No.992896

英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

soranoさん

第6話

2019-05-12 23:14:50 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2155   閲覧ユーザー数:1986

同日、PM12:00――――――

 

 

正午になる頃、ルーファス率いるクロスベル侵攻軍がメンフィル・クロスベル連合による迎撃態勢が整っている事も知らずにクロスベルに向かっていた。

 

~パンダグリュエル・ブリッジ~

 

「後10分で所定の位置に到着します。」

「所定の位置に到着後速やかに機甲兵、アハツェンを地上に降ろした後空挺部隊と共にベルガード門に同時侵攻する。今のクロスベルに”神機”はもはや存在しないとはいえ、思わぬ反撃を受ける可能性は十分に考えられる。決して油断はするな。」

「イエス・コマンダー。」

「フン、あの不可思議な能力を持っていた巨大な人形兵器―――”神機”とやらを失ったクロスベルに機甲兵も加えた我が軍に抵抗するような力は残っていないと思うがな。」

パンダグリュエルのブリッジで報告を受けたルーファスが指示を終えると、侵攻軍の”副将”としてルーファスと共にいるかつての”クロスベル独立国”の際、クロスベルに侵攻して第五機甲師団の多くを壊滅に追いやってしまった第五機甲師団の団長―――ワルター中将は貴族連合軍の”総参謀”を務めていたルーファスが侵攻軍を率いる”将”としての任務に就いている事に対する不満を隠さない様子で指摘した。

 

「いえいえ、クロスベルにはまだ例の”六銃士”とやらが残っているのですから油断はできません。何せ彼らは生身で”アハツェン”を破壊する所か、警備隊を僅かな期間で正規軍でも精鋭揃いである”第四機甲師団”を圧倒する程の実力をつけさせた指導力、そして”西ゼムリア通商会議”で宰相閣下とロックスミス大統領の考えを悟り、猛反撃をしてお二方の政治生命に少なくないダメージを与える事ができる程の策謀にも長けているのですから決して油断はできません。確か中将閣下は例の”合同演習”で彼らの実力の一端を知る事ができたはずですが?」

「ぐっ…………フン!幾ら連中がどんな”化物”であろうと空からの攻撃はどうしようもあるまい。人は鳥のように空を飛べないのだからな。今思い出すだけでも腹が立つ…………クロスベルを占領した後は連中を一人残らず捕まえて”合同演習”で受けた屈辱を倍返しにしてくれる…………!」

ルーファスの指摘に唸り声を上げたワルター中将はかつて自分に屈辱を与えた人物たち――――ギュランドロスやルイーネの顔を思い浮かべて表情を歪め

「フフ、彼らの能力は優秀であり、今後のエレボニアの繁栄の為には彼らを上手く使う必要もあるのですからほどほどにしてください。ただでさえ、わが国は12年前の”百日戦役”で大敗させられて一部の領土が奪い取られる原因となったメンフィル帝国と緊張状態に陥って、いつ戦端が開かれてもおかしくはない状況なのですから。」

ワルター中将の様子を見たルーファスは苦笑しながら指摘した。

 

「そのメンフィル帝国からの要求によると、メンフィル帝国と我が国がそのような状況に陥った原因である”ユミル襲撃”の件で貴族連合軍の”総参謀”であり、アルバレア公の長男でもある貴殿の身柄も求めているようだがな?メンフィル帝国と我が国の間で戦端が開かれる事を望んでいないのならば、エレボニアや皇帝陛下への忠義の為にも貴殿は大人しくメンフィル帝国に自首すべきではないのか?」

「ハハ、これは手厳しい…………―――ですが、メンフィル帝国は傲慢にも私や父達どころか、貴族連合軍とは無関係のアルフィン殿下や宰相閣下の身分剥奪に加えてメンフィル帝国にて私達同様殿下達に処罰を与える事やその他にも死者も出ていないユミル襲撃に対する賠償としてあまりにも理不尽な内容ばかりを要求しているのですから、アルフィン殿下の為、そしてエレボニアの為にも彼らの要求を受け入れる訳にはいきませんよ。」

ワルター中将の皮肉が混じった指摘に対して苦笑したルーファスは表情を引き締めて答えた。

 

「フン…………ん?前方の上空から何かが降りてきていないか?」

ルーファスの指摘に対して反論がないワルター中将は鼻を鳴らして目の前の景色を見つめたが何かに気づいて呟き

「ハハ、ご冗談を。クロスベルは飛行戦力を保有していませ――――!!??」

ワルター中将の言葉に苦笑したルーファスはワルター中将が視線を向けている方向に視線を向けてワルター中将の言葉は杞憂である事を指摘しかけたが、目の前に映る景色―――上空から自分達の行く手を阻むように降りてきたメンフィル・クロスベル連合による飛行艦隊を見ると血相を変えた。

 

~メンフィル帝国軍・魔導戦艦”ヴァリアント”・ブリッジ~

 

「―――これよりエレボニア帝国クロスベル侵攻軍の迎撃・殲滅を開始する。”パンダグリュエル”以外の飛行戦力は全て撃破せよ。」

「イエス・コマンダー!!」

一方その頃ブリッジの艦長席に座っているシェラは端末を操作しながら部下たちに指示を出していた。

 

~クロスベル帝国軍・魔導戦艦”ヴァリアント”・ブリッジ~

 

「さぁてと…………内戦で疲弊した自国の為にオレ様達のクロスベルを手に入れようとする自分勝手なエレボニアのバカ共に生まれ変わったクロスベルの”力”を思い知らせてやるぞっ!!」

「イエス、マイロード!!」

同じ頃ブリッジにいるギュランドロスは号令をかけ、ギュランドロスの号令にクロスベル帝国軍の兵士達はそれぞれ力強く答え

「―――これよりメンフィル・クロスベル連合によるエレボニア帝国軍の迎撃並びに殲滅を開始する。作戦通りまずは”パンダグリュエル”以外の敵戦力の殲滅を開始せよ!」

「イエス、マム!!」

エルミナは軍人達に指示を出していた。

 

そして空での戦端が開かれた。ルーファスはメンフィル・クロスベル連合による飛行戦力の登場に驚きつつも、すぐに立ち直って敵戦力の制圧の為の指示を出し始め、ルーファスの指示によって”パンダグリュエル”の周りにいた空挺部隊は指示通りの戦列を組んで敵戦力の制圧を開始しようとしたが、そこにルーファスを含めたエレボニア帝国軍にとってあまりにも想定外の”敵”が現れた。その”敵”とは――――

 

~クロスベル領空~

 

「おぉぉぉぉぉぉ…………!龍炎撃!!」

”エレボニア帝国軍にとっての想定外過ぎる敵”――――リィンが操縦する”灰の騎神”ヴァリマールは戦列を組んでいるエレボニアの空挺部隊の内の一機を上空からの奇襲で一刀両断し、一刀両断された飛行艇は飛行艇の中にいる軍人達を巻き込んで大爆発を起こして空の藻屑となった。

「―――下がれ!!」

続けてヴァリマールは渾身の力を込めた抜刀で広範囲を一閃するクラフト―――孤月一閃で自分の周囲にいる空挺部隊を一閃して撃破した!

 

「なああああああああああっ!?」

「あ、あの騎士は確か内戦時アルフィン殿下を旗印とした”紅き翼”の…………!」

「”灰の騎士”だと!?」

ヴァリマールの登場にまだ撃墜されていない空挺部隊は混乱していたが、そこに上空から複数のグレネードが襲い掛かって空挺部隊に命中した!

「うおっ!?」

「い、一体何があった!?」

「伍の型――――光鬼斬!!」

グレネードが命中した事でそれぞれ怯んでいる様子の空挺部隊目掛けてヴァイスリッターが居合の一撃を放って撃破した!

 

~パンダグリュエル・ブリッジ~

 

「”灰の騎士”にあの時ガレリア要塞を丸ごと消滅させた白い”神機”だとぉっ!?一体何がどうなっている!?」

「バ、バカな…………メンフィル帝国とクロスベルが連合を組んだことはアランドール少佐の報告にあったが、もう既に本格的な連合を組んだ上クロスベルがあれ程の飛行戦力を保有しているだと!?しかも何故”神機”に加えて”灰の騎神”まで…………くっ…………!」

ブリッジで味方戦力が次々と撃墜される様子をワルター中将と共に信じられない思いで見ていたルーファスはリィンが何を考えているのかを知るためにARCUSを取り出してリィンのARCUSに通信をしたが、リィンのARCUSは既にリィン自身の手で破壊されていた為通信は繋がらなかった。

 

「こんな時に限って…………!一体何を考えているんだ、リィン君――――!」

リィンのARCUSに繋がらなかった事に唇を噛み締めたルーファスは表情を歪めて空でヴァイスリッターやメンフィル・クロスベル連合の”ルナ=ゼバル”の部隊と協力してエレボニア帝国の空挺部隊を次々と撃墜し続けるヴァリマールを睨んだ。

 

 

~貴賓区画~

 

「”灰の騎神”ヴァリマール…………何故リィン・シュバルツァーがクロスベル侵攻軍を…………」

「――――――?」

同じ頃貴賓区画の一室で戦況を見ていたアルティナは呆け、アルティナの言葉に続くようにアルティナの背後に現れた漆黒の傀儡―――クラウ=ソラスはアルティナとミリアムにしかわからない独特の機械音を出していた。

 

 

~特務支援課~

 

「あの灰色の機体がエレボニア帝国の伝承の”巨いなる騎士”―――”騎神”…………」

「あ、圧倒的ですね…………」

「は、はい…………エレボニア帝国軍が何もできないまま次々と撃破され続けていますし…………」

「”神機”と違ってグレネードのような遠距離武装は搭載されていないようですが、その不足した部分は”八葉一刀流”の剣技で補っているようですね。」

「ああ…………話には聞いていたが、まさかディーターさんと違って機体に乗った状態で”まるで人が剣を振るっているようにしか見えない動作で操作する事ができる”なんてな…………」

「”神機”を操縦するエリゼちゃんもなかなかだが、それでもあの”灰の騎神”とやらと比べると操縦は僅かに劣っているから、機体に乗った状態での戦闘はあの”灰の騎神”ってのが上だな。」

一方その頃端末に映る”戦場”の戦況を見ていたエリィとノエル、ユウナは驚き、ティオの推測にロイドは頷き、ランディは真剣な表情でヴァリマールを見つめていた。

 

「”騎神”や”神機”も凄いけど、”魔導技術”によって作られた飛行艇も凄いよね~。」

「ええ…………かつては”大陸最強”と恐れられていたエレボニア帝国の空挺部隊を圧倒していますし…………」

「あのような物を作りだす事ができるメルキア帝国の”魔導技術”は一体どれほどの技術力なんでしょうね…………?」

シャマーラやセティ、エリナは端末に映る”魔導技術”によって作られた戦艦や飛行艇を見て考え込み

「「………………………………」」

二人のキーアはそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいた。

 

 

~遊撃士協会・クロスベル支部~

 

「まさに一方的な戦い(ワンサイドゲーム)ね…………」

「ああ…………メンフィル・クロスベル連合の戦艦や飛行艇の性能がエレボニア帝国の空挺部隊を上回っている事もそうだが、何よりもあの2体の”騎士”に対してエレボニア帝国の空挺部隊は何の対策もできていないようだしね。」

「無理もないわ…………ただでさえメンフィル・クロスベル連合軍の登場はエレボニア帝国軍にとって想定外過ぎるのに、かつてクロスベルに侵攻しようとした機甲師団を壊滅に追いやった”神機”と内戦終結の鍵となった”騎神”まで”敵”として現れているのだから、今頃エレボニア帝国軍は色々な意味で混乱していると思われるもの…………」

「この戦い、どう考えてもエレボニア帝国軍に勝ち目はないな。」

「それにこの戦いに限らずメンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”もカルバードの件同様、エレボニア帝国の勝ち目は絶望的と言ってもいいだろうな…………」

同じ頃ロイド達のように端末に映る”戦場”の戦況を見ていたミシェルは疲れた表情で溜息を吐き、リンとエオリアは重々しい様子を纏って呟き、スコットは静かな表情で呟き、ヴェンツェルは複雑そうな表情で今後の展開を推測した。するとその時ミシェル達同様ロカとサティアと共に戦況を見守っていたセリカは立ち上がった。

 

「セリカ、どうしたの?」

セリカの突然の行動にロカは不思議そうな表情で声をかけたが

「―――”既に勝敗は決している”のだから、これ以上見ていても時間の無駄だ。無駄な時間を過ごすくらいなら、依頼を請けていた方がよほど効率的だ。―――行くぞ、ロカ、サティア。」

「わかったわ。」

「それじゃあ私達は先に失礼するわね、みんな。」

セリカの意志を知ると立ち上がり、セリカとサティアと共にギルドから出ていこうとした。

 

「ちょっと待って。リタちゃんや貴方の”使徒”達もそうだけど、エステル達も”どうしても外せない用事がある”からって理由でクロスベルから離れたみたいだけど…………一体何の為にエステル達がいなくなったのかを教えて欲しいのだけど。」

出ていこうとした三人を見たミシェルは制止の言葉を口にしたが

「…………エステル達がクロスベルから離れた理由は”第二のハーメルが生まれる事を阻止する為”で、その為には人手がいるとの事だからマリーニャ達にエステル達の加勢をさせている。」

「なんですって!?」

セリカが口にした驚愕の事実に血相を変えた周りの遊撃士達同様血相を変えて声を上げた。

 

 

~帝都クロスベル・中央通り~

 

「おお…………っ!」

「あのメンフィル帝国が味方にいるとはいえ、まさかクロスベルがエレボニア帝国軍を圧倒する日が来るなんて…………!」

「さすがはヴァイスハイト陛下達―――”六銃士”よね…………!」

街に設置されている臨時用の巨大なモニターに映る戦況を見ているクロスベルの市民達は興奮し

「う、嘘だ…………エレボニアがクロスベルに負けるなんて…………!?」

「わ、私達悪夢でも見ているの…………!?」

「エレボニアはどうなってしまうんだ…………?」

観光や商売等の目的でクロスベルを訪れていたエレボニア人は絶望や不安の表情を浮かべていた。

 

「あの灰色の騎士を駆るローエングリン城で出会った黒髪の少年―――リィンがキーア達の話にあった”私が復活したいずれの世界軸でも必ず私が生涯を共にすることを決めた人”………………………………」

市民達がモニターに夢中になっている中、かつてリィン達が”特別実習”での”ローエングリン城”で出会った謎に満ちた女性でその正体はセリカの身体の持ち主である”正義の大女神アストライア”の妹神であり、並行世界のキーアの”因果”を操る能力によってゼムリア大陸で復活した”慈悲の大女神アイドス”――――アイドス・セイルーンは静かな表情でモニターに映るヴァリマールを見つめ

「エステルのように多くの”絆”に溢れながらも、何故その”絆”を断つような事をしているのかを確かめてから…………”並行世界の私のように”彼を私と生涯を共にしてくれる人にするかどうかを決めたほうがよさそうね。」

ローエングリン城で出会ったリィンや周りの人物達の様子を思い浮かべながら呟いた後その場から去っていった――――

 

 

 

という事で今回の話の最後でベルフェゴールに続いて”彼女”も早期登場しましたwwなので予告通り、リィンと”彼女”との(使い魔?)契約ももうすぐの予定です。また、エステル達の件は後に判明し、エステル達がどのようにしてその情報を手に入れたかも後の話で判明するようにするつもりです。更にエステル達の話を書く際、ひょっとしたら暁の軌跡のメインキャラ達も登場し、活躍するかもしれません。何故ならエステル達の話を書く際に、エステル達が戦う敵を率いるリーダー格は暁の軌跡で登場するアイリにしようかなとも考えていますので(ぇ)

 

 


 
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