No.119315

真・恋姫✝無双 仙人で御遣い 13話

虎子さん

拙い文章ですが、よろしくお願いします。

2010-01-18 21:07:20 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:4495   閲覧ユーザー数:3807

 

~山の麓~

 

二人が落ち着きを取り戻した頃。

朔夜が豪臣に声を掛ける。

「豪臣。あなたは、二万を相手にどう戦うつもりなのですか?」

朔夜の言葉に、思春も豪臣に眼を向ける。

「ん?二万って数字よりも、黄祖のおっさんを相手にする。それか、兵士数百人を相手にするって思う方が正解かな」

「黄祖?数百人?・・・ですか?」

思春が問う。

「ああ。流石に二万を相手にするのは、骨が折れる」

「・・・・・・ハァ。何となく分かりました」

朔夜は溜息を吐く。

「朔夜殿。どういうことだ?」

「つまり、この莫迦は黄祖と一騎打ちをする。それに乗って来なかった場合、兵を混乱させる、ということです」

(一騎打ちに関しては、ただ単に、戦ってみたいだけでしょうが)

思春の問いに答える朔夜。

「確かに、豪臣と対峙したときの眼・・・それに、先の劉表軍の戦いを見れば成功する・・・でしょうか?」

「たぶんな。あのおっさんは、山で俺と会ったとき戦いたかったはずだ。

 それを、孫堅軍を潰すために引き下がった。

 しかし、攻めて来たのは蔡瑁。筆頭の将という立場を利用して、おっさんから功を横取りしようとしたんだろうさ。

 おっさんは、鬱憤が溜まっているはず。だからこそ、時間稼ぎと分かっても俺との一騎打ちには乗ってくる」

豪臣の答えに、たしかに、と思春は頷く。

「それに、兵の質だ。蔡瑁との戦いで、俺が乱入しただろ。奴らは、百にも満たない死傷者で、混乱して撤退した。つまり、質が悪いってことだ。

 おっさんが討たれれば、指揮系統を失って混乱、撤退。一人の人間と虎に数百人殺られれば、恐怖で混乱し、撤退。

 簡単だろ?」

しかし、思春の中に、新たな疑問が生まれる。

「一騎打ちについては、納得しました。しかし、兵が相手の場合、私と豪臣様の二人だけで相手にするおつもりですか?」

尋ねられた豪臣は、苦笑して言う。

「あ~っとな。俺と朔夜で潰す。だから思春は、見ててくれ」

「・・・私では無く、朔夜殿と?」

「・・・・・・やはり、あたしを使うつもりだったのですね」

首を傾げる思春と、溜息を吐く朔夜。

豪臣は、そんな二人を見て、朔夜に言う。

「丁度良いから見せてやったら?」

「・・・・・・」

朔夜は、無言で肩を降りて、豪臣たちの前に出た。

 

朔夜は身体に氣を込め、ムクムクと巨大化して見せた。

「なっ!」

思春は息を呑む。

眼の前には、5mにもなる大虎。

巨大な体に大きな牙。そして、獲物を狙うかの如く鋭い眼(まなこ)。

「これが・・・朔夜殿?」

「ええ、あたしです」

思春は、自分が冷や汗を流していることに気がついた。

(強い・・・おそらくは、文台様と互角以上)

そんな思春を見て、豪臣が朔夜に声を掛ける。

「朔夜。思春にガンを飛ばすなよ。並みの人間なら泡吹いてるぞ」

「睨んでいたつもりはありません」

そう言って、豪臣を睨む。

「ただ、あなたの言うことを素直に聞く自分が、嫌になっただけです」

そう言って顔を背ける朔夜。

豪臣は、クク、と笑って朔夜の頬を撫でる。

「機嫌直せよ。お前を頼もしく思って言ってることなんだから」

そう言って撫で続けている内に、朔夜の刺々しい雰囲気は霧散していった。

「ほら、おいで」

豪臣は、朔夜の頭を自分の膝の上に導いた。

「・・・・・・」

朔夜は無言。

しかし、頬や顎を撫でられて、朔夜の醸し出す雰囲気が、ふわふわとした和やかなものになっていった。

 

雰囲気に気づいた思春は

(・・・朔夜殿が虎で良かった。・・・もし人だったら、勝てなかったかもしれない)

そう考えた後

(・・・・・・ん?私は、何を勝つつもりだったんだ?)

さらに考え込むのだった。

 

日が昇り始めたころ、遠くに砂塵が上がった。

「来ましたよ」

「・・・ああ。見えた」

豪臣が立ち上がり、その隣に思春も立つ。

豪臣は、思春を見て言う。

「分かっているとは思うが、手を出すなよ」

「・・・分かっています」

思春は、若干悔しそうに返す。

豪臣は、そんな思春に苦笑して頭に手を乗せる。

「そんな顔して拗ねるな。可愛い顔が台無しだぞ」

そう言われて、撫でられる思春。

思春は

「拗ねてなどいません!それに、かわ、可愛い・・・などと、思ってもいないことを言わないで頂きたい///!」

真っ赤になりながら反論する。

しかし、撫でる手を撥ね退けることはしない。

(ホント、可愛いやつだな)

豪臣は、しばらく撫で続けた。

 

「二日ぶりだな。紫堂」

黄祖軍は、豪臣たちの30m程手前で停止し、先頭に居た黄祖が下馬して前に出てくる。

「ああ。気分はどうよ?」

豪臣は、思春と大虎の朔夜を残し、前に出る。

「なかなかだ!君が目の前に居るのだからな!」

笑みを作る黄祖。しかし、眼は笑っていない。

「蔡瑁の屑に追撃の任を奪われ、我は憤死しそうになった。しかし!

 蔡瑁が敗戦した際、紫堂と名乗る客将が現れたと聞いたときは、興奮を覚えたぞ!」

「はっ!息子の死よりも俺か?」

「当然だ。あのような頭でっかちなど知ったことか。我は、君と戦いたかったのだからな」

そう言って、ブン、と戟で豪臣を指す。

「ここに残ったのならば、我と一戦交えるつもりだったのだろう?」

「ああ。おっさんと殺り合うため“だけ”に残った」

そう言って、新月を肩に担ぐ豪臣。

それを見た黄祖が、笑みを深めて口を開こうとしたとき

「将軍、お待ちください!」

一人の男が前に出る。

背が低く、ちょび髭を生やした瘦せ形の男だった。

「将軍、これは時間稼ぎですぞ。相手はたったの二人。相手にせず、孫堅の首を挙げましょう。劉表様もそれをお望みです!」

「黙れ、呂公!我が、いつ口を挿んで良いと言った!」

呂公と呼ばれた男は、黄祖の気迫にたじろいで数歩下がる。

「しかし・・・・・・」

それでも喰い下がろうとする呂公。

しかし

「くどい!それ以上、口を出すのであれば、我が叩っ斬ってやる!」

「・・・・・・申し訳ございません」

黄祖からの最後通告に頭を下げて隊列に戻る。

黄祖は

「紫堂、済まなかった。邪魔が入ってしまった」

申し訳無さそうに頭を下げる。

それに対し、豪臣は

「いいさ。で、殺るよな?」

笑顔で尋ねる。

「当然だ」

黄祖が笑って答える。

 

豪臣は大刀を、黄祖は大戟をそれぞれ構える。

 

そして、その場に剣戟の音が響き渡った。

 

【視点・豪臣】

 

ギイィィィン!

 

刃が合わさり、剣戟が止まる。

既に、戦い始めて十合。共に手傷は無い。

(くそ!このおっさん、やっぱ強い)

俺は、内心悪態を吐く。

俺は、相手の黄祖は、ガッチリとした見かけ通りのパワーで押してくるタイプ。仙氣によって身体能力を向上させている俺なら、いくらでも弾き返せる。

そう思っていた。俺は、おっさんを侮っていた。

(何で、このパワーであのスピードなんだよ!)

俺は、おっさんの戟を弾き返し、一旦間合いを開ける。

おっさんは、若干の汗が流ているものの、顔は笑ったままだ。

「どうした紫堂。君の膂力は、こんなものじゃなのだろう?人が天に舞う程の膂力だった。そう報告を受けている」

「ハッ!随分と誇張されたもんだな」

「出し惜しみするのは構わんが、簡単に死んでくれるなよ!」

おっさんが斬りかかってくる。

上段から斬り下ろし、下段から斬り上げ二連突き。即座にその場で回転して左からの横薙ぎ。

(くそっ!)

 

ギィン!

 

横薙ぎを避けきれず、新月で受け止める。

(この連撃はキツイ。戟って武器はここまで厄介な物か)

俺は、そのまま突っ込む。

新月の刃と戟の柄が、ガガガ、と擦れ合う音を鳴らす。

懐まで入り込み、戟を少しだけ弾き、その隙におっさんの腹に左から一撃入れようとした。

そのとき

「甘いわ!」

右から上段蹴りが来る。

俺は、咄嗟に右腕でガードしようとしたが、蹴りの衝撃はやって来なかった。

(!しまっ・・・)

気づいたときには

 

ガン! ミシッ!

 

左から頭に衝撃が走り

「ぐっ!」

俺は、吹っ飛んだ。

おっさんは、左手で横薙ぎをした後の状態で止まり、追撃しては来ない。

(蹴りはフェイクで、本命は薙ぎかよ)

俺は、側頭部を押さえながら立ち上がる。ドロっとした血の感触。

(・・・殴られたのが、柄の部分じゃ無かったら死んでたな)

「その年で良く動くな、おっさん!」

久々に血を流したからか、興奮気味な声になる。

「フッ!それは、こっちの台詞よ!あの状態で、善くも一撃入れられたものだ!」

おっさんは、右の脇腹に手をやる。

「くくく、これは、骨が逝ってしまったな」

俺は、薙ぎが来たとき、吹っ飛ばされる力も利用して、蹴りを入れていた。

さっき、おっさんが止まっていたのは、おそらく息が出来なかったからだろう。

(・・・使いたくはなかったけど、こっちが死ぬのはゴメンだ)

そう思い、俺は言う。

「おっさん!あんたが強いのは、よ~く分かった。だから・・・」

新月を正眼に構える。

「本気で、殺ってやるよ」

黄祖は

「くくくくく・・・!やっとか!ならば、存分に我を楽しませい!」

そう言って斬りかかって来た。

 

『我が心(シン)を以て、我が身、力を得る――怪(カイ)』

 

【視点・終】

 

「――怪」

豪臣は呟く。

豪臣は、自分の上半身が変わることを感じながら、右腕一本で新月を真っ直ぐ真上に持っていく。

大戟を振り上げる黄祖。

「ぬおおぉぉぉぉぉ!」

気合と共に振り下ろされる必殺の大戟。

(悪いな、おっさん・・・もっと技と技で戦いたかったよ)

心の中で謝りながら、豪臣は、新月を振り下ろした。

「セアアァァ!!」

 

ガ!ブシュ!ズウウゥゥゥン!・・・カラン

 

その一撃で勝敗が決まった。

 

 

「ば、莫迦な・・・」

眼を見開く黄祖。

黄祖は、目の前に転がる自分の武器を見る。

正確には、先端の無い、柄だけになった大戟を握る右腕だ。

「ぐぅっ!」

黄祖は、無くなった二の腕を押さえながら膝をつく。

豪臣は、地面に半分ほど埋まってしまった新月を引き抜いて担ぐ。

「おっさん。俺の勝ちだ」

「・・・・・・殺れ」

豪臣の勝利宣言に、黄祖が眼を閉じ、そう呟く。

「おっさん。軍を退け。そうすれば、命までは取らない」

黄祖はゆっくりと顔を上げる。

「意味の、無い、事を言う。・・・君も、分かっている・・・はずだ。ぐ!

 もう、我が、軍、には・・・追撃に、向かえるだけの、士気が無い」

黄祖は苦しそうに言い、顔だけで自軍の兵を見る。

兵たちは、豪臣の見せた異様なまでの怪力に、完全に怖気づいていた。

「確かに。だけど、おっさんが助かる」

豪臣がそう言うと、黄祖は、信じられない、と見詰めてくる。

「敵に、情けを、掛けるつもり、か?」

「いや。出来るなら、無駄に命を刈り取ることはしたくない。

 単なる俺の我が儘だ。」

豪臣が笑顔を作る。

黄祖は汗まみれの顔で、ニヤっと唇を釣り上げる。

「・・・我は、執念・・・深いぞ?」

「へぇ。左腕一本で俺に挑むのか?」

豪臣も唇を釣り上げる。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

両者共に眼を見据える。

「・・・行け。ただし、次は我が勝つ!それまで・・・負ける、ことは、許さん!」

苦しみながらも、力強く言い放つ黄祖。

「了解。俺は、次、おっさんと戦うまで負けない様にする」

豪臣はそう返し、朔夜と思春の下へ歩いて行く。

豪臣と思春が、朔夜の背に乗り走り出そうとする。

そんな背中に声が掛る。

「次は、我が、絶対に・・・勝つ!」

「・・・いいや。次も俺が勝つ!」

豪臣は振り向かずに答え、朔夜を走らせた。

 

豪臣が去っていくと、呂公が衛生兵を連れて走り寄ってくる。

黄祖は、虚ろになってきた意識の中

「紫堂・・・我が、君を・・・殺して、やろ、う・・・」

そう、小さくなっていく豪臣に向かって呟き

 

ドサ!

 

意識を失った。

 

あとがき

 

どうも、虎子です。

前回のあとがきで短いかも、と言っておきながらいつも通りの四千字くらい書いてしまった作者です。

 

さて、作品の話ですが・・・

やっと、孫堅軍VS劉表軍が終わりました。長かった・・・

季衣・流琉編では、貂蝉の登場まで入れて6回分でしたが、孫堅軍では、既に7回目の投稿。あと、2,3話くらい書かないと、次に行けないっぽいですね。

何と計画性の無い私・・・反省します。

次に、作中で登場した仙術『――怪』。この術名の前に呟いていたのが、術を発動させる為のキーである術詠唱です。気になった方は、次のページに(登場した術だけ)載せていますのでご覧下さい。

後、「豪臣。何で素手で戦わないんだよ!」という苦情は受け付けませんので、悪しからず。

 

次回投稿は、早ければ21日。遅くとも22日終了までにと予定しています。

 

作品への要望・指摘・質問と共に、誤字脱字等ありましたら、どんどんコメント下さい。

 

最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。

本当にありがとうございました。

 

ではでは、虎子でした。

 

仙術 : 豪臣は、常に一定の仙氣を身体に巡らせているので、身体能力は常人よりも高い。豪臣にとっての仙術は、その状態から+αとして付与させるためのものである。

(補足Ⅰ)術名を唱えれば、術詠唱を唱えなくても、ある程度の力を引き出せる。

(補足Ⅱ)術詠唱は、個人個人で違う。つまり、この詠唱は豪臣のオリジナル。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『我が心(しん)を以て、我、治(ち)を為(な)す――癒(ゆ)』

 仙氣を患部に当てて治療を施す。外部の傷は治し易く、内部の傷は治し難い。飽く迄も傷を治す術で、病気を治すものでは無い。〈治癒〉

(注)自分の傷は治せない。

(例)切り傷○・骨折○・風邪×・栄養失調×

 

『我が心を以て、我が身、鋼と為る――剛(ごう)』

 仙氣を体に纏い一定の物理攻撃を防ぐ。〈金剛〉

 

『我が心を以て、反を為す――反(はん)』

 身体から仙氣を放出し、その瞬間だけ跳ね返す。〈反発〉

(例)高くジャンプする・落下の衝撃を反発し、衝撃無しで着地。

 

『我が心を以て、我が身、力を得る――怪(かい)』

 仙氣により、膂力をより強化させる術。力重視の術〈怪力〉

 


 
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