ローラは今にも泣きそうな顔で懇願しました。
「だからあのお店を…店長を助けたいんです」
「君は店長を救う為に僕とデートする事にしたんだね。健気な話じゃないか…」
「偉い人たちはお金がたくさんあるから貧しい人の気持ちがわからないんです」
「そうだろうね。実際あの店以外でも衛生管理が杜撰な店はいくらでもあるんだよ。それでも客は安ければ足を運ぶんだ」
「あのお店がなくなると困る人はたくさんいると思うの…」
「食中毒を起こしたのはお年寄りや小さな子供がほとんどだったようだよ。体の弱い人でなければ問題はないのだけどね。実際に僕は卵サンドを食べてもなんともなかったようだから…」
「おばあさんが卵サンドを買う時にやめた方が良いですよって注意したら良いのかな?」
「たった一個の失敗した卵のせいで他の卵も全てパァにする方がバカだよ?それを破棄すれば問題はなくなる」
「でも卵一個も無駄にするな!って奥さんから叱られちゃったので…」
「雇われてる身の君が逆らえない立場なのもよくわかっているつもりだよ」
「それにたくさん剥いてたら一個くらいは絶対に失敗しちゃう事あるし…」
「完璧に失敗なくこなせる人間はほとんどいないだろうね」
「卵を捨てるって言ったら弁償しろ!って怒鳴り散らされたの」
「うーん、あの店はその奥さんが一番の問題のようだね…」
「店長は奥さんには頭が上がらないみたいで、言い返したりしないんです。気が優し過ぎるのかも…」
「君がそんなに苦労してたなんて知らなかったよ」
「苦労してるとは思わなかったけど、こう言うものなのかな?って思いながら頑張ってた…」
「僕も仕事で嫌な事を無理強いされてやらされる事がよくあるから辛いのはわかるよ?」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第355話。