No.113460

テラス・コード 第六話

早村友裕さん

 ――生きなさい――

 それは、少女に残された唯一の言葉だった。
 太陽を忘れた街で一人生きる少女が、自らに刻まれたコードを知る。

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2009-12-21 12:36:01 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:688   閲覧ユーザー数:676

第六話 イザナミ

 

 

 

 

 

 渋るツヌミを促して、全員でナミのいる第5層研究室へと足を踏み入れた。

 

「流石ですね、私でもここにはこれほど簡単に出入りできませんよ。『八咫烏(ヤタガラス)』の名は伊達ではありませんね」

 

 カノの言葉に、ツヌミは返事をしなかった。

 苦しそうな表情から、彼の葛藤が読み取れる。

 

「もう覚悟決めろ、ツヌミ」

 

 ミコトがぽん、とツヌミの背を押す。

 

「お前は俺と同じだ。反逆の切っ掛けを探してたんだろ?」

 

 ツヌミは答えない。

 

「俺はテラスと再会して、タカマハラを抜けようと決めた。テラスをナミの手に落とす事を絶対にしたくなかったからだ」

 

 ミコトの言葉にどきりとした。

 あの時、二度目に会った時の言葉を思い出したから。

 

 『俺と一緒に来い、テラス』

 

 金色の瞳は力強さに満ちていた。絶対的な意志と信念――それは、あたしが躊躇して手に入れ損ねていたものだった。

 タカマハラを捨てればどういう目に遭うか、分かっていたのだろう。それでも、あたしに手を差し伸べてくれた。

 

「ツヌミ、お前も来い。コードの転写なんて、ナミじゃなくたってお前が勉強すればいい事だろう? お前は賢いんだからさ」

 

 あの時、金の瞳に心動いた理由が今なら分かる。

 にこりと笑ったミコトに視線を奪われる。

 

「テラスとヨミと俺がいて、他に何がいる? この上ない切り札だろう」

 

 この人の声は何でこんなにも安心するんだろうか。

 第一、何の根拠もないのにどうしてこんなに自信満々なの?

 

「どうして僕を勝手に勘定に入れるかな」

 

「ここまで来て何言ってんだ。一時休戦だ、休戦」

 

 思わず笑みがこぼれた。

 

「……相変わらずですね、ミコト。貴方の考えなしは」

 

 ツヌミもはあ、と大きなため息をつく。

 

「でも、貴方のそんなところは……嫌いじゃありませんよ」

 

 唇の端で微笑んだツヌミは、どこかすっきりとした顔をしていた。

 

「テラス、先にヒルメを渡しておきます」

 

「ヒルメ?」

 

「ええ。ミコトの剣トツカやヨミの槍ハクマユミと同じ、電子頭脳を付随した武器です。音声認識機能もあります。分子分解で収納できるようリストバンドに搭載しておきました」

 

 そう言って、ツヌミはリストバンドをあたしに渡した。

 

「ヒルメは『弓』です。これまでクロスボウを使っていたのならば、それほど苦労せず使えるはずです」

 

 受け取ったリストバンドを左手首に装着する。

 

「発動方法はこれまでと同じです。発動後は、ヒルメの指示に従ってください」

 

「ありがとう」

 

 これで武器も手に入れた。

 

「さ、行こうよ、テラス!」

 

 ぽん、と肩に手を置くヨミ。

 が、その手をピシリと叩く別の手。

 

「馴れ馴れしくテラスに触るな、ヨミ」

 

「その台詞、そのままそっくりお返しするよ、ミコト」

 

 この二人、仲がいいのか悪いのかよく分からない。

 そう思ってくすりと笑うと、同じように微笑んだツヌミと目が合った。

 

「貴方たちなら、何もかもをリセットできるかもしれませんね。ナミの事も、その上にいるもっと大きな力まで」

 

「その上……?」

 

 タカマハラを取り仕切るナミの上に、まだ何があるというのだろう?

 が、あたしはその瞬間にはっとした。

 

――ナギは私と同じ遺伝子配列を与えられた

 

 ナミの言葉が蘇る。

 『与えられた』

 じゃあ、与えたのは誰? ナミ以外の誰か。

 タカマハラのトップに遺伝子配列を与えるのはいったい誰――?

 

 

 

 

「ナミがいるのはこの先です」

 

 第5層、ナミの研究室の最奥。

 これまでの味気ないクリーム色の扉ではない。

 素材は分からないが、にび色の重厚な扉があたしたちを出迎えた。両側に開くタイプで、周囲に細かい装飾がなされている。中央には両扉に分かれるように、大きく三つ足の烏が刻印されている。

 そして、その紋様には見覚えがあった。

 ミコトの持つトツカ、それにヨミの持つハクマユミに刻印されたものと同じだ。

 

「少し離れていてください。この扉は、ナミ以外開ける事ができません」

 

「じゃあ、どうするの?」

 

「こじ開けます」

 

 うわあ、ツヌミの言葉とは思えない過激さだ。

 

「だったらどいてろ。俺がやる……トツカ!」

 

「へーぃよぉー」

 

 ミコトの手に黒柄の大剣が現れる。

 この厚くて丈夫そうな扉をトツカで切ろうって言うの?!

 が、ツヌミの冷たい声が飛ぶ。

 

「やめてください。そんな事をしたら開くものも開きません」

 

「何だとっ?!」

 

「最重要施設が保管されている場所とを隔てるのが、トツカで切れるような扉なはずがないでしょう。黙って見ていてください」

 

 ぐっと詰まったミコトにトツカのヤジが飛ぶ。

 

「怒られてやーんの。ばっかでー」

 

「うるさい、トツカ」

 

 あ、ミコトが拗ねた。

 その間にもツヌミは扉の隣にあるパネルを操作している。

 

「どうするの?」

 

「この扉を開けるには、ナミ本体の情報が必要です。指紋、光彩など、ありとあらゆるデータを本物と照らし合わせるのですが、おそらく、『照らし合わせるためのデータ』がここに入っているはずです。それを引き出してコピーし、認証させます」

 

「……?」

 

 よく分からなかったが、おそらくツヌミに任せておけば間違いはないだろう。

 

「カノ、手伝っていただいてもよろしいですか?」

 

「……機械はあんまり詳しくないんですけど」

 

「他よりマシです」

 

 そう言われて、ミコトとヨミが顔を見合わせる。

 憤慨した様子だが、図星を突かれたようで返す言葉もない。二人とも、そのまま不機嫌そうな顔で黙りこんだ。

 

「ひどいよね、ツヌミは。自分がちょっと頭いいからって、偉そうだし」

 

「しょーがないだろぉー。ミコトの頭足りなさっぷりはすげーぜぇー」

 

 そこへトツカがちゃちゃを入れる。とても人工頭脳とは思えない台詞だ。

 

「テラスちゃんに会って、なんて言ったと思うー? 『俺と一緒に来い』だぜぇ? 信じられるか、どこ行くんだっつーの。あん時まだタカマハラにいたっつーの」

 

「戻れ、トツカっ!」

 

 ミコトの慌てた声。

 が、もう遅かったようだ。

 

「へぇ~、ミコト、そんな事言ったわけ? あの時だよね、ナミが街に来たあの時」

 

「……トツカの奴、余計な事を」

 

 舌打ちしたミコトの後ろからヨミが腕を回して首を絞める。

 

「ど・こ・に行くつもりだったのかな、ミコト?」

 

「うる……さいっ!」

 

 うわあ、どうしよう、この仲良しっぷり。とても殺気を飛ばして剣と槍を突き付けあっていたようには思えない……

 

「信じらんないよ、テラスをどうする気だったのかな? あの時は怪我だって治ってなかったのに……路頭に迷わす気だったの?」

 

「苦し……やめ……」

 

「そのまま死ねばいい」

 

「ト……トツカっ!」

 

「へいへぃほー」

 

 ああ、そうでも、ないか。

 ミコトはトツカを召喚。一瞬にして形勢を逆転し、ヨミに切っ先を突き付けた。

 

「何するんだよ……ハクマユミ!」

 

 やっぱりこうなるんだね。

 はぁ、とため息をつくと、隣でカノも困ったように笑っていた。

 

「相性が悪いんですよ。いつもこうです……大丈夫、どちらも本気で殺す気はありませんから」

 

「……じゃ、ないと困るわよ」

 

 この狭い研究室の中を、資料を散乱させ、机や棚を蹴り飛ばしながら、縦横無尽に飛びまわる二人。

 

「ハクマユミは無口ね。トツカは喋り過ぎ」

 

「不思議ですよね、同じ電子頭脳でも性格が違うんです」

 

「ヒルメは、どんな子かな?」

 

 左手首のリストバンドをそっと押さえてみる。

 

「呼んでみてはどうですか? ツヌミは……まだかかりそうですし」

 

 カノはもうツヌミを手伝う気がないのだろうか。完全に傍観モードだ。

 大きく一つ、深呼吸。

 

「ヒルメ、出てきて」

 

 口にしながらリストバンドのボタンを操作する。その瞬間、リストバンドから光が漏れた。

 白塗りの美しい細弓――柔らかい手触りだが、材質は非常に丈夫なものだ。よく撓り、力強い矢が放てるだろう。これまでのように手首に固定するタイプではなく、自ら弦を引き、放つものだった。

 弓の部分には金で細かい装飾が為されており、そこにあるだけで凛と空気が引き締まるようだ。

 

「……ヒルメ?」

 

「最初に音声認識をオンにしてください」

 

「音声認識、オン」

 

 ピィン、と小さな音が漏れる。

 やがて、どこからか抑揚のない女性の声が聞こえてきた。

 

「システム起動・ヒルメ――音声認識、マスターネーム・アマテラス。レベル1解除、開放系第2段階までを許可」

 

 ヴゥン……と低い唸りがあって、一瞬ヒルメが震えた。

 

「梓弓ヒルメ、起動しました」

 

 柔らかな女性の声は、どこかウズメのそれに似ている。

 

「ヒルメ」

 

「はい、マスター」

 

「うわぁ、返事した!」

 

「私は人間の神経回路をモデリングした自動更新プログラムと音声認識機能を持つ電子頭脳です。ほぼ人と同じように会話する事も可能です」

 

 でもちょっと口調が固いかな?

 

「トツカやハクマユミもそうなんだよね。でも、話し方が全然違う」

 

「私は自動更新プログラムを持ちます。マスターが話しかければ話しかけるほど、『成長』するのです」

 

「つまり、あたしがどう話しかけるかによってヒルメの性格は変わっていくって言うこと?」

 

「そうです」

 

 じゃあ、いったいミコトはトツカにどう話していたんだろう。

 マスターに反抗的な剣を思い出して、思わずくすりと笑ってしまった。

 

「じゃあ、ヒルメ。あたしの事はマスターじゃなくて、『テラス』」

 

「テラス」

 

「それと、敬語はだめ」

 

 そう言うと、ヒルメは一瞬黙ってしまった……機械でも困ることなんてあるんだなあ。

 処理能力が追いつかなかったのだろうか、と思い始めた頃、ようやくヒルメがぽつりと言った。

 

「……善処します」

 

「いや、もうすでに失敗してるから」

 

 何であたし、機械に突っ込んでるの?

 目の前にはトツカとハクマユミを交戦させるミコトとヨミ。隣には、結局手を出せず退屈そうにあくびをするカノ。パネルを前に1人奮闘するツヌミ。

 あたしは、大きくため息をついた。

 

 

 

 

 そんな喧騒の中で待つことおよそ1時間、ようやくツヌミがパネルから顔をあげた。

 

「できました、今、扉が開きます」

 

 その言葉を聞いて、交戦していたミコトとヨミ、壁に寄り掛かってウトウトしていたカノが集まってきた。

 1時間戦い続けて、体力は大丈夫なの……?

 と、思ったが、ミコトもヨミも軽く息を乱し、うっすら汗をかいているものの、ひどく疲労した様子はない。どんな体力だ、この二人――なんて、口には出さないが。

 ツヌミは険しい表情で扉を見つめた。

 

「この先は私も入った事がありません。気を付けてください」

 

「望むところだ」

 

 ミコトがにやり、と笑う。

 

「どうしていつもそう自信満々なわけ?」

 

 あきれ顔のヨミ。

 あたしは、大きく深呼吸してから、その扉を見据えた。

 

「行きましょう」

 

 自分自身の意志で未来を掴むために。

 

 

 

 ツヌミが操作を終えた途端、黒塗りの重厚な扉はみしみしと音を立てながら両側に開いた。この扉だけは壁や天井と全く違う作りになっているらしい。最後に、ガゴン、と大きな音を立て、扉は完全に開かれた。

 その向こうに広がるのは、闇。まるでタカマハラの眼下に広がる街のように光ない世界が満ちていた。

 ひんやりと肌を刺す空気に、背筋がぞくりと震える。

 

「ここは第5層実験室ヤマトの最奥。普段はナミしか入る事を許されていません」

 

 ツヌミの声が闇に響いた。

 ミコトが手にしたトツカと、ヨミの手にあるハクマユミがぼんやりと発光する。

 すると、周囲の様子が徐々に見え始めた。

 扉から、最初に続くのは回廊。扉と同じ素材でできた光を通さない重厚な壁が闇の中へと続いていた。が、その奥には薄明かりが見える。

 あたしは先導し、ゆっくりと歩を進めた。

 右後方にミコトが、左後方にはヨミが続く。

 緊張で全身が震えだしそうになるのを必死で堪えた。

 ウズメを助けるの。そのために、ナミと対等な立場を得なければ。

 

「気負うなよ、テラス。一人で何でもやろうとするな」

 

 ぼそり、とミコトが呟く。

 その声で少しだけ、肩の力が抜けた。

 

「その台詞、誰に言ってるの? ミコト。あたしは異形(オズ)狩りよ。これまでだって死線を何度も一人で越えてきた」

 

「だからそれが気負うって言うんだ。ここにいるのはお前一人じゃないだろう?」

 

 不思議だ、緊張が解れていく。ミコトの声を聞くとすごく落ち着く。

 

「ミコト、煩いよ。テラスが嫌がってるじゃん」

 

 ヨミがミコトを軽く叩いた音がした――途端に背後から険呑とした空気が広がる。

 あたしは最後に一度だけ、大きくため息をついた。

 

 

 

 ゆっくりと薄明かりの中に足を踏み入れる。

 辺りの様子がぼんやりと浮かび上がり、あたしは息を呑んだ。

 周囲に林立しているのは、大きなガラスチューブ。床から天井までを貫くそれが所狭しと視界を埋めていた。時折ぼこりぼこりと泡を立てる液体がその中を満たしており、薄青のその液体自体が発光しているようだ。

 床はいつしかまたタカマハラ内部の壁と同じ、光を放つベージュ色の素材へと戻っていた。

 

「とうとうここへ来てしまったね」

 

 その場に響く声に、はっとする。

 青いチューブが林立するその先、微かに揺れるのは長いストレートの金髪。

 

「いったいどうやって、とは聞くまでもないだろう……ツヌミ、自分が何をしているのか分かっている?」

 

 ナミに問われ、ツヌミはぐっと口を噤んだ。

 

「それにカノ、君はここが何をする場所かそろそろ分かっているはずだよ」

 

「……そうですね」

 

 カノが静かに答える。

 が、もうあたしは驚かなかった。それどころか口からは諦めのため息が出た。

 

「いったいいくつあたしたちに隠し事をすれば気が済むの?」

 

「すみません」

 

 カノのこの台詞、いったい何度聞いただろう。

 

「本当に悪いと思ってたら、この場所がいったい何なのか説明して、カノ」

 

 強気にそう言うと、カノはすっと進み出た。

 チューブを幾らかかき分け、ナミの全身が見えるほどの場所まで進み出た。

 そこでもう一度あたしは、いや、カノを除くあたしたちは息を呑む事になる。

 

「推測でしかないのですが……おそらくここは生産場ですよ。カグヤとは違う意味で」

 

 そう言いながらカノが触れたチューブ。青白い光を放つ液体の中に、見覚えのある形をしたモノが浮いている。

 

「ここは、『人間』を創る場所です」

 

 そう、そのチューブのなかに浮いているのは紛れもなく人間。赤ん坊ほどの大きさだが、あの手足も頭も……間違いない、人の形をしている。腹の辺りから細長い管が伸びており、チューブの天井へと消えていた。

 

「何……? どういう事なの?」

 

「ここで創られるのは、たった一つの細胞から生み出された命。いえ、命と呼ぶかどうか定かではありませんが」

 

 カノの言葉を聞いても、ナミは全く表情を変えなかった。

 非の打ちどころなどない、ぞっとするほど整った顔立ち。背筋に冷たいものが流し込まれる感覚があたしを襲う。

 そんなナミに、カノはさらに淡々と語った。

 

「ここでは何人もの『貴方』が創りだされている。それは、この街が防御壁で囲まれてからずっと繰り返されてきたはずだ」

 

 何人もの『ナミ』が創りだされている?

 それはいったいどういう事?

 

「そうでしょう? ナミ、いいえ、始祖イザナミ――防御壁とタカマハラを作った張本人」

 

「――?!」

 

 声を失っているあたしたちを尻目に、ナミは表情もないまま手を打ち鳴らした。

 それは、賞賛の拍手。

 

「たったあれだけの情報からよく推理したものだ、カノ。君にはつくづく驚かされるよ」

 

「お褒めにお預かりまして、光栄です」

 

 軽く頭を下げたカノは眼鏡の奥の眼光も鋭くナミを睨んだ。

 あたしを含め、ミコトとヨミは完全に硬直していた。

 ツヌミは蒼白な顔で黙りこんでいる。最初から知っていたのか、それとも今の会話を理解したのかは分からないが。

 現タカマハラ総長であるナミが防御壁とタカマハラを作った? しかも、この場所で何度も生み出されている?

 いったいどういう意味?

 

「カノ、もう少し分かりやすく説明してくれる? どういう事なの? タカマハラを作ったって、ナミはいったい何者? この人間はいったい何? ここはいったい何をする場所なの?」

 

「『クローン』という言葉をご存知ですか?」

 

 クローン?

 ツヌミを除くあたしたち3人は首を傾げた。

 

「生命体はすべて、『遺伝子』と呼ばれる情報によって形を決められるという事は言いましたね」

 

「聞いたわ。その遺伝子は両親から半分ずつ受け継ぐもので、人それぞれ少しずつ違うんだという事も」

 

「そうです。ですがしかし、両親を持たず、一人の親から生み出される命があります。それが『クローン』です」

 

「一人の親から?」

 

 いったい、どうやって?

 父親か母親しかいないという事はあり得ない。それはあたしだってよく知っている。

 

「簡単に説明すると、人から細胞を一つだけ取り出し、その細胞を増殖させることによって、同じ情報を持つ、全く同じ人間を作り出す事が可能だという事ですよ」

 

 同じ情報を持つ、まったく同じ人間?

 形作る情報が同じ、つまりは体の形が完全に一致するという事だ――そんな事、あり得るの?

 

「例えば、双子はクローンの一種です。まったく同じ顔形になるでしょう? 発生初期に、母親の胎内で一つだったはずの細胞が自然に分裂してしまったからです」

 

「でも、双子は歳も同じだわ」

 

「ええ、でも、この場合のクローンは違います。一つ細胞を取り出すだけで同じ人間を作り出してしまう技術の元に作成されたものですから、いつ創り始めるかによって歳は変わります――ナミとナギが、いくらか違う年に生みだされたように」

 

 ナギ。

 その名に心臓が跳ね上がる。

 

「ナギも同じように……クローンだって言うの?」

 

「ええ。おそらく、ナミと同じ細胞から作られた複製体だったのでしょう」

 

 表情を変えずあたしたちを見つめるナミから視線を外す事無く、カノは最後まで淡々と答えた。が、その頬を汗が伝ったのは仕方がないだろう。

 

「防御壁とタカマハラを作った始祖は全部で4人、それぞれが特殊分野の専門家でした。ナミはそのうちの一人、イザナミと呼ばれた生物学者の何番目かのクローンです。おそらく貴方の育て親ナギはその一つ前に作られたクローン、タカマハラに生まれ、総長という職につきながら貴方を連れて街へと姿を消した異形狩りです」

 

 ああ、いったい何から驚いたらいいんだろう?

 ナギとナミが同じ人間だなんて……いや、正確には同じ人間というわけではないの?

 

 もう何が何だか分からない。

 後ろのミコトとヨミも眉を寄せて黙りこくっている。

 ナミは相変わらず無表情のまま言葉を紡いだ。

 

「よく調べたね、カノ。でも一つだけ間違っている。始祖は5人で、私とナギは兄弟だ。それこそ、天然のクローン……双子として最初は生を受けたのだよ。ナギと私は別人だ」

 

 わけが分からなくなってきた。誰と誰が同じ人間で誰が別の人間?

 もう何でもいい。遺伝子がどうとか、クローンがどうとか。

 大事なのはそこじゃない。

 いったいここまで何をしに来たのか、危うく忘れてしまうところだった。

 あたしは、大きく一つ深呼吸してからまっすぐにナミを見つめた。

 

「ナミ。そんな事はどうでもいいの。あなたがタカマハラを作った始祖だろうとナギと同じ遺伝子を持っていようとなかろうと、そんな事は関係ないのよ」

 

「何だい、アマテラス。それでは君はここに何をしに来たんだ?」

 

「……ウズメを、いえ、ウズメだけじゃない。カグヤにいる人すべてをすぐ防御壁の中に戻して」

 

 そう言うと、ナミはひょい、と肩を竦めた。

 

「どういう事だろう。私がそれを聞くとでも?」

 

「なぜ? だってここにはあたしもミコトもヨミも揃っているのよ? そうすれば防御壁を取り除く事が出来るんでしょう? 異形化を止められるんでしょう?」

 

 そう言うと、ナミは初めて笑った。

 普通、笑顔というのは人を和ませるはずなのに、ナミの笑顔は全く違っていた。むしろ、警鐘が頭の中で鳴り響く。

 

「……何が可笑しいの?」

 

 危険だ。この人は、危険。

 ナギと同じ顔でも全然違う――怖い。

 

「そりゃあね。君が本気でそんな事を思っていたとは」

 

「どういう事よ」

 

 思わず突っかかると、ナミはさも楽しそうに言った。

 

「君の中にあるのは貴重なコードだ。始祖イザナギの3代目が生み出した命を繋ぐコードだ。それを、街や下層に住むただの人間に植え付ける? とんでもない」

 

「……え?」

 

「そんな勿体ない事はしないよ。生き残るのは、選ばれた人間だけで十分だ」

 

 ぞわり。

 背筋がざわめく。

 

「君たちはこの街の中で生まれ、この街で育ったからこの世界の広さを知らないだろう――世界中にタカマハラのような施設が幾つあるのかという事さえも。そのすべてでどれほどこのコードを切望していたかを!」

 

 ナミはいったい、何を言っているの?

 

「全員にコードを与える? 無償で? そんな馬鹿な事はない。コードはそれ相応の人間に与えられるべきだよ。私や、選ばれた研究者たちのようにね」

 

「とんだ選民思想ですね、反吐が出ます……まあ、予想していた事ですが」

 

 カノが吐き捨てるように言った。

 そんな彼に向って、ナミはさらに言い繋ぐ。

 

「ナギはどうしてもそれを理解しなくてね、ちっぽけな命にコードを植え付けた挙句、街へと逃げた。しかも、岩戸プログラムなどという厄介な抑制までかけて」

 

 要するにナミは、あたしの中のコードを全員に与えるのではなく、自分が選んだ人間にだけ与えようというのだろう。

 だからナギはあたしを連れてナミの元から逃げたんだ。おそらく、コードとナギ自身の安全を図るため。

 生きなさい、と言ったナギ。タカマハラに捕まってはいけないよ、と……。

 それを知ってか知らずか、ナミは笑みを張り付けたままあたしに向かって手を差しのべた。

 

「おいで、テラス。共に新世界の創造者になろうじゃないか――」

 

 あたしは一歩、下がる。

 そんなあたしを庇うように、ミコトとヨミがそれぞれの武器を手に前に進み出た。

 

「やっぱりそんなこと考えてたんだね、ナミ」

 

「テラスは渡さない」

 

 すると、ナミは大きくため息をついた。

 

「……仕方のない子たちだ。さあツヌミ、君はどうする?」

 

 問われたツヌミはぽつりと尋ねた。

 

「ナミ、それは『始祖』全員の意志ですか?」

 

「ああ、もちろん。ナギを除く4人が賛同した」

 

 その言葉に、ツヌミは俯き、あたしは首を傾げた。

 始祖全員? ナミ以外にもいたという、全部で5人の『始祖』。その全員が賛同とは、いったいどういう意味なんだろう――?

 

「私は――」

 

 ツヌミはぐっと唇を噛みしめた。俯いたまま、小さく零す。

 

「ナミ、私は貴方を信じていました。貴方ならこの街に太陽をもたらしてくれると思い込んでいたのです。いいえ、きっと貴方になら出来るでしょう。でも――」

 

 顔をあげたツヌミは酷く悲しそうな顔をしていた。

 その顔に胸が締め付けられる。前回はハクマユミを突き付けたヨミからナミをかばったツヌミ。今はただナミに刃が向けられる光景を寂しげにに見つめているだけだった。

 

「貴方達には私達を救う意志などなかったのですね」

 

 すべてを諦めた絶望――それは、つい先日あたしが飲み下した苦みと一緒だ。最も信じていたものを失う事。世界の崩壊。縋りつくものが何もない孤独。

 涙は流していなかったが、あたしにはツヌミが泣いているように見えた。

 

「何故ですか、ナミ。私は貴方が救世主になる日を夢見ていたというのに――」

 

「それは残念だ、ツヌミ。君なら分かってくれると信じていたのに」

 

 なんて白々しい言葉。

 同じ境遇に遭ったあたしには、ツヌミの感情が手に取るように分かった。空虚な心が目に見えるようだ。

 

「私はもう、貴方を支持する事はできません、ナミ。私はすべての真実でもって……離反します。賛同する研究者は多いはずです」

 

 泣かないで、ツヌミ。お願いだから、そんな悲しそうな顔をしないで。

 ところが、ナミは慌てもせず美しい顔にいやらしい笑みを浮かべた。

 

「そんな事、させると思うのか?」

 

「どういう意味です?」

 

 ツヌミが聞き返した時、突然周囲の景色が一変した。

 これまでチューブが乱立していた場所から、何もない真黒な空間に変わったのだ。床の感触が曖昧で、いったいどこに立っているのか分からない不安定な感覚。

 その中で、ナミの金髪はなぜか靡くように広がっていた。

 

「進化と選別に楯突く者は消すよ。無論それはナギとて例外ではない」

 

 楯つく者は消す。それは、どういう事?

 

「可哀想に、ナギは全身を異形の粘液に蝕まれ、苦しんで死んでいっただろう?」

 

 ドクリ

 心臓が一つ、大きく脈打つ。

 まさか。

 

「異形になる前に脳の構造を少しだけ変えておく。そうすると、異形化した後にどうなると思う?」

 

 ナミの背後に何かがせり上がってくる。

 黒くて、どろどろとしていて、巨大な何か。

 とても見覚えのある粘液を纏った生命体。

 

「忠実な生物兵器だよ。この上ないほどに従順で、強力な」

 

 

 

 

 これまで会った中で最大サイズの異形――思わずあたしはヒルメを召喚していた。異形狩りとしての勘が働いていた。

 ワーニング!

 

「何だぁ、これ。獣型タイプ不明3体と、人型多数、進行度はすべてMAX-1! これまで会った中では最上級の異形だぜぃっ、ミコト!」

 

 それも一頭ではない。

 次から次へと湧いて来る異形は、いつしかあたしたちを取り囲んでいた。

 四足歩行のもの、二足歩行をした人型のもの……そのどれも、大きさが尋常ではない。人型と言っても普通の人間の数倍はある。真黒な粘液をたらしながら進軍する姿はまさに『異形』。

 

「ナミは本気だね。本気で僕らを殺しにかかってるよ」

 

「コードはどうでもいい、ってのか?」

 

 ミコトの疑問にカノが答える。

 

「死んでいてもコードは手に入りますよ。不完全である上に死んでからでは長持ちしませんがね。完全にコードが死滅する前に取り出してしまえばいい話です。それこそ、クローンを作ればいい」

 

 死ぬもんか。

 あたしは武器を構えた。

 

「ヒルメ、サポートしてね」

 

「了解」

 

 かなり敬語を脱した梓弓のヒルメは、それでも抑揚の小さい、澄んだ女性の声で答えた。

 

「開放系第2段階までを許可。発動は音声認識、テラス、私の指示に従って」

 

「頼りにしてるわよ、ヒルメ」

 

 ミコトとヨミに肩を並べ、あたしはヒルメを構えた。

 

「下がってろよ、テラス」

 

 不機嫌そうなミコトの声。それにヨミも賛同する。

 

「そうだよ、危ないよ?」

 

「後ろにいるなんて嫌よ、あたしだってウズメのもとで働いていた異形狩りなんだから」

 

「そうじゃない、お前、異形を倒す事を躊躇してるだろうが!」

 

 その言葉に、あたしは思わず絶句する。

 やっぱりミコトには何もかもお見通しなわけ?

 本当に腹立たしい――でも、微かに嬉しいのは何故?

 

「大丈夫よ」

 

 本当は大丈夫なんかじゃない。もう一度、人の形をした骨格を見たら、本当に今度こそ泣きだして、もしかしたら卒倒してしまうかもしれない。

 でも、ここで戦わなかったらあたしが死んでしまう。

 

――生きなさい

 

 あたしは生きなくちゃいけない。このコードを未来に託すため。ナギの作ったこのコードをすべての人へ平等に与えられる世界を作るために。

 

「大丈夫」

 

 もう一度言いきったあたしに、ミコトはそれ以上何も言わなかった。

 

「無理するなよ」

 

 ぼそり、と呟いたミコトはトツカを振り上げて異形に向かって行く。

 勇壮な後姿を見送って、あたしはヒルメを握りしめた。

 

「行くわよ、ヒルメ」

 

 こんな所であたしは死なない。死んだりしない。

 強い気持ちで地を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 手にしたヒルメが静かに告げる。

 

「開放系第1段階を発動する。テラス、復唱して」

 

「分かった」

 

 ヒルメを構えただけで矢が手元に現れる。これならかなりの速度で連射が可能だ。

 

「開放系第1段階、貫(つらぬき)」

 

 ヒルメの声をあたしが繰り返す。

 

「開放系第1段階、貫(つらぬき)」

 

 ぼんやりとヒルメが光を帯びた。ヒルメに内在されていたエネルギーが具現化しようとしている。

 そして。

 

「石折神(いはさくのかみ)」

 

「石折神(いはさくのかみ)っ!」

 

 あたしの叫びで打ち出された矢は、目に見えるほどの凄まじいエネルギーの奔流と共に真っ直ぐ異形に向かって飛んだ。

 そして、とてもあたしが引いただけの力ではない、ヒルメの隠された力を秘めた矢は、人の形をした異形の胸の中心を逃さずに射抜いた。

 矢が通過しただけとは思えない向こう側が見えるほどの穴がぽっかりと開き、異形は劈く悲鳴を上げた。

 あたしは異形を倒した事より先に、その威力に驚いた。

 これまで使っていたクロスボウとは段違いの貫通力だ。

 

「……すごい」

 

「これが開放系第1段階『石折神(いはさくのかみ)』。貫通力を極限まで高めた矢を放つことが出来る。開放系は第3段階まであって、今は通常戦闘として第2段階までを許可している」

 

 目の前の異形はどろどろと原形をとどめず崩れていく。

 が、粘液を出しつくし、崩れ切った後には――

 

「……え?」

 

 予想していたような人骨は残っていなかった。

 すべてが黒くどろどろとした液体と化してしまった異形のなれの果ては、消滅。

 

「異形化の度合いを表す進行度がMAX-1、つまり極限状態になると、放射能に骨まで犯されて何も残らない。進行度はMIN-3からMIN-1、MID-3からMID-1、MAX-3からMAX-1まで、全部で9段階。MID以上はもう治療が不可能な状態を表す。MAX以上になると、外形としての原形をとどめていない」

 

 ヒルメの解説にあたしは息を呑んだ。

 骨さえも、残らない汚染。

 なんて恐ろしく……悲しい。

 全身が震える。もう戦いたくないと足を止めそうになる。

 それでも。

 

「次もお願い、ヒルメ。開放系第2段階を開放するわ」

 

「了解。第2段階は『建御雷神(たけみかづちのかみ)』、雷(いかづち)の矢を放つ」

 

 足を止めるわけにはいかないのだ。

 あたしは、生きなくてはいけないのだから。

 次の目標に向かって矢を引き絞る。狙いは――眉間。

 

「開放系第2段階、雷(いかづち)……建御雷神(たけみかづちのかみ)!」

 

 凄まじい爆音が響き、視界が真っ白に染まる。そして、電撃が全身を貫いた。

 

「……ぁあっ!」

 

 思わず口から悲鳴が零れる。

 この技はどうやら使う者への反動が半端ではないらしい。

 まだ痺れている両手で、それでもヒルメを強く握りしめながら、目の前の異形が無に帰すのを確認した。

 それでも、あたしたちに襲いかかる異形はまだまだ増え続けている。

 視界の隅には同じ様に開放系を駆使して戦うミコトとヨミの姿が目に入る。

 二人とも、まるで戦う事を定められた闘神のように各々の武器を振り上げ、異形に向かって行く。

 黒塗りのハクマユミを翳し、次々と敵を翻弄するヨミはまるで舞うように飛ぶ。ふわりふわりと柔らかく、時に力強く。橙の柔らかい髪が風に靡いて、闇夜に浮かび上がる燈火のようだ。必殺の間合いをはかり、開放系の技を叩き込んでいく。

 対して、身の丈ほどもある大剣のトツカを振り回し、大技で異形を消し去っていくミコト。時に敵の体を一刀両断にしながら縦横無尽に飛びまわる。吼える様に戦いを挑み、真っ向から立ち向かう姿はまさに勇壮。行く手を塞ぐ何もかもをねじ伏せていく、真っ直ぐな心を持つ彼らしい戦い方だ。

 金の瞳に灯る強い光に、背筋がぞくりとした――目が離せなくなってしまいそうだ。

 

「テラス、次が来た」

 

 ヒルメの声にはっとすると、目の前にまた人型の異形が立ちはだかっていた。

 

「左から来る、避けて」

 

 指示に従って後ろに軽くステップバックする。

 その瞬間、目の前を黒々とした異形の右腕が空を裂きながら通過していった。

 

「第2段階初期整備のダメージが少し残っている。開放系をすぐに発動するのは不可能。少しの間、逃げて欲しい」

 

「分かったわ」

 

 とはいえ、相手も素早い動きをする異形だ。

 一瞬たりとも気は抜けない。

 

「急所を指示して、ヒルメ。狙うわ」

 

「了解」

 

 足を止めてはいけない。周囲を取り巻く異形の、格好の的となってしまう。

 走りながらヒルメの指示するポイントを狙う。

 

「テラス、今」

 

 ヒルメの声に合わせて射る。

 極限に引き絞った矢は空を割き、異形の体に吸い込まれていった。

 全く何のダメージを受けたようにも見えない異形は、そのままあたしの方へ向かってくる。矢の威力が小さすぎるのだ。

 

「だ、駄目だよ、ヒルメ。開放系じゃないときかない!」

 

「開放系を使うにはあと少しかかる。残り312秒、カウント、310、309、308……」

 

 あと5分も使えないの?!

 あたしは愕然となりながらも何とか異形の攻撃を避ける。

 とにかく攻撃を避けて、避けて、避けまくるしかない!

 

「288、287、286……」

 

 ヒルメのカウントが無情に響いている。

 が、そのカウントに割り込む大声。

 

「だーっ! 数多い! めんどくせえ! やるぞトツカ、開放系第3段階を許可しろ!」

 

「えぇー? レベル2のがめんどくせーぇじゃん」

 

「ごちゃごちゃ言わずにマスターに従いやがれ、この万年反抗期が!」

 

「へぇーい、へい」

 

 トツカのやる気なさげな声。

 それに続いて、異形の中心に佇むミコトははっきりとした声で叫んだ。

 

「マスターネーム・スサノオ、トツカ、緊急事態によりレベル2解除」

 

「レベル2解除、開放系第3段階までを許可」

 

 トツカの復唱で、剣の周囲には凄まじいエネルギーの奔流が取り巻いた。

 

「ここまで来たのは、久しぶりだーな。まだ2回目だーぜ?」

 

「1回目は『試し』だったろ。今回はホントの本気で緊急事態だ!」

 

 青白い光を受けて煌めいたミコトの金の瞳が周囲の異形を一蹴、睨みつけた。

 そしてトツカを頭上高く掲げる。

 

「テラス、ヨミ、カノ、ツヌミ……伏せてろよ! いくぜっ、トツカ!」

 

「はいよぉー」

 

 トツカの放つエネルギーに吸い寄せられるように、異形達が進路を変え、ミコトの方へと向かって行く。

 敵の意識を一挙に引き受けたミコトは、高らかに叫んだ。

 

「開放系第3段階、豪流(ながれ)……『闇淤加美神(くらおかみのかみ)』!」

 

 次の瞬間、耳が押しつぶされるような高音が貫いた。

 思わず耳を塞ぎ、目を閉じて地面に身を伏せた。

 

 

 


 
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