その晩、ルークは新しい家に帰宅してダブルベッドに背を向けて狸寝入りを決め込んでいました。
「ルーク、今日はしないの?せっかく新しい家を買ったのに…」
「ローラはしたくないんだろ?しなくても良いよ」
「オーラがピリピリしてる感じがする。怒ってるの?」
「仕事で嫌な事があっただけだよ?あとお願いがあるんだけど、魔術師試験の日は僕が帰宅しても相手をしないで欲しい。ゲイザーの部屋に鍵をかけて、僕が呼んでも決してドアを開けないで…」
「なんでそんな事しなきゃならないの?試験が近いからイライラしてるのかな」
「試験ごときでイライラしないよ?その日は僕の姿をした僕ではない誰かが帰宅するからさ」
「えっ、言ってる意味がよくわかんない」
「身体交換の薬を飲むんだよ。試験の前にね」
「なんで試験の前に身体交換なんかするの?」
「僕が替え玉で第一級試験を受けるんだ。僕の代わりに依頼人が第二級試験を受けるから…」
「それってやっちゃいけない事なんじゃない?どうして断らなかったの…」
「家のローンがあったから断りきれなかった。断ったら給料を減額すると脅されて…。本当に魔術師連盟はやり方が汚いよ?」
「ルークじゃない人が家に帰って来るなんて怖いよ…」
「僕だって嫌だったさ!でもどうしようもなかったんだ…。おじさんはどんなシナリオを書くつもりであんな遺言書を残したんだろう?赤ん坊のゲイザーに直接聞いて見たいよ」
「ルークにもどうしたら良いかわからないの?お父さんには解決法がわかるのかな」
「ゲイザーが喋れたとしても、おじさんの記憶が戻らないとわからないだろうし…」
「ゲイザーがお父さんみたいな喋り方してたら嫌だよ」
「うーん、それはちょっと僕も嫌だなぁ」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第272話。