ルークはショックを受けたように口を掌で覆い隠して呻きます。
「お母さんは美容師がやりたかったから、上位職にならなかったんだと思ってた…」
「今はそれが天職だと言ってるね。下積み時代はいじめにも遭っていたようだが、五年前に自分の店を持ってからはイキイキしてるよ」
「その開業資金もお父さんが出したんだよね」
「夜の街で働いてなんとかしようとしていたのがわかったから僕が止めたんだ」
「お母さんもそんな事しようとしてたんだ…」
「本番なしの店でも外で関係を持つ者もいるからな。指名を取る為に必死なんだよ」
「それは知ってる…。僕もバーで働いてたから店の女の子の相談に乗ってたし」
「本人が嫌がっていても借金をカタにして客との関係を強要させる場合もある」
「借金で悩んでる子には自己破産申請の出し方とマルヴェールへの移住を薦めておいたけど」
「マルヴェールはアラヴェスタで暮らしていけなくなった貧しい者が、たくさん流れて来ているから財政は苦しくなる一方だ」
「フラウおばさん、大丈夫なのかな…。おじさんが亡くなってからは一人で頑張ってるけど」
「ナタとも相談して僕の給料はほとんどマルヴェールに寄付しているよ?」
「そうなんだ…。三億もあったら一生遊んで暮らせそうだけど」
「金なんていくらあっても虚しいだけだ。僕の欲しい物は金では買えない物ばかりだからな」
「ところでお父さんの欲しい物って何?」
「ナタの愛と心を開ける友と平穏な日々かな」
「うん、僕もそれが欲しい。ローラの愛とヴィッキーって言う友は手に入れたけど」
「まあ僕の友はもう亡くなってしまったが…」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第314話。