No.992985 英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~soranoさん 2019-05-14 00:28:47 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:1629 閲覧ユーザー数:1457 |
そして空の戦いはエレボニア帝国軍の空挺部隊はヴァリマールとヴァイスリッターを加えたメンフィル・クロスベル連合の猛攻によって次々と撃破され、残るはパンダグリュエルのみとなり、ヴァリマールとヴァイスリッターがパンダグリュエルに近づくと甲板に待機していたアハツェンが砲口をヴァリマールとヴァイスリッターに向けた。
~パンダグリュエル・甲板~
「これ以上この艦に近づかせるな!撃ち落とせ―――ッ!」
「イエス・サー!!」
指揮官の指示によってアハツェンの砲口は一斉に火を噴いて砲弾はヴァリマールとヴァイスリッターに襲い掛かり、爆発による煙に包まれた。
「やったか…………!?」
ヴァリマールとヴァイスリッターが爆発に巻き込まれる様子を見た指揮官は自身の望み通りの展開になっている事を口にしたが爆発による煙が晴れるとそこにはヴァリマールの前に出て障壁を展開しているヴァイスリッターの姿があり、障壁によって砲撃を全て防がれたことによって2体は無傷であった!
「ば、馬鹿な…………!?無傷だと…………!?」
「く…………っ、もう一度集中砲撃だ!」
無傷で現れた2体を見た軍人が驚いている中指揮官は再び指示を出そうとしたが
「八葉一刀流七の型―――無想覇斬!!」
「あ――――」
ヴァリマールが一気に詰め寄って抜刀によって無数の斬撃波を発生させる奥義をアハツェンの部隊に叩き込んだ。するとアハツェンは一台残らず大爆発を起こして炎上し始めた!
「ど、どうして”灰の騎士”が…………敵に…………」
「ううっ…………」
爆発に巻き込まれたりヴァリマールの斬撃によって多くの正規軍の軍人達の命が失われた中、辛うじて生き残った数人の軍人達はそれぞれ重傷を負った様子で甲板に倒れて呻いていた。その後ヴァリマールとヴァイスリッターがそれぞれ甲板に降り立つと”ヴァリアント”や”フォーミダブル”の甲板に待機していたメンフィル・クロスベル連合軍が甲板に描かれていた巨大な転移魔法陣によってパンダグリュエルの甲板に転移した!
「よぉし、鬱陶しい蠅共は片づけた!次はエレボニアの連中の生身に俺達クロスベルに手を出そうとした愚かさを思い知らせてやるぜぇぇぇぇ―――ッ!」
「メンフィルもクロスベルに後れを取るな!この戦いは同胞達に手を出した挙句謝罪すらもしなかった傲慢なエレボニアの愚か者共に余達メンフィルの”怒り”を思い知らせる戦いの始まりだ!誇り高きメンフィルの兵(つわもの)達よ!その”力”、存分に震うがいい!!」
「「総員、突撃!パンダグリュエルを制圧せよ!!」」
「オオオオオォォォォォォォ――――――ッ!!」
軍人達と共に甲板に現れたギュランドロスとリフィアは号令をかけ、二人の号令にメンフィル・クロスベル連合はそれぞれの武装を空に向けて掲げて力強く答えた後次々とパンダグリュエルの艦内に突入した!
~ブリッジ~
「て、敵軍、艦内への侵入を開始しました!」
「…………く…………っ…………(やむを得ん、か…………)」
メンフィル・クロスベル連合軍が艦内に突入する様子を部下が慌てた様子で報告している中唇を噛み締めて端末を睨んでいたルーファスはその場から離れ始めたが
「こんな時にどこにいくつもりだ、ルーファス卿!?」
ルーファスの行動に気づいたワルター中将が呼び止めた。
「…………今回のクロスベル侵攻、誠に遺憾ではありますが我が軍の敗北、並びにクロスベル侵攻は”失敗”という結果になってしまう事は目に見えています。ならば私はクロスベル侵攻軍を率いる将として今回の失態の責任を取るために、中将閣下を含めて一人でも多くの兵達をエレボニアに生還させ、今回の件で知った情報を持ち帰って頂くために私自身も前線に出て兵達に脱出用の飛行艇が待機している格納庫へと続く撤退ルートの確保の指揮をし、中将閣下達が撤退を終えるまで死守するつもりですので、中将閣下は撤退ルートの確保の連絡が来るまでこちらで指揮を取ってください!」
「ルーファス卿、そなた……………………―――よかろう、エレボニアに帰還した際は皇帝陛下や宰相閣下達にそなたのエレボニアと皇帝陛下に対する真の忠誠心をお伝えしておこう。―――そなたの武運を祈っている。」
「ありがたき幸せ。中将閣下にも女神達のご加護を。」
そしてワルター中将に自分がブリッジから離れる理由を説明してワルター中将が納得すると急いでブリッジを出てARCUSを取り出してある人物に通信をした。
~通路~
「―――こちら、”黒兎(ブラックラビット)”。」
「私だ。これよりパンダグリュエルからの離脱を開始する。君は急いで私に合流し、合流後はクラウ=ソラスのステルス機能を発動させて私を離脱用の飛行艇を待機させている格納庫まで同行してくれ。もちろん、君も私と共に脱出用の飛行艇に乗ってパンダグリュエルから離脱してもらうから安心してくれ。」
「…………了解しました。これより行動を開始します。」
「…………ようやく、宰相閣下の”子供達”の”筆頭”として動けるようになった私がこんな異国の地で果てる訳にはいかないのでな。―――すまないが貴方は私の為にこの艦と運命を共にしてくれ、ワルター中将。」
ある人物―――アルティナに通信でワルター中将に説明した内容とは全く異なる内容の指示をしたルーファスはブリッジに続く扉を見つめて不敵な笑みを浮かべた後急いでその場から離れ始めた。
~甲板~
一方その頃メンフィル・クロスベル連合軍が艦内への突入をしている中セレーネ達はヴァリマールとヴァイスリッターの元へと向かった。すると二体からそれぞれリィンとエリゼが光に包まれて出てきた。
「ご無事ですか、兄様、姉様…………!」
「ああ、問題ない。それにしてもさっきの障壁は助かったよ、エリゼ。」
「いえ、兄様のお役に立てて何よりです。」
「それで?戦場での”手柄”を狙っているお前さんとしては、この小部隊でどういう戦いをするつもりだ?」
「―――決まっています。戦場の”手柄”として最も評価されるのは”敵軍を率いる敵将の撃破”です。そしてこのクロスベル侵攻軍を率いる”敵将”は………」
「…………元貴族連合軍の”総参謀”にして”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”――――”翡翠の城将(ルーク・オブ・ジェイド)”であるルーファスさんですわね。」
フォルデの問いかけにリィンは静かな表情で答え、リィンに続くようにセレーネは真剣な表情で答えた。
「あのルーファス卿が”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”―――”革新派”を率いるオズボーン宰相直属の”子供達”を率いる人物である話には驚きましたが…………彼の首を狙うのですから、やはり艦内の様子を見て指揮を取れる場所であるブリッジを目指すのですか?」
「いや…………―――ベルフェゴール!」
「はいは~い、早速私に何か頼みたい事でもあるのかしら、ご主人様♪」
ステラの問いかけに首を横に振って答えたリィンはベルフェゴールを召喚し、召喚されたベルフェゴールはリィンにウインクをした。
「この艦内のどこかに離脱用の飛行艇があるはずだから、ベルフェゴールはその飛行艇がある格納庫を探って、その場所を見つけたら俺達をそこに転移魔術で連れて行ってくれ。」
「了解♪それじゃあ私は一足先に艦内に入らせてもらうわね♪」
リィンの指示に頷いたベルフェゴールは転移魔術で艦内に移動した。
「兄様、何故ベルフェゴール様に脱出用の飛空艇を…………?」
「多分リィンはそのアルバレアの長男はこの戦場から離脱すると睨んでいるから、あんな指示を出したんだと思うぜ?」
「ええ…………”Ⅶ組”での”特別実習”、そして内戦でルーファスさんの性格をある程度把握する事ができましたが…………あの人は決して自分が劣勢になっても、自分が敗北―――”死”に至る最後まで戦い抜くような諦めの悪いタイプではありません。ましてや彼は今まで戦闘もそうですが、戦場での”敗北”を経験していないのですから。」
「言われてみればルーファスさんは内戦時、常に有利な立場でいられた”貴族連合軍”の”総参謀”でしたから、”敗北”は経験していないはずですわよね…………?ユミルでわたくし達と戦った時もルーファスさんが勝ちましたし…………」
「そんなルーファス卿にとって経験する初めての”戦場での敗北”…………更に彼の正体が”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”である事を考えると、オズボーン宰相が考えている今後の”計画”に大きな支障となる私達メンフィル・クロスベル連合に対する対策をたてるためにも、この戦場からの離脱を考えてもおかしくありませんね。」
エリスの疑問に答えたフォルデの推測に頷いたリィンの説明を聞いたセレーネはルーファスの事を思い返し、ステラは静かな表情で呟いた。
「それに”煌魔城”でのオズボーン宰相に対する忠誠心を考えると、あの人はようやくオズボーン宰相の子供達の”筆頭”として堂々と動けるようになったのに、”想定外の出来事によって異国の地であるクロスベルに敗北して命を失う”という事は絶対に受け入れられないだろう。―――だから俺はルーファスさんのそういった性格を利用し、今回の戦での一番の”手柄首”である彼を”討つ”。」
「お兄様…………」
「……………………」
クラスメイトであり、大切な仲間の一人であるユーシスが慕っていた兄でもあるルーファスを討つ事を口にしたリィンをセレーネは複雑そうな表情で見つめ、エリゼは重々しい様子を纏って目を伏せて黙り込んでいた。
「―――ベルフェゴールが格納庫を探しているとはいえ、俺達が先に見つける可能性もある。俺達はベルフェゴールの合流を待ちつつ、艦内の緊急離脱用の飛行艇がある格納庫を探す。勿論途中で出会う敵兵は全員殲滅するぞ!」
「「「「はいっ!」」」」
「おうっ!」
リィンの号令にエリゼ達は力強く答え
「―――来い、メサイア!メサイアはエリスのサポートを頼む。」
「わかりましたわ。」
更にメサイアを召喚してメサイアに指示を出した後エリゼ達と共に艦内に突入した。
~通路~
「き、貴様は…………!?」
艦内の緊急離脱用の飛行艇がある格納庫を探す為に艦内の探索をしつつ、時折出会う正規軍の兵士達を殲滅しながら進んでいたリィン達だったが突如聞こえた声に足を止めて武装を構えて声が聞こえた方向に視線を向けると、そこには武装を構えたクロイツェン州の領邦軍がいた。
「あの軍装は確か領邦軍でしたね…………」
「ええ…………それもあの色はクロイツェン州の領邦軍ですわ…………」
兵士達の軍装を見たステラとセレーネはすぐに相手が正規軍ではなく、領邦軍である事に気づいた。
「貴様は確か”特別実習”とやらでバリアハートに訪れて、レーグニッツ知事の息子の脱走を手助けしたユーシス様の同期生…………!」
「何だと…………!?」
「という事はケルディックやバリアハートで我らを邪魔した”Ⅶ組”とやらの一員か…………!」
「……………その口ぶり、バリアハートの地下水道で俺達を包囲した領邦軍の兵士の一人か…………」
「お知り合いなのですか?」
領邦軍の一人が口にした言葉を聞いた他の領邦軍がリィンを睨んでいる中静かな表情で呟いたリィンにエリスが訊ねた。
「ああ。”特別実習”でバリアハートを訪れた際、俺のクラスメイトの一人―――レーグニッツ知事の息子であるマキアスがレーグニッツ知事に対する脅迫を考えたアルバレア公による指示で不当な理由で逮捕されて領邦軍の詰所の地下の牢屋に監禁されたんだが…………俺達が地下水道を使って牢屋から解放したマキアスと共に脱出しようとしたんだ。まあ、途中で領邦軍が放った軍用魔獣で足止めをされて領邦軍に包囲されたんだが…………その時はサラ教官が呼んできたルーファスさんがサラ教官と共に現れて俺達を捕えようとした領邦軍を撤収させたんだ。」
「バリアハートでそのような事が…………」
「バリアハートでの”特別実習”…………わたくしとお兄様達が出会う前にあった”特別実習”で当時仲が相当悪かったユーシスさんとマキアスさんが和解するきっかけになった件ですか………」
「おいおい…………ユミルの件以外でもそんなアホな事をしていたのかよ、アルバレア公爵は。仮にも”四大名門”の一角の当主だろ?」
「”四大名門”以前に帝国貴族として相応しい方ではなかった人物のようですね、アルバレア公爵は。」
リィンの説明を聞いたエリゼは厳しい表情で領邦軍を睨み、セレーネは静かな表情で呟き、フォルデとステラはアルバレア公爵の愚かさに呆れていた。
「黙れ!公爵閣下に対するその口のきき方、不敬であるぞ…………!」
「ユーシス様の同期生―――エレボニアの名門士官学院であるトールズの学生であった何故貴様がこの場に…………―――!そのメンフィル帝国の紋章が刻み込まれた軍装…………まさか貴様、祖国を裏切ってメンフィル帝国に寝返ったのか!?」
アルバレア公爵に対して悪く言うステラとフォルデを領邦軍の一人が睨んでいる中、かつてバリアハートでリィン達を拘束しようとした領邦軍の一人はある事実に気づいてリィンを睨み
「そもそもトールズの学生だからとはいえ俺がエレボニア帝国の出身であると思っていた時点で大きな間違いだ。俺は元々”メンフィル帝国の貴族”だから、祖国を裏切るような事はしていない。―――みんな、行くぞ!」
「おおっ!」
睨まれたリィンは静かな表情で反論した後号令をかけてエリゼ達と共に領邦軍との戦闘を開始した!
「喰らえ――――!」
「風よ、散れ―――ウィンドバレット!!」
「ぐあっ!?」
「ががっ!?」
領邦軍の数人はリィン達に銃口を向けて銃撃を放とうとしたがそれよりも早く既にライフルの銃口に風の魔力エネルギーを溜め終えていたステラが放った風の魔力を込めた弾丸で範囲攻撃するクラフト―――ウィンドバレットを受けて怯み
「そこだ!二の型―――疾風!!」
「二の型・改―――雷鳴剣!!」
「ぐふっ!?」
「があ…………っ!?」
ステラの攻撃で敵達が怯むとリィンとエリゼはそれぞれ電光石火の斬撃で敵達の急所を突いて絶命させた。
「「アークス駆動―――エアリアル!!」」
「吹き荒れよ―――ハリケーンブリザード!!」
後方でオーブメントを駆動させていた領邦軍の兵士達はリィン達の後方にいるセレーネ達に竜巻を発生させるアーツを放ったがセレーネは瞬時に自身の周囲に猛吹雪を発生させる魔術を発動させて二重の竜巻を吹き飛ばし
「ついてこれるか?そらぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ぐああああああっ!?」
セレーネが竜巻を吹き飛ばすとフォルデが領邦軍の一人に華麗な槍舞を叩き込むヴァンダール流の槍のクラフト―――スピアダンサーを放って絶命させ
「漆黒の闇槍よ―――死愛の魔槍!!」
「ぐうっ!?」
「今ですわ!」
「はい!―――セイッ!!」
「ぐ…………あ…………っ!?」
メサイアは漆黒の闇槍を放つ魔術でもう一人の領邦軍の兵士を怯ませ、メサイアとリンクを結んでいるエリスが怯んでいる兵士に詰め寄って細剣(レイピア)による斬撃で兵士の首筋を切り裂いて絶命させた!
「いっちょ上がりっと。領邦軍がこっちにいたって事はもしかしてこの周辺が”アタリ”か?」
「…………そうですね。領邦軍の中でも”アルバレア公爵家”に忠誠を誓っているクロイツェン州の領邦軍がいたのですから、その可能性は十分に考えられると思うのですが…………」
「―――うふふ、まさにその通りよ♪」
フォルデが呟いた推測にリィンが考え込みながら答えかけたその時ベルフェゴールが転移魔術でリィン達の目の前に現れた。
「ベルフェゴールさん、”まさにその通り”という事は緊急離脱用の飛行艇がこの近くに…………?」
「ええ、既に兵士達が脱出の準備をしていたから、敵将が来る前にまずは兵士達の殲滅をした方がいいと思うわよ。」
「わかった。すぐに頼む、ベルフェゴール。」
「了解。」
「みんな、いつでも戦闘が始められるようにだけしておいてくれ!」
「「「「はいっ!」」」」
「おう!」
そしてリィン達はベルフェゴールの転移魔術でその場から消えて脱出用の飛行艇が停泊している格納庫に現れた後脱出の準備をしていた兵士達に奇襲して殲滅した。
一方その頃デュバリィ達”鉄機隊”はメンフィル・クロスベル連合がエレボニア帝国軍の兵士達と艦内での戦闘を繰り広げている中、戦場を駆け抜けて自分達の先を阻む兵士達を凄まじい速さで撃破しながらブリッジに突入していた。
~ブリッジ~
「ルーファス・アルバレア!その命、”鉄機隊”である私達がもらい受けますわ!」
「な、なんだ貴様らは!?」
「て、”鉄騎隊”だと…………?」
「”槍の聖女”が率いていたというあの…………?」
ブリッジに突如現れて宣言したデュバリィに対してワルター中将を始めとしたブリッジにいたエレボニア帝国軍は困惑していた。
「へ…………ルーファス・アルバレアがいない…………?」
「あら?艦内の戦況を見て指揮をしているだろうから、てっきりブリッジにいるのだと思っていたのだけど。」
「フム、アテが外れたのか?」
周囲を見回してルーファスがいない事に気づいたデュバリィはは呆け、デュバリィの後から入ってきたエンネアとアイネスはそれぞれ首を傾げていた。
「!その紋章…………メンフィルか!総員、戦闘態勢に入れ!」
「くっ、ここまで突入されるなんてまさか中将閣下の脱出の為に前線で指揮を取っておられるルーファス様はもう討たれたのか!?」
デュバリィ達が身に着けているメンフィル帝国軍を表す紋章に気づいたワルター中将は自身の武装を構えてブリッジ内にいる兵士達に指示をし、指示をされた兵士達はそれぞれ戦闘態勢に入っている中一人の兵士が唇を噛み締めてある事を口にした。
「”脱出の為に前線で指揮を取っている”…………―――なるほど、まさか”その行動を真っ先に取る”とはね。まあ、”将”として決して間違った選択とは言えないけど…………」
「仮にも軍を率いる総大将ならば、最後まで戦い抜くべきなのに、我が身可愛さに真っ先に離脱を選ぶとは”武”を誇っていたエレボニアの”将”の面汚しだな。」
「くっ…………貴賓区画にいると思われた黒兎(ブラックラビット)が見当たらない時点で気づくべきでしたわ…………!」
兵士の一人が呟いた言葉を聞いてすぐにルーファスが離脱行動をしている事に気づいたエンネアとアイネスは厳しい表情をし、デュバリィは自分の迂闊さに唇を噛み締めて呟いた。
「フン、たった3人でここに辿り着いた事には褒めてやるが所詮は小娘共!貴様ら如き、第五機甲師団団長にしてクロスベル侵攻軍の”副将”である私にとっては造作もない相手だが、この場に辿り着いた褒美として特別に相手をしてやろう。総員、まずは包囲せよ!」
「イエス、コマンダー!!」
一方デュバリィ達の様子を気にしていないワルター中将は嘲笑をした後兵士達に指示をしてデュバリィ達を包囲させ
「私達が小娘で、”如き”ですって…………?」
「フフ、ルーファス・アルバレア程ではないとはいえ”副将”―――それも正規軍の機甲師団団長の撃破もそうだけど、ブリッジを制圧した事も戦功として評価されるでしょうから、ちょうどよかったじゃない。」
「ああ…………!我ら”鉄機隊”を侮辱した事を心の底から後悔させてやろう…………!」
ワルター中将の言葉を聞いたデュバリィは表情を厳しくし、エンネアは口元に笑みを浮かべていながらも目は笑っていなく、アイネスはエンネアに続くように不敵な笑みを浮かべて答え
「当然ですわ!アイネス、エンネア!”星洸陣”でとっとと殲滅して、ルーファス・アルバレアを探しますわよ!」
「あの程度の相手に”星洸陣”まで使うなんてさすがに大人げないような気もするけど…………」
「まあ、我らへの侮辱は”至高の武”の存在たるマスターに対する間接的な侮辱でもあるのだから、その”報い”を受けてもらう必要はあるな。」
デュバリィの指示にエンネアとアイネスは苦笑した後それぞれ足元から光を放ち始め、互いに戦術リンクのようなもの――――様々な身体能力の上昇に加えて体力や傷も自動的に回復させるデュバリィ達”鉄機隊”の”本気”である証の特別な戦術リンク―――”星洸陣”を発動させ、ワルター中将達に襲い掛かった!
~格納庫~
「脱出の準備はできているであろうな!?――――――な。」
「これは…………」
同じ頃、緊急離脱用の飛行艇を待機させている格納庫に到着したルーファスは周囲の惨状―――血を流して地面に倒れている絶命した領邦軍の兵士達を見ると絶句し、アルティナは驚いた。
「―――予想通り、やはり戦場からの離脱を選んだようですね。」
するとそこにリィン達が近づいてきてルーファス達と対峙した。
「リィン・シュバルツァー…………それにエリス・シュバルツァーやセレーネ・L・アルフヘイムに加えて”守護の剣聖”―――エリゼ・シュバルツァーまで何故この艦に…………」
「君達が”英雄王”の指示によってメンフィルの本国に帰還させられた事は聞いていたが…………まさかリィン君に加えてセレーネ君やエリス君までメンフィル軍に協力―――いや、入隊していたとはね…………リィン君、何故エレボニアを―――”Ⅶ組”を裏切った!?」
リィン達の登場にアルティナが驚いている中、ルーファスは厳しい表情でリィン達を見回した後リィンに問いかけた。
「何故もなにも、俺は元々メンフィル帝国軍の訓練兵として所属していて、オリヴァルト殿下の要請を受けたリウイ陛下の指示によってトールズに留学していたのですから、元いた場所に戻っただけですし、そもそも俺達は”最初からエレボニア帝国ではなくメンフィル帝国に所属しているメンフィル帝国人”なのですから、ルーファスさんの”エレボニアを裏切った”というその指摘は間違っていますよ。」
「…………確かに君達はメンフィル帝国人だ。だが、トールズに入学してから君とセレーネ君はずっとエレボニアの為に特別実習で様々な活躍をし、内戦も乗り越えた。それにエリス君はアルフィン殿下のお付きの侍女として、殿下を支えてくれていた。なのに何故大切な仲間達や殿下を裏切る行為であるメンフィル帝国軍に所属してエレボニアに刃を向けたんだ…………?」
静かな表情で答えたリィンの指摘に対してルーファスも静かな表情で答えた後困惑の表情でリィン達を見つめた。
「…………っ!貴族連合軍の”総参謀”として、エレボニアに対して反乱を起こして姫様達に刃を向けた貴方にだけは言われる筋合いはありません…………!」
「エリスお姉様の言う通りですわ。例えオズボーン宰相の指示があって敢えて貴族連合軍の”総参謀”として動いていたとはいえ、内戦では貴族連合軍の”総参謀”としてカイエン公達の悪事に加担していたのですから、どんな言い訳があろうと貴方は”反逆者”ですわ!」
ルーファスの言葉に対して唇を噛み締めたエリスは怒りの表情で指摘し、セレーネもエリスに続くように怒りの表情でルーファスを睨んで指摘した。
「やれやれ…………随分と嫌われてしまったものだ。それでリィン君、君達の真意について答えてもらいたいのだが?」
二人に睨まれたルーファスは苦笑した後リィンに問いかけた。
「―――エレボニアの滅亡を防ぐ為ですよ。」
「え…………」
「何…………?それはどういう意味だ…………?」
リィンの答えを聞いたアルティナが呆けている中、ルーファスは眉を顰めて指摘した。
「ルーファスさんでは理解できな―――いや、理解したくないでしょうけど、今回のメンフィル・クロスベル連合とエレボニア帝国との戦争…………どう考えても”エレボニア帝国に勝ち目は一切ありませんし、メンフィル帝国は決して和解の為の要求内容を妥協する事はありません。”だったら、戦争で活躍して昇進し、戦後のエレボニア―――”メンフィル・クロスベル連合によって占領されたエレボニアについて口出しできる立場”になって、せめてエレボニア帝国が滅亡する事だけは防ぐ為に…………そしてメンフィル帝国から厳しい処罰が求められているアルフィン殿下の処罰を可能な限り穏便な内容にしてもらえる進言ができる立場になる為にも、今回の戦争は敢えて”メンフィル帝国側として”参加する事にしたのですよ。―――幸いにもメンフィル帝国は”実力主義”ですから、戦争で手柄を立てれば立てる程その手柄に相応した立場を用意してくれるとの事ですし。」
「………理解できません。何故そこまでして、エレボニアを…………」
「な…………あ…………っ!?」
リィンの真意を知ったアルティナが困惑している中、ルーファスは信じられない表情で口を大きく開けてリィンを見つめた。
「―――そしてその手柄の一つとしてまずはメンフィルの同盟国であるクロスベルに侵攻しようとするエレボニア帝国軍を率いる”総大将”にして”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”でもある貴方をここで討たせてもらいます。」
ルーファスに太刀を向けたリィンはそのまま”鬼の力”を解放した姿になった!
「くっ…………早まった事は止めるんだ、リィン君!そんな無謀な事、Ⅶ組は絶対に望んでいないし、メンフィル帝国側として戦争に参加すればいずれはⅦ組の関係者達の命を奪う事になるかもしれないし、何よりも君にとって唯一の血が繋がった父君であられる宰相閣下にまで刃を向ける事になるのだぞ!?」
「え…………リィンさんがあのオズボーン宰相の息子…………」
「今の話は本当なのか、リィン?」
リィンが本気で自分の命を狙っている事に唇を噛み締めたルーファスは何とかリィンを説得しようと言葉を続け、ルーファスが口にしたある事実を聞いたステラは驚き、ステラ同様驚いたフォルデは目を丸くしてリィンに訊ねた。
「ええ、最近判明した事ですけどね。―――確かにオズボーン宰相は俺と血の繋がった父親なのでしょう。ですが、俺にとっての本当の両親はオズボーン宰相が冬山に捨てた俺を拾ってエリゼ達と区別せず自分達の子供同様に育ててくれた父さんと母さん―――シュバルツァー男爵夫妻だ!幼い俺を捨て、自分の野望の為だけにクロウを含めた多くの人達の人生を歪めた挙句、今更父親面をして俺を利用しようとするオズボーン宰相の事は俺の”父親”として絶対に認めない!いずれはオズボーン宰相も討ち、真の意味で親子の縁を断つ!」
「「兄様…………」」
リィンがルーファスに向けて口にした決意の言葉を聞いたエリゼとエリスは静かな表情でリィンを見つめ
「くっ…………宰相閣下の事も含めて”何も知らない身”で、愚かな事を…………!飛行艇での離脱が厳しい以上、君のクラウ=ソラスで戦場から離脱する!何とかこの場を切り抜けてハッチを開けるスイッチがある場所まで撤退し、ハッチを開けた後はクラウ=ソラスに君と私を保護させてそのまま空に離脱する!」
「了解しました。クラウ=ソラス。」
「――――――」
一方唇を噛み締めてリィンを睨んだルーファスは自身の得物である騎士剣を構えてアルティナに指示をし、指示をされたアルティナは自分の背後にクラウ=ソラスを現させた。
「黒兎(ブラックラビット)の相手は私が担当します。彼女にはユミルでエリスを拉致した事に対する私の”怒り”もぶつけたいので。」
「クク、エリゼちゃんもリィンと同じ”シスコン”だったとはな。―――そんじゃ、俺とステラはエリゼちゃんに加勢させてもらうから、アルバレアの長男と因縁があるお前達は内戦で積もり積もった今までの恨みつらみをぶつけて来い!」
「黒兎(ブラックラビット)は私達に任せて、リィンさん達はルーファス・アルバレアの撃破をお願いします。」
「わかった…………!メサイアはエリゼ達に加勢してくれ!」
「わかりましたわ!」
アルティナとクラウ=ソラスの相手を申し出たエリゼ、フォルデ、ステラにアルティナ達の事を任せる事にしたリィンはメサイアにエリゼ達の加勢をさせ、アルティナ達と対峙したエリゼはメサイアと、ステラはフォルデとの戦術リンクを結び、ルーファスと対峙したリィンはベルフェゴールと、セレーネはエリスとの戦術リンクをそれぞれ結んだ。
「――――――これよりエレボニア帝国クロスベル侵攻軍の”総大将”ルーファス・アルバレアの討伐並びに”黒の工房”のエージェント、アルティナ・オライオンの捕縛を開始する。行くぞ、みんなっ!!」
「おおっ!!」
そしてリィンの号令を合図にリィン達はそれぞれが相手をする敵に向かって行き、戦闘を開始した―――――!
次回のルーファス&アルティナ戦の戦闘BGMは神のラプソディの”指揮者はこの地に降り立つ”、グラセスタの”あの日の誓いを胸に秘め”、VERITAの”宿業”、閃ⅡのOP”閃光の行方”の歌がないver、碧の”Inevitable Struggle”のうちのどれかだと思ってください♪
Tweet |
|
|
3
|
1
|
追加するフォルダを選択
第7話