させる冥琳。

 

「なんだ、苦しいか?」

「あ・・・たりまえ・・・」

「懲りたら、私の相手に専念する事だ」

 

そう言って冥琳は一刀を開放すると、冷蔵庫からドンペリを取り出した。

 

「飲むか?」

「いやいいっす。なんか悪評付きまとってるんで」

「なんだ見かけによらず酒乱か? 面白そうだ、その悪評とやらを教えろ」

「姉ちゃん情報ですけど。潰れる前に飲ませすぎると見境が無くなるらしいです」

「・・・・・・いまいち解らんが、碌な事になりそうにないな。面白半分に飲ませるのは止めておこう」

「懸命な判断かと」

「なら、酌ぐらいはしてくれ」

 

つい。と出された透き通ったグラスに、割ったら弁償代どれだけだろうなぁとビビりながら中身を注ぐ一刀。

 

「ふーむ。やはり一人で飲んでも詰まらんなぁ」

「そんなもんすかね。一番上のねーちゃんも似たような事言ってましたけど」

「まぁ仕事の付き合いなら仕方ないと割り切るがな。好色そうな爺の視線を胸に受けながら楽しく飲める程人間は出来ていないさ」

「・・・男一同を代表して、すんません」

「ハッハッハッ!責めちゃいないさ、仕方ない事だ。見向きもされんのも辛いだろうしなぁ」

「まぁ、冥琳先輩も明命も美人ですしね」

「おや、口説かれたか?」

「・・・とことん、俺はそういう星の下に産まれてるんですね」

 

はぁ。とがっくり肩を落としてしまった一刀を、不思議そうな顔で見つめる冥琳。

冥琳としては『誘ったのか?ならOKだ』と答えたつもりなのだが、目の前の少年は何をどう勘違いしたのやら。

 

「あの、所で随分走ってますけど、俺の家ってこんな遠くないんですけど・・・」

「お前の家?なんでそこに車を走らせる必要があるんだ?」

「・・・歩いて帰りまーす」

「はぁ? お前さっきから何を言っているんだ?」

「え? あ、あの。先輩、俺を送ってくれてるんですよね・・・?」

「自宅まで運んでいるつもりだが? 明日はアルバイトもないんだろ?」

 

明命に良い土産が出来たと上機嫌な冥琳と、疑問符をこれでもかと浮かべた一刀を乗せて、リムジンは超高級住宅の門を潜る。

「お姉ちゃん!お帰りなさい!」

「おーうただいま妹よ! 今日のお土産は一味違うぞ~♪」

 

少し待っていろ。と表に取り残された一刀を置いて、冥琳は明命と抱擁を交わす。

 

「あ、あの・・・いつもいつもお土産を持って帰ってくれるのはとても嬉しいのです・・・

で、でも今日の私はきっぱりと言います!もうお土産とかで気を使ってくれなくてもいいのです!」

「なんだそうか。今日のお土産は明命はいらないのか」

 

そう言う冥琳は何時もと様子が違う。寂しそうに、此方の罪悪感を刺激する口調でも表情でもなかった。

心を抉るようなボヤきもなかったが、明命は漸く姉もわかってくれたのだと安心した。

 

「うーん、しかし折角持ってきたお土産が勿体無いな。明命、ならお土産は私が戴いても構わないな?」

「は、はい!じゃなくてうん! 私はお姉ちゃんの気持ちだk「おーい一刀ー。もう入っていいぞ~」・・・へ?」

「あー・・・お邪魔しま~す」

「一刀、聞いての通りだ。とりあえずはディナーに付き合え。腹は減っているな?」

「わーい・・・でぃなーだー・・・」

 

冥琳は明命が今日も『お土産』を拒否する事ぐらい予測済みだった。

車内で『眼一杯喜べ』と厳命されていたので、一刀としても精一杯の大根演技で喜びを表現してみた。

そんな大根演技に気が付かないほど、明命はパニックに陥っていた。

 

「え?・・・え?か、かかかかか一刀先輩なのですっ?!な、なんでどうして?!」

「うん・・・なんでだろね?あとこんばんわ。パジャマ可愛いね・・・」

「そうだろう?だが妹のパジャマの品評は後にして、先に夕食にしようじゃないか」

 

冥琳は諦めた一刀の腕を抱き締める様に抱えると、夫に連れ添う貴婦人の様にパニックな明命を横切り歩みを進める。

明命は驚く頭で、それでも姉の正面に回ってワタワタと両手を動かして存在をアピールした。

 

「お姉ちゃん!私も一緒がいいのです!」

「おやぁ?さっき明命は『もうお土産はいらないのです!』ときっぱり言ったんじゃなかったかな?」

「あう・・・」

「先輩、妹いじめすぎです・・・」

「此処からが可愛いのに・・・まぁいい。ほら明命、一刀の片手が開いている。周家の令嬢として、しっかりとエスコートされるように」

「はい!」「やるのは俺なんすね・・・?」

「なに、そう難しい事じゃないさ。 お前は胸を張って歩けばいいだけさ」

 

ほら、こっちだ。と冥琳に腕を引かれ、明命にニコニコを手を繋がれ、明日が休みで良かったと心底思う一刀だった。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

(私にどうしろってんですか・・・)

 

非常に緊迫した車内の空気。風は名の通り風になってしまいたいと心から願った。

 

「あ、あぁ~。私もこの御菓子好きなんですよねぇ~」

「・・・・・・」

「お、お嬢様も好きでしたよね?ね? 今だしま「風、お口チャックにしてほしい?」風黙ります、さながら貝の如く」

 

私も貝になりたい。さながら海底に沈むアコヤ貝の如く。

 

「ねぇ月」「なんですかー?」

「アンタ、随分とタイミング良かった気がするんだけど」

「愛の力ですかねぇ~。ラスボスすら狂わせるんです、追跡ぐらいは出来ても可笑しくないですよ~?」

(そりゃ無茶な理論ってもんですよお嬢様・・・)

「アンタまさか、発信機とか付けてるんじゃないでしょうね?」「まさか?」

(そうですよね、発信機は付けてないですよね。発信機は)

「―――ねぇ、アンタ、華琳から何て電話が来たって?」

「えーっと、何でしたっけ?」

(私に振るんですか、嫌なヴィジョンしか見えません)「ええっと、雪蓮さんが電話切った事に対する愚痴と、あと水着選びがどうのと」

「ああ、そうでしたね。 それがなんですか?」

 

雪蓮は顎に手を置いて、視線を固定して必死に可能性を探る。

 

「冥琳にも、話は行ってるのかしら?」「それは多分行ってるんじゃ? そもそも冥琳が―――風」

「は、はい!」「電話」

 

どうぞ。と月のケータイを操作し、冥琳への通話操作を終えてから手渡す。

月はケータイを耳に当てると微動だにせず、雪蓮はそんな月を見つめながら唇を掻く。

そのまま数十秒が経過して―――月が静かにケータイを畳んだ。

 

「どうやら、忙しいみたいですね?」「・・・・・・仕事、かしらね?」

 

両者の視線を真っ直ぐに受けた風は涙目になりながら自分のケータイを操作して同僚と連絡を取る。

慌しく口を動かし―――どうやら冥琳は今自宅で妹と、よりにもよって一刀と団欒の一時を過ごしているらしいとの結論に達した。

(神様、風は何か貴方様のご機嫌を損ねるような行いをしていたのでしょうか?)「えーっと・・・ですね?」

「風?」「で?」

「あ・・・あの・・・」

 

風が口篭っているウチに、車は雪蓮の自宅に漸く到着してくれた。

 

「あ、あぁ~。到着しちゃいましたか?!」

「風」「早く」

「あ、あのですね?今回冥琳さんを刺激するのはあまり得策じゃない気がすると私は愚考したのですが・・・」

「風?」「早く!」

「ほ、ホント止めときません?一刀さんならちょっとやそっとの状況に流されたりなんかは―――」

 

その時、折りたたまれた月のケータイが着信を告げた。

風は神様に心の中で土下座して感謝を告げ、月はイラつきを隠そうとせずに電話に出た。

 

「はい? 月ですが」

『あーもーゆ~え~!皆酷いんだよ~!』

「華琳ちゃん?」

『そうだよぅ・・・皆用件だけ聞いたら直ぐに切っちゃうんだもん・・・こんな事なら一刀くんに何にも言わなきゃよかった~!』

「そういや、元凶はコイツだったわね」

『あ、そだ。今日ね~帰りにね~一刀くんと良い雰囲気になっちゃって~♪最近一刀くん私の事『華琳』って呼んでくれるんだよ~♪』

 

月の米神に青筋が浮かび、雪蓮が指をボキボキと鳴らし、風は華琳の根性と度胸に感動すら覚えた。

華琳逃げて!!命懸けで走って!!

あとがき。もしくは言い訳。

 

前回のうっぷんを晴らしたかったので、一番はっちゃけてるセレブ組でリハビリしてみました。

セレブ組は華琳様がぶっちぎってますので、今回は後に出番が控えている月以外のメンバーにスポットライトを当ててみました。

何気に久々の明命登場と、冥琳と一刀の初?絡みのような気がします。

水着選びイベントの声があったのですが、そこに至るまでの経緯で一つ書けてしまえる辺りがセレブ組の凄さです。

 

最近段々とパロネタが少なくなってきたなぁと感じるのですが、各崩壊キャラの色が出せる様になってきたのだと前向きに考える事にします。

パロネタが楽しみで見てくださっている方には非常に申し訳ないのですが。

 

次は合コン・・・ではなく、多分過去の姉’s(桃香多め)の話になると思います。合コンは暫く先になるかと。まぁ気分次第ですが。

これ書いてる最中もネタだけは浮かんできたので、やっぱり姉’sは好きなんだなぁと再認識しました。

前回、今回と(自身に出来る限りでの)早目の更新が出来ました。これも皆様の暖かいコメントに力を戴けたからだと思っています。

 

では、次ページからは恒例のお礼コメントになります。毎度毎度此処まで読んでくださってる皆様、本当に有難うございます。

追伸。自由人様とtruth様に誤字の指摘をしていただけましたので、コレの投稿に合わせて ばんがい の修正を行ってます。

司 葵様  言ってはいけない事を・・・知らせてはいけない事を・・・

      熟女枠は大変に狡猾なので、シェアでも良いかと割り切ります。そこからの駆け引きを楽しみますので。

 

叢 剣様   鈍感は武器。ニブチンは罪。

      番外とか銘打っちゃったので、お気に入りキャラエンドとかどうだろなーと妄想してます。妄想だけで終わりそうですが。

 

イリヤ・エスナ様  ホントこの世は地獄だぜ!! フゥハハハーハァー!

          年上好きな私にとって、祭と桔梗のデザインは神設定だったりします。

 

tanpopo様  目指してみました。そう感じていただけたら嬉しいです。

 

ちきゅさん様  ☆-(ノ゚Д゚)八(゚Д゚ )ノイエーイ

        きっと、肴の代わりに一刀のはd(ry

 

風籟様   某会社様の某恋愛?SLGをやった際に「女は魔性ってホントだなぁ・・・」とか思ったので。

      水面下での争いとかさり気無い牽制とか、私的にツボな所なので盛り込んでみました。

 

自由人様  左慈と于吉のポジションは顔グラ見て決めたという悲しい逸話があります。

      最初は桔梗と紫苑は友人の設定だったんですが、原作でもそうなので見送りました。あと、誤字指摘有難う御座います。

 

zero様   恋ねーちゃんは喜びますよ、家に帰って来るから。稟は穏をボコボコにしたあと喜びます。穏哀れ。

      予想の通り、蒲公英と翠は知り合い?です。一刀は当然知りませんが。

 

kurei様  シリアスな裏設定がテンコ盛りななにかシリーズですが、どうせやるなら笑えるモノにしたかったので。

      終盤の口論シーンは今までで一番気合入ったかもしれません。他のはノリで書けるので。

 

よーぜふ様 女の戦場とはかく在るべきだと思ってます、異論は認めますが。

      昼ドラはあまり見ませんが、設定としては好きですw

 

truth様  一部の女性陣は、お願いを『ゴリ押しで叶えられる願い』と勘違いしております。

      及川くんの事はあまりわからなかったのでこういう形になってしまいました。あといつも誤字の指摘有難う御座います。

 

Kito様   今までの流れの通り、人様の案に乗っかってばかりです。喜んでいただけたなら嬉しいです。

      華佗先生の彼女に関しては、出るまでのお楽しみという事で。

 

tyoromoko様  于吉は昔からの悪友という設定ですんで、その内出るかと思います。華佗は使いやすいのできっと出ます

        左慈は面白要因として引っ張りダコかもしれません、今回は出てませんが。

 

一刀様     この中にお医者様はいらっしゃいませんかぁ~~!!!

 

Ocean様    一刀くん、実は子供は苦手な設定です。私がそうなだけですが。

        紫苑が勝っているポイントは、「押せる」という点だと思っています。他の二人はアレでも遠慮しますので。

 

ルーデル様  イエー熟女イエー!

 

jackry様   ドロドロしたモノを書きたかった、いまははんせいしている。

 

Night様    他の女性陣は「憧れ」とか「ステータス」(言い方は悪いですが)的に一刀を欲している部分もあります、一応。

       酸いも甘いも噛み分けた歳の女性ならではの本気さを出せていたら嬉しいです。

 

asf様     たまにはいいかな。と思って書きましたが、あまりにも何時もとは違うのでばんがいにしてみました。

       本来修羅場とはこう在るべきだと思ってますが、やり過ぎた感は否めないですね。

 

ロンギヌス様  なんたって初恋の女の子ですよ<翠

        物心付いた頃から一緒だった、自然体になれる唯一無二の存在。という設定です。

 

mighty様    この世界の一刀は死因が限られてます。とてもうらやましい。

        ただ、持ち前の鈍感さで(自身を巡る)修羅場に関しては結構スルー出来ると思います。

 

カズト様    たたかう~きみ~のこ~とを~、たたかわないもの~が、わ~らう~だろ~

        ニヤニヤしながら書けました。危うく一と八が禁止になりそうな内容になる所でした。

 

感想、ありがとうございました。また近い内にお礼書ける事を目標にしたいと思います、偉そうですが。


 
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