次の休日は不動産屋へ二人で行きました。
「では、ご予算と条件の方はいかがなさいましょう?」
「うーん、予算は今の収入の半分くらいでも良いかな?前の収入の二倍になってるし…」
「失礼ですがお客様の月収はどのくらいなのでしょうか?」
「前は月三十万だったから家賃五万のところを契約してたんだけど、今は月六十万です」
「お若いのに随分と稼ぎが良いのですね…。魔術師の方なのでしょうか?」
「僕はまだ三級魔術師なので収入は少ない方ですよ?」
「確かアカデミー入学後に九級から、毎年一回ずつ試験を受けて、最短で二十歳に一級になれると聞いてますが、お客様はおいくつになるのでしょう?」
「僕は今年卒業したばかりでまだ十八です。二十歳には一級を取得したいと思ってます」
「と言う事はどこか名のある貴族のご子息だとお見受けしますが、なぜ月五万の安い部屋を契約しておられたのか…」
「親に頼りたくなくて自分の稼いだ給料だけでなんとかしたかったので…」
「なるほど、お客様は立派なお考えをお持ちなのですね。うちの子に爪の垢を煎じて飲ませたい」
「と言うことはあなたのお子さんは親のすねかじりなのでしょうか?」
「ええ、不動産屋は働かずに収入が得られると勘違いしていてだらけてばかりおります」
「うーん、本当に働かずに収入が得られるわけないのになぜそんな神話を信じているのか…」
「空き家が増えると建物の維持も大変ですし、不景気なので家賃が払えずに夜逃げする契約者もいて追跡調査にも金がかかります」
「ああ、調査依頼が何軒か魔術師連盟にも来てましたね。何人か僕も探し出しましたけど…」
「魔術師連盟に依頼すると高くつくので騎士団に依頼していますが、なかなか見つからず結局魔術師連盟に頼る事もありますよ…」
「娘が三年前、失踪してると言うのに心配すらしない親もいましたからね。それどころか保証人になっていたのに…と娘を罵ってましたよ」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第244話。