『天の御遣い率いる軍勢、寡勢でもって黄巾党の大軍を打ち破る』この情報は矢のような速さで大陸全土に広がっていった。
陳留城内、玉座の間
「・・・・・・では桂花、その情報は信用できるものなのね?」
「はい、華琳さま。あの辺りに放った密偵が全員同じことを報告してきましたので恐らくは真実かと・・・」
黄巾党の本隊を打ち破った諸侯のうちの一人、華琳は城に戻ったと同時に舞いこんできたこの情報に急遽、重臣たちを呼び寄せた。
「ねぇ、春蘭さま。ボクはこの『天の御遣い』って人のこと良く知らないけど、そんなにすごいんですか?」
「何を言っているのだ、季衣。もしこれが本当なら相当すごいことだぞ」
話を良く聞いていなかったのか、季衣の素朴な質問に秋蘭が説明してくれた。
「うむ・・・・・・情報によれば、その時の『天の御遣い』こと北郷一刀の兵力は一万と五千ほど。義勇軍としてはかなりの数だが、それでも相手は十万をいく大軍。これに勝利することが出来たのはほぼ奇跡といってもいいだろう」
「・・・・・・すごい」
「ホンマにスゴ過ぎやろそれ。いったいどんだけゴツイ運しとるんや?」
「だよねー?その『天の御遣い』って人、本当に奇跡を起こすことができるんですか?」
凪、真桜、沙和はそれを聞いて改めて事のすごさを実感した。
「そんなわけないでしょう。桂花、皆にも説明してあげなさい」
「分かりました。・・・まず北郷軍は、幅の狭い峡間の中ほどに陣を構えたの。これによって大軍による包囲せんめつという手段から回避したわ」
「それはまぁ、当然のことであろう」
秋蘭がもっともだとうなずいた。自軍より圧倒的に多い敵の大軍を相手にするとなると、どうしても戦い方は限られてくる。
「十万の大軍はそんな場所で戦ったら必然的に大量の幽兵が出るわ。だから黄巾党は一部の兵に谷を迂回させて挟撃をさせようとしたりとか、兵力を分散させたりしたの」
「むぅ・・・。黄巾党ごときにしては中々に理にかなった用兵ではないか」
「春蘭の言うとおり、やはり本隊を早々に叩いておいて正解だったわね」
華琳はそう結論づける。ある程度前から感じていたことだが、黄巾党は組織だった行動が目立つようになってきた。戦闘時も陣形を組むようになったし、策だって用いるようになってきた。
本隊の位置が明らかになった瞬間、諸侯があれほど素早く終結できたのは、諸侯もそのことに気づいて危惧していたからなのだろう。
「華琳さまのおっしゃるとおりです。・・・ただ、惜しむらくは諸侯が集まりすぎたせいもあって、功にうまみがなくなってしまったことでしょうか・・・」
黄巾党の本隊二十万は有力な諸侯が集まった甲斐もあって、大した苦労もなく打ち破ることができたのだ。
だがそれは、「良くやった」と褒められはすれど、「素晴らしい」と賞賛されるほどではない。それだけの諸侯が集まれば勝って当たり前なのだから。
「過ぎたことはもういいわ。それよりも桂花、続きを話しなさい」
「はい。・・・それでも頑強に抵抗を続ける北郷軍に業を煮やした黄巾党はさらに兵力を分散させたわ。そして、それこそが北郷軍の狙いだった」
桂花は皆が理解できるように段階を踏まえて説明する。この辺りはさすが軍師といったところだろうか。
「彼らは手薄になった黄巾党の本陣に様々な方向から奇襲を仕掛けたの。それによって総大将である渠帥を討ち取った北郷軍は勝利することが出来たのよ」
桂花の話を聞いた者たちは全員、思案顔をしていた。
「う~ん・・・・・・なんか話だけを聞いとると、そないに特別なことをしたって感じやないなぁ・・・」
「そうだよねー。沙和はもっとすごいことをしたのかと思ったー」
「二人とも・・・」
あまりにのん気な感想に凪は呆れた目で二人を見た。
「そうね、策自体は桂花が参入したときに、賊相手に使ったものとそう変わらないわ」
「あーっ、ありましたねぇ、そんなこと」
「そんなに昔のことじゃないだろう、季衣。確かに華琳さまのおっしゃる通り、本陣をおとりにして敵の背後を突くという策自体は似ているが・・・」
秋蘭が思わず言葉をにごすと華琳が口を開いた。
「事はそう簡単にはいかないわね。私たちの時とは違って北郷軍の相手は、遥かに多くて統制の取れた、もはや軍勢と言っても差し支えのないものよ」
「それに秋蘭や季衣、凪たちには分かるはずよ。自分たちより圧倒的に多い敵を相手に、戦線を維持するのがどんなに大変かということを」
桂花が言っているのは、凪たちがまだ仲間になっていない頃、秋蘭たちが凪たちと一緒になって黄巾当の大軍を相手に街を防衛していたときの話だ。
「あー・・・確かにあれはしんどかったなぁ・・・」
「うん・・・・・・あれはとっても大変だったのー」
「私も二人に同意です」
三人がしみじみとその時の苦労を思い出した。
「正直、策そのものはそんなに大したものではないわ。少し頭を働かせれば誰にでも思いつくようなものだもの。だけど、とてもじゃないけど私には真似できないわね」
「・・・?どうしてですか、華琳さま?」
季衣が不思議そうに尋ねると桂花が代わりに説明してくれた。
「当たり前でしょう。この場合の勝利条件は奇襲を成功させて、かつ、総大将の首を必ず挙げなければならないのよ?そんな運に任せた戦い、華琳さまがなさるわけないじゃない」
「何を言うか!奴らに出来て我らに出来ないはずは無いだろう!華琳さまがご命じになるならこの夏候元譲、敵の総大将の首などいくらでもあげてくれるわっ!」
「ふふ、頼もしいわね、春蘭。だけど桂花の言うように、普通はそんなのるかそるかの博打はしないわ」
「負けたらもう後がありませぬからな」
秋蘭が至極もっともな理由を言う。そもそも数で圧倒的に劣っているのなら相手にしないのが普通なのだ。
「だけど北郷一刀はあえてその茨(いばら)の道を行き、そして勝利した。天命を感じるものには、得てして人の理解を超えるものよ。そう考えれば彼の行動は決して無謀とは言えないわ」
「華琳さま、それについてもう一つ報告するべきことがございます」
「何かしら、桂花?」
「実はごく一部ですが、官軍が北郷軍の援軍として現れたと報告にはあるのです」
「何だとっ!?それは本当か!?」
春蘭だけが信じられないとばかりに声を上げるが、その心境は他の者たちも同様だった。官軍の軟弱ぶりは彼女らも良く知っている。
「・・・そう・・・・・・あの官軍すらも動かすか。・・・やはり北郷一刀には英雄の素質が備わっているやもしれないわね。・・・・・・桂花」
「はっ、今後、北郷軍にも細作を放ち、詳しい情報を手に入れておきます」
「ええ。よろしく頼んだわ」
そこで会議はお開きとなった。
(・・・・・・北郷一刀。あなたは我が覇道の壁となるのかしら?それとも・・・)
荊州南陽、館の庭
「――というわけだ」
「むぅ・・・」
「あら~」
先ほど冥琳が語った話の内容に、祭と穏はやや懐疑的だった。
「・・・今の情報、どう思う雪蓮?」
「ん~・・・・・・恐らく本当のことだと思うわ」
「・・・やはり勘・・・か?」
「そ。だけど、さすがに話が荒唐無稽(こうとうむけい)すぎる気もするけどね」
自分で肯定しておきながら、雪蓮も半信半疑のようだ。
「しかしお姉様。その北郷とか言う男の噂は、ここ荊州だけではなく、我らの本拠地でもあった建業など各地にまで広まっているようです。まったくのデタラメだと決め付けるべきではないかと思います」
「そうよねぇ・・・・・・あーあっ、こんなことだったら私たちも本隊相手じゃなくて向こうのほうに行っとけば良かったなー」
「うむ!寡勢でもって敵の大軍を打ち破る。これぞ戦の名利というものじゃな」
雪蓮の言葉に戦好きの祭が賛同する。
「二人とも、馬鹿なことは言わないの。軍師としてはそのような勝算の低い戦いをさせるわけにはいかないわ」
「それに本隊を討伐しに行くのは袁術からの命令でもあったのでしょう?お姉様も祭も無茶なことは言わないでください」
「私もそう思います。そのおかげで我らがこうして集うことできたのですからそれで良いのではないかと」
思春の言うとおり、袁術の黄巾党本隊を叩けという無茶な命令をきく代わりに、こうして呉の臣を呼び集めることが出来たのだ。
あの荊州での敗戦の後、孫堅という柱を一時的に失った呉では、各地で反乱が続出した。
今まで力で押さえつけていた豪族たちが、次々と領土を占領していったのだ。
このままでは本拠地である建業すらも危ういと思った雪蓮たちは袁術のもとに身を置くことでそれを回避することにした。
袁家の威光はここぞとばかりに発揮され、事なきを得たのだが、残された呉の領土は袁術の属領と扱われることになってしまったのだ。
今は袁術の食客として様々な無理難題を押し付けられているが、あともう少しでその苦労も報われることだろう。
「え~、あんな命令聞く必要ないわよ。それに、大した功名も得られずに戦いも終わっちゃったし」
漁夫の利を狙おうとして最後の辺りに戦場に着いたのはいいのだが、結局のところ、諸侯がけん制しあうだけに終わり、シビレを切らした黄巾党が向かってきたのを諸侯全員で迎え撃ったのだ。
にわか連携とはいえ、さすがに訓練された兵隊である。本隊二十万を相手に大した苦労もせずに圧勝することが出来た。それだけに不完全燃焼気味の雪蓮は不満たらたらだった。
「まったく、おぬしらは頭が固すぎるわい。武人たるもの当たって散るくらいの気概でいかねばのう」
「散ってはいけませんよ~」
穏がやんわりとツッコミを入れると、冥琳がふと何かを思い出したようだ。
「・・・・・・そういえばその北郷一刀・・・『天の御遣い』のことなんだが、このような噂があるぞ」
「ん?なになに?」
雪蓮が興味深そうに聞く。
「その噂というのは、『天の御遣い』という男は漆黒の見事な巨馬にまたがり、光り輝く剣を持っているというものだ」
「!!・・・・・それってもしかして・・・」
「水蓮が話した御仁の話と一致しておるな」
あれからしばらくして意識を取り戻した水蓮は、雪蓮たちに自分の身に起きたことを語ってくれたのだ。
「では冥琳、その北郷一刀という者が母さまの命を救った者だというの?」
「それはまだ分かりません、蓮華さま。しかし、その可能性は高いだろうとは思えます」
「それはそうであろう。そんな特徴を持った男なぞ、そうそういるわけがないじゃろうしの」
「そうよねぇ・・・・・・『天の御遣い』・・・か・・・」
そこで雪蓮が何かを思いついたかのような笑みを浮かべたのを冥琳は見た。
「・・・何を考えているの、雪蓮?」
「ん~、その『天の御遣い』の血を孫呉に入れてみたらどうかな?って思ってね」
いつも以上に雪蓮は突飛なことを言い出した。
「それは・・・・・・まぁ、ある意味では上策かもしれないが・・・」
「えっと・・・どういうことですか、雪連さま?」
「簡単に言えば、『天の御遣い』とまぐわって、はらめってことよ、明命♪」
「はぅわっ!?」
一切の含みをもたせない、直接的な言葉に明命は顔を赤くした。
「しょ、正気ですか、お姉様っ!?そんな得体の知れぬ男とその・・・・・・す、するなどと・・・」
「別にいいじゃない、蓮華。もし、その者が母様が言ったとおりの男なら、母様も賛成すると思うわ」
「あの水蓮もなかなか気に入っておったようだしのう」
「しかし・・・!」
「落ち着きなさい。別にそうと決まったわけではないのよ。それに、『天の御遣い』のことだってまだ分からいないのだし」
雪蓮はそう言うものの、蓮華は不満そうだった。
「まぁ、その話は置いておくとして・・・明命、建業での報告を聞かせてくれないか」
「あっ、そういえば明命って母様と小蓮のところに行ってたわね?」
冥琳の話を聞いて、雪蓮は思い出したようにつぶやいた。
しかし、明命はそれを言いにくそうに口ごもった。
「・・・・・・えっと・・・ですね・・・」
「・・・・・・水蓮様たちに何かあったのか、明命?」
いつものハキハキとした様子でない明命に思春が問いただした。
「い、いえっ!その・・・・・・この手紙を読んでいただければお分かりになられるかと・・・」
そう言って明命は雪蓮に手紙を差し出した。
「母様からの手紙?」
雪蓮は手紙を開いて読み上げた。
『 娘とその戦友たちへ
元気にしているか、娘たちよ?
ここ、建業では大した混乱も無く、安心して養生することが出来る。
そのおかげで今は怪我も癒え、私は元気にやっておるぞ。
ただ、片腕がないというのは色々と不便なものだな。以前、鈍った体を鍛えるために鍛錬をしたのだが、剣を振るうたびに重心がずれて思うように動けなかった。
日常生活の中でも、今まで出来ていたものが出来なくなっているってことが多々あり中々に難儀したぞ。
お前たちもこのようなことにならないよう、くれぐれも気をつけろよ?
さて、お前たちは今、黄巾党・・・だったか?そいつらを相手に勝利したようだな。まずはおめでとうと言っておこう。
しかし、こんなのは勝って当たり前だ。所詮は賊の集まり、素人なのだから。
お前たちも話していたかもしれんが、『天の御遣い』の噂はこっちにも届いている。
雪蓮よ、噂の真偽は分からぬが、私の娘ならその男ぐらいの活躍はして欲しいものだな。
それはそうと、今まで戦場に明け暮れ、雪蓮に王位を譲ったせいか、ここまですることが無いっていうのも久しぶりだ。
これを機会に、小蓮に親の務めを果たそうかと思っている。今まで構ってやれなかった分な。
手始めに『孫子』だ。孫武の末裔としては、やはりこれを抑えておかねば話にならないだろう。今、八十二篇すべてを教え込んでいるところだ。
小蓮は末っ子だからか、今まで甘やかしていたみたいだ。所々で不平不満を言ってなかなか進まない。
まぁ、ここは親の腕の見せ所だろう。お前たちが孫呉を独立させる頃には、小蓮を立派な孫呉の姫にして見せるからな、期待していろよ。
孫堅文台より 』
雪蓮が手紙を読み終えると、明命がもう一つの手紙を差し出した。
「・・・・・・次は小蓮様からの手紙です」
雪蓮はその手紙を受け取り、読み上げた。
『 雪蓮姉さまたちへ
雪蓮姉さま、一刻も早く孫呉を独立させてください。お願いします。
シャオより 』
文面はそれだけだった。よく見ると、字が細かく震えており、所々に水滴が落ちたかのような跡が残っている。
そう、たとえるなら涙がこぼれ落ちた跡のような・・・・・・
『・・・・・・・・・・・・』
辺りに微妙な沈黙がただよい始めた。
「・・・・・・ま、まぁ、動くのはまだ当分先になると思うけど、なるべく急ぎましょう・・・・・・シャオのためにもね・・・」
雪蓮がそう締めくくって、その場にいた全員がうなずくことで、今日の会議は終了となった。
平原城内、評議の間
評議の間では、奇妙な沈黙が場を支配していた。
「・・・・・・朱里よ、その噂は本当なのか?」
しばらくして、愛紗がその沈黙を破るかのように尋ねた。
「えっと、すべてが本当であるかどうかは分かりませんが、北郷さんの軍が黄巾党の別働隊と戦ったというのは事実みたいですね」
「にゃ?どうしてそんなことが分かるのだ?」
鈴々の疑問に雛里が答えた。
「えっと、本隊での戦いは、私たちを初めとした多くの有力な諸侯がその場にいました。ですが、北郷さんの軍だけがその戦いに参加していなかったのです」
「そして後から分かったことなのですが、黄巾党は本隊の他にもう一箇所別に集結していたそうです。本隊より数は少ないと思いますが、それでもその軍を相手に出来たのは北郷さんの所以外にはいないかと思われます」
雛里の説明に、朱里が付け加える。そして、それを感心したように桃香が聞いていた。
「へー・・・でもすごいよね、愛紗ちゃん。北郷さん、私たちと同じ義勇軍だったのに」
「ですが桃香さま、さすがに十万というのは大げさかと思われます。もしかすると、数をごまかして噂だけ流したという可能性も・・・・・・」
「いや、あの方に限ってそれは無いだろうな」
今まで黙っていた星がそう断言したのを見て、桃香が尋ねた。
「えっ?星ちゃんって北郷さんのこと知ってるの?」
「ええ、私が旅をしていた途中で知り合ったのですが、なかなかに素晴らしいお人でしたな」
「ほぉ・・・お主ほどの者がそれほどまで言うとはな」
何せ、袁紹や袁術など他、有力な諸侯を『そこらの有象無象』と切って捨てるほど、遠慮のない物言いをする奴なのだ。
「うむ。実は桃香さまから誘われなければ、私は北郷殿の所へ行こうとすら思っていたぐらいだ」
「ええっ!?そうなの、星ちゃんっ!?」
明かされた内容に、桃香以外にも驚きの声を上げる。
「安心なされよ。今の私の主は桃香さまであるのだから、今更変える気はありませぬよ」
「よ、良かった~・・・」
それを聞いて桃香は大げさなくらい安堵(あんど)した。
「ふふっ、それにしても大層な活躍をしておられるな、北郷殿は。雫も元気にしているだろうか?」
星が何気なくつぶやいたその言葉に、朱里と雛里が劇的に反応した。
「あわっ!?雫ちゃんっ!?」
「はわわっ!?い、今、雫っておっしゃいましたか!?」
「おや?お二人は徐庶のことを知っているのか?」
「やっぱり・・・朱里ちゃん」
「うん・・・雛里ちゃん」
「なんだ?知り合いなのか?」
愛紗が尋ねると、二人は同時にうなずき、先に朱里が、次に雛里が口を開いた。
「はい、元直ちゃん・・・雫ちゃんは私たちと同じ私塾に通っていた子でして・・・」
「私たちはそこで知り合ってお友達になったんです」
「へぇ~・・・・・・その元直ちゃんっていうのはどういう子なの?」
桃香が興味深そうに聞いてきたので、朱里が答えた。
「それはもうすごいのですよ!頭も良くて、落ち着きもあって、他にも私たちに持ってないものが色々とあって・・・・・・」
最初は勢い込んで話し出したのだが、だんだんと尻すぼみになっていき、最後の辺りでは消え入るようになっていた。
桃香たちは不思議そうに首をかしげていたが、一人、星だけが得心がいったように笑い出した。
「はははっ!確かに雫は背も胸もお二人より上であったな!」
「はぅぅ・・・」
「あわわ!?しゅ、朱里ちゃんしっかりっ!」
朱里ががっくりとうなだれると、雛里が慌てて慰めた。
「うぅ・・・・・・と、とにかく、雫ちゃんは私たちの憧れなんです。ですから、星さんにお尋ねしますけど、もしかして雫ちゃんは・・・」
「ああ、雫は北郷殿の下におったぞ」
「やっぱり・・・・・・良かったぁ・・・」
「いったい何が良かったのだ?」
雛里のもらした言葉に鈴々が尋ねた。
「雫ちゃん、いつかこの大陸をより良くしてくださる方の為に、この知識を役立てたいと言っていたんです。だから、それを叶えられて良かったなぁって・・・」
「むっ、桃香さまだってこの大陸をより良くしようと日夜頑張っておられるぞ、雛里」
「あわわ・・・す、すいません・・・・・・」
そう言って雛里は朱里の後ろに隠れてしまった。
「愛紗、雛里を怖がらせたら駄目なのだ」
「そうそう、雛里ちゃんもそういうつもり言ったわけじゃないんだから、怒っちゃ駄目だよ?」
「え、ええっ!?べ、別に怒っているわけではないのですが・・・」
姉妹二人に駄目出しされてしまい、愛紗は思わずうろたえた。
「よしよし、安心するがよい、雛里よ。たとて、愛紗が鬼のような恐ろしい形相をしていようが、性根は良い奴なのだからな」
「星っ!!」
聞き逃せないセリフに、愛紗は星を睨みつけるのだが・・・
「あぅ・・・」
本人はどこ吹く風で、雛里を怖がらせただけだった。
「まったく、何をやっているおるのだ愛紗は。また、雛里を怖がらせてしまったではないか」
「ぬぐぐぐぐぐっ・・・・・・!!」
「せ、星ちゃん、そのくらいにしてあげて・・・あ、愛紗ちゃんも落ち着こう・・・・・・ね?」
さすがに桃香もこれ以上はまずいと思ったのか二人の仲裁に入った。
「くっ・・・!覚えていろ・・・!」
「はてさて、何のことやら?」
「そ、そういえば北郷さんって、今どこにいるんだろうね、朱里ちゃん?私たちが黄巾党討伐の恩賞で平原の相(しょう"知事のようなもの")に任命されたのなら、北郷さんはどこに任命されたのかな?」
だんだんと悪くなっていく空気に耐えかねたのか、桃香はあからさまに話題転換した。だが、朱里は渡りに船だとばかりにその話に乗った。
「そのことなのですが、桃香さま。北郷さんがどこかの地へ任命されたという情報はいまだにないのです」
「なにっ?すると北郷はいまだに恩賞をもらっていないのか?」
「えーっ!?それってひっどーいっ!」
「頑張ったのに恩賞がもらえないなんて可哀そうなのだーっ!」
三姉妹が抗議の声を上げる。他人事なのに自分のことのように怒るその様は、彼女たちの性質だけではなく、北郷軍が義勇軍であったことや、人々のために立ち上がったことの経緯など、自分たちと似たような所があるからなのかもしれない。
「いや、いくら朝廷の役人どもが腐っていようが、信賞必罰は政(まつりごと)の基本。さすがに何もないというのはないだろう」
「はい、星さんの言うとおりです。それに恩賞は必ずしも領土を与えられるわけではありません。・・・ですが、北郷さんの噂が本当なら、これはかなりの大功を上げています。これに見合うほどの恩賞となりますと・・・・・・」
雛里が言葉をにごす。領土ではないとするなら次は金品なのだが、これはまずありえない。現在の朝廷の国庫にはそれだけの余裕があるはずがない。なにせ国庫がカラになったから(それも贅沢のし過ぎで)、それを補うために売官という制度が出来たのだ。
「うーん・・・・・・朱里ちゃん、分かる?」
頭を悩ませても思いつかない桃香はとりあえず朱里に聞いてみた。
「・・・もしかしたら・・・・・・北郷さんは恩賞を受け取らなかったのかもしれません」
朱里の言葉に全員が唖然となった。
「北郷さんは恩賞としてどこかの領地を与えられていたのかもしれません。しかし、北郷さんは何らかの理由でそれを断った。そう考えれば説明がつくかと思います」
「その理由っていったいなんなのだ?」
「そればっかりは直接北郷さんに聞いてみないと・・・・・・それに、これはあくまで私の推測ですので、本当かどうか・・・」
鈴々の質問に朱里は自信なさそうに答えるが、星は納得がいったかのようにうなずいた。
「いや、私は朱里の言うとおりだと思う。確かにそれなら説明がつくしな」
「しかし、もらえる領地をわざわざ断る理由があるのか?普通に考えて、もらったほうに利が多いと私は思うのだが・・・」
愛紗の言うことはもっともだ。領地をもらえば、そこの領民から税をとることが出来るし、住まいも領主の館もしくは城に住むことが出来る。
為政者(いせいしゃ)として様々な義務が生じるが、衣食住が保障されるのだ。それはこの時代の人たちにとって破格の条件だ。
そして何より、領土を持てば領主の特権である徴兵を行うことが出来る。黄巾党という大陸をおびやかす脅威がなくなった今、義勇軍を新たに立ち上げるということはもう不可能に近い。
つまり、領土を持つ者と持たない者では天と地ぐらいの差が出るのだ。愛紗はそれを理解しているがゆえに、朱里の推測には納得が出来なかった。
「北郷殿は己の利益だけで動くような人ではないからな。私としては十分に有り得ることだと思うぞ」
唯一、彼を知っている星にこうまで言われては愛紗も反論することが出来ず、あいまいにうなずくことにした。
「もしそうだとしたら残念かも・・・・・・北郷さんとは同盟を結ぼうって考えてたのに・・・」
「ほう?桃香さまはそのようなお考えでしたか?」
「うん、北郷さんには以前、私の村を助けてもらったことがあったし、それに星ちゃんの話を聞いてたら、よりいっそう信頼できそうだなって感じたもん」
「なるほど。私としてもその案には賛成いたします。もし、機会が訪れましたら私も手伝いましょう」
「本当っ!?ありがとう、星ちゃん!」
二人で盛り上がっているところに愛紗が口を挟んだ。
「ですが桃香さま、いくら星が認めている者とはいえ、話もしていない相手を容易に信用なさるのは危険です。もしかしたらその者は我々の敵となるやもしれぬのですから」
「もぉ、愛紗ちゃんってば真面目すぎだよぉ。そんなに心配しなくたってきっといい人だから、北郷さんは」
本人にその気はないだろうが、あまりに能天気な発言に愛紗は軽くため息をついた。
「・・・ふふっ」
「・・・・・・なにがおかしい、星」
「いや、もしかしたらそういう愛紗が一番最初にコロッといきそうな気がしてな・・・」
「にゃ?コロッと・・・?」
「要するに惚れてしまうことだ、鈴々」
星の言葉に愛紗は顔をしかめた。
「有り得ないな。いくらなんでもそのような素性の知れぬ者に惚れるわけがなかろう。それに、私は桃香さまの一の家臣を自負している。そんな色恋沙汰などにうつつを抜かすつもりはない」
「やれやれ、なんと可愛げのない・・・・・・そんなだから鉄の女などと言われるのだ」
「言われておらぬっ!だいたい――――」
そしてまた口論を始めた二人を、他の人たちは止めるのを諦めてスルーすることにした。
「・・・それにしても朱里ちゃん。雫ちゃん、今どうしてるんだろう?元気にしてるかな?」
「大丈夫だよきっと。だって雫ちゃん、私たちよりしっかりしてるもん」
「ねぇねぇ、鈴々ちゃん。北郷さんっていったいどんな人なんだろう?やっぱりカッコいいのかな?」
「鈴々はそういったことにはあまり興味ないのだ。それよりも、そのお兄ちゃんって強いらしいから一度戦ってみたいのだ」
会議がいつの間にか雑談に変わっていた劉備陣営だった。
涼州、天水城内、執務室
「――それでね、詠ちゃん・・・・・・」
「もう分かったって、月。分かったから早く政務に取り掛かるわよ」
いまだ興奮が冷め切らない月に、詠は適当に相槌をうって月をなだめていた。
「む~~・・・詠ちゃんは続きが気にならないの?」
「だってその報告書、ボクも読んだし・・・」
ことの起こりはこうだ。つい先日、中央に派遣した霞たちから報告書が届いたのだ。
その内容にはもちろん、あの黄巾党の大軍を打ち破ったという噂の真相まで書いてある。
正直、ここは中央から遠く離れているから、噂が大きくなっただけかと思ったのだがどうやら真実だったらしい。
ただ、報告書の中に、『一刀が洛陽には絶対に近づくなって言ってた』っていうのがあったのはどういうことだろう?
「そういうことだから、話はこれが終わったら聞いてあげる。だから頑張って終わらせましょう」
詠の示した先には、増えることはあっても消えることはない書簡の山があった。
「・・・うんっ、そうだね。頑張ろう、詠ちゃん」
(あぁ・・・・・・月って本当にいい子だわ・・・)
普通なら不平不満・・・そうでなくてもグチをこぼしかねない書簡の山を見ても、月は一生懸命に取り組もうとしている。
こんな健気なところを見せられては、自分も頑張らなくては、という気持ちにさせられる。
詠は「さぁ、やるわよっ!」と書簡に向き直ると、脇の方にある机から、まるで怨霊のうめき声のような声がもれてきた。
「うぅ~~~・・・・・・・・・恋殿ぉ~~~~~~~・・・・・・」
「・・・ちょっと、ねね。せっかく人がやる気を出しているのだから、そんな辛気くさい声出さないでよね」
脇の方にある机に座っているねねは、机に突っ伏してうめいていた。もちろん、その机にも書簡の山がある。
「うぅ・・・・・・恋殿と離ればなれになって、身も心も張り裂けそうだというのに、何が悲しくてこんな所で書簡とにらめっこせねばならぬのですか・・・」
「仕方ないじゃない。ただでさえ人手不足なのに、三人が中央に行っちゃったんだから。その分のしわ寄せがこっちに来るのは当然でしょ。それに、ねねまで中央に行っちゃったらいったい誰が恋の家族の面倒を見るのよ?」
恋の家族とは、恋が拾ってきた犬や猫など動物たちのことだ。その数も種類も多いため、恋かねねがいなければ面倒を見きれない。
「それでもねねは恋殿に付いていきたかったです~~~!」
「あーもう、うっとうしいわね」
「え、詠ちゃん・・・」
もはや、駄々っ子と化したねねに詠が悪態を吐くと、扉の戸が叩かれ、一人の文官が入ってきた。
「執務中、失礼します」
「なに?新しい書簡なら、陳宮にやらせるから向こうの机に置いといてちょうだい」
「な、なんですとーーーっ!?」
詠は血も涙もなかった。
「い、いえ・・・董卓様あてに手紙が届きましたので持ってまいりました・・・」
「手紙?誰からだろう?」
月がそうつぶやいて、文官から手紙を受け取った。手紙を受け取ったのを確認した文官は礼をして部屋から出ていく。
その手紙は派手な装飾がほどこされた上質な紙を使ったものだ。
「これ・・・・・・朝廷からよね・・・?」
詠があからさまにいやそうな顔で手紙を見た。
「うん・・・そうだと思う」
月はその手紙の封を切って中を見た。
やっぱり、差出人は朝廷からだった。内容は月が派遣した霞たちが、めざましい活躍をしたのでその功績をたたえるというもの。また、それに対しての恩賞を譲渡するゆえ、ただちに洛陽まで来るようにという内容だった。
「・・・・・・・・・・・・」
詠はいぶかしげにその手紙を読み返した。内容には別段、怪しいところはない。しかしこの手紙、どういうわけか漢の玉璽(ぎょくじ)である印が押してあるのだ。
「詠ちゃん・・・・・・これ、どうしよう?」
月が尋ねるがどうもこうもない。漢の印が押してある以上、つまりこれは勅命だ。漢の禄(ろく)をはんでいる者として、これには絶対に従わなければならない。
ふと、報告書の内容を思い出す。もしかして一刀はこのことを予見していたのだろうか?
軍師としての勘がこれは罠だと警鐘(けいしょう)を鳴らすが、ここで月を逆賊にするわけにはいかない。詠は不本意ながらこの誘いに乗るしかなかった。
「・・・・・・洛陽に行きましょう。ねね、政務はもういいから支度をしてきなさい」
「ほ、本当ですかっ!?やった、恋殿に会えるでありますっ!」
ねねは大喜びで部屋を出ていった。
「月、兵をできるだけ多く連れて行くことにするけど・・・いいわね?」
「詠ちゃん・・・」
月が不安そうに詠を見た。
「安心して、ボクが絶対に月を守るから!」
しかし、それを聞いた月は静かに首を横に振った。
「詠ちゃん、それは違うよ」
「月?」
「詠ちゃんだけじゃなくて私も。私も詠ちゃんを守るから」
「月・・・」
「一刀さんと初めて出会った日に私言ったよね?『頑張ってもっと多くの人を支えてあげたい』って・・・だから詠ちゃん一人で無理をしなくてもいいんだよ。私も頑張るから・・・」
「月・・・月ぇぇ~~~!」
「ひゃう!?」
あの時と同じく、詠はまた月を抱きしめた。
(あぁ・・・・・・月ってほんっっっとうにいい子だわ!なんとしても絶対、この子だけは守らなきゃ!)
詠は決意を新たにして洛陽へ行くのだった。
とある山の中
一刀たちは現在、とある山の中にある砦に居を構えていた。
その砦は山の中に隠れるようにひっそりと建てられており、遠目ではまず見つからないようになっている。
一刀たちが砦を見つけたとき、砦の中は何者かが生活をしていた痕跡があったのだが、今では誰も使っている様子がないので、使わせてもらうことにしたのだ。
砦の中にある一室では、一刀を初めとした主要な面々が顔をそろえていた。
「よしっ。全員そろったことだし、いつもの会議を始めるとするか」
一刀の言葉に全員がうなずくことで、いつもの会議――定例報告会が始まった。
「じゃあ、まずは雫。食糧や物資の備蓄はどうなってる?」
「はい一刀様。現在、食糧および物資の備蓄は共に十分な余裕があります。このまま消費すれば約半年、節約をすれば一年はもつかと」
相変わらず、雫はそつのない仕事ぶりだ。こういうことに関しては彼女に任せておいてもまったく問題ないだろう。
・・・ちなみにこの定例報告会を提案したのも雫だ。雫の弁では『まずは形から』らしい。
「そうか・・・以前だとおよそ一月分の量なのに、今ではそれぐらいはもつのか・・・」
「あの時は一万五千人の兵がいました。兵が減れば食糧などの消費する量が減るのは自明の理です」
「それでも三千人も残ってくれるとは思わなかったけどな」
そう、北郷軍は現在、一万五千はあった兵が三千までに縮小している。
理由は言うまでもない。黄巾党という脅威がなくなったのだから、兵たちにはそれぞれの田畑に戻らなければならない。
領土を持っているなら召し抱えるという手もあるが、とある理由により一刀は恩賞としてもらえる領土を断ってしまった。今の一刀は無位無官で何の権限も持っていない。
それなのに、中には残ってくれる人たちもいたのだ。一刀という人物に惚れこみ、最後まで付き従ってくれるといった者たちが。
その者たちは現在、菖蒲の指導の下、調練を受けている。
「菖蒲、兵士たちの調練はどれくらい進んでる?」
「はい。兵士さんたちもようやく、わたくしの指示通りに動いてくださるようになりました。後は陣形の組替えが円滑に出来るようになれば大丈夫だと思います」
菖蒲は幾分か手慣れた様子で報告した。兵士たちを指揮させることで兵の練度を上げつつ、菖蒲の男性恐怖症を治そうという思惑なのだが、どうやらその狙いは上手くいっているようだ。
「なるほど・・・ところで菖蒲。男性にはもう慣れたのか?」
「あ、はい。近づかれただけで攻撃をするのは何とか手加減できるようになりました」
「そ、そうか・・・・・・(先は長そうだ・・・)」
菖蒲が嬉しそうに話すのを見て、一刀は苦笑いを浮かべるしかなかった。
・・・ちなみに華佗が菖蒲から微妙に距離をとったのを一刀は見たが、それについては言及しないでおく。
「じゃあ、最後に華佗。周囲の村で何か情報はあった?」
華佗には周囲の村に往診に行くついでに情報を集めてもらっているのだ。
「俺からは今回は特に何も・・・・・・あっ、そういえば一つだけあったな」
華佗は思いついたかのようにつぶやいた。
「どうやら今の漢の皇帝――霊帝が死んだらしい」
「・・・・・・・・・そうか」
華佗にとっては大した情報ではないと思っていたのだろう。しかし、一刀はそれを聞いて深く考え込んだ。
「・・・一刀様?何か懸念することがおありなのですか?」}
「いや、これでまた中央が荒れると思ってな・・・」
なかば予想できていたとはいえ、本当に短い平和だったと一刀はため息を吐いた。
「・・・・・・権力争い・・・ですか。一刀様はそういったとばっちりを回避するために恩賞を断ったのですか?」
「ああ・・・」
『天の御遣い』と呼ばれる一刀を、その勢力の御輿(みこし)として担ぐのならともかく、一刀自身が勢力を持ってしまえば十中八九、注目を集めてしまうだろう。
それが良い意味か、悪い意味かはともかく、領土を持ったとしても北郷軍はいまだに弱小勢力なのだ。
実力がともなわないうちから周囲の注目を集めてしまえばどうなるか?出る杭(くい)は打たれるという。はたまた、いいように利用されるのか・・・・・・少なくとも歓迎すべき展開にはならないだろう。
「別に権力争いをするなら好き勝手にやってくれても構わないんだが、そういう奴らって周りの人を巻き込んでいくからな・・・」
それに万が一のこともある。そうなった場合は領土を持たないほうが色々と動きやすい。
「もしかしたら、また近いうちに戦いが始まるかもしれない。三人共その事だけは胸にとどめておいて欲しい」
「はい」
「ああ」
「わ、分かりました」
三者三様の返事をして、報告会はひとまず終了となった。
洛陽、とある一室
薄暗い部屋の中では、数人の男たちがいた。
「・・・・・・それで・・・首尾は?」
「はっ、万事つつがなく・・・」
「くくくっ、これであの肉屋のせがれごときにでかい顔をされずに済みますなぁ」
「まったくだ。これで奴が殺されて清々するってもんだ」
「・・・では次は例の件だが・・・・・・」
その時、部屋の中に彼らの仲間の一人が駆け込んできた。
「何事だ?騒々しい・・・」
「も、申し訳ございませんっ!ですが――――」
それを聞いた彼らは、それぞれが驚愕で目を見開いた。
「・・・まったく、あの方も余計なことをしてくれる。・・・すぐに兵を出せ。何としても見つけ出すのだ」
「は、はいっ!」
仲間の一人があわただしく部屋から出て行くと、部屋の中は再び薄暗くなった。
Tweet |
|
|
252
|
47
|
追加するフォルダを選択
どうも0157です。
前話に王冠が付いてたのを見たとき、嬉しさのあまりに小おどりしてしまう程の小物っぷりですw
真恋姫が発売してからもう一年は経ちますね。少し感慨深いかも。
続きを表示