店長の奥さんが突然ローラに向かってヒステリックに罵り始めました。
「あんたが全部悪いんだよ?あんたのせいでこの店が目を付けられて…。恩を仇で返すとはこの事だわ!」
「すみません…。卵の殻を剥くのがいつまで経っても上手くならなくて、迷惑をかけてしまった私が悪いんです…。小麦の袋の紙も敷くのが下手くそで、失敗ばかりして…」
「卵の殻を剥くのがどうのこうのと言う話ではないんですよ?牛乳の保管方法もそうですし、他にも調べればいくらでも問題点が浮き彫りになりそうですね」
そこにパンを買いに来たおばあさんが驚いたように、ステイシーに尋ねました。
「あの…何かあったんですか?」
「じきに営業停止命令が出ると思いますので、お引き取りください…」
「そんな…!ここが潰れたら他の店は高くて困るんだよ?老いぼれの足では遠くまで買いには行けんし…」
店長の奥さんはヒステリックに喚き続けます。
「この娘が全部悪いのに、なんでこの店が営業停止処分を受けなきゃならないんだい?」
「まだアルバイトの女性のせいにし続けるつもりなんですか?」
「この子は優しい気立ての良い娘だよ?わしが選ぶのが遅くても怒らずに待っていてくれる。そっちの奥さんが店番してた頃は来るのが嫌だったんじゃ」
「な、なんですって?嫌なら二度と来てくれなくて結構です!」
「安いから我慢して通っていたが、この娘がアルバイトを辞めるなら来るのをやめたいよ?」
ルークが見るに見かねて奥さんとおばあさんの言い争いを止めに入ります。
「おばあさん、アラヴェスタの物価が高くて辛いならマルヴェールへの移住をオススメしますよ」
「マルヴェールじゃって!昔は獣人の国だったところじゃろう?そんな場所に恐ろしくて行けんわ…」
「行ってみればわかりますよ?本当に恐ろしいのはアラヴェスタの方ですから」
「獣人は獰猛で恐ろしい連中だと聞いとる…」
「このアルバイトの女性はマルヴェール出身なんですよ?」
「そうだったのかい?今時、珍しいくらいに気立ての良い娘さんじゃなと思っておったが…」
「ええ、アラヴェスタ出身の者の方が気性が荒いと僕には感じますが…。僕もマルヴェール出身なんです」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第359話。