パートナーの女性がウィルスと一緒にランチに行こうと提案して来ます。ウィルスの行きつけの高級そうな雰囲気の貸切の個室で話せるレストランに通されました。
「ルーク殿、どうかお願いします!」
「父とも相談して断る事にしたと言ったじゃないですか?」
「今年は受験者数も多くて替え玉受験で代理をやれる第一級魔術師が不足しているのです…」
「第一級魔術師ならゴロゴロいるじゃありませんか?僕はまだ第三級魔術師なんですよ」
「ルーク殿は特例で雇っているのですが、表向きには第一級魔術師ではないので、雑用係で雇うと言う形を取っておりまして、もし正規の給料を支払っているのがバレるとまずいのです」
「えっと、つまり僕は正規ではなく、アルバイトで雇ってる事にされてるんですね…。雑用係に支払われる給料はいくらになるんですか?」
「一般的な給料ですから二十五万くらいでしょうか…」
「そんなに安くなるなら昔働いてたバーに行った方がマシですよ?チップも貰える事があるから給料は三十万でしたが、実質的には五十万近く貰ってましたから…」
「替え玉受験を拒否すると言うのでしたら、然るべき金額しか支払えなくなります」
「それは脅しですか?最近、家を買ったので収入が減ると困るんです」
「その件についてはこちらも把握しておりますが、第一級魔術師の仕事をしないと仰るなら、こちらに支払い義務はありませんので…」
「うーん。流石、あなたは元総帥をやってただけの事はありますね。僕が家を買った事を計算済みで、この仕事を依頼しましたね?前の仕事に戻ったとしても家のローンが差し引かれれば生活費が厳しくなる…」
「返済は三十回払いですから、あと二年半は我慢していただかないとダメですね。どうなさいますか?替え玉をやるか、やらずに雑用係に落とされるか、二つに一つですよ」
「これが魔術師連盟のやり方なのですね。身を持って体験して怖さがわかりました」
「来年はルーク殿が第一級試験に挑まれるので今年だけ替え玉をお願いしたいのです。あなたなら確実に合格ラインに達するでしょう」
「うーん、父か母に相談しても良いですか?」
「あなたも見た目は大人の男なのですから、いつまでも学生気分でいないで、ご自分で決断なさってください」
「確かに見た目は老けてるってよく言われるけど、十五の頃から大人だと勘違いされてましたからね」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第271話。