南皮
袁紹の城、王座の間にて。
王座に座っているのはもちろん袁紹、真名は麗羽様、そしてその脇には袁紹軍の誇る二枚看板の一人文醜、真名は猪々子という。
そしてその前では猫耳頭巾を被った一人の少女が竹簡の束を持ち立っていた、名を荀彧 、真名を桂花という。
麗羽様はその桂花から渡された竹簡の一つを読んでいた、そして全てを読む前にはぁーっとため息をつき。
「なんですの?これは?」
あからさまに不機嫌な顔をして、桂花に問う。
「はい、それは私の考えた新しい農地の改善策、水害に対する治水対策、街での警備対策などを書き起こしたものでございます」
ふーん、という感じで再びその竹簡を見た麗羽様、しかしすぐそれを見るのをやめ再びはぁーっとため息をつき。
「地味ですわね」
「はい?」
「地味だと言ったのですわ、何ですのこれ?どこにも優雅さのようなものがありませんじゃありませんの」
桂花は何度も麗羽様からその言葉は聞いたことはある、それはもう嫌っていうほど、この人物は優雅さと華麗さ以外興味のないような人物、それだとわかっていても桂花はあえてそれを無視してl今回色々な献策を書いた竹簡を渡す事を決めたのだ。
「た、確かに地味かもしれませんが、私の献策を行えばこの地はますます盛んになって…」
「今でも十分盛んですわ、それに、こんな地味な事をやってもしワタクシの優雅さと華麗さが損なわれたらどうなさるおつもりだったの?」
…桂花は耐えていた、こ、この女… 、しかしそれでも耐えて。
「今この地では各地で農作物の出来が悪く、食うに困った者達が賊になったりしています、このままでは…」
「ワタクシに逆らうのであれば討伐するだけですわ、華麗に、優雅に!正々堂々と!」
その言葉に唖然とする桂花、横では暇そうに欠伸をする猪々子の姿が映る、あ、屈伸運動始めた。
「話はこれだけですわね、もういいですわ、下がりなさい!」
「ですがっ…」
「これ以上地味でくだらない話につきあってる程、ワタクシ、暇ではありませんの!」「ありませんの!「せんの!「の!」
妙に反響する麗羽の声、それがまた余計イラつく!ワナワナと震える桂花にさらに麗羽様が追い討ちをかける。
「桂花さん、その持ってきたゴミは、ちゃんと捨てておきなさい、二度とワタクシの目に触れないようにするんですわよ!」
と桂花が持ってきた竹簡の束をビシィ!って感じに指差す、その姿は妙に優雅で華麗だったりする。
「!!」
それは、桂花が持ってきた献策の数々、まだ見られる事すらしていない。
「猪々子さん、お風呂は沸いてるかしら?」
「ふああー、多分沸いてると思いますよ、斗詩が先に入るって言ってたし、そういや斗詩が妙な石鹸を手に入れたって言ってたな、何でもそれで洗うとあそこの毛が艶々になるとか」
「ま、まぁ斗詩さんたら!、ワタクシに内緒でそんなものを!、ゆ、許せませんわ!、猪々子さん今からお風呂に行ってワタクシもその艶々石鹸で艶々になりますわよ!」
「ふぁーい」
そんな馬鹿っぽいいつものやり取りを聞きながら、残された桂花は持ってきた竹簡を震えるように持ち、王座の間から逃げるように出て行った。
自分の部屋に戻った桂花は悔しくて声を殺して涙を流していた。
「許せない…、私の… ゴミ扱い… 」
「あんな…、あんな… 馬鹿女にぃーーーーーー!!!!」
今までの鬱憤が一気に爆発した桂花さん。
「いいわよっ!、いいわよっ!もうこんな所にいられるものですかっ!出て行ってやる、こんな所出て行ってやるんだからぁーー!」
そういって荷物をまとめた桂花は袁紹を見限る事を決める。
名門でもあり、少なくともこの国では有数の勢力であったので今まで我慢してたがもう限界突破の桂花さん。
桂花にとっての問題はどこに行くかだったが、すでに目的地は決まっていた。
「陳留」
今までは気にも留めていなかったがここ最近急激に勢力を拡大しているという情報を聞きつけていたのだ。
前の盟主の曹嵩氏が死に、混乱するかと思われていたが後任の夏候姉妹が上手く治めているという。
だがその実は陳留に降り立ったと噂される「天の御遣い」が天の知識を駆使して善政を行いその地を治めていたというのだ。
その話を聞いた時に桂花の心は決まった。
「天の御遣い様こそ、私のすべてをささげられるお方に違いないわ!」
目を光らせ、顔を紅潮させ、体の火照るのを抑えながら桂花は陳留への道を突き進んだ、それはもうえらい勢いで。
陳留
政務として使ってる一室にて。
「ひえっきしぃぃぃ!!!」
街の政務をこなしながら、ベタなくしゃみをする天の御遣いこと北郷一刀さん。
「何だ?風邪か北郷?」
政務を手伝っている秋蘭が少し笑ったような感じで話しかける。
ぐずっ、「い、いや、なんか急に寒気が…、誰か変な噂でもしてんのかなあ…」ぐすっ
「まぁ、今ではもう国中に噂がたっているかもしれんしな」
陳留に天の御遣いがいるというのはもう周知の事実となっている、そしてそのご利益(?)を求めて人が集まりつつある事も、人が集まれば潤う部分もあるが、ならず者なども集まる不安もあるのだが、そこはそれ、我らが夏候惇こと春蘭の有無を言わせぬ肉体言語で賊達は陳留からはほとんど消え去って国でも有数の平和な場所となっていた。
それもまた天の御遣いのなせる業、という事でますます周囲に噂が広まっていた、色んな尾ひれがついて。
「ある者はおっぱいたゆんたゆんな巨乳女性だとか、ある者はちびロリっ子な幼女だとか、ある者は淫乱露出狂だとか、加虐性欲者(サド)だの、被虐性欲者(マゾ)だの、変態だの」
「それ、噂というか妄想の類だよね、それもあんまいい方向じゃない方の、ってか何で女の子設定なの俺の噂って…」
「うーん、この国はどちらかというと女性の有力者が多いし人気もあるからな、そう言った理由で女性設定の噂が多いのかもな」
うーん、恐るべし異次元世界!
「まぁ今の所実害ないからいいか、しかし人が集まるのはいいけど仕事が増えるのはきついな」
実際やるべき事が増えぎて俺と秋蘭達だけでは限界がきているのだ、春蘭に季衣と流琉はそっち方面はからっきしの体育会系だし。
その分秋蘭が文官の統括もしてくれているのでかなり負担があると思うと同時にほんと優秀だと思う、姉と違って。
「軍師とかって募集しないの?」
という何気ない一刀の質問に秋蘭は。
「経歴を偽って申告する輩もいるからな、武官とかなら姉者や私がが立ち会って大体の力量は推し量れるが、文官や軍師はどうにもな、名のある者でもない限り使ってみないと判断がつかんのだよ。」
「そういうもんなのか」
秋蘭の答えを少し残念に聞く一刀。
(ここが三国志の世界なら、色んな軍師とかがいると思ったのになぁ、まぁまだ世に出てないからかもしれないけど、孔明とかは結構出なかった気がするし)などど考えながらうーんと唸っていると。
「ん?何だ北郷、お前には登用したい人材の心当たりでもあるのか?」
俺の心のうちを読んだのか秋蘭が尋ねてくる、ほんと鋭いなこの人。
「んー、心当たりって訳でもないけど…、あ、そーだ!」
そう言うと俺は何も書かれてない竹簡を手に取り名前を書いていく、秋蘭はその様子をジッとみている、そして書きあがった俺は。
「もし、ここに書いてる人が仕官してきたら登用したらいいんじゃないかな、ハズレはないと思う」
そこに書いたのは俺が知ってるだけの三国志の軍師達の名前。
「この者達は?北郷の知り合いか?」
「ううん、ただ、もし味方に出来たら凄い力になってくれるんじゃないかと予想してる、まぁ天の知識の一つだと思ってよ」
「そうか、まぁ深くは考えまい、一応参考にはさせてもらうよ」
「あんがと」
最近俺は思う事がある、この世界には曹操がいない、そしてその隙間に俺がいるというこの状況、誰の思惑でここに来たのかは知らないけど、もしかして曹操の役目をやらせようとしてるのではないかと、であれば春蘭や秋蘭、季衣に流琉のように曹操に従ってた人達が俺の力になってくれるんじゃないかと、まぁあくまでご都合主義の妄想だけど。
「で、この中で特に優先するような人物はいるのか?」
という秋蘭の問いに。
「ああ、特にこの……」
そういったやりとりをしていた頃。
「ここが陳留…」
にぎわう街を見ながら桂花は感動していた、陳留に入ってからと言うもの、天の御遣いの噂を聞かない事はなかった。
全ての人達から敬われ、尊敬される人物、名前は北郷と言うそうな。
そして街では見慣れない建物や施設、しかしそのどれもが上手く機能し、街を活気付けている、それも天の御遣いの伝えたものだと言う。
「ああ…、何て素晴らしいの…」
恍惚とした表情をした桂花は改めて天の御遣いという存在に心ときめかせ、体の火照るのをさらに感じるのだった。
「ここよ、ここが私のいるべき所だわ!天の御遣い様…私が命をかけてお仕えるに相応しい御方…」
「ん…、は、早く、そのお姿を…」
今すぐ会いたいという衝動を抑えつつ、いかにして天の御遣いに面会するかというのを考える桂花。
あらゆる状況、あらゆる方法を考え、いかにお目通りしてご寵愛していただくかを考える、
街の情報をこまめに聞き取り、妄想にふけり、構築していく計画、しかしこの時の桂花の脳に一つの情報が完全に入らないものがあった。
「天の御遣いが男である」という事を。
「兄ちゃーーーーーん!たっだいまー!」「兄様ーーーーーー!ただいま帰りましたー!」
どごおおおおおん!「ごはっ!」
政務が一段落してのんびりとお茶してた一刀に全力で飛び込んでくる季衣と流琉。
「お、おかえ…り、季衣…流琉…」
二人に吹き飛ばされて壁にめりこむ一刀は必死に「おかえり」を言う。
二人は陳留近辺に現れた賊退治に行っていた、陳留では大規模な盗賊団はでないものの、他から陳留に流れてくる賊がいたりするのだ。
「あいつら、ほんと全然懲りないんだから、まったく!」
そう怒気をあげつつ語る季衣、一刀に抱きついてるその力がどんどん強くなって一刀の骨がミシミシいってるのが聞こえる。
「お…落ち着こうか季衣…、お、折れる…ま、マジで…」
「許せないーーーー!」ごぎぎぎぎぎぎ
「アッーーーー!」
「北郷ー、北郷ー、どこに行ったのだ」
そう言って北郷を探す秋蘭と春蘭。
「にいちゃーーん、にいちゃーーん!」「にいさまーー、にいさまーー!」
と、悲鳴にも似た声が聞こえてくる、そちらの方に行ってみると、壁に穴があき、泡を吹いて真っ青な顔をして倒れている北郷の姿。
それを必死で揺さぶる季衣と流琉、その状況を見てはぁっと頭に手をやり溜息をつく秋蘭、大体の状況を把握した。
「季衣、流琉、あまり揺さぶると北郷が本当に逝ってしまうぞ」
「「で、でもぉ~」」
「ふんっ、情けない、私が起こしてくれる!」
涙を流して必死で北郷を揺さぶってる二人を北郷から離し、春蘭はその愛刀七星餓狼を振りかぶり…
「待て姉者、それでは北郷は二度と起きなくなる」
さすがにシャレにならないと感じた秋蘭が北郷の頬をぴしぴしと叩く。
「う、んん」
「大丈夫か、北郷?」
「あ、秋蘭…、はは、俺、今凄く綺麗なお花畑でおっぱいカーニバルに参加してあやうくおっぱいで溺れ死ぬ所…… あれっ?」
「よくわからんが無事でなによりだ」
「よかったよにいちゃーーん」「にいさまーー」
一刀復活に喜んだ季衣、流琉は再び物凄い勢いで一刀に飛びつく二人。
「ごはっ!」
そして再び泡を吹いて気絶する一刀。
「お前たち、その辺にしておけ」
そう言って再び頭を抱える秋蘭だった。
「で…何かあったの、秋蘭?」
脇を押さえ痛さを堪えながら話す再度復活した一刀、ようやく落ち着き秋蘭に語りかける、何やら用があるっぽかったから。
「ああ、実は北郷が竹簡に書いた名前の人物の一人ががここに来たのでな、一応どうするかと思ってな」
「え、ほんと!いててて…、で、だ、誰が来たの?」
「うむ、荀彧と名乗っている」
陳留の城、王座の間
「い、いよいよ、会えるのね、天の御遣い様に」
桂花は今か今かと待ち構えていた。
ここに来るまでに色々あったとしみじみと思い浮かべる、門番が男という事もあって中々用向きを伝えられず、1時間近く門前でウロウロしてる所を不審者と間違えられ、追っかけられた、あれは確実に私を犯す気だった!と後に桂花は語る。
必死で逃げ回ってるうちに城の中に入る事に成功、さすが天才軍師!と後に語る。
しかし増援の兵士を呼ばれさらに逃げ回る事に、あれは私を捕まえ輪姦するつもりだったのよ!と後に語る。
追い詰められてどうにもならなかった所に夏候淵という人物が現れ、事の次第を聞かれる、何も答える気はなかったが名前を言うと夏候淵は何かを思い出したらしく、兵士を下がらせ私と二人きりで話をする事に、そこで聞いた言葉に私は少し濡れた。
「あなたが荀彧殿か、名前を北郷から聞いていてな、何でも優秀な人材であるから仕官にきたら召抱えるようにと言われていたのだ」
(天の御遣い様は私の事を知っていてくださった、その上、私の事を優秀だと知っていてくれた!)
これ以上の事はない、「ああ、天の御遣い様、私は貴方にすべてをお捧げいたします…」
そんな風に独り言を言いながら恍惚の表情をしていると、数名の足音が聞こえる、夏候姉妹、そして武官らしい少女二人、そして、その後ろから見たこともない真っ白に光る服を着た者が現れ、その瞬間桂花の興奮は頂点を迎える!この方がっ!
「ああ、天の御遣い様!はじめまして!私荀彧と申します、真名は桂花、どうか桂花とおよびくださ…」
「あ、君が荀彧さん?始めまして北郷一刀です、一応天の御遣いって呼ばれてます」
アレ…
…………
オトコ…?
その瞬間、桂花は真っ白くなって停止した。
まったく動かず、何やらおかしくなった空気に周りの者がみな困惑してる中、一刀は勇気を振り絞って…
「あ、あの…、荀彧…さん?」
名前を呼んでみる、それでも反応しない桂花、一刀が近寄ろうとすると…
「い……」
「い?」
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
城外にも聞こえるかというような絶叫が響き渡る、一体何が起こったのかまったくわからない一刀と秋蘭達。
「いやああああああ、来ないで!近寄らないで!見ないで!触らないでええええええ!!!!!!」
「え、何?えっ??!!」
まったく訳がわからずボーゼンと立ち尽くす一刀に。
「いやああああ、孕ませられる!孕ませられるうううううう!!!!」
「ええええええ???」
「ほ、北郷!お前!まさかこの者に!」「兄さま!?」「にいちゃん!?」
秋蘭、季衣、流琉は一斉に一刀を軽蔑のまなざしで目で見る、それはもう今まで見た事ないような嫌な目で。
「い、いや俺は何もしてない、この人とは初対面だし!!ちょ、き、君変な事言わないで!」
そう言って桂花の方に近寄ろうとした一刀に。
「いやあああああああ、犯す気ね、犯す気なんでしょ!来ないでいやああああああああああ!!!!」
「変な事言うなああああああああ!!!!」
もう訳がわからない!なんか皆は俺をますます軽蔑のまなざしで見るし、い、痛いよ!君たちの眼差しはなんか俺の心に致命傷与えてるよ!
何だこの状況!何? その時、俺は殺意の波動を感じる、物凄い、もう、なんていうか死という表現が出来るほどの、そちらを見ると
「ほんごおおおおおおおおお」
七星餓狼を抜き、今まさに必殺技を放とうとしている春蘭。
「しゅ、春蘭、お、落ち着こう、お、俺の話を聞いてくれ!お、俺はほんとになにもやっていな…」
「もんどおむよおだあああああああああああああああ!!!!!!!」
「「いやあああああああああああああああああああああああああ!!!!」」
その時俺の悲鳴と荀彧の悲鳴が絶妙なまでの素晴らしいハーモニーを奏で、城の一部が崩壊した……
ボロボロになった陳留の城で、それ以上にボロボロになって包帯まみれの一刀が横たわっている。
「あー、なんというか、災難だったな、はっはっはっ!」
豪快に笑う春蘭に。
「お前がやったんだろおがよおおおおお!!!!」
と俺の必死な声が響き渡る、その瞬間屋根の一部が落ちた音が聞こえる。
「な、わ、私が悪いとでも言うのか!わ、私はただ、不埒な事をした者を成敗しようとしただけではないか!」
「不埒な事なんかしてないって言ってんだろ!」
「まぁ二人とも落ち着け、私も早合点したのは謝るが、あそこまで必死に言ってる者をみたら誰でも北郷を疑うとは思うぞ」
「そ、そうだそうだ!」
秋蘭の言葉に相槌をうつ春蘭、こいつ、全然反省してやがらねぇな…
「はぁ…それで、荀彧さんは?」
何か話が進まない気がした一刀は秋蘭に荀彧さんの事を聞いてみる。
「ああ、凄い勢いで城を出て行ったよ、男なんかに仕える訳ないでしょ!、ばかぁ!と捨て台詞を残してな、どうやら極度の男性嫌いのようだな」
「男性嫌い…か、じゃあ、俺に仕えてくれるような事はないのかなぁ……」
確かに俺は曹操じゃないし、仕えてくれたらいいなってぐらいにしか思ってなかったけど、少し、いやかなり残念だった。
ふぅっと溜息を吐きながら物思いにふける俺をみた秋蘭は。
「そういや北郷、今日は街の見回りをするのではなかったのか?」
「えっ、ああ、そういやそうだったな、今日は子供達と遊ぶ約束してたし、とっ、体痛いけどまぁ大丈夫かな」
「兄様、あまり無理しない方が」「そうだよー」
と、申し訳なさそうに心配してくれる季衣と流琉、うんうんさっきは変態を見るような目で俺を見てたけど今は優しいこの二人。
「ありがと、でも約束って大切なもんだからさ、特に今日は子供たちに俺の世界の遊びを教えるって言ったら皆凄く
喜んでたしな、その子供達をがっかりさせるような事はできないよ」
そう言うと立ち上がって部屋を出て街に向かう一刀、心配なのか季衣と流琉もついていっている。
その姿を見送った秋蘭は何かを考え後を追う様に街に出て行った。
「ありえない!信じられない!」
陳留の城から猛スピードで出て行った桂花は街の片隅でずっと壁にを蹴りつつ延々と恨み言を言っていた、はたから見れは凄く危険な人。
「天の御使いが男だったなんて詐欺よ!悪い夢よ!ああ、今思い出しても寒気がするっ!」
どのくらい愚痴を言ったろうか、蹴り続けた壁に穴が空こうかというくらいになった時。
「…これから…どうしようかしら」
もう袁紹の元には帰れない、かといって他にめぼしい君主の心当たりがない、西の馬騰、董卓はかなりのやり手
だという情報はあるもののあんな田舎には行く気はしなかった。
だからこその天の御遣いの存在、自分の全てをささげてお仕えしようと思ってただけにそれが男と知ったショックは計り知れなかった。
そんな事を考えトボトボ歩いていると、向こうから楽しそうな声が聞こえてくる、なにかしら?と覗いた桂花はすぐに隠れる、
そこにはたくさんの子供達と楽しそうに遊ぶ天の御遣いこと北郷一刀の姿があった。
「「「ねぇねぇこれって何て遊びー?」」」
「おう、これはバスケって言ってな、あそこにある穴の開いたカゴにボールをいれて遊ぶ遊びなんだよ、こうして
ドリブルドリブルっと、ほいっ」
一刀の投げたボールが一刀より高い所にあるカゴにすぽっっと入ると子供たちがわぁっと歓声をあげる。
ちなみにボールは一刀が商人に言って作らせた特別なものだったりする。
「よしやるぞー」わーーーーーーー
そんな姿を影から見続ける桂花。
「むむむ……」
「何がむむむだ?」
「ひゃっ!」ゴチッ!
急に声をかけられた桂花は驚きのあまりでこを壁に当ててしまう。
「い、いたぁい!だ、誰よ急に!びっくりしておでこぶつけちゃったじゃな…、って夏候淵!?」
桂花に声をかけたのは秋蘭だった、実は秋蘭は兵に言って桂花の事を探させていたのだ、気付かれないようにいい聞かせ見つけ次第報告するようにと、何故そんな事をしたかという秋蘭の思惑は。
「荀彧…と言ったな、こんな所で何をやっているんだ?」
「べ、別に私が何をやっていようと貴方には関係ないじゃない!」
「ふっ、確かにそうだな」
そう言うと秋蘭は子供達と遊んでいる北郷を見ながら桂花に話しかける。
「お前は我々の…北郷の所に仕える気はないのか?」
「はぁ?、私が男なんかに仕える訳ないでしょ!あんな汚らわしい生き物に!」
「そうか、なら無理強いするのもよくないな」
とあっさり引き下がる秋蘭、それが桂花には意外だった、もっと詰め寄ってくるのかと思ったからだ。
なんとなくそれが癪に障ったので去ろうとする夏候淵に話しかける桂花。
「か、夏候淵、貴方はどうしてあんな男の下にいるの?夏候惇の勇猛さ、夏候淵の知勇備えた能力があればどこでも仕官できるでしょうに!はっ!まさかあの男に弱みを握られてるの!何て奴!やっぱり最低よ!男なんて!」
まくしたてる桂花を見ながら。
「まぁ何故北郷の下にいるかと聞かれるなら……絆、かな」
「絆?なにそれ?」
「私達は大切なものを失ったんだ、そしてそれを同じように悲しんだ、その時私と姉者は北郷に問い、北郷はそれに答えた。北郷の願い、それは私と姉者が望むものでもあった、だから私と姉者は北郷の下にいる」
それをじっと聞いていた桂花。
「ふっ、変な話をしてしまったな、忘れてくれ。これからどこに行くかは知らんが道中気をつけてな」
「あっ…」
何かを言おうとした桂花だったが言うのをやめる、それを見た秋蘭は。
「もし、北郷がお前の事を教えてくれなかったら、私はお前と話すような事はなかっただろうな、先ほども言ったが
北郷がお前の事を高く評価していたという理由だったからな」
「はぁ?やめてよ!、気持ち悪い!」
「北郷によれば、荀彧、お前は王佐の才となりうるほどの人物なんだそうだ」
「王佐の才…」
「私は…、いや、この陳留にいる者全てがお前の事もその才能も知りもしないし評価もできまい、ただ一人、北郷を除いてな、あいつだけがお前の事を知っていた、そしてその才を評価していた、おそらくこの国の誰よりもな」
「……」
「私から言えることはそれだけだ、後は好きにしろ」
月も出始めた頃、子供達と遊びつかれた一刀、季衣、流琉が戻ってくる。
「「あーたのしかったねー」」
「お、お前ら少しは手加減しろ……」
あの後子供達と試合形式のバスケットをやったのだが、一刀の相手チームになった季衣と流琉がその持ち前のパワーで北郷にボールを叩きつけるわボールをなくして探し回るわで大変だったのだった。
「へへっ、ごめんね」「ごめんなさい兄様」
くっ!上目遣いで俺を見る可愛い瞳、こんな目で見られたらこれ以上怒れないじゃねぁか、くそっ!
「こ、今度からは手加減してくれよ!」
「「はーい!」」
くっ凄く負けた気分だぜ! そんなやり取りをしていると。
「北郷」
何かを持ってきて俺を呼ぶ秋蘭。
「ん?何秋蘭?ん、その竹簡の束は何?」
俺の問いに秋蘭は。
「これは荀彧殿の置き土産だ」
「荀彧さんの?」
それを聞いた一刀はその竹簡を手に取り食い入るように見る、そこには農耕、治水、街の警備体制などの政策が事細かく書かれていた。それはどれも素晴らしく、一刀は何度も見て感嘆の溜息を吐いていた。
「凄いなこれ…、今まで気づかなかった事とか、知らなかった事とか、秋蘭はどう思った?」
「ああ、私も見て凄いと思ったよ、もしここに書かれている事を行えればここはますます豊かになるだろう」
「だよな、やっぱり…荀彧さんは思ってた通り、凄い人だったんだな…」
自分のいた三国志の知識が役に立ったという事、そして事実荀彧という人物の才能が凄かったという事に感動する一刀、と、同時にその人物を配下に持てなかった事への寂しさと悔しさに気を落とす一刀。
「荀彧さん…「気安く名前を何度もよばないでよっ!汚れるでしょっ!」」
はっ!と見回す一刀、すると部屋の角にある机の後ろから何やら見える猫耳頭巾。
「あ、あれっ?荀彧さん?何で?」
「だから気安く名前をよばないでっ!」
えっと… という感じで何が何やら状況がわからない一刀に、秋蘭がくくっと笑いながら答える。
「今の所行くべき所が見つからないらしくてな、ならばしばらくここにいてはどうだと私が荀彧殿に提案したんだ、そしたら快く承諾してくれてな「してないわよっ!」、さらにここにいる間はその才を我らの為に使ってくれると言ってくれたのだよ」
「ほ、本当!」
「ぐぬぬぬ…」
俺の満面の笑みになにやら納得してないけどね!って感じの表情、さらに机をガジガジする桂花、うーん秋蘭が何かやったのかな?
「え、えと、この竹簡ありがとう、大事に使わせてもらうよ!」
「ふんっ!」
何やら机に顔を隠す荀彧さん、しかしすぐに険しい表情で再び俺を睨む直す荀彧さん。
「え、えと、何はともあれ、こんなに心強い事はないよ、これからよろしく」
「………」
答えない桂花、一刀はそういや真名教えてもらったっけな、と思い出し。
「えっと、桂花…さん」
「真名を呼ばないでよ!!!!妊娠しちゃうでしょ!ああやっぱり嫌!いやあああああああ!!!!!」
陳留の城に響く桂花の絶叫、その時王座の間に入ってきた春蘭にその様を見られ、
再び惨劇の様相を呈す、響く春蘭の怒号、季衣、流琉の悲鳴、そして一刀の断末魔が響きわたる。
こうして荀彧こと桂花さんが仲間?になった。
ちなみに俺以外には真名を許したそうな。
やっぱり華琳様は偉大です。
とりあえず3話、個人的にはOPが流れてる感じです。
Tweet |
|
|
222
|
28
|
追加するフォルダを選択
注:華琳様がいない√ですのでキャラを都合よく動かしています、ご容赦ください。
やっぱ難しいです。
今更ながらタイトルを「恋姫無双」から「真・恋姫†無双」に変更しました、無印しかやってなかったんですが真やり始めてそっちで話を考え始めたもので。