ルークは目を手で覆い隠しながら呟きました。
「無理やり食事に誘われて宿屋に行くのを断ったら、指名されなくなったりチップをもらえなくなるから、嫌々お客さんの相手をしてたらしいよ?」
「ルークもお客さんに誘われてたんでしょ?」
「食事くらいはしたけど、宿屋には行かなかったよ?」
「ずっと前にルークが綺麗な女性とデートしてたの見たのはその時かな?」
「多分ね。僕は宿屋に行くのを断ってもチップはもらえたんだけど…」
「断ったのにもらえたんだ?どうしてだろ…」
「やっぱり罪悪感はあるよ。騙してお金を巻き上げてるって言う…。今の仕事は収入も安定してるし、やってる事はラクなもんだよ?」
「それが難しそうなんだよね…。お父さんにやり方を少し教わったけど私には出来そうにないや」
「マルヴェールの騎士団や政治家は一律三十万だから割に合わないし、この家のローンを支払う為には今の仕事を続けるしかないんだよ…」
「お母さんに頼めば仕事を手伝わせてくれるかもしれないけど、ちゃんと出来る自信ないし」
「おじさんがあのシナリオを書いた理由は…多分、僕に裏の世界の汚さを見せる為だったんじゃないかな?って思ってる」
「お父さんは別に何も考えずに、あのシナリオ書いたんだと思うよ?」
「それはないよ?おじさんは先の先まで見据えて物を考える人だったから」
「ルークがお父さんを買い被り過ぎなんだよ?お父さんってものすごくいい加減な人なんだから」
「いくらローラでもおじさんの悪口を言うのは許さないよ?ローラはおじさんに似てるから、おじさんを悪く言われると僕は腹が立つんだ」
「お父さんに似てるのはわかってる…。でも最近、私はお母さん似かも?って思い始めたよ」
「とにかく僕はあの仕事を続けるつもりだよ。おじさんが書いたシナリオのオチを確かめる為にね…」
「お父さんはオチなんか全然考えてなかったと思うんだけど…」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第299話。