黄巾党征伐も本隊を雪蓮達の活躍で討たれ大きく収縮し、曹操が首領である張三姉妹の頸を挙げた事で黄巾党の息の根は絶たれた。
しかしこの戦いにおいてもはや朝廷の力は無き物と明確化し、いよいよ戦乱の世が間近だったのは誰の目を見ても明らかだった。
そんな中、雪蓮達呉の将兵達は袁術よりの独立を目指す日々を費やしていた。
大喬・小喬 ⇒2P
雪蓮・冥琳・祭 ⇒3P~4P
蓮華・甘寧・明命 ⇒5P~6P
大喬・小喬
「あ~、いい天気だ。」
黄巾党の乱が終わって一ヶ月が経過した。
あれから俺は勉強の甲斐あってか文字の読み書きもおおよそ出来る様になり、簡単な文官の仕事を任せられるようになった。
といっても政務に必要な本や書類を各部署に持ってたり貰って冥琳の所の運ぶのが主だが…。
なんにせよ俺は本日休日。
そんな訳で何か軍略書か兵法書でも借りて読もうかと書庫へ向かう途中なのだが…。
<クイクイッ>
いきなり裾を誰かに引っ張られた。
「何だ?」
足元を見ると白虎の仔、白夜が裾に噛み付いていた。
「待って~~~。」
「待ちなさいよーーー!」
今度は誰かに呼ばれたのでそっちを向くと走って来る二喬の姿があった。
多分待てと言われてるのが白夜の事だろうなと思って白夜を掴んで持ち上げた。
「どうしたの?」
俺の前で急停止した二喬は息を整えて挨拶してくれた。
「あ、一刀さんおはようございます。」
「ふん、よくそいつを捕まえてくれたわね、一応感謝しといてあげるわ。」
訂正、挨拶してくれたのは姉の大喬だけだ。
「……まあいいや。 で、どうしたの?」
「あ、はい…。 その~実は冥琳様の命令で……。」
「雪蓮様が執務室から居なくなったから探してくるように言われたのよ。
何か文句ある?」
「いや、文句は無いけど…。
それならなんで白夜を追いかけてたんだ?」
「小喬ちゃんが匂いで追わせようって、それで雪蓮様の匂いのする物を嗅がせたんですけど…。」
「何故か俺の所に来たと。」
「はい…。」
警察犬かよ…。
と言うかこいつは虎であって犬じゃねえよ。
まあ、いつもこいつにエサをやって面倒を見てくれている大喬にしてみたら少し変わった猫みたいなもんかもしれないけど。
「まあ、いいや……。
それじゃ俺も今日は暇だし探すの手伝ってあげるよ。」
「ええ! い、いいんですか!?」
「もちろん、それじゃあ探そうか。」
そんな訳で休日の午前中は大喬、小喬と一緒に雪蓮を探す事になった。
雪蓮・冥琳・祭
大喬達と雪蓮を探す事になった俺はまず館の門を警備している人に聞き込みを入れてみた。
どうやら雪蓮は街へ行ったらしく、祭さんも雪蓮と同じ頃に出て行ったらしい。
ちょうど警備員さんと話ているところに穏がやってきたので冥琳に二人が出て行った事の言伝を頼んで二喬と共に街へと出向いた。
それから半刻後。
「いたな……。」
「いましたね……。」
「いたわね……。」
そう二人は同時に見つける事が出来た。
二人して昼間から酒盛りをしていて悪目立ちして……。
「あれ~、どうしたの皆?
まさか一刀が逢引に誘ったの?
ダメよ二人は私と冥琳の可愛いお嫁さんなんだから~~~。」
「ほう、いきなり主君の女に手をつけるとは…、なかなかやるのう♪」
飲んでる場所が酒屋の前に置いてあるオープンカフェみたいな造りのため、人聞きの悪い言葉が外を歩いてる人に聞かれては視線を向けられた。
「こほん、まず第一に俺達は逢引してるわけじゃない。
冥琳に言われて俺達は雪蓮を探していたんだ。
そこんとこよ~く誤解しないで欲しい。」
「冥琳が~? なんで~~??」
「…仕事は終わってるのか?」
「だ~いじょうぶ、だ~いじょうぶ♪」
「なにが?」
「うむ、大丈夫じゃ。」
「だからなにが?」
ダメだこの酔っ払い共、早くなんとかしなきゃ…。
「そもそも、仮にも自分の君主に仕事を強制するのがおかしいんじゃ。
全く周家のご令嬢ときたら昔は可愛かったのに今では威張って出過ぎたまねをしよる。」
「そうね~、昔の冥琳って可愛かったわ~~~。
…あっ、もちろん今でも可愛いんだけど昔は暗闇が怖くて夜厠へ行く時は『一緒に来て~~。<泣>』
なんて言ってたのに…。」
「ふむ、そう言えばワシもそういう話はあるぞ。
昔修行のために森で一人で一夜を過ごさせたのだが翌朝にワシが向かえに行くと飛んで泣き付いて来たもんじゃ。」
「へ~~、そんな事があったんだ!
後、私が知ってる可愛い冥琳は~、……………―――――。」
「そうじゃのワシは……………―――――。」
もはや酔っ払いの酒の肴、ただの暴露大会となっていた。
それにしてもこんな事を話してるのが冥琳にでも見つ…かっ……たら………。
居る! 後ろに三面六臂の阿修羅を連れて立っておられる。
阿修羅面は怒りだ! 怖い!! はっきり言って怖すぎる!!!
大喬は失神しかけだし小喬は俺の背中に隠れて握られた服から振動が伝わって来る。
っていうか何でこの二人は気付かないんだ!?
もうこの辺一帯の温度が体感で10℃は下がったぞ!
そろそろ二人を止めないと文字通り命に関わる。
そう考えて止めようと声を掛けようとしたのだが………、先を越された。
「ほう、ずいぶん楽しそうですな伯符殿に公覆殿。」
名を呼ばれた二人が油の切れた人形の様に異音を上げて後ろの方を向いた。
「さて、言いたい事は色々あるが……。
何か言い残す事はありますか?」
あれ!? 死刑確定?
こういう時俺がする事は何だ!?
何か考えろ、頭中の糞(ファッキン)ギア回せ、0.2秒で考えろ。
………なんだ、決まってるじゃないか。
この二人ははっきり言って自業自得、なら俺のする事は一つ!
後ろの二人を守るために逃げる事、それしかねえ。
その考えに至った時、冥琳と視線が合わさり声が聞こえた。
『そうだ北郷、たとえどんな絶望的な状況に晒されようが
〝心静かに冷静に〟そして〝勝利のための努力を怠らない〟
軍師の心得良くぞ体得した。』
『はいっ! ありがとうございます先生!!』
『その心を忘れずに蓮華様を支えてやってくれ、頼んだぞ………。』
先生との会話が終わった瞬間俺は大喬を左腕に、小喬を右腕に抱えて歩法〝縮地〟にてその場を離れた。
後ろから聞こえる破壊音や阿鼻叫喚にも似た悲鳴の方向に見向きもせず一目散に逃げ出した。
今の俺にできる事、それは逃げる事しかないそう〝覚悟〟を持って俺は館へと逃げた。
夕方、阿修羅面笑い状態の冥琳と冥琳が真っ白な人型の灰の塊二体分を連れて帰って来た。
その日からしばらくの間執務室から昼からブツブツ呟いて仕事をする幽霊が出るという噂が流れた。
蓮華・甘寧・明命
ある日、俺は午前中の仕事を終えて調理場で肉マン5つ貰って庭を散歩していた。
<キンッ! ガキッン!>
何処からか金属音が?
その音は近くから聞こえてきたのでそっちに向かってみた。
「ハッーーー!!」
<キンッ!>
「蓮華と…、甘寧?」
音の正体は蓮華と甘寧が剣を交えていた。
近くで明命が真剣な目で見ているのをみるとどうやら鍛錬のようだ。
見ている分には甘寧優勢、というよりあしらってる感じだな。
かと思えば甘寧が攻めだした。
蓮華も必死で耐える、もう少し近くで見ようと歩き出した時蓮華と目が合い。
その瞬間に隙だらけになった蓮華の剣が飛ばされ、こっちに向かって飛んできた…。
「よっと。」
俺は右手の人差し指と中指で飛んできた剣の刃先を挟み。
そのまま剣を返そうと蓮華に近づいた。
「…なんの用だ、クズが。」
「………。」
「思春!!」
俺…、絶対嫌われてるよな……。
「…はいこれ。」
「あ、ありがとう。」
「用がすんだらサッサと消えろ。」
ホント…、嫌われてるよな……。
理由は分かる、以前雪蓮や冥琳に相談したら甘寧は蓮華に一途らしい。
そんな蓮華の大事な真名を胡散臭い俺が呼ぶのは我慢出来ないからだろう。
実際、俺はまだ甘寧の真名を許されてはいない。
「あ~、お邪魔みたいだから俺は行くわ。」
「待って一刀、思春!
お前は何故そうまで一刀にきつく当たる!!」
「…未だ信用できないからです。
この間も我が王と軍師殿の奥方を街に連れ出していました。」
この間の一件か。
「はぁ~、良く見ておられるんですね。」
「ムッ…!」
「ひっ!」
あ~あ、明命が硬直したよ。
「それで? どうしたら思春は一刀に真名を預けられるぐらい信用できるの?」
「………、少なくとも私より強ければ。」
「そう、…なら今から一刀と立会いなさい。」
「なっ!!」
「蓮華様!!」
いきなりの蓮華の申し出に驚く俺と甘寧。
蓮華は仕方ないでしょといった風に続ける。
「あなた達二人の仲が悪くて軍に何かあったらどうしようもないわ。
だから今のうちに少しは何とかしとかないと。」
そう言われてはお互いぐうの音も出ない。
「ハァ…、わかったよ……。」
蓮華に制服の上着預け、刀を抜いて俺は甘寧と向き合った。
蓮華と明命、たった二人の観衆の中俺と甘寧の勝負が切って落とされた。
「いくぞ。」
「………。」
先手は俺からだ。
接近し虎月を振り下ろす。
甘寧は後ろに下がって避けるが数ミリ単位の見切りだ。
すぐさま俺は突きへと変化させるが左側に避けられ右手で持った得物を振るわれる。
咄嗟に左手を引き右手は峰の先に置いて防御を図る。
<キィン!!>
甲高い金属音と共に離れる。
「早いな。」
「お前は力だけみたいだがな。」
「…そうかな。」
俺は少~しカチンときた。
なので…、
「縮地!!」
スピード勝負をしてみた。
「!! くっ!」
突撃と共に虎月を左から横に振りぬいた。
甘寧も武器を使って防御はしたが武器は右に弾けたので少し空いた甘寧の右脇腹に一歩踏み出て左正拳を叩き込んだ。
「ッ!!」
かすっただけだが甘寧の顔が苦痛に歪んだ。
しかし甘寧も弾かれた力を遠心力に換え一回転して横薙ぎの攻撃を繰り出す。
「ちぃ!!」
咄嗟に上半身を後ろに反らすが左頬を掠められた。
「…明命、今の一刀の動きが見えたか?」
「かろうじて…、ですが。」
「前言は撤回しよう…。」
「それはどうも……。」
それからも一進一退の攻防が繰り広げられ、勝敗は開始して四半刻ほどで着いた。
「はぁ!!」
「はぁぁーーー!!」
<ガキィィーン!! カラカラン>
お互いが助走を付けての打ち合い勝ったのは俺だった。
俺の高速の平突きを横に逃げた甘寧に横薙ぎで武器を弾き、結果先ほどの打ち合いもあってか多少手に痺れがあったらしく。
武器を手放した甘寧の負けだ。
「はぁ…はぁ…、俺の勝ちだな。」
「くっ…。
……思春だ。」
「え?」
「我が真名は思春だ。
今回は潔く負けを認め、我が真名を許そう。」
それだけ言うと思春は己の武器を持って去って行った。
「………はぅあ! す、すごいです一刀様。」
「ホント、すごいわ一刀! あの思春に勝つなんて。」
「あ、ありがとう。」
しかし、これで思春の真名も許してもらえたし。
今回の事で仲良く…なったと思っていいんだろうか?
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